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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル25巻4号

1991年04月発行

雑誌目次

特集 卒後教育

理学療法士の生涯教育

著者: 伊藤直榮

ページ範囲:P.226 - P.228

 Ⅰ.初めに

 生涯教育というものは,個人のどの時点から始まるのであろうか.今回の特集は卒後教育がテーマであるが,筆者に与えられた課題は“理学療法士の生涯教育”である.生涯教育を英訳するとLifelong educationとかContinuing educationとなるようであるが,語感からはLifelong educationが生涯教育でContinuing educationが卒後教育のように思われる.事実アメリカ理学療法士協会学術誌JAPTAは卒後教育をContinuing educationとしている.

 ところで生涯教育は生涯学習とも言われ,人間は学齢期だけでなく,生涯にわたって学び成長する可能性をもっているので,幼児期より老年期に至るまでの教育をこれまでのように家庭教育・学校教育・社会教育という具合に,ばらばらに分けて考えるのではなく,これらを統合して,全生涯にわたる教育を組織的に進めるべきであるとする教育観である.このような考えかたは古くから言われていたようであるが,1967年にユネスコの国際シンポジウムで新しい教育観として再評価されてから世界的に脚光を浴びるようになった.日本の教育界も,早くからこの教育観を受け入れ,中教審も1971年に生涯教育について答申している.それによると「生涯教育とは,国民の1人1人が充実した人生を送ることを目指して生涯にわたって行う学習を助けるために,教育制度全体がその上に打ち立てるべき基本理念」であるとしている.その政策の具体的なものとして放送大学の発足,大学開放による公開講座,新聞社などによるカルチャーセンターの盛況などがある.

 生涯教育が高く再評価されることになった背景として,①学習人口の増大(社会生活上不断の学習が求められるようになったこと,寿命の延長により老人人口が増大したこと,女性の権利の向上に伴って女性の学習者がふえた.),②技術革新に伴う生活様式の変化,③社会構造の変化(政治上の権利の増大と学習の必要),④文化の大衆化(特に視聴覚教材の発達と書物の大衆化),⑤余暇の増大(余暇の使い方の学習も必要),⑥生活行動の規範の消失(規範を自ら立てる力の学習)などという事態が急速かつ広範に進行しているため,これまでの教育組織観では賄いきれなくなってきたからだと言われている1,2)

 以上のことから考えて,理学療法士の生涯教育としては①自らを生涯教育することと,②他人の生涯教育を健康の面より支持援助することとの二つの目的があると思われる.これら二つの目的を果たすために,理学療法専門家として,卒後教育は必要不可欠なものであるということができる.

青森県理学療法士会における継続教育の取り組み

著者: 對馬均

ページ範囲:P.229 - P.231

 Ⅰ・初めに

 我が国に理学療法士が誕生して以来,四半世紀が経過した.現在,理学療法士の数は1万人の大台を越え,さらに毎年1000人以上の新理学療法士の誕生をみている.しかし,高等学校卒業後3年間の短期養成教育というバックグラウンドにもかかわらず,われわれには医学の進歩,科学技術の発展に呼応して,つねに最新の知識・技術を吸収することが求められている.このような現状に対して,理学療法士として登録された後も,系統的な教育を継続して受けられるシステムの必要性が早くから説かれ1-3),さまざまな立場から努力が為されているものの,明確な形で実現されていないのが実情である.

 本稿の目的は,青森県理学療法士会における『卒後教育』の現状を紹介することにあるが,これまでも幾つかの府県の理学療法士会から実践報告4-6)が為されており,基本的にはこれらの理学療法士会での活動内容と共通する点が多い.そこで,地理的にも文化的にも中央から遠く隔りのある青森県において,創立以来20年間にわたって実践されてきた『卒後教育』としての学術活動の中から,その基本精神と独自の活動内容を紹介する.

