icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル25巻2号

1991年02月発行

雑誌目次

特集 体幹機能

歩行時における肩甲帯・骨盤帯の動き

著者: 横山茂樹 ,   松坂誠應 ,   大城昌平 ,   松本司 ,   浜村明徳

ページ範囲:P.76 - P.81

 Ⅰ.初めに

 ヒトは直立二足歩行という,特有の移動動作を行なっている.この動作は高度に自動化されており1),対角線上に有る上下肢は協同して動いており,一側(右)上肢を振り出すときには反対側の(左)下肢が振り出される.この上下肢の協調運動に伴い,体幹における肩甲帯と骨盤帯とでは,回旋が生じている.これらの動きによって,歩行時にスムーズな重心移動が行なわれると言われている2).このように体幹の回旋は歩行動作に大きな影響を与えているため,歩行時の体幹,特に骨盤帯,および肩甲帯の動きについて,多くの研究者によって歩行解析が行なわれてきた.

 小川(1960)ら3)は,正常成人の自由歩行における頭・骨盤の動きを含めて各関節の動きについて,ストロボ撮影により見下し像(水平面)と側面像(矢状面)の測定を行なった.Murrayら4)は,正常成人の自由歩行における肩甲帯・骨盤帯の動きを含めて,各関節の動きについて報告している.また,Inman5)は高速度映画撮影法により,正常成人における骨盤帯の動きについて報告した.近年では,測定機器の発達により,さまざまな方法により測定が行なわれている6~10)

 今回われわれは,健常人の歩行時における肩甲帯・骨盤帯の水平面,前額面,矢状面での三次元的な動きについて,ジャイロセンサーを用いて測定を試みた11).この結果を通して歩行時における肩甲帯・骨盤帯の動きを分析し,諸家の報告を含めて,体幹内の動きについて検討したい.

老人の姿勢と体幹機能

著者: 勝田治己 ,   古川良三

ページ範囲:P.82 - P.87

 Ⅰ.初めに

 われわれは相手の顔がはっきり確認できなくても,その姿勢や体型をみただけで30代の青年と70代の老人とをまちがえることは無く,また日ごろ見慣れた人であればその相手を特定できるほどである.すなわち姿勢は身体的要素と精神的要素とから成る全人間的なもので,多数の因子が複雑にからみ合い,相互に作用した結果の総合的な人の態様である.また人の姿勢は重力と抗重力筋との闘いの結果であり,それぞれの個体や環境因子が異なる限り,現れた結果も各個人特有の形態をとり,その多様性は人の顔が一人一人異なっていることにもたとえられるほどである.

 このように姿勢に関与する因子は多数あるが,なかでもその主軸を担うのは脊柱であり,その脊柱は数十年間重力ストレスにさらされた後,老化現象とも言うべき変形を生じ,いわゆる老人姿勢を呈するようになる.ではその老人姿勢とはどういうものであろうか,ここでは姿勢の基礎としての脊柱のバイオメカニクス,加齢による姿勢の変化,老人の姿勢,そして骨粗鬆症や脊椎圧迫骨折などに起因する老人の姿勢異常などについて述べたい.

片麻痺の体幹機能

著者: 冨田昌夫 ,   佐藤房郎 ,   宇野潤 ,   相馬光一 ,   北村啓 ,   江原義弘 ,   別府政敏 ,   野村進 ,   国見ゆみ子 ,   安藤徳彦

ページ範囲:P.88 - P.94

 Ⅰ.初めに

 片麻痺の治療に際して,“どうして”と考え込んでしまう現象があまりにも多すぎる.例えば端坐位で骨盤を直立し,体幹を伸展位に保持できる患者がいざ動こうとすると骨盤を後傾し体幹を屈曲してしまい,立ち上がったり,体重を左右に移動するとき骨盤の前傾,体幹の伸展が引き出しにくいことは誰しも体験することであろう.さらに不思議なことには,坐位で健側へ体重を移動するとき患側体幹筋を活動させて立ち直ることができる患者でも,患側へ体重を移動したときには体幹を健側へ側屈させて立ち直る動作をしない場合が少なくない.口頭で指示を与えれば側屈可能であるので,当然のことながら健側の体幹側屈筋群の働きが無いわけではない.それが反応として起こらないのである.

