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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル29巻2号

1995年02月発行

文献概要

入門講座 学術研究方法の手順・2

分散分析法と研究デザイン

著者: 古名丈人1

所属機関: 1東京都老人総合研究所運動機能部門

ページ範囲:P.113 - P.118

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 Ⅰ.初めに

 臨床や基礎医学における調査・実験によって観察された事柄を一般化するときには,統計学的な手法による「検定・推定」の手続きを行なうことを避けて通れない.一昔前は,この手続きを駆使するには統計学の知識はもちろん,相応の数学的知識とプログラム言語に精通していることが必要であった.ところが,最近のパーソナルコンピューターの普及と豊富なアプリケーションソフトによって,多様な統計手法に簡単にアクセスできるようになった.このこと自体は統計学を専門としていない理学療法士にとっては福音をもたらすはずであるが,コンピューターは単なる機械にすぎず,操作者が命令を下せば無意味な計算でも実行してしまう危惧がある.したがって,パーソナルコンピューターに無意味な仕事をさせないために,利用する統計手法に関する最低限の約束事と前提の理解が必要になり,逆にこれらの知識があればパーソナルコンピューターとアプリケーションソフトは最大限にその能力を発揮する.

 分散分析は,Analysis of Varianceの頭文字をとって一般にANOVA(アノーヴァ)と呼ばれ,1920年代に農業試験場に勤務するFisher RAによって展開された「実験計画法」によるデータ解析方法である.ANOVAのもつ有用性と融通性によって,現在では自然科学や社会科学などの広い分野で使われている.分散分析法と実験計画法は並行して解説すべきであるが,本稿では便宜上,分散分析の適用上の注意を研究のデザインと併せて概説する.また,パーソナルコンピューターのアプリケーションソフトの利用法についても若干の説明を加える.ただし,紙面が限られているために解説することは一部であり,「実験計画法」とともに詳細は専門書1-4)などを参照されたい.できる限り統計学用語や数学的表現を使わないように心がけるつもりであるが,平均値や分散などの記述統計ならびに推測統計の一部(t-検定まで)は,周知であるとして稿を進めることをお許しいただきたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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