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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル29巻11号

1995年11月発行

文献概要

特集 病棟訓練

綿密なリスク管理が必要な患者の病棟訓練

著者: 木村伸也1

所属機関: 1東京大学リハビリテーション部

ページ範囲:P.756 - P.760

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 Ⅰ.はじめに

 本稿のテーマである綿密なリスク管理を必要とする患者の病棟訓練とは,急性期脳卒中患者に座位訓練をいつから行うかとか,癌や重症多臓器不全のように極めて重症な患者に行うROM訓練やポジショニングといった限られた特殊な内容のことではない.本稿で述べようとするのは,綿密なリスク管理をしてリハ・アプローチを進めていけば,その行える内容は拡大し,リハ効果も極めて向上するということである1-2).そしてその具体的内容は本来,病棟訓練として行うべきものということである.

 このように病棟訓練を入院リハの中心的なものとする上で,次の3点が重要である.まず第1に,病棟訓練は,病棟でしか行えないような重度な患者にのみ(仕方なく)行う訓練であり,座位が安定すれば訓練室訓練を始めるものだという画一的な捉え方から脱却することである.第2に,病棟訓練とは生活の場における訓練であり,本来,リハの基本であることを再認識することである3-4).第3には,リスク管理は単なる訓練の中止基準ではなく,安全で,かつ最大のリハ効果を上げるにはどのような運動負荷を許可するかを「活動度」として細かく指導することである6)

 この3点に基づいて,生活の場である病棟での評価・訓練をすすめることによって,発症後早期の脳卒中患者や,神経筋疾患の悪化過程や急性期治療中の患者にも,より安全で効果的なリハを行えるようになったのである.そして,その具体的な成果の最も象徴的なものは,生命の危機に瀕している心不全,肝不全や末期癌患者を主とする「ハイリスク・体力消耗」状態患者1-2)という重症・重度な患者へとリハの対象を拡大できたことである.

 ここでは,こういった成果を得られた過程での筆者の経験に基づいて,綿密なリスク管理を必要とする患者の病棟訓練の実際を述べる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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