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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル25巻8号

1991年08月発行

文献概要

講座 老年医学・2

老年者の骨・関節疾患

著者: 林𣳾史1

所属機関: 1東京都リハビリテーション病院

ページ範囲:P.557 - P.563

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 Ⅰ.老年者の骨・関節

 1.骨・関節の生物学的意義

 ヒトの加齢に伴う骨・関節の病変は,哺乳類の先祖が水中生活から陸上生活へと移行したことと人類の先祖が四足歩行から二足歩行へと変更したこととの二つの進化過程が不利に働いた結果として現れている.

 1)カルシウムの恒常性

 われわれの先祖が約3億年前に形成された新たな陸地で生棲することにより,より多くの酸素が摂取でき,かつ水中に比べて抵抗の少ない陸地でより自由に動き廻ることができ,動物としては飛躍的な進化をとげることができた.しかし,その陰では動物の体を構成している全身の細胞(ヒトの場合は約60兆個)のおのおのの機能を発揮させるために,海水中で生棲していたときと同様に,細胞環境である体液中のカルシウム濃度を一定に維持しなければならないというめんどうなことが生じた.すなわち,生命の炎とも言われているカルシウムの体液中濃度の恒常性維持機構は海水のミネラル濃度均一状態を,皮膚で形成された袋の中で保ちながら体を移動させているのが陸上の動物である.そのためにつねに水分やカルシウムを経口補給できる状態にあれば良いが,それがつねにできるとは限らないので,骨のようにカルシウムおよび他のミネラルの塊を予備として保有しておかなければならない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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