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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル29巻1号

1995年01月発行

雑誌目次

特集 世界は今

essence of the issue

ページ範囲:P.3 - P.3

 今,注目されている考え方や技術の動向,体制の違いなどについて世界的視野でまとめていただきました.それらを知ることによって,日本の理学療法の現状を認識し,私たちが今後努力すべき事柄が示唆されること請け合いです.

アメリカの理学療法教育

著者: 高橋正明

ページ範囲:P.4 - P.7

 Ⅰ.初めに

 ちょうど3年前(1991~1992),文部省の在外研究員としてアメリカはミネソタ州にあるミネソタ大学の理学療法学科に10か月籍を置かせてもらい,内部から教育を観ることができ,近隣の5大学を訪問して理学療法教育について先生方と意見を交換することができた.ずっと以前にアメリカでの高等教育を体験し,教育制度についての多くの疑問を持っていたが今回の滞在で少し理解できたように思う.我が国の理学療法教育と比較すると隔たりが大きすぎて直接的には参考にならないかも知れないが,今後を示す指標になると思われる事柄に絞って本拙文をまとめた.

外国学会の動向

著者: 森永敏博

ページ範囲:P.8 - P.11

 Ⅰ.初めに

 諸外国における学会活動とその学問的傾向は,その国の理学療法士の教育制度と水準によって異なる.また,その国の理学療法が今日の状態に至った経違(歴史),現在の経済状態や医療水準など種々の要因が加味されることによって特徴づけられる.一般的には,ヨーロッパが経験重視,実務主義的傾向が強いのに対して,アメリカは実証重視,効率主義的であり,この両者が特徴の双壁であると言える.前者に属するグループは,理学療法が制度的に最も古いイギリスとオーストラリアなどの旧英連邦諸国であり,フランスやドイツもこれに類すると見做される.これらの国々の学会の特徴は,経験に基づいた報告的内容が主流を占め,学会そのものが非常に実用的である.このような背景の中で生まれた治療体系は,必然的に構築的性格が強く,実際の治療場面においてはつねに説得力があるものである.これに対して,後者の特徴は,統計学的手法を基礎にした科学的,論理的な特徴をもつが,度が過ぎると治療手技が人間味の無い乾燥したものになるという危険性を孕む可能性がある.

 外国学会の動向を検討するに当たって,必然的にイギリスとアメリカとの学会を分析することになるが,これらの国と非常に近い関係にあるオーストラリアやカナダの実状についても一部ふれてみたい.ただし筆者の語学能力の限界もあり,フランスやドイツの実状については,他に機会を譲ることをおことわりしておきたい.

ストレッチングと筋力増強訓練

著者: 小柳磨毅 ,   山田保隆 ,   河村廣幸 ,   武岡健次

ページ範囲:P.12 - P.15

 Ⅰ.初めに

 理学療法士にとって伸張訓練(以下,ストレッチング)と筋力増強訓練は,臨床における実施頻度の高い治療技術である.またストレッチング,筋力トレーニングという用語は広く一般にも普及している.しかしこれらの訓練の生理学的理論や臨床的効果については,未だ十分に解明されているとは言えない.そのために方法の選択や実施内容も経験的に行なわれていることが多いのが現状であろう.そこで本稿では欧米におけるストレッチングの生理学的研究と,筋力増強訓練の臨床効果に関する研究報告を中心に紹介し,運動療法の主要な技術の理論と実際について考察する.

呼吸理学療法

著者: 千住秀明

ページ範囲:P.16 - P.20

 Ⅰ.初めに

 1993年9月に国際シンポジウム「慢性呼吸不全患者の在宅ケア」が,我が国を含め14か国(アメリカ,イギリス,イタリア,オーストラリア,カナダ,韓国,スウェーデン,スペイン,台湾,ドイツ,フィンランド,フランス,日本,ポーランド)370人の参加者で開催された.本シンポジウムは,慢性呼吸不全患者を対象として各国の在宅医療の現状と問題点とを主な議題として討議された.慢性呼吸不全患者のケアは,急性期から慢性期まで多くの課題を内在しているので,今後我が国の呼吸理学療法が進むべき道を示唆してくれるであろう.

