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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル25巻8号

1991年08月発行

雑誌目次

特集 重度障害児の理学療法

重度障害児(者)の実態とリハビリテーションの動向

著者: 山形恵子

ページ範囲:P.520 - P.525

 Ⅰ.重度障害とは

 主として運動面の障害に注目して考えられている.身体障害者手帳の基準で言えば,1級,2級(1級は寝たきり,2級は何とか坐位に持ち込める.)と考えられるが,3級も,さまざまな補装具を利用しないと歩行ができないレベルなので,一般に重度と言う際はほぼ3級まで含められる.

 現在運動面だけ障害される場合もあるが,重度障害を引き起こす最大の原因と考えられている脳性麻痺や脳障害の場合,さまざまな合併症をもつので,単純に運動機能の障害状況で,重度とか軽度と分類することは難しい.

重症心身障害児に対する理学療法の役割と課題

著者: 上村孝司

ページ範囲:P.526 - P.531

 Ⅰ.重症心身障害児の実態

 1.重症心身障害児とは

 重症心身障害児(以下,重症児と略)という用語は,1958年,東京都社会福祉協議会が,それまでの重症欠陥児,不治永患児や多障害児などの用語を統一して,新しく呼ぶことを提唱したものである.

 医学的に重症児とは,器質的脳障害に基づく高度の脳機能障害の特殊な状態であるとしているが,これでは重症児の状態像を具体的に把握することが難しい.そこで行政的,社会的に使用されている定義を総括してみる.

精神発達遅滞児に対する理学療法の役割と課題

著者: 山川友康 ,   山川宏昭 ,   浅野まゆみ ,   小谷睦美 ,   馬場先俊仁

ページ範囲:P.532 - P.538

 Ⅰ.初めに

 精神発達遅滞(以下,MRと略.)とは,「知的な発達が同じ年齢の子どもに比較して有意に遅れ,日常生活の適応に困難がある状態」と定義されている1)

 脳性麻痺児の早期診断・早期療育が定着するにつれて,近年,MRを主症状とする子どもについても,早期療育の概念が注目され,その意義や成果が報告されている2~7)

 精神発達遅滞児(以下,MR児と略.)は,乳児期には一般に姿勢筋緊張が低く,抗重力活動など基本的運動能力の乏しさが認められるため,運動発達の遅れに対して,理学療法がまず処方されることが多い.しかしMR児の治療場面で,運動機能面のみを重視すると,子どもの問題の本質を見誤ってしまう危険がある.

 MR児は,その原因や臨床像が実に多種多様であり13),対応は個々の症例により異なる.今回は,われわれの臨床経験を基に,MR児の基本的とらえかたと理学療法の役割および理学療法実施上の留意点について述べ,症例検討を加えてまとめた.

重度脳性麻痺児の呼吸・摂食障害に対する理学療法―ポジショニングを中心として

著者: 今川忠男

ページ範囲:P.539 - P.544

 Ⅰ.重度脳性麻痺児に対する理学療法の現状

 重度脳性麻痺児に対する療育を進めていくとき,その運動障害の程度が重度であるということに加えて,数多くの重複障害,二次的合併症が最大の問題点となると考えられている.それらには癲癇,痙攣発作や消化器障害,呼吸器障害や視聴覚機能障害,口腔機能障害などが含まれ,四肢体幹の拘縮,脱臼などの構築的変形も多発する.また,痰の喀出障害,誤嚥,栄養障害,長期間の抗痙攣剤の服用などが原因ではないかと考えられている感染症も報告されている.そして死亡原因としては呼吸器感染症,イレウス,心不全が上位に挙げられている.

 このような状況では重度脳性麻痺児に対してはその医療的処置,管理といった防御的な対策が最重要課題となり,理学療法士は治療目標を見失って途方に暮れてしまったり,すでに起こってしまっているさまざまな機能障害を取り上げ,対症療法的にその対策を立てていくといった対応のみに陥ってしまいやすくなる.

