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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル28巻3号

1994年03月発行

雑誌目次

特集 理学療法業務の見直し

組織のリーダーシップ

著者: 狩俣正雄

ページ範囲:P.148 - P.153

 Ⅰ.初めに

 いつの時代いかなる社会においても有効なリーダーシップが求められてきた.特に,社会の変動期,あるいは対立や葛藤の激しいときには強力なリーダーシップが発揮され,問題の解決が図られることを求めてきた.このようなことからリーダーシップの研究は社会科学の多くの分野で議論されており,それに関する多くの理論やモデルも表されている.これは,社会や組織においてリーダーがどのようなリーダーシップをとるかということがその組織の将来の方向を規定し,ひいては社会や組織の成否を左右すると考えられているからである.リーダーシップの善し悪しは組織の存続発展を規定する最も重要な要因と考えられているのである.そこで組織において有効なリーダー,あるいは効果的なリーダーシップが求められているのである.本稿では組織を有効にするリーダーシップとは何かという問題について考察することにしよう.

管理運営業務の見直し

著者: 松田淳子 ,   吉尾雅春

ページ範囲:P.154 - P.159

 Ⅰ.初めに

 理学療法士の日常業務は,個人管理に任されている部分が多い.患者治療もその一つである.しかし,その成果は組織の評価につながり,逆に組織の評価が個人の評価に影響を及ぼすこともある.

 本稿では,個人管理に任されることの多い日常業務を具体的に取り上げ,見直しを行なうとともに,患者,理学療法士を取り巻く環境を通して,理学療法士個人,組織の活性化について考えてみたい.

患者・家族と理学療法士との関わりをめぐって

著者: 武田秀和 ,   岸田智晴 ,   小松みゆき ,   黒澤保壽 ,   前田秀博 ,   山崎誠

ページ範囲:P.160 - P.164

 Ⅰ.初めに

 患者と治療者(以下,理学療法士)との関わりは理学療法の治療効果をあげ,治療目標に到達する上で最もたいせつな要素である.日々の臨床場面で結ばれる患者と理学療法士との関わりは,患者や患者を取り巻く家族,あるいは担当した理学療法士のパーソナリティーなどの要因により左右される.例えば治療に対して患者が意欲的であったり,家族が協力的である場合は良好な関わりが展開する.しかし患者や家族のゴールと理学療法士のゴールとが合わなかったり,あるいは理学療法士が患者側に対して抱く感情の中で,患者や家族に対して身構えたり,家族の批判に感情的になったりする「逆転移」1)が生じた場合は,その関わりが困難になることがある.またこのような患者および家族と理学療法士との関わりは,患者の訓練,指導および評価などの理学療法業務を進めていく上でも重要な問題である2)

 そこで,本報は理学療法業務を患者および家族と理学療法士との関わりという観点から見直してみたい.以下に脳損傷による重症な意識障害が遷延し,さらに四肢麻痺を呈している患者を対象に,その家族と理学療法士との関わりを通して,そこに生じた問題点とその解決策を述べてみたい.

外来患者に対する理学療法業務の見直し

著者: 川島康子 ,   高取利子 ,   吉原裕美子 ,   永原久栄

ページ範囲:P.165 - P.170

 Ⅰ.初めに

 入院リハビリテーションから在宅生活に移行し,それが定着するまでは,患者・家族にとってリハビリテーション医療監視下での援助が必要である.退院後,本人・家族は病気や障害に対する不安や生活技術面において,とまどいの真っ只中にいる.入院中に想定した退院後の生活は,まだイメージのレベルであり,実際に生活していく中でさまざまな問題が生じてくるかもしれない.障害をもった新しい生活が始まり戸惑うことが多いだろう.一日一日をどのように過ごしているのか,日常生活動作(以下,ADLと略.)をどのような方法で行なっているのか,家屋改造など,確認していく必要がある.退院後,在宅生活が軌道にのれば良いが,そうでない例も数多くある.

 一例を紹介する.脳梗塞左片麻痺,60歳,男性,高次脳機能障害あり.妻と息子の三人家族,日中は独居.屋内杖歩行自立で退院したが,徐々に機能が低下し,臥床がちの生活となってしまった.退院6か月後に,間歇入院で再度訓練・指導を行ない,その後外来通院でのフォローアップとした.

