文献詳細
文献概要
プログレス
癌免疫療法の進歩・1 癌に対する特異的免疫療法の開発
著者: 藤本重義1
所属機関: 1高知医科大学免疫学教室
ページ範囲:P.469 - P.469
文献購入ページに移動 癌に対する治療は,現在に至るまで第一義的には外科療法である.そして再発癌に対しては,化学療法や放射線療法がその主流を成してきた.一方,癌に対する免疫療法の概念は20世紀初頭にはすでに存在し,種々の免疫療法が試みられてきたにもかかわらず,依然として前述の治療法の脇役に甘んじてきた.癌に対する免疫療法が癌治療の主流になっていないのは,癌に対する免疫の仕組の解析が十分にされていなかったことにある.
ヒトの癌は,動物の実験腫瘍と異なり,その多くは原因不明の自然発生腫瘍であると考えられ,長い年月を経て腫瘍を形成してくることと,種々の免疫療法の施行の結果が思わしくなかったことなどから,欧米の学者の多くは,ヒトの癌は,免疫の標的となる癌抗原が表現されていないと考えるに至り,自己由来の癌に対する免疫応答の解析を十分に行なわなかったことにもよると考えられる.これらの歴史的経過から,癌の免疫療法が現在に至るまで癌の治療の主流にはなりえなかったと言ってもよい.したがって,現在なお主に癌の免疫療法と称して行なわれているものの多くは,いわゆる非特異的免疫療法と言われる生物反応修飾剤(biological response modifier:BRM)を用いた療法である.この療法の背後にある思想は,BRMを担癌患者に投与することによって生体の免疫系全般を活性化することで,化学療法や放射線療法による重篤な副作用である免疫機構の深刻な障害を少しでも軽減させるためのものと考えられているのである.
ヒトの癌は,動物の実験腫瘍と異なり,その多くは原因不明の自然発生腫瘍であると考えられ,長い年月を経て腫瘍を形成してくることと,種々の免疫療法の施行の結果が思わしくなかったことなどから,欧米の学者の多くは,ヒトの癌は,免疫の標的となる癌抗原が表現されていないと考えるに至り,自己由来の癌に対する免疫応答の解析を十分に行なわなかったことにもよると考えられる.これらの歴史的経過から,癌の免疫療法が現在に至るまで癌の治療の主流にはなりえなかったと言ってもよい.したがって,現在なお主に癌の免疫療法と称して行なわれているものの多くは,いわゆる非特異的免疫療法と言われる生物反応修飾剤(biological response modifier:BRM)を用いた療法である.この療法の背後にある思想は,BRMを担癌患者に投与することによって生体の免疫系全般を活性化することで,化学療法や放射線療法による重篤な副作用である免疫機構の深刻な障害を少しでも軽減させるためのものと考えられているのである.
掲載誌情報