福井県における卒後3年教育―「三年会」卒後研修会

著者: 伊藤康信

ページ範囲:P.232 - P.234

 Ⅰ.初めに

 現在日本における理学療法士の卒後教育は,日本理学療法士協会主催による各種研修会,各県士会による研修会,厚生省主催による長期講習会,また各施設による独自のものなどさまざまである.毎年約1000名近くの新人が輩出される今日,彼らのニーズに対応した内容のものばかりではない.それらは受講資格が臨床経験3年以上というものが多い.

 彼ら新人は,研修内容,日程,開催地,費用,職場の理解など,さまざまな問題を抱えている(これは新人だけのことではないが.).特に地方士会での一人職場では,いっそうの制限があるように思われる.

 福井県のように毎年新人が増加している士会では,彼ら新人の資質の向上と,孤立しやすい一人職場の新人と他の会員との交流を図っていくことは,地方士会にとって重要なことである.福井県士会(以下,当士会と略.)は76名と数が少ないゆえに,新人理学療法士のニーズに対応しやすい面もある.

 今回,われわれ当士会が新人を対象として行なってきた,卒後教育について述べる.

理学療法士教育改善への方策―大阪府理学療法士会教育部からの報告

著者: 中林健一 ,   農端芳之 ,   井端康人

ページ範囲:P.235 - P.237

 Ⅰ.初めに

 これまでの理学療法士教育に対する取り組みには,教育方法や教育評価法など,教育学的方法論を取り入れるための活動が多くみられた.確かに教育の効率や信頼性を高めるためにそれらは必要である.しかし,理学療法という専門技術教育であることを考慮すれば,教育方法のみを取り上げるのではなく,筋力低下に対する検査と治療,脳卒中片麻痺に対する検査と治療など,具体的な教育内容を挙げ,それをどのように教えるか論議しなければ問題解決にはつながらない.

 大阪府理学療法士会教育部では,1989年度,1990年度の2年間,「理学療法士教育の内容,方法,評価法を明確にする」という課題に取り組み,士会員に対する継続教育の一環として年1回,教育部研修会を開催してきた.そこでは学生が到達すべき行動目標を分析して教育内容を明確にし,それを学内および臨床実習でどのように教えれば良いのかを検討した.特に学生が臨床実習で問題になりがちな技術力の低さを解決するための方策や,学内教育と臨床実習教育の連携改善には重点を置いた.

 本稿では養成校卒業後の教員および臨床実習指導者に対する継続教育として,研修会の内容について報告する.士会員のより意欲的な教育への取り組みが,さらによく学ぶことに士会員を導くと確信する.

 なお紙数の関係上,今回は原因判断の部分に絞って報告するので御了承願いたい.

養成校における卒後教育システムの現状と展望

著者: 西本東彦

ページ範囲:P.238 - P.241

 Ⅰ.初めに

 理学療法士の養成教育は,1973年国立療養所東京病院付属リハビリテーション学院において開始され,すでに27年の歳月が流れた.この間わずか1校だった養成校が,昨年新設された4校を含め,48校を数えるに至った.このうち14校が,国,公,私立の三年制短期大学であるが,四年制大学は未だ設置されていない.

 学校の設立母体や歴史にはそれぞれ違いはあっても,一人の人間が理学療法を学び,人間として(社会人として)の成長を意図されて今日に至っていることは,まぎれも無い事実である.そして,この時の流れは医学の進歩を生み出し社会の変革をも道連れにしてきたのである.理学療法士としてのわれわれもまた改革,改善されての時の流れであった.

 そして,1989年には,2度目の理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則(以下,指定規則と言う.)の改定が行なわれ,社会構造の変化に対応できる理学療法士を世に送り出す第一段階も用意された.

 また,ここ数年間,理学療法士作業療法士国家試験の合格率は,全国平均で90%を上回っており,各養成校とも均衡した水準を維持できてきたとみることができる.

 ここまでくると,理学療法士の質向上を図るため,一つは四年制大学の設置であり,いま一つは,卒後教育をどう進めるかの二つが重要になってくる.この中で,養成校がかかわる卒後教育について現状と今後の展開を述べることにする.

