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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル26巻11号

1992年11月発行

雑誌目次

特集 ADLとQOL

ADLとQOL―その基本的な考えかた

著者: 上田敏

ページ範囲:P.736 - P.741

 1.初めに

 ADL(activities of daily living,日常生活動作)とQOL(quality of life)とはいずれも現在のリハビリテーションを考える場合の極めて重要なキイワードである.しかし,その両者のどちらがより重要なのか,あるいは,両者の間の関係はどうなのかについてはまだ多くの混乱がみられるようである.一方ではリハビリテーション医学の創始期からの「ADL自立こそがリハビリテーションの最終的目標である」との考えがあり,他方では最近の「リハビリテーションの目標はADLからQOLに転換した.したがってADLは以前ほど重要ではなくなった」との考えもあって,多くの人々がこの二つの考えの間で迷っているというのが現状であろう.

 筆者はすでにいろいろの機会にこの問題について考えを述べてきており1,2),最近の考えかたは近著に詳しく述べているが3),本稿ではその要点を繰り返し述べるとともに,そこでも十分には展開できなかった最新の考えかたに比較的重点をおいて論じてみたい.その際のキイポイントは次の二点に要約できると思われる.

 1)QOL向上のためのADL自立促進

 2)ADLの概念の拡大

理学療法士からみたADLとQOL

著者: 洲崎俊男 ,   奈良勲

ページ範囲:P.742 - P.748

 Ⅰ.初めに

 ADL向上は医学的リハビリテーションのもっとも現実的な目標であり,特に評価の中でも重要な位置を占めている1~6)

 従来,病院を中心とした急性期の理学療法においては,医学的リハビリテーションを主な手段とし,impairment,disabilityに対するアプローチが主流であった.しかし,高齢化社会が進行するなかで慢性期患者や老人保健法7)に基づき,1983年より実施されている機能訓練事業を中心としたいわゆる地域リハビリテーションや特別養護老人施設・老人保健施設などでのアプローチも重視されるようになった.これらの状況における医学的リハビリテーションの主な目的は身体機能維持であろう.中村8)は,慢性疾患モデルにおいては,病気だけが問題でなく,それによってもたされるQOLの変化に目を向ける必要性を指摘している.このような状況の中で,障害を有する人が社会に参加し,その中で積極的に生きがいを見いだしてゆくQOLの概念が導入されるようになってから,われわれ理学療法士の間でもADLとQOLとをいかに取り扱うかが問題となってきた.

 今回の「ADLとQOL」特集の企画を契機に,この課題に対してこれまで理学療法士はどう対応してきたのか,また今後いかなる方向に進むべきかを考えてみたい.

片麻痺のADLテストの標準化

著者: 八並光信 ,   園田茂 ,   木村彰男 ,   千野直一 ,   中嶋和夫 ,   新田収

ページ範囲:P.749 - P.753

 Ⅰ.初めに

 近年,リハビリテーション・サービスのねらいをADLからQOLへと移行する必要性が,しばしば論じられている.これは,従来の画一的なプログラムから,社会生活上のニーズに即した個別プログラムへの転換を図らなければならないことの強調であるとも解釈できる.この変化は,医療そのものが病院(施設)から在宅医療へと発展している現在,単なる能力低下の改善のみでは,退院後の生活の多様なニーズを満たしえないことと密接に関連しているものと考える.

 しかし,QOLを高める要因としてADL能力が重要であることは不変の事実である.最近,評価表そのものの妥当性や信頼性に関する検討も徐々に行なわれており1),リハビリテーション領域においてもADLやQOLの指標となるべき標準化されたテストの開発が本格的に始動しつつある.

 本論文では,このような点を踏まえながら,片麻痺患者の自験データに基づき,今後のADLテストの標準化について考察を加えることにする.なお,本論文では「標準化」を作業仮説に基づく,ADLテストの設計およびサンプリングなどの一連のプロセス全体を指す用語として使用する.

