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片麻痺患者の立位重心動揺に関する問題点
著者: 江西一成1 緒方甫2
所属機関: 1産業医科大学病院リハビリテーション部 2産業医科大学リハビリテーション医学教室
ページ範囲:P.793 - P.796
文献購入ページに移動脳卒中片麻痺患者のADL自立にとって歩行能力獲得の重要性は周知のことであり,そこに影響する因子として年齢,麻痺程度などに加え姿勢制御やバランスの問題も挙げられている1).近年,脳卒中片麻痺患者の立位バランス能力について,床反力計を用いた報告が多数為されている.これは床反力計上の前後・左右方向の各分力より得られる圧中心の移動軌跡が重心動揺に近似していることから,この移動距離を重心動揺の指標として応用したものである.
そこでは健常者との相違や麻痺程度,歩行能力との関連などが述べられているが,必ずしも一定の傾向を得ているとは言い難い.また,ある意味では比較しようとする事象を床反力計から得た値を介して再確認したにとどまるものが多く,理学療法遂行の上での臨床的意義にまで言及したものは少ない.その原因としては被験者の妥当性のある層別化2)を行なった上で為された検討が少ないこと,さらに床反力計による圧中心移動距離には本来の重心動揺に加え計測物の質量と動揺の加速度の影響が含まれ3),被験者の体格や男女の区分などを考慮した上での検討が必要だが,それが為されてないことなどが考えられる.
今回,立位バランス能力の検討にしばしば対象とされる片麻痺患者群のうち,機能回復や歩行能力の習熟の問題,また基本的な体格の相違などの影響を少なくした患者群を用いて,そこから得られる立位重心動揺の示す意義,および歩行速度との関係について検討した.さらにその結果からこのような検討の在るべき方向性,特に臨床的意義を得るという点について考察を行なったので報告する.
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