重度脳性麻痺児の母親指導―外来児の場合

著者: 新田通子

ページ範囲:P.545 - P.548

 Ⅰ.初めに

 当こども医療センターは1970年に開設され,こども病院(入院・外来)・肢体不自由児施設・重症心身障害児施設などから成る小児専門施設である.脳性麻痺児は,外来・重心に集中していた.しかし,近年,子ども病院の入院児にも脳障害児が多くなり,幼少化・重症化してきている.理学療法部門へ依頼される患児の年齢は0歳児が増加し,重度児も多い.こども病院には,保育機能は無く3歳前後になると患児は地域の“通園施設”に移り,そこで訓練と保育を受ける方法が取られている.

 当センターでは診療に紹介予約制を取り入れているが,リハビリテーション科を受診する患児は,外部からの紹介よりも,院内他科からの依頼が多い.

 4年前よりリハビリテーション科外来では初診時からリハビリテーション医,理学療法士,作業療法士の3人のチームで診察に当たっている.このとき3人のチームは母親を交えて話し合い,患児のセンターにおける訓練方法について,次の二つの内のいずれかを選択する.

 ①週1回の通院訓練を行なう

 ②母親や家族が家庭で子どものハンドリング(診察時に理学療法士・作業療法士が母親に指導する)を行ない,1~2か月後再度,リハビリテーション外来を受診させる

 ①,②いずれにおいても「母親指導」が行なわれるが,以下,主として①における母親指導について述べる.

生命を守り,暮しを築く

著者: 山﨑万里

ページ範囲:P.549 - P.549

 在宅福祉,地域福祉の充実が叫ばれている今日,重症心身障害児(以下,重症児と略.)の中にも在宅で治療や訓練を受け,学齢になると養護学校に通学しているケースもふえてきました.どんな重度の障害をもった人でも,地域で十分な医療,福祉サービスが受けられ,暮していけたら,どんなに良いことだろうと思います.しかし,日本の現実はまだまだ遠く及ばず,重症児者を抱えた家族の奮闘に頼っているのが現状です.そして,それが限界に達したとき,施設に入所してきます.“良い治療を受けたい”“十分な介護ができなくなった”等々入所の理由はさまざまですが,重症児施設で働く私たちは,そんな家族の思いを受け止め,施設を重症児・者が人間らしく生きてゆける場所にしたいと思っています.

 ゆうちゃん(24歳)は高知県の西端の三原村の出身で,4歳のときに入園してきました.重症児のゆうちゃんですが,“イエス”“ノー”の意志表示がはっきりしており,野球,相撲などのスポーツ大好き少年でした.しかし,自分の気持ちを伝えることができなかったり,納得できなかったりすると緊張が増強し,胃内出血,コーヒー様嘔吐を誘発しました.そして18歳のころからベッドで過ごすことが多くなり,経口摂取も困難になり,止むを得ず経管栄養を併用するようになりました.

人間として生きる

著者: 長谷川弘一

ページ範囲:P.550 - P.550

 1990年3月21日午後10時過ぎ,突然自宅の電話が鳴った.「先生,Sちゃん死んじゃった.死んじゃった.」悲鳴にも似た母親の声が聞こえてきた.「死んだ?えっ?えっ?」そう聞き返すのが精一杯で,後は会話にならなかった.自分がSちゃんの担当理学療法士になって5年目のことであった.

 Sちゃんは,脳性麻痺に精神発達遅滞やてんかんを合併した重症心身障害児であり,生後11か月より当園の療育を受けていた.その中心的役割は母親がこなしており,家族や近所の人々の協力も十分に得られ,比較的整った療育環境であった.Sちゃんは全身的に緊張が高く,摂食,排泄,睡眠障害に加え,呼吸機能にも問題がある子どもであった.一晩中泣きながら全身でそり返り続け,朝になってようやく眠るということもしばしばみられた.風邪から肺炎を併発し,救急病院へ運ばれたことも2度や3度ではなかった.しかし,どんなときでもSちゃんの傍には,母親と家族が居た.母親はSちゃんの表情や仕草から,今何を要求しているかを瞬時に理解し,子どもの欲求を満たしてくれるのであった.自分の欲していたことがそのとおり行なわれると,Sちゃんの表情はなごみ,全身の緊張もまた低下していくのであった.

