文献詳細
文献概要
特集 日常生活動作(ADL)
退院を受けての日常生活動作の指導・訓練―脳卒中片麻痺患者の日常生活動作について理学療法士の立場から
著者: 吉原裕美子1 川島康子1 高取利子1 永原久栄2
所属機関: 1立川相互病院リハビリテーション室 2浴風会病院リハビリテーション科
ページ範囲:P.382 - P.390
文献購入ページに移動一般的に,病院は“医療の場”,家庭・地域は“生活の場”であると,そしてそれは異なるものであるように言われている.しかし,地域理学療法マニュアル1)に述べられている「“生活”を忘れた指導訓練は無意味になるかもしれない」ということばは,家庭復帰を中核目標におく入院理学療法にも,当然当てはまるものである.日常生活動作(activities of daily living;ADL)指導訓練は,この「生活」を念頭に入れた,入院理学療法の要と言える.われわれは入院理学療法開始時からつねに,今後帰っていくはずの実生活でのADLを予測し,実生活を想定したADL訓練を,治療と並行して,日々変化する入院生活上のADLを融合し実践していかなければならない.
地域・在宅障害老人と,その人の家で出会うとき「家に帰ったらやれませんねえ」とか「病院ではやりましたよ」と言うことばをよく聞くことがある.この表現の意味するところには,退院に向けてのADL指導訓練を十分受けたが意欲・活動性低下のためやらない場合,入院中のADL訓練のみが行なわれ,退院後の生活指導がされていない場合,ADLは能力が改善したらできるとして“機能訓練”のみ重視された場合,介護者への指導が無く病院ではできたが家庭ではできない等々,指導側に問題が有りそうな様相がみえる.何よりも,退院後の生活を想定したか否かが気になる.総じて,在宅で展開されている障害者の生活をみると,入院中のリハビリテーション援助が十分あったからこそできている点と,援助が十分あったにもかかわらず,入院中には及びもつかないためにできていない点とが往々にしてみられる.
われわれは,いわゆる第一線病院のリハビリテーションスタッフとして,急性期治療から,家庭復帰,在宅リハビリテーションまで,一貫した援助に取り組んでいるが,他方で,地域担当者として,病院から離れた在宅障害者の生活援助に携わる経験をもっている.この経験を基に,当院脳卒中退院患者91名の調査結果から,退院に向けてのADL指導訓練をまとめたので本特集の一助としたい.
掲載誌情報