 ここでは我が国の呼吸理学療法を振り返りつつ,本シンポジウムより諸外国の慢性呼吸不全の現状と“Medline”,“Physical Therapy”および“Physiotherapy”などの過去5年間の文献から今日の呼吸理学療法の課題と問題点とについて述べる.

疼痛に対する理学療法

著者: 濱出茂治

ページ範囲:P.21 - P.24

 Ⅰ.初めに

 疼痛症状に対してはこれまで物理療法が治療の主体となり,温熱療法,寒冷療法などが好んで用いられてきた.しかし,近年,疾病構造の変化とともに多様な疼痛症状が出現するようになり,それに対応したPain Managementとしての理学療法技術も変革を遂げてきている.一方では物理療法自体の治療技術の発展があり,他方では徒手療法の台頭がある.両者は治療ターゲットに大きな相違がみられるが,最近ではこれらの治療を組み合わせることも臨床で見受けられる1,2)

 本稿では主に米国,欧州を中心に現在,疼痛症状に対して行なわれている治療動向を我が国の現状と比較して概説していきたい.

慢性関節リウマチに対する理学療法

著者: 阿部敏彦

ページ範囲:P.25 - P.29

 Ⅰ.初めに

 慢性関節リウマチ(以下,RAと略)の理学療法において,諸外国と比較して日本の理学療法士が考慮すべき点は二つある.新しい理論および実践の立証により変革の糸口を見付けだそうとする探求心と,背景となる政治経済体系および既存の各専門分野の確立による社会・歴史的理念格差のため導入に際し著しい障壁を認めざるをえない現実への直視とである.

 本論文では,私自身の海外研修(1989年)による記録1)をふまえて,1990年以降の論文により,諸外国におけるRAの理学療法の現状をまとめる.

脳卒中片麻痺に対する理学療法

著者: 冨田昌夫

ページ範囲:P.30 - P.34

 Ⅰ.概略

 理学療法士として強い関心をもっている二つのことについて述べさせていただく.

 第一の関心事は,“認知科学の急速な進歩・発展”および“脳科学と認知科学の接近”1)である.その結果,従来の神経学的な運動コントロールモデルでは排除されてきた患者の情動や意志・意欲に始まり,認知,適応,学習といった神経系以外の“自分”および“自分と外部環境”の相互作用まで含めた運動コントロールモデルが重要になってきた.そこで,運動コントロールのシステムモデルを紹介していきたい.

 第二の点は,社会的問題であり,地域での理学療法,病院での理学療法おのおのの専門性についてである.1990年7月ADA(障害を持つアメリカ人法(Americans with Disabilities Act))2)の成立でアメリカを中心に発展してきた自立生活運動は,北欧などにも大きな影響を与え,今までのノーマライゼーションの枠を越え,自立生活運動の動きがかなり広がっている.地域リハビリテーションでは,このような自立生活運動をどう支援,発展させていくかが重要なポイントになってくるように思われる.地域リハビリテーションが充実すればするほど,病院での理学療法士にはより高度な専門技術が要求されてくる.病院での理学療法の専門性の一つのモデルケースとしてドイツのセラピーセンターブルガウ(Therapie Zentrum Burgau)を紹介してみたい.

日米の医療政策の転換と理学療法士への影響

著者: 沖広剛

ページ範囲:P.35 - P.40

 Ⅰ.初めに

 Clinton現アメリカ大統領が,1992年の大統領選挙時に挙げた公約の一つに国民皆保険制度の実現があった.この現象は国民皆保険制度が日常であって,それ以外の医療保険制度を想像すること自体が困難な日本からみると随分と奇異に映る.しかし,国民皆保険制度の実現を今さら選挙公約に挙げなければならないアメリカの医療政策を,この10年余り日本は積極的に取り入れてきた.アメリカ医療の実情と経過の一端を,アメリカの理学療法士状況も交えて概観し,併せて日本の医療改策への反映をみる中で,日本の理学療法士の将来を考える一助としたい.

とびら

開設10周年

著者: 吉田久雄

ページ範囲:P.1 - P.1

 1994年5月,勤務する病院は開院10週年を迎えた.開院時まだ理学療法士はおらず,開院の年の10月,ひょんなことから公務員だった私が赴任することになった.