とびら

“女性と宝石”

著者: 田代千恵美

ページ範囲:P.519 - P.519

 理学療法の仕事に携わるようになり,長い月日を過ごされた人,やっとのことで理学療法士のライセンスを修得され夢と希望を胸に抱いて社会人数か月の人がいます.それぞれの人々が自分の考えの下に社会参加されていることと思います.まだまだ未熟な人間なのに,人生の先輩の方々から「リハビリの先生」と期待の声をかけられ,何も感じずに仕事をされる人,歯痒く思う人,これからも自分の腕を磨かねばならぬと考えている人が,日夜努力を重ねつつ仕事に取り組まれています.

 私も,ついこの間就職したばかりだと思っていましたが,何人もの同僚が異動しています.その中に数人の女性が含まれていました.近年,女性の社会進出は目まぐるしいものであり,マスコミが大きく話題にしています.実際,家庭をもち,育児をしながら働くのは並み大抵のことではありません.教師のように産休代用のシステムも無いままに労働しているのが実状です.安心して働ける社会を築くには,現在,職についている理学療法士一人一人が力を合わせ,働く女性の地盤固めに精を出す時期であると考えます.

入門講座 ADL訓練の実際・2

片麻痺の起居・移乗動作訓練

著者: 夏目精二

ページ範囲:P.551 - P.556

 Ⅰ.初めに

 脳卒中患者のリハビリテーションでは運動麻痺の回復のみにとらわれず,全体的な機能の改善,そしてQOLの向上を目標に,訓練計画を立てる心構えがたいせつである.すなわち,身体面だけでなく,家族を含む心理的,社会的側面からの支援も考慮することが必要である.

 最近の脳卒中は,診断技術の発達や初期治療の向上で,死亡に到るケースが少なくなってきている.しかし一方では,積極的な治療にもかかわらず歩行自立に到らず,全介助やベッド生活自立の程度にとどまる患者も多くみられる.そして,このことは年齢との間に相関がみられ,高齢になるほどこれらの患者の割合は上昇してくる1).このような場合,たとえ寝たきりであっても,指示や監視をすることにより,寝返りや起き上がりなどの動作が可能となる例も多く,個々の患者の機能や特徴を,介助者へ指導してゆくことが重要とされる2)

 起居・移乗動作能力の自立は,歩行の自立とともに重要な目標であるが,これらの自立度に影響する因子としては,第一に運動障害が挙げられる.そして,高次脳機能障害や精神面での意欲低下,痴呆なども報告1,2)されており,症例に合わせた最適な手段を講じることがたいせつとなる.本稿では,起居動作として坐位保持,寝返り,起き上がり,立位保持,立ち上がり,移乗動作としてベッドと車いす,ベッドとポータプルトイレ間について,訓練の初期の段階を中心に具体的に述べてみたい.

講座 老年医学・2

老年者の骨・関節疾患

著者: 林𣳾史

ページ範囲:P.557 - P.563

 Ⅰ.老年者の骨・関節

 1.骨・関節の生物学的意義

 ヒトの加齢に伴う骨・関節の病変は,哺乳類の先祖が水中生活から陸上生活へと移行したことと人類の先祖が四足歩行から二足歩行へと変更したこととの二つの進化過程が不利に働いた結果として現れている.