 この症例では,患者・家族に退院後の生活設定の指導が不十分で,また住居が遠隔地でもあり,外来頻度が減少し,外来で適切なフォローアップができず,その間に臥床がちの生活となった反省すべき一例である.退院後,退院時指導の確認・修正・再指導,外来フォローアップのたいせつさを痛感した.

 入院理学療法は,患者が生活に戻る前段階にすぎず,ほんとうの生活は退院後から始まるものであり,在宅生活をフォローアップしていく外来理学療法の担う役割は重要で,退院後の生活を確認し,実生活へ目を向けた目標をもち,外来理学療法を行なう必要がある.

 その意味において,当院における外来患者に対する理学療法業務の見直しを検討してみる.

 当院は東京都多摩西部の中心地に位置し,救急医療から往診までの地域医療を行なっている中規模総合病院である.リハビリテーション部門は理学療法・作業療法・言語療法があり,入院・外来(患者会を含む.)・訪問の機能を有する.

老人保健施設における理学療法業務の見直し

著者: 大内仁志 ,   福田恒夫

ページ範囲:P.171 - P.177

 Ⅰ.初めに

 老人保健施設の制度は1988年4月1日に実施されてより,6年が経過しようとしている.全国各地に新しい老人保健施設が設立され,来るべき西暦2000年にあっては65歳以上の高齢者は4人に1人とも言われる高齢化社会に対応しようとする,老人保健施設の社会的ニーズは高まる一方である.当施設が位置する西脇市(人口約4万人)ににあっては,1990年度の調査1)によると65歳以上の高齢者は5462人で,このうち,在宅の寝たきり老人が190人,在宅の痴呆性老人が276人,在宅で日常生活上の介護が必要な痴呆性老人が41人,在宅の虚弱老人が210人と発表されている.

 今回,「老人保健施設における理学療法業務内容の見直し」ということで,これまで一般病院と老人保健施設の業務の両方を経験してきた中で,医療と福祉との両側面をもち合わせている老人保健施設で,われわれはどのように訓練を考えて進めていくべきか,見直すべきポイントはどこなのか,記録ならびに訓練の実例,文献的考察を交えて報告する.

とびら

生涯学習

著者: 関勝男

ページ範囲:P.147 - P.147

 社団法人日本理学療法士協会は,卒後教育活動の一環として生涯学習をシステム化しようとしております.生涯学習基礎プログラムの中に新人教育プログラムを施行し,引き続いて理学療法専門部門領域に連動させながら発展的な方策を指向しております.

 主たる目的は,21世紀に向けて更なる自己研鑽を行ない,いっそう理学療法水準を向上させるとともに広く一般社会に理学療法を正しく認知させ積極的に社会のニーズに対応する社会的責任をも果たすこととしております.その具体的方法は,協会本部で新人教育プログラム・マニュアルを作成し,これを基に各士会単位で逐次実施することを奨励し3年間で36時間の課題を終了した者に修了証書を渡し,初めて理学療法専門領域部門への登録申請が可能となるとしております.

学会印象記

第48回日本体力医学会/第5回アジア理学療法学会

著者: 山崎裕司 ,   神戸晃男

ページ範囲:P.178 - P.178

 第48回日本体力医学会大会が1993年9月15~17日の3日間にわたって,徳島市郷土文化会館において開催された.

 特別なシンボルテーマは無かったが,基調講演1題,記念講演2題,六つのシンポジウム,および,507の一般演題という盛大な学会であった.以下に私の印象に残った内容について述べてみたい.

入門講座 介護方法論・3

在宅障害者に対する移乗・移動動作の介助方法

著者: 松葉貴司 ,   山崎哲司

ページ範囲:P.179 - P.184

 Ⅰ.初めに

 在宅生活を余儀無くされている高齢者の多くは,脳卒中などによる重度の障害を有している.横浜市における在宅リハビリテーションサービスは,対象者の6割が65歳以上の高齢者で,また5割以上が発症後数年を経過した脳卒中患者であり,日常生活における「起居」や「移乗」,「移動」動作の際に,何らかの介助が必要かあるいは全介助のものが約2/3を占めている.したがって,対象者自身に対する動作指導はもとより,介護者に対する介助方法の指導も,われわれ理学療法士が行なう在宅リハビリテーションサービスの一つである.

 今日では重度機能障害に加え,高齢世帯の増加が問題となっており,これらのリハビリテーションサービスが,「物理的な介護力の不足」を補いえない場面にも,しばしば遭遇する.そこで,介護用福祉機器や家屋改造といった環境整備を薦めることも多い.また一見して,動作指導や介助法指導が必要と判断した場合であっても,対象者本人や介護者の障害に対する理解が不十分であったり,夫婦仲や家族関係に問題を抱えていることもある.このような場合,リハビリテーションサービスの効果は期待できないことが多い.

