icon fsr

文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル28巻10号

1994年10月発行

文献概要

理学療法草創期の証言

頸髄損傷者小田急線でデパートへ買い物に

著者: 新藤信子

所属機関:

ページ範囲:P.702 - P.702

文献購入ページに移動
 1967年11月,私が1年4か月の英国留学から帰国したころの国立箱根療養所の頸髄損傷の患者はベッドに寝たきりで,辛うじて呼吸をすることと口に入れられた柔らかい食物を飲み下すのが精一杯であった.胸・腰髄損傷の下半身麻痺者でも,褥瘡があって何年も寝たきりの患者や,20年以上も入院を続けている患者も多く,車いすに起きている患者は数えるほどだった.(当時,英国の頸髄損傷者は,自分で車いすを移動し,自動車を運転して職場に行き,健康人と同じ職場で働いている時代だというのに…….)

 理学療法士としての私は,医局員を除いた他の職員と患者から,“アメリカ帰りの女”・“イギリスかぶれの女”と冷たい目でみられ,ことごとく反発され,圧迫された.けれども決してくじけはしなかった.療養所で一人の目の不自由な理学療法助手と私とでまずやったことは,頸髄損傷者をベッドから起こすことだった.それをみた療養所の職員は,看護婦も含めて,私が患者を殺すだろうと期待していたほどだった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら