プログレス
脳機能の画像化の進歩
著者:
浦上信也1
住江寛俊1
久留裕1
所属機関:
1順天堂大学医学部放射線科
ページ範囲:P.335 - P.335
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脳機能の画像化の進歩を語るとき,もっとも特記すべき出来事として,1970年代におけるCTの実用化が挙げられる.それ以前では1962年にLassen & Ingvarらが放射性稀ガスの体外測定により局所脳血流の測定を実施し,その他にも各種RIによるStatic Imageの作製が行なわれていたが,空間分解能において,Brodmann地図上における言語野や運動野の同定などは,厳密な意味では不可能であった.しかし一方で,これらのRI技術は,解剖学的情報であるCTとは異なり脳の機能的側面を表わすものとされ,1980年代に入りPET(ポジトロンCT),SPECTとして発展していった.また画像処理や演算速度の向上は近年におけるLSIを初めとするコンピューター基本技術の進歩に負うことが少なくない.さらに,これらの技術は1980年代後半におけるMRI(核磁気共鳴画像)の開発となって,別種の画像情報を提供することになった.
まず,先駆的役割を担ったCTであるが,我が国内ではここ15年のうちにきわめて高い普及率を示した.そして,その基本原理は脳組織間のX線吸収差を計測し水平断として画像化し再構成するのであり,良好な分解能によって細かい解剖学的脳構造を把握することが可能である.このことは一方で,完全に梗塞に陥った脳実質や脳出血の同定が容易で,言語野の破壊の程度より言語療法の効果予見とか検査時の臨床症状の説明には有用性を発揮するが,慢性期においては,画像が大きく変化しないために,脳血管障害後のリハビリテーション効果の判定には十分に利用できない.