 端坐位で骨盤を後傾し,円背となりあたかも筋活動が少なくて重力で押しつぶされたように見える患者が,動こうと構えた瞬間に,頸部や胸郭の体幹屈筋群および健側下肢の筋活動が過剰になりやすい.このような患者の体幹を他動的に動かそうとすると体幹と健側下肢とが一つの塊となって動いてしまうこと,そのとき下肢の力を抜きにくいことなどはなかなか理解しにくい現象ではなかろうか.

 これら一見関連の無いようにみえるさまざまな症状も,片麻痺の平衡反応の特異性からみていくと共通した点が多くなる.現在われわれが進めている実験結果を引用し,片麻痺の運動の特徴と運動療法に関して述べていく.

片麻痺の姿勢反射機構と体幹立ち直り反応が歩行に及ぼす影響

著者: 吉元洋一

ページ範囲:P.95 - P.100

 Ⅰ.初めに

 生体の運動制御は,胎生および新生児期には原始反射に支配される形で行なわれ,その後中枢神経の発達に伴い立ち直り反応や平衡反応などの生涯持続する反応を獲得することにより可能となる.この過程は下位中枢が上位中枢に修飾(統合)されるように進み,最終的には大脳皮質で統合され合目的に運動の処理が行なわれる1).そのため脳卒中などの中枢神経障害では,上位中枢からの調節が困難になり陽性徴候や陰性徴候2)と呼ばれる症状が出現し,正常な姿勢や運動の調節が困難になる.このような障害に対し単に「筋力低下」,「支持力低下」などの末梢的みかたで対処しても障害を改善することは難しい.そのため正常な運動の調節メカニズムについて知り,また障害によりどの調節系の機能が低下しているかについて検討することは,運動療法の実施に当たり重要なポイントになる.姿勢の調節や歩行のメカニズムなどについては未解明の部分も残されているが,種々の報告3~5)があるのでそれらを参照されたい.

 ここでは,脳卒中片麻痺患者の体幹機能に影響を及ぼす姿勢反射と歩行能力との関係を,姿勢反射機構検査により検討する.

 なお,姿勢反射については明確な定義が無く,ここでは島村6)の「姿勢の反射性調節に関わっている機能」として論じる.

脳性麻痺の重心図

著者: 石塚和重 ,   月村泰治

ページ範囲:P.101 - P.106

 Ⅰ.初めに

 直立姿勢の調節は感覚受容器,神経系および骨格筋系によって為されている1,2).すなわち,深部知覚,前庭器,視覚などの感覚が末梢および中枢神経系に伝達され,これらの情報が中枢神経系で統合処理される.そしてこれらに応じた信号が錐体路と錐体外路系を経て骨格筋に伝達されて最後に全身の骨格筋で目的に合った姿勢に調節される.このように直立姿勢は①随意運動,②迷路,視器,自己受容器からの立ち直り反射③抗重力筋緊張④小脳の働きによる頭部,四肢,躯幹の協同作用により制御されているが,静止しているのではなく,わずかな動揺を繰り返しつつ動的平衡を保って維持されている3).また直立姿勢における調節能力は体力における調節力の中核を成し,かつ直立姿勢の調節機序は運動,動作の支配的機序を成すものであり4),種々の姿勢や動作の調節能の基本として重要である2).一方,直立姿勢を保持している場合,身体は絶えず動揺しているのであるが,その動揺は目標とする姿勢からの偏位とそれから立ち直ろうとする作用の動的バランスの現象であるとみなされ5),身体動揺を分析することによって,直立姿勢の調節能力や調節機序を評価,解明できると考えられる.