理学療法士からみたQOLの評価

著者: 隆島研吾

ページ範囲:P.754 - P.758

 Ⅰ.初めに

 「理学療法士からみたQOL(Quality Of Life)の評価」が私に与えられたテーマであるが,評価を行なうためには「QOLとは何か」をまずはっきりさせる必要がある.しかし,その実態は複雑であり,個人レベルの思想・価値観およびそれぞれの立場や関心をもつ領域の違いなどによってその理解は異なる1,2)

 このような状況の中で,QOLを一つの概念でとらえ,QOLそのものを何らかの画一的な評価方法で評価するというのはむしろ危険であり,QOLの本質から外れる可能性のほうが大きいと言わざるをえないであろう.

 とはいえ,われわれ理学療法士を含むリハビリテーション医療の分野でも近年「リハビリテーションの目標はQOLの向上にある」3)とする考えかたが主流になりつつあるのも事実で,われわれが今後の臨床活動を進めていく上でも,何らかの方向性をもつことは重要である.しかし,筆者がこれに関して精通しているわけでもなく,大上段に構えることは不可能である.

 そこで今回は,種々の報告を概観し「QOL向上のための理学療法評価」を探ることを目的としたい.

地域リハビリテーションにおけるADLとQOL―在宅生活援助の現状と課題

著者: 高田京子

ページ範囲:P.759 - P.763

 Ⅰ.初めに

 地域リハビリテーションは社会リハビリテーションの下位概念で,障害者が地域社会の一構成員として社会生活に参加し,主体的に自らの人生を生き,生活していくための援助の総体を意味する.その目的は障害者にADLの自立を求めるのではなくその存在そのものに価値を見いだし社会活動への参加や家庭内の役割をもつだけではなく,障害後の新しい人生の生きがいを得るための援助をすることである1).また,小島によると社会リハビリテーションとは社会生活における人間存在の意味を全(まっと)うさせるための,障害者全人像と社会システムとそれを支える社会意識そのもののリハビリテーションであり,障害者の自助努力だけでは社会参加に限界があるため,環境にアプローチしてその人が生きる社会の中で権利と機会を享受できるようにすることである2).すなわち社会条件と本人の社会適応の援助を両面からすることにより,障害があっても社会生活面で差が生じることなく,特別のニードをもつ生活者として生活圏共有の道を開くことがねらいとなる.

 これらのことからわれわれリハビリテーション専門職種の援助の目標は障害者の人間存在の価値の擁護,すなわちQOLの向上と社会適応能力の獲得である.

 人はそれぞれの価値観(生きがい)をもっており,住む地域,家族,文化的背景もみな異なる.QOL向上のプログラムはその人特有の個別援助プログラムとなる.東京都心身障害者福祉センターに附設する肢体不自由者更生施設では医学的リハビリテーションが終了した者で地域社会へ戻る際,多くの困難がある社会的に重度な障害者に対して,福祉事務所などの種々の地域資源と協力して在宅生活援助を行なっている.

 ここでは東京という地域に生活する障害者の援助を通して,QOL向上の現状と課題について述べることにする.

とびら

問題思考型ADL評価表を

著者: 森中義広

ページ範囲:P.735 - P.735

 「病室で役だつリハビリをお願いします.」

 理学療法士は実用的なリハビリテーションの効果を考えてプログラムし訓練を行なっていると誰しもが思っている.自分で服が着られるように,食事できるように,ポータブルトイレが使用できるようになど,ADLに役だつ訓練である.現在のADL評価表は各動作項目が可能か否か,介助量は自立・部分介助・全面介助か,また自立の度合いを3~4段階評定で記録する.そして,意志疎通・意欲・食欲・痴呆・ROM・MMT・協調性・移動能力などの評価と照らし合せ,ADLのできない項目の理由を想定し,訓練を組み立てる.

1ページ講座 関連職種の動向・11

整形外科医

著者: 三好邦達

ページ範囲:P.764 - P.764

 我が国の整形外科医は社団法人日本整形外科学会(日整会)を組織し,その会員数は1992年9月1日現在,16627名である.

 その学会活動は春の学術集会のほか,夏の骨軟部腫瘍学術集会,秋の基礎学術集会と3学術集会が開催され,それぞれの学術集会は毎年2年前の評議員会,総会で選出された会長が主催し,活発な学問交流の場がもたれている.

