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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル29巻4号

1995年04月発行

雑誌目次

特集 脳卒中片麻痺に対する理学療法;15年の変遷

essence of the issue

ページ範囲:P.219 - P.219

 我が国では,それまでの文献を幅広く吟味してその分野の知識を整理し,自分たちがどこにいるかをはっきりさせる,いわゆるレビューと称される発表は少ない.地味な仕事のわりに知力と時間と労力をフルに使う過酷な作業のためであろうが,絶対に必要なことである.本誌では「脳卒中片麻痺に対する理学療法」とテーマを定め,特に「15年の変遷」と副題を付けたようにレビューを主眼としたのは理由がある.『理学療法と作業療法』(本誌の前身)がファシリテーションテクニツクを特集してから15年が過ぎたことと,それ以後の変化が多様で,流れの方向が見えなくなっているからである.

脳卒中の運動療法

著者: 大川弥生 ,   上田敏

ページ範囲:P.220 - P.228

 Ⅰ.初めに

 この15年間には脳卒中だけでなくその他の疾患・障害のリハビリテーション(以下,リハと略.)においても,またリハ医学全般の基本的な考え方においても多くの進歩や変化が認められた1,2).脳卒中以外の疾患・障害で得られた知見・進歩が脳卒中のリハに影響を及ぼした事項も多く,逆に脳卒中のリハがリハ全体に及ぼした影響も少なくない.本稿に与えられたテーマは脳卒中の運動療法の最近15年間の変遷を検討し,その中から今後の課題を明らかにすることであるが,以上述べたようなリハ医学全般の変遷との関連をつねに念頭に置いて論を進めることとしたい.

 なお脳卒中のリハの流れについては1963年にそれ以前10年余の文献の総説3),また1988年に日本リハ医学会25周年記念論文として1963年以後の25年間についての総説4)を行なっており,また特にリハプログラムおよび効果については1981年の二木の総説5)がある.脳卒中のリハプログラムに関する文献は非常に多数あり,今回は原則として上記三論文に引用された文献は引用せず,1989年以降の論文を主とする.

脳卒中片麻痺の理学療法評価の変遷

著者: 吉尾雅春

ページ範囲:P.229 - P.236

 Ⅰ.初めに

 我が国の脳血管障害による片麻痺の理学療法は,1970年代から1980年代半ばにかけてファシリテーションテクニックに染まりきった観があるが,1980年ころから将来の高齢社会に対する認識が高まり,一部で地域リハビリテーションや高齢者の体力などに対し興味が向けられ始めた.また,三好1,2)はHirschbergが1950~1960年代に提唱した健側や体力への,しかも早期のアプローチの重要性を改めて紹介し,ファシリテーションテクニック,とりわけBobathの概念に対して痛烈な批判を行なった.その後,生活を重視した理学療法本来の視点が再確認され,体力や廃用症候群を意識した理学療法が積極的に行なわれるようになった.ICUでの呼吸理学療法をはじめとする早期理学療法の展開もそのような背景に基づいている.また最近では,認知療法や運動学習理論が注目されている.

 このように概観した片麻痺への対応は,その評価にどのように反映されてきたのだろうか.本稿では過去約15年間の片麻痺の機能障害および一部能力障害の評価の変遷を振り返り,さらに今後,我が国の理学療法士が何をすべきか検討してみたい.

脳卒中片麻痺へのBobathアプローチの変遷

著者: 古澤正道

ページ範囲:P.237 - P.243

 Ⅰ.初めに

 脳卒中後遺症による片麻痺を従来は,患側(affected side)と健側(sound side)としてみていた.しかしながら昨今の脳卒中に関する論文や学会報告では健側と呼ばれることは漸減し,非麻痺側(unaffected side,nonaffected side,nonhemiplegic side,uninvolved side,noninvolved side,nonparetic side)1~4)と呼称されることが多くなっている.この背景には従来健側と言われてきた側が,ほんとうに健常に使用されているのかという疑問がある.また健側と呼ばれてきた非麻痺側と患側(麻痺側)との関わり合いで,異常性の構築が進むことが指摘されてきたことによるものである.

 以上の視点が生み出されてきた経過と,それに対応する治療内容を,Bobathアプローチの概念の発展から論述する.

米国での中枢神経障害に対する理学療法理論の転換

著者: 星文彦

ページ範囲:P.244 - P.250

 Ⅰ.初めに

 脳卒中を代表とする中枢神経疾患に対する理学療法は,ファシリテーションテクニックという手法に集約され,今日では中心的治療手技としで一般化している.しかるに,いわゆるこれら技巧的なテクニックを駆使しなくても患者が回復する過程を何度か経験すると,患者の機能回復が一方においては基本的な障害資質に依存し,他方においては患者を取り巻く外環境から多面的に受ける影響の中で進むことに気が付くのである.これは,理学療法の対象を疾病あるいは麻痺としてではなく,一箇の人間として,主体性のある行動者として捉えることから出てくる見方である.患者を人間としてみるべきといった倫理的,道徳的な話をしているのではない.中枢神経障害の回復自体を一個人が社会へ再適応する過程として捉え,その過程に理学療法という働きかけを位置付ける視点なのである.こうみるとファシリテーションテクニックはその外環境の一部にすぎないことがわかる.しかしながらその全体の包括的な理論的枠組みがみえるかというと,残念ながら我が国においてはその萌芽がやっと出始めた段階と言える.身近にこの包括的理論化への先鞭はある.中村はリハビリテーションの過程を階層的秩序と進化の法則から説明し,一般システム理論からのアプローチを早期から提案していた1).また,Kihrhofnerは,作業療法理論の歴史的考察を行ない,システム理論に基づいた人間作業モデルを提案したが,これが我が国に積極的に紹介されているのである2).おそらく我が国の中枢神経障害分野における理学療法もその対象を人間行動へ向けることはまちがいないであろう.同様の理論構築は不可欠のものと考えられる.

 筆者は,1991年に渡米する機会があり,ミネソタ大学,イリノイ大学,ノースウェスタン大学と幾つかのクリニックを視察した.そのとき1990年に開催されたThe Ⅱ STEP(Special Therapeutic Exercise Project)Conferenceが何度となく話題となった.これが,米国の中枢神経障害に対する理学療法理論の方向性を示したものであることを知らされたのである.経緯を簡単に説明すると,まずファシリテーションテクニックに代表される治療手技は,実は1966年のNUSTEP(Northwestern University Special Therapeutic Exercise Project)Conferenceにおいて集大成されたものである.翌年An Exploratory and Analytical Survey of Therapeutic Exercise,Proceeding of the Northwestern University Special Therapeutic Exercise Project(Am J Phys Med3))が発刊され,それがバイブルとして30年間の理学療法教育の基礎となった.なお,奇しくもこの年が日本の理学療法の誕生の年であったことは歴史的に意味深いものを感じる.しかしながら,米国ではそれを基礎としながらも,この30年間に着実に人間理解のための科学的発展と自己変革とを推し進め,その結果として,The Ⅱ STEP(Special Therapeutic Exercise Project)Conferenceを成功させたのである.その内容は,次の3冊の著書に集約されている.

 ①Contemporary Management of Motor Control Problems,Proceedings of the Ⅱ STEP Conference4),②Movement Science,An American Monograph5),③Motor Control and Physical Therapy,Theoretical Framework Practical APPlication6)

 本稿では,この三著に共通する視点を自分なりの解釈を含んで紹介し,米国における自己変革に基づく“理学療法の理論的枠組みの方向性”を示せればと思う.

とびら

理学療法士のささやき

著者: 吉村茂和

ページ範囲:P.217 - P.217

 臨床家としての理学療法士は,一途に患者の回復を熱望し,理学療法を駆使して患者指導に励んでいる.また,理学療法士の卵である学生の臨床教育では,臨床実習などに可能な限りの情熱を注いで指導をしたり,臨床研究でも,臨床の合間を見つけては研究に勤しんでいる.さらに,日本理学療法士協会や都道府県の理学療法士会でも,プロフェッショナル集団としての社会的認知や理学療法士の水準を高めるために力を尽くしている.これらの一つでも自分なりの努力をしている理学療法士は,学会での発表や論文発表する機会があろうとなかろうと,その真摯な姿が輝いていると言えるであろう.

 理学療法士が集うインフォーマルな席上では,医療に携わる多くの施設が唱える臨床・教育・研究の三本柱について,理学療法士一人一人の思いが,ささやき声として聞こえてくることもある.そのささやき声から察すると,臨床・教育・研究の三本柱を支えるため,理学療法士も多大な労力を費やしていると言う.しかも,三本柱に多くの疑問を抱きつつ日常業務をこなし,やや疲れぎみの理学療法士像が浮かんでくるのは,私の思い違いであろうか.以下,理学療法士のささやきを一部紹介する.

入門講座 学術研究方法の手順・4

パーソナルコンピューターを利用したプレゼンテーション

著者: 八並光信 ,   遠藤敏 ,   上迫道代 ,   寺門早苗 ,   大木修子 ,   須藤彰一 ,   牧田光代

ページ範囲:P.251 - P.255

 Ⅰ.初めに

 学会発表や院内発表の際,スライドやOHPシートを用いて,研究発表や臨床報告を,いかに聞き手にアピールすべきかと悩むのは,誰しも経験することだと思います.特に,時間的な余裕の無い場合,スライドやOHPシートの作成にかかる手間が,省力化されるとおおいに助かります.最近では,パーソナルコンピューター(以下,パソコンと略.)やワードプロセッサーの急速な普及によって,スライドの作成も技術的に容易なものとなりました.理学療法士学会で,グラフや表のカラースライドを見ても誰も驚かなくなってきたことで,かなりの人がパソコンを使用している現状が感じられます.

