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文献概要
特集 運動療法 Ⅰ:運動療法の基礎知識
神経生物学からみた運動療法の基礎
著者: 佐直信彦1
所属機関: 1東北労災病院リハビリテーション診療科
ページ範囲:P.152 - P.155
文献購入ページに移動 運動療法は内・外受容器,すなわち皮膚や固有感覚器に対して運動という刺激を加え,生体に生理的な反応を引き起こさせ,運動機能の回復を試みるものである1).しかし,その多くの技術は経験的であり,特に神経疾患については生物学,医学に基礎を置くことが少なかった.1966年シカゴで運動療法の基礎科学と方法論の研究会が開催され,このなかで神経生理学に基礎を置いた治療手技が報告された2).以来,その効果は伝統的治療手技と比較されたが,結論は得られていない3).1970年代以降,行動科学,心理学,神経生物学の発展と応用から新たなパラダイムが生まれた.その結果,これまでの技術の見直しと新しい考えかたが,1980年代に入って発表されるようになった.行動学的あるいは認知的アプローチを取るもの,神経生物学や神経生理学,広く神経科学の知見を応用する方向へと変化している4,5).
脳卒中後の運動機能の回復についての研究の多くは発症後,早期の機能的利得は大きく,時間経過につれてしだいに利得は減少し,機能レベルは一定値に達する.いわゆる負加速曲線,一種の学習曲線によって表される(図1)4).これらの事実から中枢神経損傷後の機能回復にも発達や学習に共通するニューロン,シナプスの変化が推定される.運動療法は治療者の操作―これは患者にとっては新しい経験の一部になる―を通じて,正常な運動行動の学習あるいは再学習を行なわせることである5).
脳卒中後の運動機能の回復についての研究の多くは発症後,早期の機能的利得は大きく,時間経過につれてしだいに利得は減少し,機能レベルは一定値に達する.いわゆる負加速曲線,一種の学習曲線によって表される(図1)4).これらの事実から中枢神経損傷後の機能回復にも発達や学習に共通するニューロン,シナプスの変化が推定される.運動療法は治療者の操作―これは患者にとっては新しい経験の一部になる―を通じて,正常な運動行動の学習あるいは再学習を行なわせることである5).
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