 1)カルシウムの恒常性

 われわれの先祖が約3億年前に形成された新たな陸地で生棲することにより,より多くの酸素が摂取でき,かつ水中に比べて抵抗の少ない陸地でより自由に動き廻ることができ,動物としては飛躍的な進化をとげることができた.しかし,その陰では動物の体を構成している全身の細胞(ヒトの場合は約60兆個)のおのおのの機能を発揮させるために,海水中で生棲していたときと同様に,細胞環境である体液中のカルシウム濃度を一定に維持しなければならないというめんどうなことが生じた.すなわち,生命の炎とも言われているカルシウムの体液中濃度の恒常性維持機構は海水のミネラル濃度均一状態を,皮膚で形成された袋の中で保ちながら体を移動させているのが陸上の動物である.そのためにつねに水分やカルシウムを経口補給できる状態にあれば良いが,それがつねにできるとは限らないので,骨のようにカルシウムおよび他のミネラルの塊を予備として保有しておかなければならない.

1ページ講座 くすりの知識・8

循環器系に作用する薬・3 末梢循環障害に用いるくすり

著者: 峯尾喜好

ページ範囲:P.564 - P.564

 末梢循環障害で理学療法と関係が深いものとしては,閉塞性動脈硬化症,急性動脈閉塞症,閉塞性血栓性動脈炎などの器質的動脈閉塞症,Raynaud症状や反射性ジストロフィーなどの機能的動脈閉塞症,血栓性静脈炎,静脈血栓症,リンパ管炎やリンパ水腫などの静脈・リンパ還流障害が列挙できる.末梢循環障害の治療としては,器質的動脈閉塞症では手術療法が主体に,機能的動脈閉塞症では薬物療法が主体的に行なわれているが,静脈・リンパ還流障害では手術や薬物に加えて体位変化,マッサージ,圧迫帯などリハビリテーションとかかわりの深い治療法が複合的に行なわれている.薬物療法では,①血栓溶解剤,②抗凝固剤,③抗血小板剤④末梢血管拡張剤,⑤神経作動性血管拡張剤,⑥ホルモン剤,⑦副腎皮質ステロイド,⑧抗生物質などが用いられる.以下に主な疾患の概説と治療法を述べる.

プログレス

大脳基底核臨床の進歩・1 ドーパミン受容体の進歩

著者: 鈴木啓二 ,   吉田充男

ページ範囲:P.565 - P.565

 大脳基底核領域にとって受容体の問題は重要であり,今回は最近相次いでcDNAのクローニングに成功しているドーパミン受容体について述べる.

PT最前線

我が青春に老人有り―学生時代の夢を追い続けて 香川幸次郎氏/<証言>地域理学療法のパイオニア

著者: 本誌編集室 ,   山下隆昭

ページ範囲:P.566 - P.567

 神奈川県には行政職に在る理学療法士がいる.香川幸次郎氏,衛生部健康普及課副技幹.「今いちばんやっているのは老人保健施設の開設許可で,申請に来る法人や個人を相手に(県の看板を背負って)慎重にことばを選びながら,対応しています.」「神奈川県の中で老人保健施設をどう位置付けどういう理念で根付かせるか」有能な行政マンと組んで企画し,指導する.学生時代に懐いた,三つのしたいことの一つが今の仕事.あと二つはどうか?

あんてな

高知県理学療法士会の法人化

著者: 中屋久長

ページ範囲:P.568 - P.568

 「平成2年9月30日付けで申請のあった,社団法人高知県理学療法士会の設立は許可する」高知県知事―1990年12月6日付けで高知県理学療法士会(県士会)は社団法人が許可された.

 1971年6月北野嘉孝氏を初代会長にわずか会員8名の小さな会が発足した.徳島,香川,愛媛の四国各県も前後して士会を発足し,お互いに協力していこうと翌1972年に四国理学療法士会を設立各県持ち回りで研修会を開催してきた.四国の研修会や学会をてこに各県士会が力と自信をつけ独立した学術活動や社会活動を展開するようになってきた.高知県士会は1978年に第13回日本理学療法士学会を,1985年には第20回全国研修会を担当している.また1983年老人保健法施行に併せ,県の老人保健調査事業への委員派遣,市町村の行なう機能訓練事業に対する理学療法士の派遣に協力,さらに社会福祉部を設置し,県や市町村などが行なう活動に参画,着々と公益的な事業を行なうようになってきた.