入門講座 関節可動域訓練・5

慢性関節リウマチ患者の関節可動域訓練

著者: 安岡郁彦

ページ範囲:P.765 - P.769

 Ⅰ.初めに

 慢性関節リウマチ(以下,RAと略.)はリハビリテーションの主要対象疾患に数えられているものの,現実には理学療法士にとっては興味をもって積極的に治療しにくい疾患のようである.その理由として理学療法士側からみれば「過度の訓練はRAの活動性を増悪させる可能性が有る」「不用心な可動域訓練は関節破壊を助長するかもしれない」あるいは「RA患者には易疲労性があり休息も重要な治療である」といった受け身にならざるをえないリスク概念に接する機会の多いことが挙げられるし,患者側にも,少しでも痛みを受けることがあれば訓練を敬遠するといった風潮があることなどが考えられる.

 機能維持を目的に恐る恐る患者にアプローチしていては,理学療法士にとっておもしろい対象疾患には成りえない.RAが機能改善を目的に積極的に訓練を行なうことによりADL改善の獲得できる疾患であり,またRAにとって理学療法は不可欠な治療手段であるということを認識していただきたい.

 患者個々にとっての最適な運動療法は患者との二人三脚で作り上げていくものであり,理学療法士は訓練中や訓練後の痛みや疲労などについての情報を患者から収集し,また患者も積極的に自分の状態を理学療法士に話すことにより,より効果的な訓練を双方が協力しながら探していく姿勢が必要である.訓練内容は患者個々によって本来は別個のものであり,すべての患者に当てはまることは無いはずであるが,本稿では可動域訓練を実施するに当たり基本的事項であろうと思われる事柄について述べる.

TOPICS

すてっぷ(東京精神薄弱者・痴呆性高齢者権利擁護センター)

著者: 高城根理子

ページ範囲:P.770 - P.770

 1.開設の目的と経緯

 東京精神薄弱者・痴呆性高齢者権利擁護センターは,意思能力が十分でないため,自らの権利を享受し,行使することができず,権利を侵害されやすい状況にある精神薄弱者や痴呆性高齢者の権利を擁護し,安定した地域生活の継続を図ることを目的として,1991年10月に,設置されました.

 本センターは,東京都福祉局に設置された精神薄弱者・痴呆性高齢者擁護機関検討委員会の最終報告(1991年7月31日)「精神薄弱者・痴呆性高齢者権利擁護機関の基本構想について」に基づき,社会福祉法人東京都社会福祉協議会が,東京都からの補助を受けて事業運営に当たっています.

講座 障害者・高齢者のための住宅・5

住宅増・改築の基本項目

著者: 橋本美芽

ページ範囲:P.771 - P.776

 Ⅰ.初めに

 本稿では,住宅増改築の指導を行なう際に特に指導対象となることが多い住宅部位について基本的な改造方法と,評価と検討に必要となる基礎知識とについて述べる.

印象に残った症例

胸椎圧迫骨折によりミエロパチーを合併した高齢重度慢性関節リウマチ患者の家庭復帰に関与して

著者: 西野学

ページ範囲:P.777 - P.780

 Ⅰ.初めに

 一般に慢性関節リウマチ(以下,RAと略.)の場合,障害の進行が緩徐であり,生命予後も良好であるなどの理由により,RA患者の多くは通院や入退院を繰り返しながらも家庭での療養が可能である1).しかし高齢化社会を迎え,RAにおいても加齢による障害の重度化・重複化によって家庭復帰に困難をきたす例もみられる.今回,第12胸椎圧迫骨折によりミエロパチーを合併した高齢重度RA患者の回復過程と家庭復帰に向けてのアプローチについて,若干の考察を加え報告する.

プログレス

動脈硬化症の新しい治療法・1

著者: 駒場明 ,   島田和幸

ページ範囲:P.781 - P.781

 動脈硬化症治療の基本は動脈硬化の危険因子の除去,改善である.危険因子は各疾患により多少異なるが,加齢,男性,遺伝的素因(以上は改善不可能因子),喫煙,高脂血症,高血圧症,糖尿病,肥満,高尿酸血症,運動不足,性格(A型),ストレス,低HDLコレステロール血症などが挙げられる.最近虚血性心症患にLp(a)高値が危険因子になると言われている.動脈硬化症の予防にはむろん,既存の動脈硬化病変に対しても上記の危険因子の除去,軽減は有用である.動脈硬化症の治療法について,虚血性心疾患に対する最近話題の方法を中心にして以下に述べる.