 脳性麻痺は中枢神経系の障害による運動麻痺を主症状としている.そして姿勢反射の異常に基づく起立,歩行のバランスの不安定さが特に目だつ疾患である.そこで,月村ら6~9)は脳性麻痺の姿勢調節の様相を姿勢反射の面からではなく,それらの統合されたものである体重心の変動をとらえたと考えられる重心図の解析を中心に検討している.また直立姿勢の中でもっとも基本姿勢とされる坐位と立位のバランスを重心図としてとらえ,重心位置の変動,特に高さの変化による身体動揺の相違が知られ,中枢における姿勢バランスの制御だけでなく,足蹠や殿部などの接地部における感覚系のfeed back systemをはじめ,筋感覚系,関節感覚系などの固有感覚系の様相なども察知しうるものと考えた.そして立位バランスから体幹部のバランスを減じたものがただちに下肢のバランスであるとすることはできないが,ある程度起立のバランスにおける下肢機能が占める役割を知ることは可能であると考え,坐位と立位の重心図を比較検討した8).重心図と運動機能面については,脳性麻痺患者などでは直立位重心図における重心動揺距離と重心動揺面積とはほぼ平行関係にあると述べている9).従来,脳性麻痺の重心図は治療効果の判定6~9)として利用してきたが,重心図のもつ特性を再検討,検索し,治療手段,特に姿勢制御の面からとらえ,その手がかりを見いだす目的として重心図と運動発達,体幹機能がどのように関連しているのか検討してみることとした.

 本研究は直立姿勢の基本姿勢とされる坐位,膝立ち位,立位について検討し,脳性麻痺児のもつ姿勢の特徴を姿勢調節の様相としての重心図をとらえ,直立能力の定量的評価を試みた.また,各姿勢間にみられる姿勢調節の相異,運動機能の差に基づく姿勢調節能の差および各姿勢における重心図が下肢運動発達と頸,体幹,骨盤帯運動機能とどのような関係がみられるのか検討してみた.

とびら

生きがい

著者: 大川達也

ページ範囲:P.75 - P.75

 寝たきり老人,痴呆老人に関係する記事は毎日の新聞でこと欠かない.国民がそれだけ関心を示していることだろうか.国もまたそれに対応するかのように新たな施策を試みている.安上がりの法改正と批判されながらも,福祉の権限を市町村に移管したり,地域における介護に関する職種を新設することもその一つに当たる.しかしながら,世をあげて高齢化社会を憂えているわりには,施行する側は何か施策を作ることによってその責任を果たしたとし,受ける側は他人まかせの何とかなるだろうという安心感,お互いに責任転嫁の風潮が無いとは言えない.先日の新聞にも,老人介護業の育成のためには,若者ことに女性に関心をもたせることが急務という行政の提案に対して,「なぜ介護者が女性でなくてはならないのか,人間いつかは衰える,そうであれば老人とは自分自身のこと,我が身を寝たきりに置き換えてどう介護してほしいのか,それが寝たきり老人の望む介護,きれい事の通らない力仕事,奥様に一日寝てもらい食事の介護や寝間着交換をしてみたらいかが,それだけでも考えることはたくさん有るはず.」健常者すべてが介護者だという一女性の声である.器だけを充実させてもその中味である.このことは,介護する側される側にも問題の有ることを意味している.

入門講座 歩行・2

片麻痺の歩行

著者: 田村茂

ページ範囲:P.107 - P.113

 Ⅰ.初めに

 片麻痺患者の歩行訓練は,片麻痺が中枢神経疾患であるが故に他の整形外科疾患と違う種々の問題をもっている.それは後者が量的な問題なのに対し,前者は量と質的な問題が混在しているからと言える.したがって,その評価方法,治療・訓練方法にしても,多くの研究者によって述べられ,細部にわたり未だ確定しておらず混沌としているのが現状だと言える.本稿では入門講座という位置付けから,基本的かつ臨床場面ですぐに役だつ観点から述べたい.

講座 姿勢・2

姿勢に対する形態学的観点

著者: 岡田守彦

ページ範囲:P.115 - P.120

 Ⅰ.初めに

 「ヒトは直立二足歩行するサルである」というのは人類学でのヒトの定義だが,現今の人類はこの定義とは裏腹に,直立も二足歩行もあまりしなくなり,オフィス,居間,車の中と,坐っている時間がもっとも長い.一方,腰痛,背曲がり,消化・循環器系の疾患など,姿勢や運動に関係すると思われる障害は増加しつつある.これらはしばしば「文明病」と呼ばれるが,文明病である所以(ゆえん)を理解する上で,ヒトの姿勢や運動の形態学的側面,その進化などについて考えてみることも有益であろう.