 動作指導や介助法指導を行なう場合,本人の残存能力を評価し,日常生活の中でそれを最大限に活用するよう配慮することは言うまでもない.加えて,介助を行なう介護者の技能や健康状態,ベッドや車いすの高さ,介助スペースの有無といった生活環境,本人および介護者の関係や生活嗜好などの評価が,具体的なリハビリテーションサービスの内容を決定する重要な因子となろう.

講座 動作分析・3

生理学的観点からみた動作分析

著者: 丸山仁司

ページ範囲:P.185 - P.190

 I.初めに

 生理学は動物系(筋,神経など)と植物系(呼吸,循環,代謝など)とに分けられる.植物系生理学は運動の維持,動物系生理学は運動の発現,運動の制御に関係する.運動とそれらの関係を図式化すると図1のようになる.植物系生理学,特に循環呼吸系に関与するphysiological responsesと筋神経系に関与するperformanceとの両者の働きで運動は発現,維持,制御されている.呼吸循環系では大気中の酸素を筋へ運搬する能力(供給能力),神経系は酸素を利用する能力(制御能力)である.

 動作,運動は筋の活動量により,生理学的反応が異なる.ここでは,筋の活動量の変化をみる指標である効率について述べる.

1ページ講座 生理学的診断・3

筋電図・1 針筋電図検査

著者: 大橋正洋

ページ範囲:P.191 - P.191

 針筋電図検査とは,筋の活動に伴う電気的現象を,筋細胞の近くに挿入した針電極によって観察する方法である.1個の脊髄運動神経細胞と神経軸索,これらに支配される多数の筋線維細胞をまとめて運動単位(motor unit)と呼ぶ.軸索の電気的興奮が神経筋接合部に到達すると,筋線維は持続時間200msec程度の短い収縮をし,次いで弛緩する.このとき持続1~3msecの微少電位が発生し,周囲の組織に伝わる.軸索の興奮は,同じ運動単位に属する筋線維に少しずつ時間差をおいて伝わるが,そのときそれぞれの微少電位が合成されて,持続1~12msec,振幅100~3000μVの運動単位電位となる.正常波形は,基線から最初に陰性側に振れがある2~3相波である.筋の収縮が弱いと,まず小さな運動単位が5~15Hzの頻度で活動する.収縮が強くなるに従い大きな運動単位が動員され,収縮がさらに強くなると運動単位の活動頻度が増大する.正常の最大筋活動頻度は50Hz程度である.このように随意運動に伴って筋活動電位が増していく樣を,漸増型(recruitment pattern)と言う.

クリニカル・ヒント

慣性モーメント操作による骨盤回旋誘導の試み

著者: 福井勉

ページ範囲:P.192 - P.192

 1.初めに

 歩行時における骨盤回旋は,立脚期初期の同側骨盤の前方回旋,その後の後方回旋が通常観察される.しかし何らかの原因により,この骨盤回旋の左右差が大きくなり,種々の障害を来すことがある.立脚期中の回旋は骨盤より大腿,大腿より下腿が大きい1).したがって膝関節では,踵接地から立脚中期までは内旋する2)

 しかし,患者の歩行を観察すると,左右対称的な骨盤回旋を示す例はほとんど無い.左右どちらかが骨盤前方位になってしまい,通常その側では骨盤挙上位にもなっているし,また上肢の動きも骨盤の動きとほぼ一致して非対称的になっている.こういった動きの変化が障害に結び付いていることは非常に多い,したがって,骨盤の回旋の対称性を図ることは有効な治療手段となりうると考えられる.

 骨盤へ直接「重量となる重り」を密着させることにより水平面上の慣性モーメントは変化すると考えられ,試行した結果,骨盤回旋を最も変化させる部位があった.また同時に上肢に重りをつけることによっても骨盤回旋は容易に変化する.したがって,二次的に骨盤回旋は操作可能となる.