我が地域

島根を知っちょられますか?/埼玉を知ってるだんべ?

著者: 加藤章江 ,   塚田勇

ページ範囲:P.782 - P.783

 中国山脈にいだかれ日本海に臨む東西に細長い島根県は古代文化発祥の地として知られ,ロマンに満ちた神話伝説が今でも数多く残されています.夕映えが美しい“宍道湖”,10月には日本中の神様が集まり人々の幸せと縁結びについて話し合われるという“出雲大社”(皆さんの所では10月は神無月(かんなづき)でしょうが,当地では10月を神在月(かみありづき)というのです),木造建築では世界最大のドームを有する“出雲市”,世界最大の砂時計と鳴り砂で有名な“琴ケ浜”,日本海にうかぶ雄大な景色の“隠岐島”,文豪森鷗外の生まれた小京都“津和野”,めまぐるしい現代生活の中で人は大なり小なり疲れ,時として自分を見失いがちになります.そんな人々が人間性を回復し新たな活力をもって生きていくために,もし豊かな自然,深い歴史性,温かい人情を必要とするならば,島根は正にその条件をすべて満たしてくれるでしょう,島根への旅立ちは人間回復への門出ともなることうけあいです.

あんてな

全国自立生活センター協議会(JIL)

著者: 斎藤明子

ページ範囲:P.784 - P.784

 1.アメリカの自立生活センターとヒューマンケア協会

 1972年カリフォルニア州バークレー市に世界で初めての自立生活センターが設立されて以来20年たった.この間アメリカではリハビリテーション法が修正され自立生活センターに連邦の補助金が支給されるようになり,一昨年には包括的な障害者差別禁止法案であるADA法が成立した.今や全米には約400か所の自立生活センターがあり,障害者の地域福祉は伝統的なリハセンターから自立生活センターに移りつつあると言っても過言ではない.

雑誌レビュー

“Physical Therapy”(1991年版)まとめ

著者: 網本和

ページ範囲:P.785 - P.788

 Ⅰ.初めに

 ここ数か月というもの,筆者はAPTAの機関誌である‘Physical Therapy(1991)’という森の中で彷徨(さまよ)い,ようやくその出口に辿(たど)りついたところである.

 途中幾つか見付けた‘論文’という名の隠れ家は一見甘い‘お菓子の家’のようでありながら,少しばかりの苦みを伴っていた.

 この‘苦み’は,われわれ読む者に対して,精神の作業を要求するという意味であり,さらに次の局面を知りたいという思いに憑(つ)かれるもので,優劣ではなく言わば注意の勾配とでも言えよう.

 そこでこのレビューでは,筆者の個人的な関心を喚起した論文について焦点を当ててゆきたい.なぜならどんなに公平にみえるレビューであっても,取り上げる個人の立脚点によってその普遍性はあらかじめ失われざるをえないからである.

 さて本文に入ろう.

資料

第27回理学療法士・作業療法士国家試験問題(1992年度) 模範解答と解説・Ⅴ―共通問題(2)

著者: 和島英明 ,   山田拓実 ,   高木昭輝 ,   黒川幸雄 ,   佐竹勝 ,   五十嵐市世 ,   岩瀬義昭 ,   種井慶子

ページ範囲:P.789 - P.792

報告

片麻痺患者の立位重心動揺に関する問題点

著者: 江西一成 ,   緒方甫

ページ範囲:P.793 - P.796

 Ⅰ.初めに

 脳卒中片麻痺患者のADL自立にとって歩行能力獲得の重要性は周知のことであり,そこに影響する因子として年齢,麻痺程度などに加え姿勢制御やバランスの問題も挙げられている1).近年,脳卒中片麻痺患者の立位バランス能力について,床反力計を用いた報告が多数為されている.これは床反力計上の前後・左右方向の各分力より得られる圧中心の移動軌跡が重心動揺に近似していることから,この移動距離を重心動揺の指標として応用したものである.