 理学療法部門のみの,整形外科運動療法室主任として,患者治療のほか室の運営などいっさいを行なうことになった(一人職場だった).承認施設となるための備品は完備されていたが,まだ梱包状態にあり日々の治療を行なえる最低の環境づくりと同時に,全科から依頼のある患者さんの治療を開始した.

プログレス

アルコール依存症の神経症状

著者: 高橋美枝 ,   井上新平

ページ範囲:P.41 - P.41

 我が国で毎日,日本酒なら5合半,ビールなら6本,ウィスキーならダブル6杯以上を飲む「大量飲酒者」は年々増加し,1990年の推計で212万人存在する.これに伴いアルコールに起因する神経障害もふえ,人口10万に対する有病率は900~1200と推定されている.具体的には日本酒3~4台を10年以上連日飲む人の1/3は表1に示すようなさまざまな神経障害にかかる危険性がある.よくみられるのはニューロパチー(90%),ミエロパチー(27%),小脳変性症(23%),離脱症状(10%)の順であり,これらが重複して出現しやすい.以下,表でアンダーラインを記した主要な病態について解説する.

 長期間にわたる大量飲酒を急激に中断すると,アルコールによる抑制が解除され神経系の異常興奮が起こる.これが離脱症状であり,手指振戦,不安,焦燥,不眠,アルコールてんかん(全身痙攣),振戦せん妄(幻覚・意識障害・振戦・頻脈・多汗)が出現する.

 Wernicke脳症では意識障害,失調歩行,眼球運動障害が急性に発症する.後遺症としてKorsakoff症候群(失見当識・作話・記銘力障害・記憶障害)を来すことが多い.

理学療法草創期の証言

徳島県士会創立当初を顧みて

著者: 上田正信

ページ範囲:P.42 - P.42

 私は,1968年徳島県立盲学校リハビリテーション科一期生として,理学療法士の資格を修得し,徳島市民病院に勤務することになったが,当時はリハビリテーションという言葉も理学療法士という職種も皆無に等しい時期であり,一日も早く理解され社会的に滲透することが私たちに課せられた使命感のようにも思え,各職場(病院,施設)はむろんのこと関係各方面に向け説明に走る日々が続いていた.

 1969年社団法人日本理学療法士協会会長松村秩先生より協会支部として徳島県に理学療法士会を設立するようにとの要請があり,八木徳夫先生(当時徳島県立盲学校教諭)の音頭により,同年11月23日結成準備科員会を5名の理学療法士で開催した.そして同年12月21日徳島大学整形外科学教授山田憲吾先生(後,同大学長)の御臨席を仰ぎ,八木先生が初代会長となり,また,山田憲吾先生をはじめ,野島元雄先生(当時徳島大学整形外科学教室助教授),加藤直則先生(徳島県立ひのみね整肢医療センター園長),福本礼一先生(徳島県立盲学校長)が快く士会のために顧問を引き受けてくださり,ここに「日本理学療法士協会」徳島県理学療法士会創立総会を開催した.その折,松村秩協会長のメッセージを代読した.会員9名全員が熱い団結の下にそれぞれの役に就き,母体であるところの協会の活動はむろんのこと,自らの学術向上,社会的地位の向上,確保および会員相互の交流,親睦を図ることを目的とし,講習会,研修会を柱に会則の議決,確認を行ないスタートの運びとなった.

英英辞典持ち込み自由の専門課目試験

著者: 中野昭二

ページ範囲:P.43 - P.43

 1966年の春,全国各地から夢を抱いた34人(理学療法士・作業療法士)が足立山の麓で,九州労災病院の広い敷地の一角に位置する労働福祉事業団九州リハビリテーション大学校に入学しました.九州はもちろん西日本でも初めてということで,周囲の期待は大変なものでした.

 私自身のリハビリテーションについての知識は,入学後初めて清瀬のリハ学院のことを知る程度でしたから,推して知るべしです.仕事内容はもちろん,勉強の中身も解らず,五里霧中の状態で与えられた課題を消化していくのに必死の毎日でした.しかし大半の学生が寮生活の中で年配の人から社会生活(?)のノウハウを教えてもらい,友達同士酒を酌み交わし将来の夢を語り合ったものです.また先輩校である清瀬のリハ学院にささやかな対抗心を燃え上がらせたこともありました.