私立理学療法士養成校教員の卒後教育

著者: 板場英行 ,   宮本省三 ,   沖田一彦 ,   阿部敏彦

ページ範囲:P.242 - P.245

 Ⅰ.初めに

 我が国において,理学療法士の専門家教育が始まって28年を経過しようとしている.1990年11月現在,理学療法士の養成校は48校であり,毎年約1000名の理学療法士が誕生している.理学療法士としての社会的位置付けが定着し,その業務内容の重要性と社会への貢献度が高まっている現今である.ただ,確実に変遷している医療界と医療行政の中にあって,理学療法士としての専門性と志向性との向上のためには,個々の理学療法士の資質を高める必要がある1).その意味で卒前,卒後教育の占める意義は大きく,養成校の教員,臨床実習指導者の果たす役割は重要である.特に重複,多様化している患者の障害像を的確にとらえて,適切な理学療法治療を実施するための知識と技術,および豊かな人間性の取得と展開とができる理学療法士を育成,養成することがわれわれ教育に携わる者の使命と考える.

 理学療法士養成校教員の資格については,臨床経験3年以上のほかに特別な条件は無く,1974年より厚生省の主催で毎年実施されている理学療法士・作業療法士養成施設等長期教員講習会の受講が勧められている程度である.

 理学療法教育システムの進んでいるイギリスでは,1977年より教育大学に設けられた教育理論と教育実習とから成る教員資格認定コースを取得することが義務付けられており2),この点は我が国の状況と大きく異なる.資格を取得した理学療法教員は,一般の理学療法士と同様,卒後教育の一環としての研修コースを受講して研鑽を重ね学生教育に還元している.イギリスでの卒後研修コースは,臨床,研究,教育の各分野における内容が設定されているが,教育に関するものはもっとも少なく,1989年の‘Physiotherapy3)’に紹介された中では,わずか4コースのみである.また,学士号を有する教員の中には,1982年より始まった修士課程コースで学んでいるものも少なくない4).1990年現在,協会公認の養成校32校のうち,半数以上の17校で修士課程コースを有しており5),この傾向は今後も強まるものと予想される.この点は我が国の現状でもっとも遅れているおり,理学療法の先進国を目指す上でぜひとも解決しなければならない重要課題である.

 21世紀へ向けて,我が国における理学療法のますますの発展と展開の拡大のためには,個々の理学療法士の知識・技術・資質の高揚が不可欠であり,その基盤を築く養成校教員の指導力と資質との向上が必要条件と考える.

 人間を対象とする理学療法士の教育に関し,種々の考えが述べられているが6,7),ここでは理学療法学生を教育する学校勤務理学療法士の資質向上に対する卒後研修について,私立養成校の立場から述べることにする.

当院リハビリテーション部の職員教育

著者: 真鍋清則

ページ範囲:P.246 - P.248

 Ⅰ.初めに

 当院リハビリテーション部の職員教育は,セラピストとしての知識と治療技術の向上を目指すだけでなく,患者や障害者とその家族に接するセラピストとしてより善き人格を高めるために必要な長期的な生涯教育の中で指向している.したがって,新人教育はある時期だけに集中してなされるものではなく,半永久的に継続される教育のうち早期に為されるものである.職員教育は新人だけにとどまらず,理学療法士,作業療法士,言語治療士を含むものである.

 社会人としての全般的研修,すなわち法人と病院組織の意義や機能,病院経営と運営,礼儀作法,社会人としての心構えなどについての教育研修は病院単位で行なっているが,今回はセラピストとして発展していく過程における当院リハビリテーション部の教育に焦点を合わせて述べる.