 そこでは健常者との相違や麻痺程度,歩行能力との関連などが述べられているが,必ずしも一定の傾向を得ているとは言い難い.また,ある意味では比較しようとする事象を床反力計から得た値を介して再確認したにとどまるものが多く,理学療法遂行の上での臨床的意義にまで言及したものは少ない.その原因としては被験者の妥当性のある層別化2)を行なった上で為された検討が少ないこと,さらに床反力計による圧中心移動距離には本来の重心動揺に加え計測物の質量と動揺の加速度の影響が含まれ3),被験者の体格や男女の区分などを考慮した上での検討が必要だが,それが為されてないことなどが考えられる.

 今回,立位バランス能力の検討にしばしば対象とされる片麻痺患者群のうち,機能回復や歩行能力の習熟の問題,また基本的な体格の相違などの影響を少なくした患者群を用いて,そこから得られる立位重心動揺の示す意義,および歩行速度との関係について検討した.さらにその結果からこのような検討の在るべき方向性,特に臨床的意義を得るという点について考察を行なったので報告する.

クリニカルヒント

手作りの“リハビリタイムズ”

著者: 渡辺京子

ページ範囲:P.797 - P.799

 1.初めに

 1992年の夏,私はアメリカ・カナダ訪問の機会を得た.その折,感じたアメリカのリハビリテーション業界の変化と,人間的な生活への思いとを記して,今私たちが行なっているコミュニケーションを図る新聞作りについてお話したい.

学会印象記 第26回日本作業療法学会

七つの主演題からおおいに学んだ

著者: 武富由雄

ページ範囲:P.800 - P.801

 第26回日本作業療法学会が1992年6月16日,17日,18日の3日間,辰巳三代子学会長(大阪府立身体障害者福祉センター)の下,大阪国際交流センターで約1300人が参集して開催された.主題7(会長講演,招待講演,特別講演,シンポジウム,フォーラム,指定演題,教育セミナー),一般演題259(精神44,老人33,CVA31,基礎27,小児26,身障一般21,高次機能20,ADL19,地域13,脊損10,教育6,切断3,ポスター6)の発表が7会場に分かれて行なわれた.

 本学会のテーマは「豊かに生きるために―生活・遊び・ゆとり―」であった.「あんじょ暮らしてはりまつか」と障害者や作業療法士自身に向けて,相手を気づかう「生活」への問いにスポットが当てられた.

PTのひろば

高齢者のゴール設定

著者: 白川康彦

ページ範囲:P.792 - P.792

 私は昨年までの12年間,自治体病院に勤務していました.その間リハビリテーション専門医である専任医師の指導の下,リウマチ(主に通院加療の方)や脳卒中の患者さんの理学療法に携わりながら,一般病院での理学療法の在りかたを考えてきました.日本理学療法士協会の会員名薄(1991年9月現在)によりますと,一般病院と総合病院の勤務者が全体の約7割を占めています.こうした第一線での理学療法の充実が急結であると認識しております.

 退職を機に病院での業務を振り返りますと,高齢者に対するゴール設定が不適切ではなかったかと思います.周知の通り,加齢に伴い運動機能も機能的能力も低下していきます.高齢者を計測した数値(角度,筋力,動作の遂行時間など)を若年者のそれと比較すればまちがい無く異常ということになるでしょう.

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文献抄録

ページ範囲:P.802 - P.803

編集後記

著者: 上田敏

ページ範囲:P.806 - P.806

 今年の秋10月は秋雨前線が停滞して曇りや雨の秋らしくないはっきりしない天気が続いている.一方永田町の方も何前線か知らないが,飛脚便がらみのトラブルが停滞してはっきりしない模様である.しかし間もなく11月,どちらもカラリと晴れ上がることを期待したい.

 ところでお送りする11月号であるが,今号では「ADLとQOL」を特集した.ADLはリハビリテーション医学とともに古い問題であるが,理学療法士養成校での教育や教科書でその重要性が語られるほどには現場では重視されてこなかったのが実情ではあるまいか.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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