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特集 高次脳機能の最近の話題
半側空間無視の機序
著者: 柏木あさ子1
所属機関: 1協立温泉病院言語治療士
ページ範囲:P.591 - P.597
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半側空間無視(unilateral spatial neglect,Hemispatial neglect;USN)は,損傷された大脳半球の反対側の空間に出現する反応の低下で,感覚障害や運動障害では説明されない.例えば右半球損傷患者に観察される左側に気付かないという現象は,左同名性半盲の患者にもある.しかし半盲の無い患者にもこの現象は起こる.また半盲患者であれば,半盲でない側に刺激が与えられれば問題は解決するのに対し,左USNの患者では,右視野に刺激が与えられてもやはりその右側のほうに反応が偏ってしまう.USNは半盲とは別の現象である.またこのような一側の空間に対する反応の低下は,視覚刺激のみでなく触覚刺激や聴覚刺激などに対してもみられることが知られている.
USNにおける一側の空間に対する反応の低下には,反応が弱いだけでなく,それに気付きにくいという特徴がある.軽度であれば,気付いていないことを指摘されてすぐに修正できる患者もあるが,重篤な場合は,左側に気付いていないことを認識するのはかなり難しい.
また一般にUSNとして目だつのは右半球損傷患者にみられる左USNであるが,左半球損傷患者において右USNが出現することも知られている.重篤な失語症患者においてしばしば検出される1).しかし,右半球損傷患者における左USNのほうが,左半球損傷患者における右USNより高頻度に出現し,しかも重篤な場合が多い.空間の一側に気付かないのはどういう水準の現象であるのかという問題とともに,左右半球損傷患者の間に何故こうした非対称性が存在するのかという問題もUSNを理解する上で重要である.
半側空間無視(unilateral spatial neglect,Hemispatial neglect;USN)は,損傷された大脳半球の反対側の空間に出現する反応の低下で,感覚障害や運動障害では説明されない.例えば右半球損傷患者に観察される左側に気付かないという現象は,左同名性半盲の患者にもある.しかし半盲の無い患者にもこの現象は起こる.また半盲患者であれば,半盲でない側に刺激が与えられれば問題は解決するのに対し,左USNの患者では,右視野に刺激が与えられてもやはりその右側のほうに反応が偏ってしまう.USNは半盲とは別の現象である.またこのような一側の空間に対する反応の低下は,視覚刺激のみでなく触覚刺激や聴覚刺激などに対してもみられることが知られている.
USNにおける一側の空間に対する反応の低下には,反応が弱いだけでなく,それに気付きにくいという特徴がある.軽度であれば,気付いていないことを指摘されてすぐに修正できる患者もあるが,重篤な場合は,左側に気付いていないことを認識するのはかなり難しい.
また一般にUSNとして目だつのは右半球損傷患者にみられる左USNであるが,左半球損傷患者において右USNが出現することも知られている.重篤な失語症患者においてしばしば検出される1).しかし,右半球損傷患者における左USNのほうが,左半球損傷患者における右USNより高頻度に出現し,しかも重篤な場合が多い.空間の一側に気付かないのはどういう水準の現象であるのかという問題とともに,左右半球損傷患者の間に何故こうした非対称性が存在するのかという問題もUSNを理解する上で重要である.
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