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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル29巻1号

1995年01月発行

文献概要

プログレス

アルコール依存症の神経症状

著者: 高橋美枝1 井上新平1

所属機関: 1高知医科大学神経精神医学教室

ページ範囲:P.41 - P.41

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 我が国で毎日,日本酒なら5合半,ビールなら6本,ウィスキーならダブル6杯以上を飲む「大量飲酒者」は年々増加し,1990年の推計で212万人存在する.これに伴いアルコールに起因する神経障害もふえ,人口10万に対する有病率は900~1200と推定されている.具体的には日本酒3~4台を10年以上連日飲む人の1/3は表1に示すようなさまざまな神経障害にかかる危険性がある.よくみられるのはニューロパチー(90%),ミエロパチー(27%),小脳変性症(23%),離脱症状(10%)の順であり,これらが重複して出現しやすい.以下,表でアンダーラインを記した主要な病態について解説する.

 長期間にわたる大量飲酒を急激に中断すると,アルコールによる抑制が解除され神経系の異常興奮が起こる.これが離脱症状であり,手指振戦,不安,焦燥,不眠,アルコールてんかん(全身痙攣),振戦せん妄(幻覚・意識障害・振戦・頻脈・多汗)が出現する.

 Wernicke脳症では意識障害,失調歩行,眼球運動障害が急性に発症する.後遺症としてKorsakoff症候群(失見当識・作話・記銘力障害・記憶障害)を来すことが多い.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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