重度重複障害児の訪問指導における理学療法士の役割と課題
著者:
山本和儀
,
伊藤晴人
,
野村典子
,
林伸子
,
山本純子
,
森山雅志
,
吉岡善隆
,
山本正弘
ページ範囲:P.379 - P.386
1初めに
重度重複障害児の訪問指導においては,その対象となる子どものもつ「障害」の捉え方とアプローチの方法が施設や病院でのそれと大きく異なるということを,われわれは次のように整理している.
いろいろな意味で用いられていた「障害」ということばの意味を明らかにするために,インペアメント(機能・形態障害),ディスアビリティー(能力障害),ハンディキャツプ(社会的不利)とWHOが分類したことは,よく知られている.このハンディキャップ,ディスアビリティー,インペアメントの三者は密接に関連し合っており,ハンディキャップの解消のために食事などのADL障害など(ディスアビリティー)の維持・改善や廃用性症候群予防〔(二次障害を機能障害として捉え予防する)(インペアメント)〕へのアプローチを行なうことである.
訪問指導は,上に述べた三つの分類の中で図1に示したようにその基本とするものが,ハンディキャップを解消していくことであるという捉え方をしている.ハンディキャップを解消していくということはディスアビリティーが有ったとしてもそれをハンディキャップにさせないということである.つまり障害児が自分の望む生活(人生)を選びとっていくことであり(決定できない場合は家族が),周囲はそのことを尊重し障害児のディスアビリティーをあらゆる方法で軽滅しハンディキャップを消去していくことである.言い換えればノーマライゼーションの考え方を具現化することである.具体的には障害児とその家族が自由に外出し,人と交流できる地域環境づくりや,障害児の生活を地域社会全体で支援していくという住民意識を育てていくようなアプローチをリハビリテーションチームの一員としてわれわれも担っていくことである.