筑波大学附属病院および茨城県県南地域における実践例

著者: 臼田滋

ページ範囲:P.249 - P.251

 Ⅰ.初めに

 理学療法士に対する組織的な卒後教育としては,現在,日本理学療法士協会主催の全国研修会,長期・短期現職者講習会ならびに各県士会主催の研修会などが毎年開催され,より充実化・組織化されてきている.しかし反面では,近年の急激な日本理学療法士協会会員数の増加に伴う,会員の地域的な多極化と会員意調の多様化,さらに比較的経験年数の浅い,しかも地域によっては理学療法士の一人職場に所属する理学療法士数の増加によって,卒後教育の在りかたが再検討されるべき時期にきていると感じている.この解決策として,日本理学療法士協会では,研修会・講習会などの開催を大都市圏主催から各地域で主催する方向も検討され始めている.

 この近年の傾向の中で,全国的な研修会・講習会という形態だけではなく,より身近な環境(時間的・経済的・地域的)での,より臨床に密接した卒後教育の場が望まれている.筑波大学附属病院では,他施設からの新人研修の受け入れや,他施設の理学療法士を含めた抄読会・勉強会を行なっており,また茨城県県南地域では,自主的なグループによる勉強会を実施しているので,その経験を,当院勤務の新人教育の経験も含めて紹介したい.

少人数職場の卒後教育

著者: 田中裕理子

ページ範囲:P.252 - P.254

 1.初めに

 現代の教育場面において,われわれは小学校に入学してから,例えば専門学校を卒業するまでの間,往々にして受動的である.例にもれず,自主的に勉強することを知らない筆者が卒業後,如何に怠け者の自分を律して,自主的に学問を積み重ねていくか….これは至難の技である.

 孔子の「論語」の中に,最初は学をつとめ,次に学を好み,最後に学を楽しむという境地の進めかたを述べたことばがある1).これこそが卒後教育,いわゆる生涯学習の極みであろう.

 本稿では,筆者の卒後6年間の教育への取り組みを振り返りつつ,当院内外における卒後教育活動の現状を紹介する.

一人職場の卒後教育

著者: 濱野浩二

ページ範囲:P.255 - P.257

 1.初めに

 理学療法士養成校を卒業し,社会に巣立っていく理学療法士の数は年間1000名にも及ぶ.これらの新人理学療法士は,多くの先輩諸氏に囲まれでき上がった職場に勤める者,また歴史はあるが理学療法士不在の職域の中で勤める者,まったくの新しい職場で勤める者などさまざまな就職先を選択している.

 しかしながら臨床に飛び出し,いきなり患者を目の前にしたとき,「どういうふうにアプローチしたら良いのかわからない」と思う理学療法士はかなり多いと思われる.まして,研究ともなるとまったく手を出す術(すべ)も無いのが現実であろう.

 しかし多くの新人理学療法士は,「先生」と呼ばれながらいっぱしの理学療法士として,あるったけの知識を誇大化させて治療行為を行なっているのが実情であるが,はたしてこれで治療と言えるのだろうか,お金をもらえるものなのかどうか,そんなに理学療法は薄っぺらいものなのだろうか,理学療法士の将来はいったいどうなるのだろうかと,不安感を強くもっているのもまた新人理学療法士である.

 今回与えられたテーマ,「一人職場の卒後教育」は,こうした「生めよふやせよ」といった従来からの理学療法士促成栽培により,大量生産されている理学療法士を,根本から見直す一つのきっかけとしたい.

とびら

「息遣い」をつかめたら

著者: 大塚ひろみ

ページ範囲:P.225 - P.225

 3年間の指月寮生活を挾んで,この春,卒業後の理学療法士としての就業年数が,入学時の年齢に追い着く.あらためて過ぎ去った時の重たさを痛感する一方,それに比した我が身のあまりの軽さに愕然としてしまう.尊兄姉弟妹を前にして,己の浅薄さを晒(さら)しているのにすぎない,とのご叱責をいただく覚悟で,日ごろのこだわりの中から,その一つを取り上げてみたい.

 それは,「息遣い」である.かなり前になるが,3m弱の歩行で必ず立ち止まる患者さんの介助中,それが息堪(た)えの限界だと気付いた.そのとき,思わず口に出た「息をしましょうね.」のことばに双方ともに吹き出してしまった.吹き出しながら,「上手な息のしかた,じょうずな息遣いとは?」と漠然とした疑問をもったことを覚えている.それ以来,たびたび「息遣い」が気になりながらも,為す術(すべ)も知らず今に至っている.

