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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル27巻9号

1993年09月発行

文献概要

特集 高次脳機能の最近の話題

前頭葉損傷における運動障害

著者: 森悦朗12

所属機関: 1兵庫県立高齢者脳機能研究センター研究部臨床研究科 2兵庫県立高齢者脳機能研究センター付属病院神経内科

ページ範囲:P.606 - P.611

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 1前頭葉損傷

 前頭葉は中心溝より前の大脳部分を言い,ヒトでは最も大きな頭葉である.頭葉前頭皮質は細胞構築から通常次の三つの部分,すなわち,1)運動-運動前野(Broadmannの4野,補足運動野を含む6野,および44野),2)後方基底内側部(傍辺縁領域,すなわち前部帯状回24野,嗅覚野25野,および眼窩脳後方部12野),3)前頭前野(9,10,11,12,45,46,47野)に分けられる(図1)1)

 前頭葉,特に運動-運動前野は運動機能と関連深く,その損傷では低次から高次の運動障害が生じる(表1).例えば,運動野の損傷では運動麻痺が生じ,運動前野を含む損傷では高次の運動障害が生じてくる.前頭前野や基底部だけの損傷では目だった運動や行為障害は観察されないが,情動,判断を要する行動など精神面での変化が現れてくることがある.行為,すなわち意味をもった運動あるいは意志が制御している運動はもちろん高次の運動に属するが,これが崩壊している状態である失行は行為障害の中核であり,また行為の遂行の抑制に異常を来していると考えられる障害も近年注目されている2).運動の開始・維持・抑制の障害も高次の運動障害に含まれ,これらは要素的な感覚運動障害あるいは精神症状や他の神経心理症伏によって説明できない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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