雑誌レビュー

“Physical Therapy”(1990年版)まとめ

著者: 江原晧吉

ページ範囲:P.569 - P.572

 1990年度のPhysical Therapy誌について,論文の比較,その傾向,我が国の斯界に資することをまとめるように依頼を受けましたのですべての論文を読破し,Physical Therapy誌の大略が読者の皆様に伝達できるように最大限の努力を払いました.なお,文献の主題に多少でも興味を抱かれましたら,原文を読んでくださることをお願い致します.

資料

第26回理学療法士・作業療法士国家試験問題(1991年度) 模範解答と解説・Ⅱ―理学療法(2)

著者: 橋元隆 ,   中山彰一 ,   高橋精一郎 ,   堤文生 ,   高柳清美

ページ範囲:P.573 - P.577

学会印象記 第26回日本理学療法士学会

講演,シンポジウムから得るところ大

著者: 大峯三郎

ページ範囲:P.580 - P.581

 「科学からのメス」というメイン・テーマの下,去る5月23,24日初夏を思わせる日差しの中で,第26回日本理学療法士学会が倉敷市において開催された.

 会員数もすでに8500名を超える大所帯の中で,演題数は口述,ポスター,ビデオ発表を含め360題を数え,2日間の日程でこれらすべての行事を消化するために四つの施設,八つの会場を使用しての学会運営であった.このように数か所の施設に分散して運営する傾向は,ここ数年来のことであるが,参加する者として,日程表とにらめっこしながら四施設をあちこち移動しなければならないのは,正直言って会場の施設が離れているだけに移動の煩しさを多少,感じるものであった.しかしながら,学会会期や参加者数,応募演題数の増加などの関係でこのような運営形式を採らざるをえないのは,現状では致しかた無いことであろう.

反省―思ったより時間のかかるまとめ作業―初発表体験記として

著者: 岡野生也

ページ範囲:P.582 - P.583

 第26回日本理学療法士学会は,「科学からのメス」をメインテーマとして5月23,24日の両日倉敷にて開催された.

 今回の学会では,第一日目にシンポジウムが「理学療法の科学性を問う」をテーマに,Ⅰ~Ⅳのセッションに分けて行なわれた.また,このシンポジウムに関連した一般演題の発表も各セッションで行なわれた.第二日目は,従来の一般演題発表を八会場に分け行なわれた.第一会場に充てられた倉敷市民会館は,収容人員1000を悠に超すりっぱな建物であった.

自己啓発の場とできた学会―発表者として,聴視者として

著者: 川元恒美

ページ範囲:P.584 - P.585

 多島美を誇る瀬戸内海と,その島々を結ぶ瀬戸大橋.柳並木に寄り添い建つ倉屋敷・美術館・考古館・民芸館.第26回日本理学療法士学会は,一見穏やかな風情の中にも文化の香りがたちこめる『倉敷』を舞台に開催されました.初夏を思わせるような天候の中,約2000名の会員が参加し,演題数も360題と,非常に盛大な学会でありました.

 理学療法士としての臨床経験も,まだ3年目を迎えたばかりで,全国学会への出席も初めてならば,発表も初めて…ということで,今までに無い緊張感を体験しました.

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文献抄録

ページ範囲:P.586 - P.587

編集後記

著者: 鶴見隆正

ページ範囲:P.590 - P.590

 今月号の特集テーマは「重度障害児の理学療法」である.

 私が理学療法士になりたてのころに初めて重症心身障害児施設を訪問したとき,経管栄養を受けながらベッド柵に手足を固定されているものの,輝く瞳で何かを訴えている子ども,後弓反張で懸命に背這いをしようとしている子どもを見て眩惑したことを今でも鮮明に記憶している.それは重度の運動障害のみでなく,癲癇,痙攣発作,誤嚥,呼吸障害など直接生命を脅かす重複した障害をもちながら成長する子どもたちの療育の中で理学療法士として何ができ何をすべきか,を理解していなかったためであろう,そこで今回,この分野で長年活躍している先生方に執筆をお願いした.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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