原著
麻酔下における短時間筋伸張位保持がラットの廃用性筋萎縮予防に及ぼす効果
著者:
山崎俊明
,
立野勝彦
,
灰田信英
,
田中正二
ページ範囲:P.135 - P.138
Ⅰ.初めに
近年,理学療法士が関与する領域は,地域リハビリテーションやスポーツの分野などにも拡がっている.各分野における視点の違いは当然であるが,廃用性筋萎縮の予防は中枢・末梢障害を問わず重要な課題であると思われる.
廃用性筋萎縮に関する研究は,基礎および臨床からの報告がある1).動物実験では関節固定による報告が多かったが,最近は後肢懸垂法2,3)が開発され,長期安静臥床に近似した状態が再現できるようになった.われわれは,動物実験の結果がヒトにどの程度生かせるかについては明確な答えを持ち合わせていないが,臨床では難しい均一な条件設定の下に,なるべく単純化した方法で理学療法士が必要とするデータを収集することが,臨床活動への示唆になると考えている.
筋萎縮の予防に関しては,下肢筋では特に荷重が重要である4,5).しかし,免荷や長期臥床状態で荷重が困難な場合は,それを補うために等尺性収縮や電気刺激などの方法をとるしかない.そこで,われわれは10Hzの他動的叩打による筋伸張刺激を考え,その効果を報告した6).さらに,萎縮予防目的に筋を伸張位固定すれば拮抗筋の萎縮を惹起する点に着目し,短時間筋伸張位保持の効果を検索した結果,萎縮進行の抑制が可能なことを報告した7).この研究は意識障害の無い患者を想定し覚醒下で実施した.そのため萎縮抑制の因子として,筋伸張刺激ならびに抵抗運動による等尺性収縮の関与が考えられた.
そこで,本研究では抵抗運動による影響を除外するため,麻酔下で短時間の筋伸張位保持を行ない,廃用性筋萎縮の進行に及ほす効果を動物実験により組織化学的に分析することを目的とした.