プログレス

精神疾患と生体リズム・1

著者: 山口成良

ページ範囲:P.193 - P.193

 1.初めに

 生体リズムとしてcircannual rhythm(τ=one year±2months)概年リズム,約1年のリズムがある.四季のリズムや動物の生殖リズムはこのリズムに支配されている.この概年リズムの異常による精神疾患として,季節性感情障害Seasonal affective disorder1)が考えられる.次に,circatrigintan rhythm(τ=30±5days)概月リズム,すなわち人間の月経周期のような約1か月のリズムである.この概月リズムの異常による精神疾患として,若年周期精神病2)が考えられる.さらにcircadian rhythm(τ=24±4hours)概日リズム,約24時間リズムの異常として,睡眠・覚醒スケジュールの障害Disorders of the sleep-wake schedule3)が考えられ,また,ultradian rhythm(τ<20hours),すなわち20時間以内のリズムの異常として,睡眠中に繰り返すNREM-REM睡眠周期の異常としての欝病が考えられる4)

 以下,これらの疾患の二,三について検討する.

理学療法草創期の証言

理学療法維新

著者: 高橋長

ページ範囲:P.194 - P.194

 流れる水は生きている.急峻な流れの瀬もあれば,緩やかに流れる淵もある.しかし動いていれば澱むことは無い.

 1948年は日本理学療法協会が日本医療マッサージ師会として設立された年であり.また1948年法律217号施行の年でもある.終戦後間も無い日本国内の各界に対する連合軍総司令部(GHQ)から出される指令は厳しいものがあり,それに対処するために全国の病院に勤務するマッサージ師を結集して本協会が発足した.1965年理学療法士および作業療法士法が確立される以前はマッサージおよび物理療法,体操療法などが,治療の主体とされてきた.整肢療護園園長,東京大学名誉教授高木憲次先生は理学療法に従事する技術者の重要性を強調され,日本肢体不自由児の療育技術者養成,さらにその資質の向上に努められ整肢理療研修会や,テキストなどにより学術および技術の向上に努められた.労災病院においては1949年に開院した九州労災病院に九州大学温泉研究所から理学診療部長として着任された服部一郎先生の指導の下で,日本では数少ない理学療法棟が完成し,1955年にはその当時は外国の文献などでみられる回復訓練棟が着工され1956年に完成した.先輩諸氏の並々ならぬ汗の結晶の積み重ねが,現在の理学療法の花咲く道となってきたのであろう.理学療法士および作業療法士法が施行され,専門に教育するリハビリテーション専門学校が,開校して数多くの卒業生が,リハビリテーション施設のある病院,施設に就職するようになり,1963年には国立療養所東京病院附属局リハビリテーション学院が開校して,30年が過ぎ,国立,公立,私立等々50数校を教えるまでになった.

理学療法士を目指して

著者: 下畑博正

ページ範囲:P.195 - P.195

 1.初めに

 1960年,私は九州労災病院の理学診療科にマッサージ師として就職した.当時,一般的には理学療法の主体はマッサージや電気治療,そして水治療法であった.九州労災病院はそれらに加えて258m2の広さの回復訓練棟が隣接しており,その設備内容も,平行棒や種々の滑車装置,階段昇降,バスステップ,和室など日常生活訓練の場が設置されていた.これは,当時としては群を抜いて進んだものであった.

あんてな

ジャルサ基金設立に御協力を

著者: 松岡幸雄

ページ範囲:P.196 - P.196

 日本ALS協会では目下,ALS(筋萎縮性側索硬化症)の原因究明と患者・家族の支援を目指して,「ジャルサ基金」の設立に取り組んでいます.

 ALSは運動神経が侵され,筋肉の萎縮を伴う進行性の神経難病です.病気が進むと手足の自由がきかなくなり,話すことも食べることも,呼吸することさえも難しくなります.主に30代以降の成人が罹病し,予後3年~5年,残念ながら未だに原因不明で,治療法はありません.

印象に残つた症例

老人保健事業に基づく在宅訪問指導における一症例―機能訓練事業への参加を目指して

著者: 薮越公司 ,   木下潤子 ,   山口昌夫

ページ範囲:P.197 - P.199

 1.初めに

 1983年に老人保健法が施行されたが,それに伴う機能訓練事業や訪問指導事業において理学療法士の果たす役割はきわめて重要である.

 当院でも限られた回数ではあるが,1986年4月より市町村の機能訓練事業に参加し,その一役を担ってきた.しかし通所不能者に対するリハビリテーションサービスの必要性を痛感し,1989年1月よりK町において在宅訪問指導を開始し,現在に到っている.

 今回,途中経過ではあるが,10回の在宅訪問指導を通じて,意欲ある在宅生活を行なう上での動機付けの手段として,「機能訓練事業への参加」という目標を掲げて,アプローチしてきた症例の経過を紹介するとともに,若干の考察を加えて報告する.

