理学療法ジャーナル27巻7号

1993年07月発行

入門講座 診療記録・1

理学療法診療記録

著者： 半田健壽¹

所属機関： ¹東北大学医学部附属病院鳴子分院リハビリテーション部

ページ範囲：P.469 - P.475

　Ⅰ初めに

　理学療法士が社会的に責務を果たしている証として，自らの活動を記録することはたいせつである．その記録には出版物を通じた学術活動や協会活動の記録もあるが，絶対量からして診療記録が筆頭に挙げられる．しかし，診療記録は記録者にとって「めんどくさい」，「こんなものいらない」，「読んでもらえない」¹⁾存在にもなりかねないのは，何もコ・メディカルの先輩に当たる看護の世界だけの問題ではない．理学療法白書²⁾では記録などの実態を報告しているが，1週間に20回以上の診療記録を行なったものはわずか26.4％に過ぎず，これは，仮りに10名の症例を担当している理学療法士の多くが1週間に1症例に付き2回以上は記録していないことを示す．また，記録・報告書作成時間も1週間に3時間以上費やすのは4分の1にすぎない．

　専門職の水準を示す理学療法教育のカリキュラムにも，診療記録について明白な取り上げられ方はされていない^2，3)．

　絶対的な供給不足のため「金の卵」的存在であった理学療法士も，これからは社会的に直価が問われる．その証明書たる診療記録を，この際根本から考えてみることも必要ではないだろうか．