あんてな

小学校・中学校のエレベータ設置事業

著者: 大阪市教育委員会養護教育課

ページ範囲:P.44 - P.44

 安全性の高い手段を;エレベータ設置の決定

 大阪市では,従来より,小学校・中学校に入学した階段昇降の困難な児童・生徒について,電動式階段昇降機を用意し,必要な学校に貸し出しをしてきた.この昇降機の導入に当たっては,安全性を中心に慎重に検討し,西ドイツ製のものを使用することにした.しかし,階段昇降機は他人の助けがないと使用できないことなど,決して十分とは言えない状況があった.

 そこで,安全性や安定性をを考慮し,さらに時間をかけて検討した結果,エレベータの設置が望ましいという結論に達した.そして,1991年度より5年間で小・中学校14校にエレベータを1基ずつ設置する計画を立て,大阪市の方針として認められた.

入門講座 学術研究方法の手順・1

テーマの発見

著者: 大峯三郎 ,   緒方甫

ページ範囲:P.45 - P.51

 Ⅰ.初めに

 日本理学療法士学会の変遷を垣間見ると,1967年,第2回学会での一般演題数は,わずか5演題であった1).その後,1994年の第29回学会では,パネル発表,ビデオ演題も含めて481演題を数え,飛躍的な増大を示した.さらに1995年の学会では540演題を超える募集がなされており,今後ますます増加の一途をたどるものと予想される.

 これは,理学療法士の会員数の増大も大きな要因であろうが,個人の臨床に対する(教育,基礎的な領域も含めて)専門職としての自己研鑽とそれを継続していく,日々の努力の賜物でありその表れとみることもできる.

 われわれ理学療法士は,医療に従事する専門職としてより質の高い理学療法技術の提供を要求される.そのため個人の責任の下に,あらゆる学習の機会を利用して単に理学療法技術の習得のみでなく,社会学,科学,哲学,心理学などの幅広い知識集積の必要性が望まれている.現在,われわれを取り巻く環境も生涯学習を含めた卒後教育などを通してそのように整備されつつある.そしてこれらの一延長線上に,学会発表や論文作成などがあり,その手段として臨床研究が存在すると考えている.

 本講座では,臨床で研究を行なうことの是非はともかくとして,臨床や文献研究から得られた知見を如何に研究テーマへと結び付け発展させていくかなどを中心にして,筆者の経験から私見をまじえながら特に臨床的な観点から研究法について概説する.

Topics

AIDSの現況・その2―第10回国際エイズ会議を終えて

著者: 曽田研二

ページ範囲:P.52 - P.52

 1984年8月7日から12日までに横浜において,第10回国際エイズ会議/STD会議が開催されたので,この機会に,この会議の概要を紹介し,AIDSの現状と今後の課題を述べる.

 この会議は1985年米国アトランタで初めて開かれて以来,今回初めてアジアで開催されたという点でもたいへん意義深いものであった.今回の会議には130か国から12000人以上の参加者があり,報道関係を除く約10000人のうち,約4500人は外国人の参加者で,特にアジアからの参加者の増加が目立った.

講座 理学療法教育論・1

今後の理学療法教育に求められるもの

著者: 高橋正明

ページ範囲:P.53 - P.58

 Ⅰ.初めに

 本講座で教育が取り上げられることになった.ちょうど16年前にも教育に関するシリーズ企画(理・作・療法vo1 12 no 1-10)が組まれ,教育学を専門とする先生方の執筆により教育哲学,教育心理学,教育方法,教育評価といった教育に必須の科目がコンパクトにまとめられている.特に新しく理学療法教育に携わる先生方にはぜひ一読をお奨めしたい内容である.今回のシリーズは教育学というよりもむしろ,理学療法教育の現状と今後に予想されるめまぐるしい変化に焦点を合わせた企画である.