入門講座 歩行・4

脳性麻痺児の歩行

著者: 今川忠男

ページ範囲:P.259 - P.264

 Ⅰ.脳性麻痺児の神経発達障害としての歩行障害

 脳性麻痺児の有する歩行障害は,多種多様な様相を呈する.それらは歩行がまったく困難な状態から,歩行機能の獲得時期が遅滞したものであったり,歩行器や杖を使用して可能な歩行であったりする時期的なあるいは量的な程度の差だけではない.独立歩行時の歩容の未熟性,代償性,異常性といった質的な要素の違いをも含んでいる.

 脳性麻痺児のこのような症状の多様性は歩行障害に限らず,これらの子どもを理解するもっとも重要な概念となっている.そこで,理学療法士は脳性麻痺児が有する個々別々の問題点と必要性に適応した治療と援助を展開しなければならない.

講座 姿勢・4

予測的姿勢制御

著者: 藤原勝夫

ページ範囲:P.265 - P.272

 Ⅰ.予測的姿勢制御について

 姿勢制御に関する研究は,Magnus1)以来長い間大脳皮質などの上位脳の機能を除外する方向で為され,主に脳幹を介する姿勢反射に焦点が当てられてきた.最近では,これまでに得られた皮質下中枢の機能に関する知識を踏まえて,大脳皮質の姿勢制御における役割を窮める必要性が打ち出され,その統御下におかれた姿勢制御に関する研究が進められている2,3)

 中枢神経は階層構造を有し,その中で大脳皮質はもっとも上位に位置し,随意運動の神経機構を与える場合の構造的対件とされる.このことからすると,大脳皮質が関与する姿勢制御は,随意的姿勢制御として取り扱う必要があるように思われる.発達という観点では,運動機能が反射運動から随意運動へ変化するというみかたがあるように,姿勢制御の発達を姿勢反射から随意的姿勢制御への変化,あるいは平衡機能の獲得というようにとらえることができるように思われる.これは,制御の中心となる脳が,下位脳から大脳皮質などの上位脳へ移ることを意味していると考えられる.

1ページ講座 くすりの知識・4

神経系に作用する薬・2 脳循環代謝改善薬

著者: 才藤栄一

ページ範囲:P.273 - P.273

 脳循環代謝改善薬は,主として脳血管障害の慢性期に用いられる薬剤で後遺症の治療を目的としている.つまり,慢性期になると脳循環の調節障害はかなり回復し,ぜいたく灌流や脳内盗血症候群は無くなり,脳血流や脳代謝の全般的低下が主な問題として残ることになる.そこで,それを改善せしめ,後遺症である神経症状や自覚症状を軽減させる目的で脳循環代謝改善薬が投与される.

 表1に,主な脳循環代謝改善薬を商品名で示しておく.

プログレス

ホリスティック・ヘルス

著者: 江口篤寿

ページ範囲:P.275 - P.275

 1.ホリスティックとは

 ホリスティック(holistic)ということばは,全体という意味のギリシャ語ホロス(holos)が語源であり,哲学用語であるホリズム(holism,全体論)の形容詞と考えてよかろう.そこで,ホリスティックとは全体的,つまり,構成要素の個々を取り上げないで,全体を一つとして把握するという意味のことばである.なお,現在ごく普通に使われている英語のwhole,hole,holy,healthなどもholosというギリシャ語から派生したことばである.

PT最前線

一足早い学会の地倉敷+岡山紹介 PART Ⅰ

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.276 - P.277

 第26回日本理学療法士学会は倉敷で行なわれる.川崎リハビリテーション学院のスタッフの皆様の御推薦のおいしい処や,記者が自分の脚で取材した吉備路を御紹介する.今回もPart Ⅱに続いているので,お忘れなく.

