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特集 整形外科疾患と理学療法
下肢延長術の理学療法―下腿延長を中心に
著者: 髙橋雅人1 望月圭一1 尾﨑心正1 村島隆太郎1 草場郁夫1 黒川髙秀1
所属機関: 1東京大学医学部附属病院整形外科
ページ範囲:P.531 - P.537
文献購入ページに移動創外固定は今までの骨接合術の基本を根底から一新し,内固定の限界を大きく飛び越えるものである.Ilizarov1)によって提唱されたDistraction osteogenesisの概念は骨形成を待つのではなく,外部からの働きかけにより積極的に骨形成を促し管理するものである.
骨折治療から発展したこの創外固定法は,社会的不利を有する軟骨無形成症など小人症の低身長者や,脚長不等者などに脚延長術として応用され,現在では20cm以上の延長までも可能になっている(図1).
この脚延長術の成否は合併症対策にかかっていると言っても過言ではない.
延長術の主な合併症は
①ピン刺入部の感染
②隣接関節拘縮・可動域制限
③隣接関節の脱臼・亜脱臼
④神経・血管損傷
⑤コンパートメント症候群
⑥延長中の仮骨早期癒合
⑦延長中の変形
⑧延長部の癒合不全・骨折
⑨ピン・創外固定器の破損
⑩ピンのルースニング
⑪非荷重による骨萎縮などである2).
中でも延長量を最終的に制限する因子は仮骨形成能ではなく,軟部組織の過緊張である3)とも言われ,術後の理学療法の可能性が注目されている.
下腿延長では,膝関節伸展制限,足関節内反尖足,足部凹足変形,大腿延長では膝関節屈曲制限,股関節伸展制限が起こりやすく,延長量が多い場合はそれらの程度も重度である.
今回,脚延長術の基礎と,延長量が多いため軟部組織の相対的短縮が強く,関節可動域(以下,ROMと略.)制限の出現しやすい四肢短縮型小人症に対する下腿延長術の理学療法を中心に,理学療法プログラムとそれを進める上での留意点とについて述べる.
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