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特集 体幹機能
片麻痺の姿勢反射機構と体幹立ち直り反応が歩行に及ぼす影響
著者: 吉元洋一1
所属機関: 1鹿児島大学医療技術短期大学部
ページ範囲:P.95 - P.100
文献購入ページに移動生体の運動制御は,胎生および新生児期には原始反射に支配される形で行なわれ,その後中枢神経の発達に伴い立ち直り反応や平衡反応などの生涯持続する反応を獲得することにより可能となる.この過程は下位中枢が上位中枢に修飾(統合)されるように進み,最終的には大脳皮質で統合され合目的に運動の処理が行なわれる1).そのため脳卒中などの中枢神経障害では,上位中枢からの調節が困難になり陽性徴候や陰性徴候2)と呼ばれる症状が出現し,正常な姿勢や運動の調節が困難になる.このような障害に対し単に「筋力低下」,「支持力低下」などの末梢的みかたで対処しても障害を改善することは難しい.そのため正常な運動の調節メカニズムについて知り,また障害によりどの調節系の機能が低下しているかについて検討することは,運動療法の実施に当たり重要なポイントになる.姿勢の調節や歩行のメカニズムなどについては未解明の部分も残されているが,種々の報告3~5)があるのでそれらを参照されたい.
ここでは,脳卒中片麻痺患者の体幹機能に影響を及ぼす姿勢反射と歩行能力との関係を,姿勢反射機構検査により検討する.
なお,姿勢反射については明確な定義が無く,ここでは島村6)の「姿勢の反射性調節に関わっている機能」として論じる.
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