 本稿ではヒトの姿勢の特徴,動物,特に霊長類との比較,運動器にみられる二足適応などについてふれてみたい.

プロクレス

中枢自律神経系の神経伝達物質・2

著者: 前田敏博

ページ範囲:P.121 - P.121

 4.調節神経系の伝達物質

 前号で述べたように,中枢自律神経系の主回路は図2に白丸で示されるニューロンであり,そのほとんどはグルタミン酸などの速い伝達様式で連っているに違いない.これを抑えるのもまた速い伝達GABAが主であろう.しかしこれだけでは,機能別,臓器別の上に一般性と地域性を持つ複雑な中枢の自律機能をうまくかみ合わすことは不可能であり,遅い伝達機構を使う調節神経系がこれをうまく操作することになる.なかでももっとも強力なものがアミンニューロンである.

PT最前線

第一期生奮闘す―九州女の気性を燃やして 田口順子氏/<証言>学姉としての田口順子先生

著者: 本誌編集室 ,   和才嘉昭

ページ範囲:P.122 - P.123

 別府に戻ることが待たれていた.「仕事がおもしろくて,男なんか眼中に無かった」のだが,中国生まれの氏と話が合う引き揚げ者を選んで結婚してしまい,東京に居ることになったために,別府に養成校は設立されなかった.今にして明かされる秘話である.大陸的なおおらかさと,九州女の土性骨のすわったところは皆さん御在じのとおり.第28回の横浜国際会議場を使っての学会では,初の女性学会長が実現しそうである.早速足を運んだ.

あんてな

WCPTに参加を

著者: 森永敏博

ページ範囲:P.124 - P.124

 1991年7月28日から8月2日にかけて世界理学療法連盟(WCPT)学会がイギリスのロンドン市,バービカンセンターで行なわれます.バービカンセンターは,10階建のビルの中にコンサートホール,劇場,映画館,図書館,美術館,レストラン,会議場などを有するヨーロッパでも有数のコンベンションセンターです.

 ホストのChartered Society of Physiotherapyは,世界でももっとも早くから組織されたPT協会で,WCPTの結成に当たってアメリカPT協会とともに主要な役割を演じた協会でもあります.会員数は約25,000人で,これもまたアメリカPT協会に次ぐ二番目の規模を誇る協会です.その活動は機関誌“Physiotherapy”にみる如く伝統に根ざし,地道ながらも医療や福祉で確実な役割を果たしている文字どおり“Her Majesty the Queen”(女王陛下)にChartered(公認)された協会です.

原著

等尺性収縮度の変化および対側等尺性収縮におけるF波の検討

著者: 鈴木俊明 ,   武田功 ,   藤原哲司

ページ範囲:P.125 - P.128

 Ⅰ.初めに

 F波は1950年,Magladeryら1)により多シナプス反射波として報告された.その後Dawsonら2)は,recurrent dischargeによるものと報告し,McLeodら3)は後根を切除してもF波が出現すること,またTronteljら4)は純粋な運動神経である顔面神経からもF波が出現することを報告した.現在では,一般に運動神経を逆行したインパルスが脊髄前角を経て再び運動神経に戻り支配領域の筋肉から導出されるものと考えられている.

 臨床的には,F波の立ち上がり潜時から運動神経近位部の伝導速度を測定すること5)や,近年では中枢神経障害時,特に錐体路障害時には出現頻度,振幅の増加することが報告されている6).また,糖尿病患者7)など末梢神経障害時にも応用されている.

 筆者らは,以前に安静時F波の基礎的研究,正常人におけるF波の特性(安静時および収縮時での比較)について検討し,F波の出現頻度および頂点間振幅は収縮時に有意の増大を認め,位相数も増大する傾向のあることを報告した8).本報では,F波を導出する筋の収縮度をさらに軽度から高度の4段階に変化させた場合および対側に等尺性収縮を行なわせた場合についてF波と脊髄運動ニューロンプールにかかわる神経機能を定量的に分析した.