一足早い学会の地倉敷+岡山紹介 PART Ⅱ

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.279 - P.282

 歴史とロマンの散歩道を,というのが記者のお勧めだ.何よりおいしい空気を,そして倉敷,岡山のおいしい処へ地図を見ながら,さあどうぞ.

あんてな

第26回日本理学療法士学会の企画

著者: 古米幸好

ページ範囲:P.278 - P.278

 会場を出ると,そこは美観地区であった.倉敷川に映る柳のしなやかな姿.つつましい格子窓.白壁と黒い瓦の土蔵の向こうには,ギリシャ神殿のような大原美術館が見える.

 ピチピチギャルも,オジンギャルも,オジンでさえ憧れる“ツタ”のアイビースクエアは,第三・四会場そのものである.街そのものがアートしていると言われる,倉敷美観地区が学会場である.

理学療法学科新入学生のための学生生活オリエンテーション

理学療法学科における学生指導の要点

著者: 米澤久幸 ,   近藤登 ,   渡邊潤子 ,   斎木しゅう子

ページ範囲:P.283 - P.285

 Ⅰ.初めに

 理学療法士を養成する3年間の期間を短いと考えている理学療法学科の教官は,少なくないであろう.量より質の理学療法教育が強調され,四年制大学化の方向性が確認されて久しくなるものの,一方では最近の社会情勢から理学療法士の需要がふえ,早期育成が望まれている(?).このような状況の中,理学療法教育に携わる私達教官は,より良い理学療法士の卵を養成するべく(少なくとも自分たちからみて),試行錯誤しながら反省を重ねている.ここでは,理学療法教育と学生指導に対する私たちの考えを述べてみる.

今の貴方が主人公

著者: 小嶋裕

ページ範囲:P.286 - P.287

 Ⅰ.プロローグ

 いま私の室の外では,学生たちが(秋の)文化祭の準備で忙しく走り回っています.この拙稿が目にふれるころには,新入学生の皆さんは意気揚々と青葉に囲まれた正門をくぐっていることでしょう.

 私は約7年間の臨床経験後,教職に入り13年を迎えようとしています.振り返ってみると,教職に入った当時は,学生に随分と無理難題をぶつけました.それまでの臨床生活から一転して「教育」の場に身を置き,ある種の「気負い」を感じつつ,それまで経験した「臨床実習病院スーパーバイザー」的感覚で学生に接していました.臨床実習に出れば,「あれも必要,これも必要」とばかり,息せき切って学生に向かっていました.今思えば,当時の学生はさぞかし迷惑を被っただろうと反省もしております.私自身がそれまでに受けた理学療法教育は,「実践」重視であり,それを学生にも一方的かつ画一的に要求しすぎていた感がありました.

 その後,教育活動について多少なりとも経験を積み思うことは,臨床の場で「患者さんから学ぶことが多い」ことと同じように,教育の場においても諸活動を通して「学生からフィードバックされることが多い」

 ことも,数多く経験する事実であることなのです.言い換えれば,学生生活を送る上で,その根底にあるのは,掛け替えの無い,紛れも無い,貴方自身であり「今の貴方が主人公」だということです.

 そこで,脇役の一人として,貴方がより良い学生生活を演じるための,私なりの幾つかのアドバイスをしてみたいと思います.

紆余曲折

著者: 宮川哲夫

ページ範囲:P.288 - P.289

 1.初めに

 理学療法学科新入学生のための学生生活オリエンテーションとして小生が述べること自体,場違いの感を免れない.今,学生時代を振り返ると動機付けの無い典型的スチューデント・アパシー(学習意欲喪失症)だったのである.理学療法士になってすでに10年が経過した今,その軌跡を辿(たど)り,思うところを述べてみたい.

理学療法の施行と,その結果との間に有るもの

著者: 金尾顕郎

ページ範囲:P.290 - P.291

 私はこんな仕事がしたかった

 常日頃“人間”というものに興味が有った.それは哲学的意味合いも無く,老人,子ども,同年代の行動・言動の違いがおもしろかったのである.そんな気持が有ったから私はこの道を選んだのかもしれない.

