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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル25巻7号

1991年07月発行

文献概要

特集 Ⅱ.糖尿病と理学療法

糖尿病患者における運動習慣の有用性

著者: 木村朗1

所属機関: 1琉球大学大学院保健学研究科成人保健学教室

ページ範囲:P.470 - P.477

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 Ⅰ.初めに

 諸姉兄は,脳卒中後片麻痺の患者を治療しているときに,しばし再発作の危険性を忘れてはいないだろうか.私たちは脳卒中片麻痺者の発症の原因となった以前の基礎疾患を,どこへ隠してしまうのだろうか.リハビリテーション医学と内科学とは処方目的が違うので,「これでいいのだ」と私たちが指示の順守を徹底したことが,患者に役だってきたこともあるかもしれないが.しかし,脳血管障害患者では,高率で糖尿病を病前に有していることを知れば,糖尿病患者の運動習慣に理学療法士が取り組まなくてはならないという気持ちがよりはっきり芽生えてくると私は考える.

 この分野は,保健学もしくは公衆衛生学では,一度発症してしまった疾病の重症化を防ぐこと,すなわち三次予防と言う.脳血管障害自体が日本人を死に至らす病の第一位だったのは,すでに過去のことであり,現在は第三位である.私たち,理学療法士の需要をもたらしてくれたのは,三次予防の効果,すなわち,この死亡率の低下,言い換えれば障害者の増加と言っても過言ではない.しかし,これもすでに過去のものである.

 現在のところ,私たち理学療法士は高齢化社会の生み出す,高齢者が新たな需要を求めてくれるおかげで活況をみることができる.今後,日本の理学療法士が,患者に役だつ理学療法サービスを展開するためには,さらに将来の需要の見通しを立てないといけないだろう.そこで障害の基になる疾病の発生状況をみると,我が国では,かの糖尿病が着実に増加していることがわかる1)

 ここからが本題であるが,糖尿病に対する運動療法は,国際的にも,近頃研究者の関心を集めており,しだいに理論の構築がなされ,古いパラダイムの転換を余儀無くされつつある.刻一刻と変化する,いささか「密林の宝さがし」にも似た興奮さえ覚える.しかし,それだけに手持ちの道具(知識)と即戦力(実践能力)の開発につねに旺盛でなければ,宝物は見失ってしまうだろう.

 三次予防に取り組まなければならない,という気持ちができたなら,地図を拡げて,まず私たちの位置を確かめながら進んでゆこう2).ともかく糖尿病患者の運動の効果と意義を冷静に評価することがたいせつである.それに加えて,運動を習慣化させる意義と方法を知ることが求められるだろう.この稿では,筆者の乏しい経験と現在までの研究の成績を基に,諸姉兄とともに運動習慣の有用性について考えていきたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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