症例報告

短期間に症状の緩解を認めたParkinson病の理学療法未施行例

著者: 髙橋誠 ,   大塚彰 ,   井関玲子

ページ範囲:P.129 - P.130

 Ⅰ.初めに

 今日,特定疾患(脊髄小脳変性症,Parkinson病など)に対するリハビリテーションの必要性,重要性が盛んに言われているのは周知である.しかし,医師の治療方針や地域性の問題などによってその実施状況は必ずしも十分とは言えない.

 今回,上述の問題の中にあった症例を経験した.すなわち,発症後運動療法を受けた経験をまったくもたない症例であり,この症例に対し,正常姿勢を再獲得させることによって,ADLの改善を認めたのでその実際につき報告する.

短報

立位における重心動揺と姿勢評価

著者: 田代勝範 ,   仲沢仁 ,   内昌之 ,   藤井克仁 ,   坂本美喜 ,   原田孝

ページ範囲:P.131 - P.133

 Ⅰ.初めに

 人は,狭い支持基底面で安定した立位姿勢をとっている.安定した立位姿勢は,さまざまな動きを可能にするもっとも基本的な要素であり,その背景に種々の姿勢調節機構が作用している.今回,われわれは重心動揺計を利用して,静的立位姿勢の評価と構築的因子の関与の検索を試みたのでここに報告する.

1ページ講座 くすりの知識・2

くすりの基礎知識・2

著者: 岡島康友

ページ範囲:P.135 - P.135

 前号に引き続き,薬の基礎知識として本号では,薬の作用・副作用,作用機序,投与に際しての一般的注意事項などを中心にふれる.

クリニカル・ヒント

在宅訪問指導の醍醐味

著者: 寺内淳子

ページ範囲:P.136 - P.136

 社会福祉法人の当院にも訪問看護相談室が設けられて常勤訪問看護婦が配属され,リハビリテーション・スタッフとの協力体制というスローガンの下に,訪問指導が近区退院外来患者対象に行なわれ始めています.

 在宅訪問指導に携わった当初は(初体験は行政の訪問事業への参加です.),在宅訪問指導と訓練室中心の病院内指導との大きな隔たりに,戸惑い,悩むことばかりでしたが,在宅訪問指導を体験しもう一度病院内指導を正面から見据(す)えることができるようになれば,それは理学療法士としての一つの成長かもしれないと思う昨今です.

プラクティカル・メモ

歩行器操作の不十分な児に対するフロントローラーの試み

著者: 沢村泰弘 ,   佐々木弘之

ページ範囲:P.137 - P.137

 1.初めに

 ようやく歩行器歩行の段階に達した児にとって,上肢で支持しながら,歩行器をコントロールすることはなかなか難しい.その上重度の精神発達遅滞がある場合は,ささいなことで手を離したり座り込んだりしやすく,歩行を通して周囲に対する興味を育て,意欲を引き出す上で問題となる.

 今回われわれは,歩行器操作の不十分な児に,より制御しやすいよう,歩行器にフロントローラーを装備することを試みたので紹介する.

--------------------

あなたのイラスト

著者: 安楽貴

ページ範囲:P.100 - P.100

文献抄録

ページ範囲:P.138 - P.139

編集後記

著者: 安藤徳彦

ページ範囲:P.142 - P.142

 体幹は姿勢を制御する「かなめ」であるが,研究成果はまだ不十分である.今回の体幹機能の特集は,理学療法士学会の報告者を中心に執筆を依頼した.

 横山氏には,的確な測定技術によって歩行時の体幹の動きを分析した結果を報告していただけた.勝田氏は脊柱のバイオメカニクスを概括し,高齢者の姿勢異常を構築学的に解説してくださった.富田氏は片麻痺の体幹機能分析を継続しているが,運動療法に応用する理論構築段階での中間報告である.吉元氏は姿勢反射機構および体幹の立ち直り反応と歩行能力との関係の検討結果を報告してくださった.石塚氏には脳性麻痺の重心動揺図を分析し,坐位・膝立ち・立位による差を提示していただいた.いずれも力作で,読者諸氏が研究や臨床活動を続ける上で,参考にしていただける内容が豊富に盛り込まれていると信ずる.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?