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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル29巻10号

1995年10月発行

文献概要

特集 運動コントロールと運動学習

知覚と運動―エコロジカル・アプローチ入門

著者: 佐々木正人1

所属機関: 1東京大学教育学部

ページ範囲:P.676 - P.680

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 筆者は年に1回,埼玉県の所沢市にある国立身体障害者リハビリテーションセンター学院で,「リハビリテーション体育」を学ぶ人々に講義をする機会をもっている.障害を得た後に身体がどのように変化していくのか,多くのことを教えてもらう.例えば「幻肢バタ足」という現象である.「幻肢バタ足」というのはその講義の場での命名であるが,膝から下の脚を切断した者がリハビリテーションとして水泳を行うときに現れる大腿の動きである.切断後はじめて水中に入ったときには,大腿はまるでなくなった膝から下の脚とまだつながっているようにバタ足様の動きをする.いうまでもなく,この動きは水中での推進力のほとんどを失っている.だから「幻肢バタ足」というわけである.

 この「バタ足」様の動きは,特に指導しなくてもある期間,下脚切断者が水中でのリハビリテーションを続けると自然に消失するらしい.そして,それに代わってちょうど川の流れを上る魚の背のような,柔軟に左右にゆれる動きが大腿に現れるという.この左右へのゆれのパタンの現れは,おおげさにいえば下脚なしの大腿が,新たに「水」を発見したこと,つまり障害をこうむった身体が新たな環境としての水を「再発見」したことを示している.ここに見られるのは「回復」ではなく,1つの「達成」と呼ぶことができる.だからそれに立ち会った者たちに強い印象を与える.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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