 私が入学したのは,我が国の法律に理学療法士及び作業療法士法が公布され10年目を迎えようとしていた,今から16年も前のことである.その当時はあまりテレビ・ラジオで理学療法士の取り上げられているのをみたことが無く,開業医の叔父に勧められるまで理学療法士のことをまったく知らなかった.今でこそ主役の座にはほど遠いが,障害者を取り巻くドキュメントや有名人の闘病生活を取り上げたドラマなどに出てくるようだ.何はともあれ理学療法士とはどんな職種であるか情報収集のため,交通事故で入院した友人や外科手術を受けた親戚の者を見舞がてらその病院の訓練室をのぞきに行ったのである.そこで訓練を受けていた老人が「初めて一人で立てた」と喜ぶ顔に,にっこりと笑顔で応(こた)えている理学療法士の姿があった.それが私と理学療法との初めての出会いである.工学部を志望していた自分が,理学療法士という職種を満足に知らず,生涯を通じて行なうかもしれない仕事として選ぶにはあまりにも軽率すぎるかもしれないが,その何とも言えない光景が忘れられず,こんな仕事がしたいと思ったのはこのときである.

空飛ぶ鷹と地に在る鶏と

著者: 髙口光子

ページ範囲:P.292 - P.293

 専門家は専門を越えてこそ

 専門技術を体得し,自身の能力向上,患者サービス,現場診療の実践と理学療法学進歩への貢献,そんなことは当然で,その機能が低下してしまえば,専門家とは呼ばれなくなる.だから,「専門」というところは確かにだいじなのだが,そのほかに理学療法士という職業をもった「人」としての役割を忘れてしまうことはないだろうか.

 専門とは,狭い一つの局面に対応しうる職人技術でしかなく,その職人技術をもつ人間が,ある種の社会行動を求められるとき,それは,終局のところトータルな人間の問題となる.専門と言われるためには,専門を越えなければならない.私は,このことを小児分野の先生から教えられた.

目的意識をもった学生生活を

著者: 後藤明教

ページ範囲:P.294 - P.295

 1.初めに

 理学療法士を目指し御入学なさった皆さん,おめでとうございます.

 私が弘前大学医療技術短期大学部へ入学したのは10年も前の話になります.十年一昔と言われるように,10年も経てば学生の気質も変わってきていることと思います.したがって,私の経験を述べることはあまり参考にならないと思いますが,現在の自分を振り返りながら,二,三述べさせていただきます.

「人間は意志があれば,それを達成しようとして動くものだよ.」

著者: 高田稔子

ページ範囲:P.296 - P.297

 Ⅰ.初めに

 3年間の学生生活を振り返って,印象深いのは,やはり臨床実習での経験である.2年間,机上で温めてきた基礎の個々バラバラだった要素を,総合的な一つの形に自分なりにまとめ上げられる場であった.

 各実習施設では,それぞれの特色があり,さまざまな先生方に,さまざまなアドバイスを受けることができた.

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文献抄録

ページ範囲:P.298 - P.299

編集後記

著者: 吉尾雅春

ページ範囲:P.302 - P.302

 新社会人になられた方々,養成校新入学生のみなさん,おめでとうございます.いろいろな思いを胸に新しい世界に飛び込まれたわけですが,現実はなかなか厳しいものです.挫折しないように,頑張ってください.そこで,今月は「卒後教育」と「理学療法学科新入学生のための学生生活オリエンテーション」というテーマでお届けします.

 日本理学療法士協会および各都道府県士会主催の研修会,講習会やその他関連する勉強会などの開催状況をみてみますと,我が国の理学療法士は基本的に勉強が好きな人種であるようです.しかし,その内容は必ずしも体系だったものではなく,また集団の中にあっては受身的にでも勉強はできますが,近年多く見られるような一人乃至少人数の職場に勤める理学療法士が自らを教育していくことは至難の技であろうと思います.「卒後教育」はそのような観点から,10氏の理学療法士に論じていただきました.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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