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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル27巻7号

1993年07月発行

文献概要

印象に残った症例

先天性多発性関節拘縮症児の理学療法の経験

著者: 宮前信彦1

所属機関: 1千葉県千葉リハビリテーションセンター

ページ範囲:P.495 - P.498

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 Ⅰ.初めに

 筆者は脳性麻痺児を主とする小児中枢性疾患を対象に理学療法アプローチを行なってきた.同時に多くの印象に残る整形外科疾患などを経験する機会を得た.

 今回,特に脳性麻痺児との発達の差異という点で印象深かった一症例を経験したので報告する.

 先天性多発性関節拘縮症(Arthrogryposis multiplex congenita.以下,AMCと略.)は1841年Ottoによって報告された.出生時より原因不明の多発性関節拘縮を呈する症候群である.病理学的所見に基づき①神経原性と②筋原性との二つの病型に区別される.治療は,高度な拘縮に対して可動域の拡大を図るのみでなく,早期から家族を含めた専門家とのチームワークの中で移動能力,ADL動作の獲得,そして就学準備など,長期的な展望に立ち社会への自立に向けて,disability,handicappedへの総合的ハビリテーション・アプローチを,行なっていくことがたいせつである.

 君塚は,「本症は機能的予後について悲観的になりやすいが,早期よりの積極的な治療により徐々にではあるが向上が得られ,多くは独歩し普通学級に就学し社会的にも自立してゆける.それだけに長期にわたっての総合的な対応が欠かせられない.」と述べている.新田らは理学療法について「歩行を獲得するためには,体幹の安定と運動性を得るとともに,適切な時期に手術を含め,下肢のアラインメントを整えることが大切である.」と述べている.

 筆者が経験した症例は,上肢,下肢の障害によって,体幹の安定がありながらも,立位歩行という座位レベル以上の機能獲得に至らなかった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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