ひろば

“Dr N”の広島での近況/「学び方の時計」を使って

著者: 藤村昌彦 ,   鈴木明子

ページ範囲:P.200 - P.200

 1993年4月1日付けで,Dr Nが広島大学医学部保健学科・理学療法学専攻教授に着任.金沢から約9時間かけて,3月29日の夜遅く愛車ランドクルーザーにて広島入り.数日間は,官舎への引っ越しと歴史の重みを感じさせる老朽化した建物の中にある教官室の整理に追われた.この学舎は1期生が卒業する1996年に建築予定の新校舎完成までの仮往いである.

 着任間も無いのにもかかわらず,御自慢の口髭とともにDr Nをすっかり有名人にしたエピソードがある.入学式後のオリエンテーションで学生・教職員を前にしてさっそくタップダンスを披露された.場内は言うまでもなく拍手喝采の嵐であった.このようにDr Nは広島の水に慣れつつあるのだが,そこは日本海と瀬戸内海,すべてが順調に運ぶとは限らない…….

実習レポート

脳腫瘍摘出術を行なった患者の一症例について/Comment

著者: 中川祥子 ,   臼田滋

ページ範囲:P.201 - P.204

 1.初めに

 脳腫瘍による片麻痺患者を担当し,術後のべッドサイド訓練より頭蓋骨形成術が施行されるまでの約6週間にわたって,理学療法を実施することができた.そして,脳血管障害による片麻痺患者とは異なる問題点と,回復過程を学ぶことができたので報告したい.

報告

スポーツ外傷後の大腿四頭筋筋萎縮の一考察―MRIによる検討

著者: 市橋則明 ,   三宅裕子 ,   川原勲 ,   伊藤浩充 ,   石川齊

ページ範囲:P.205 - P.207

 Ⅰ.初めに

 下肢のスポーツ外傷後のリハビリテーションにおいて大腿四頭筋筋力の回復は最も重要視され,健側比や体重比を測定評価することによって,競技への復帰の目安とされることが多い.しかし,臨床では筋力は回復しても筋萎縮が残存している症例をよく経験する.随意最大筋力は,神経的因子と筋断面積とに影響され,筋力強化訓練中は,神経的因子が高まった状態にあると言える.しかし,競技に復帰し筋力強化訓練を中止すると神経的因子は普通の状態に戻り,筋断面積の影響を強く受けると考えられる.そのため筋力だけでなく,筋断面積の評価は重要である.今回,スポーツ選手2症例に対してMRIにて大腿四頭筋の各筋の筋断面積を測定し,若干の知見を得たので報告する.

フィリピンでの理学療法協力活動報告

著者: 篠崎麻紀子

ページ範囲:P.208 - P.211

 Ⅰ.初めに

 私は,日本で2年8か月,理学療法士として勧務した後,3か月間の国内研修を受け,1991年4月より1992年11月まで,フィリピンで初めての理学療法士の青年海外協力隊員として活動する機会を得た.青年海外協力隊は,開発途上の国々で,住民と一体となって当該地域の経済および社会の発展に協力することを目的とし,青年の海外協力活動を援助,促進する事業として,1965年に外務省下で発足した.ここで,私はフィリピンで,理学療法の分野で活動した経験を報告したい.

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あなたのイラスト

著者: 池ヶ谷博英

ページ範囲:P.159 - P.159

文献抄録

ページ範囲:P.212 - P.213

編集後記

著者: 吉尾雅春

ページ範囲:P.216 - P.216

 紆余曲折しながら「政治改革」関連4法案が可決された.それぞれの立場で受け止め方は異なると思うが,いわゆる55年体制が終わりを告げたことだけは確かである.1955年から今日までの利益政治システムは結局,政治を停滞させ,腐敗させてきた.その責任は政治家にあるが,政治に主体的に関わってこなかった国民の罪も大きい.主権者たる国民が自らの声をその代表である政治家たちにきちんと送らなければならない.そのために選挙制度もある.国家の運営が大きく見直されようとしている今,私たち国民自身が政治に無関心であってはいけない.

 本号は年度末を迎え,「理学療法業務の見直し」を特集として企画した.国も変革しようとしているときでもあり,この機にそれぞれの組織の在り方,業務内容,患者との関わり方などを再検討され,新年度を迎えていただければ幸いである.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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