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特集 脊髄損傷者の社会参加とQOLの向上
脊髄損傷者におけるQOL向上のためのアプローチ
著者: 酒井ひとみ1
所属機関: 1YMCA米子医療福祉専門学校作業療法士科
ページ範囲:P.674 - P.679
文献購入ページに移動 Ⅰ.初めに
ここ数年の間(特に我が国において)に,リハビリテーション医学界でもQOLという言葉が有形無形に飛び交っている.
しかし,そもそもリハビリテーションという概念は,QOLの落とし子とも言えるものであり1),いまさら,何故QOLなのかと疑問をもってしまうのは私だけだろうか.
QOLという言葉の起源は明確ではないが,1964年,当時のアメリカの大統領であったLyndon B Johnsonが演説の中で用いたのを受けて,社会的な政策や保健医療でも多用されるようになった.しかし,各分野で,QOLの定義や指針・評価法などの研究はされているが,研究者間でのQOL概念の正確でコンセンサスの得られる定義および意味内容は未だみられていない2).これらの原因として考えられるのは,QOLを総括的に観ていないこと3),同じ疾患であってもQOLは相対的・個別的なものであること4),がQOLの規定を困難にしていると言えよう.
借越ながら私なりのQOLの概念を整理すると,少なくとも保健医療の分野においては,さまざまなQOLの考え方を包括するものとして,上田3)のQOLの構造は理解しやすい.全体としてのQOLは,大きく主観的QOLと客観的QOLとに分けられ,客観的QOLはさらに①生物レベルのQOL(生命の質),②個人レベルのQOL(生活の質),③社会レベルのQOL(人生の質)の三つに分けられる.この①,②,③は相互に規定し合っている.次に,QOLの概念に当たるものとして,砂原1)は,自立生活(IL)の理念と結び付けている.この特徴は,重度障害者に焦点を合わせること,障害者のself determinationを重んじること,self careより社会における役割行動を重んじること,精神的依存からの脱却を図ること,個別的・相対的であることである.さらに,障害者のQOLを量的に健常者の何十%として捉えるだけではなく,自ら進んで健常者の場合とは質的に異なったQOLを発見するための努力がリハビリテーション過程であると述べており,既成概念の枠に無理に当てはめない考え方に共感できる.
本稿では,先に挙げたQOLの構造と概念に照らし合わせながら実践してきた脊髄損傷者のQOL向上に対するアプローチを整理してみる.
ここ数年の間(特に我が国において)に,リハビリテーション医学界でもQOLという言葉が有形無形に飛び交っている.
しかし,そもそもリハビリテーションという概念は,QOLの落とし子とも言えるものであり1),いまさら,何故QOLなのかと疑問をもってしまうのは私だけだろうか.
QOLという言葉の起源は明確ではないが,1964年,当時のアメリカの大統領であったLyndon B Johnsonが演説の中で用いたのを受けて,社会的な政策や保健医療でも多用されるようになった.しかし,各分野で,QOLの定義や指針・評価法などの研究はされているが,研究者間でのQOL概念の正確でコンセンサスの得られる定義および意味内容は未だみられていない2).これらの原因として考えられるのは,QOLを総括的に観ていないこと3),同じ疾患であってもQOLは相対的・個別的なものであること4),がQOLの規定を困難にしていると言えよう.
借越ながら私なりのQOLの概念を整理すると,少なくとも保健医療の分野においては,さまざまなQOLの考え方を包括するものとして,上田3)のQOLの構造は理解しやすい.全体としてのQOLは,大きく主観的QOLと客観的QOLとに分けられ,客観的QOLはさらに①生物レベルのQOL(生命の質),②個人レベルのQOL(生活の質),③社会レベルのQOL(人生の質)の三つに分けられる.この①,②,③は相互に規定し合っている.次に,QOLの概念に当たるものとして,砂原1)は,自立生活(IL)の理念と結び付けている.この特徴は,重度障害者に焦点を合わせること,障害者のself determinationを重んじること,self careより社会における役割行動を重んじること,精神的依存からの脱却を図ること,個別的・相対的であることである.さらに,障害者のQOLを量的に健常者の何十%として捉えるだけではなく,自ら進んで健常者の場合とは質的に異なったQOLを発見するための努力がリハビリテーション過程であると述べており,既成概念の枠に無理に当てはめない考え方に共感できる.
本稿では,先に挙げたQOLの構造と概念に照らし合わせながら実践してきた脊髄損傷者のQOL向上に対するアプローチを整理してみる.
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