 教育はその専門職種を支える基盤となるわけで,歴史の本流に深く関与し,表面に現れる短命な渦流には惑わされないことが肝心である.流れの中にいて多くの水流を感じつつなお,両者を見極める大局的見方が基本にならなくてはならない.理学療法教育は今,いわゆる外人講師によって教育が開始された当時に次ぐ激しい変動期を迎えつつある.現実を知り,かつ本流を見失わず,むしろ本流をいっそう発展させるための特別の視点と努力を必要とする歴史的局面に立たされていると言える.本シリーズがその局面を切り開いていくための一助となることを期待したい.

1ページ講座

リハビリテーション関連領域の重要略語集・1

著者: 大川弥生 ,   大田喜久夫

ページ範囲:P.59 - P.60

 これから1年間にわたってリハビリテーション(以下,リハと略.)関連領域の略語を連載することになった.リハ関連領域とはリハ独自のものだけでなく,リハ医療の場で必要とされるものを幅広く含むものである.リハ特有の略語については今さら説明の必要の無いものが多いので,同一の略語で他の語・句を示す場合があるものに限ることとした.

 現在,略語は非常に多用されており,同一の略語が多くのまったく異なる語句を示していることも少なくない.そのためカルテや処方戔の記載内容について少しでも不明確な略語があれば,必ず記載者に確認する必要がある.一方自分自身が略語を用いる場合も,それを読む人・聴く人の専門分野や知識を考慮して誤解が生じないように心がけるべきであろう.

印象に残った症例

重症心身障害児の母―理学療法士に教えてくれたもの

著者: 長谷川弘一

ページ範囲:P.61 - P.63

 Ⅰ.初めに

 先日一通の手紙を受け取った.差し出し人は,10年にわたり理学療法士として療育を担当した重症心身障害の男児の母親であった.患児は1994年4月に新設された地元養護学校へ分校からの編入が決まり,家族や学校関係者らもその日を心待ちにしていた.1994年3月20日,てんかんの重積状態と肺炎による呼吸障害により彼は,突然この世に別れを告げてしまった.

 わずか10年の人生,その間理学療法士として彼に対し何を成しえたのか,また彼にとって母親の存在がどのようなものであったかを彼との出会いから振り返ってみながら,重症心身障害児の療育の原点について考えてみたい.

知報

脳卒中片麻痺患者の麻痺側筋出力特性に関する研究

著者: 菅原憲一 ,   内田成男 ,   椿原彰夫

ページ範囲:P.64 - P.66

 Ⅰ.初めに

 脳卒中片麻痺患者の麻痺側機能を評価する際,その簡便さから麻痺の性質を定性的に捉えることが一般的に行なわれている.しかし,当院において本格的にリハビリテーションを開始する対象者の多くは,急性期を過ぎていることから,麻痺の質的な改善が少ない.このため,従来の評価法では能力障害の改善に伴った麻痺の回復を客観的に観察することは容易ではなかった.

 近年,脳卒中片麻痺患者の歩行における下肢筋力の重要性が提唱され1),麻痺側筋力の要素を含む評価手段の確立が急務となっている.著者ら2,3)は片麻痺患者の歩行速度と麻痺側下肢筋力の間に高い相関を認めたことを報告した.

 本研究では,脳卒中片麻痺患者に対して,麻痺側下肢の筋出力における動作速度の変化に対応した能力と定性的運動機能評価および歩行能力との関連性を検討し,興味ある知見を得たので報告する.

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文献抄録

ページ範囲:P.68 - P.69

編集後記

著者: 吉尾雅春

ページ範囲:P.72 - P.72

 あけましておめでとうございます.皆様,よいお年をお迎えでしょうか.水不足を引きずったままで新年を迎えられた西日本の方々には,一日も早く恵みの雨が降ることを祈らずにはおれません.時に自然は人間に対して,恐ろしいほどの仕打ちをします,地球の温暖化現象は人間の罪のひとつだと考えますが,その人間の罪を西日本の方々が代表して償ってくださっているような気がします.私たち人間が,自然と共生していくことを改めて誓う年にしなければならないと思います.

 さて,本号より“essence of the issue”というコーナーを目次の次のページに設けました.各論文の主旨のすべてを表現できるものではありせんが,特集を企画した編集者が特に印象に残った部分を紹介することにしました.興味のひとつに加えていただければ幸いです.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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