 タイトルにあるプレゼンテーションという言葉は,パソコンの急速な普及とともに用いられるようになりました.プレゼンテーションという言葉になじみが無い人も多いと思います.一言で言えば,文字(テキスト)・絵(グラフィック)・音声(サウンド)・動画(ムービー)などの対象物(オブジェクト)から構成されたインパクトのある表現手段と考えると理解しやすいと思います.主に,われわれが発表のため用いるスライドやOHPシートは,テキストとグラフィックから構成されています.

 ここでは,パソコンを用いたプレゼンテーションの作成に必要な機器および流れを紹介します.

講座 理学療法教育論・4

大学院教育の目指すもの―東北大学障害科学専攻について

著者: 伊橋光二 ,   半田康延

ページ範囲:P.257 - P.262

 Ⅰ.初めに

 1994年4月,東北大学大学院医学系研究科に独立専攻の大学院「障害科学専攻」が開設された.この大学院は「障害」という理学療法士にとって最も関連の深い領域の教育と研究を目的とした大学院であり,修士を目指す理学療法士が,自らの専門性を十分に活かしながら学位を取得することが可能である.この意味で理学療法士にとって修士への門戸が大きく開けたと言えよう.また,本大学院は,5年一貫教育の大学院とする構想であり,現在の前期(修士)課程に加えて,後期(博士)課程を1996年度に設置する計画である.これが実現すれば,理学療法士の博士号取得についても大きく前進することになる.

 他方,障害科学専攻は基幹講座3講座6分野と,協力講座2講座とから成る学際的な大学院である.一期生として入学した大学院生も,これにふさわしく,理学療法士・作業療法士といった医療職だけでなく,工学をはじめとしてさまざまな専門性と経歴の人材が入学してきている.

 したがって,障害科学専攻の多様な領域のすべてについて詳述することは難しいが,本専攻の概要について紹介し,筆者が所属する運動機能再建学分野を例に,理学療法士の立場から,本大学院が目指す役割と教育について述べてみたい.

1ページ講座

リハビリテーション関連領域の重要略語集・4

著者: 大川弥生 ,   大田喜久夫

ページ範囲:P.263 - P.264

D ①depression うつ病.②diopter,dioptry ジオプトリー,曲光度《レンズの屈折力の単位》.

D/A ①developmental age 発達年齢 ②digital-analog デジタルアナログ変換.

プログレス

麻痺性斜視の治療

著者: 大平明彦

ページ範囲:P.265 - P.265

 1.麻痺性斜視とは

 両眼の視線が平行にならず,一眼は見ようとする方向を見ていても,他眼がその方向よりも内方,外方あるいは上下方向にずれて見ている状態を斜視と言う.眼球が上下・左右いずれかの方向に充分動かないために視線のずれを生じる場合を麻痺性斜視と言う.このような眼球運動制限は無いが両眼の視線を同一方向に保つことができなくて視線がずれてしまう場合を共同性斜視と呼び,単に斜視と言えば通常こちらを指している.眼球運動は眼球壁に付着する外眼筋の収縮と弛緩とにより行なわれる.外眼筋の他端は眼球を取り巻く円錐状の骨壁(眼窩骨)それも大部分は眼球よりもさらに奥の眼窩尖端部に付着しているいる.

 眼球運動制限を生じるような疾患は種々あり,先天性のもの,眼球周囲軟部組織の異常,外眼筋自体の異常や外眼筋支配神経自体の異常によるものなどが挙げられる.麻痺性斜視の状態では,視線ずれによる複視(ものが二つに見える.)や,麻痺方向を注視しにくいということに患者は悩まされる.

理学療法草創期の証言

稀少価値の時代から

著者: 佐々木伸一

ページ範囲:P.266 - P.266

 突然,「『理学療法草創期の証言』を書け.」との原稿依頼.「えっ,何かの間違いじゃない.僕は,まだそんな歳じゃないよな.」と思わずスタッフに同意を求めた.「理学療法草創期の証言」とは,大先輩の諸先生方が開拓精神と苦労を生々しく書かれるところ.私は,草創期を果敢に過ごされた諸先生方に,叱咤激励され育てていただいた者であり,はたして草創期を語るに相応しいと言えるかどうか.

岡山理学療法研究懇談会の創設から

著者: 森剛士

ページ範囲:P.267 - P.267

 初めに

 我が国の医療の中に理学療法の専門職が誕生したのは,1965年に「理学療法士及び作業療法士法」が公布・施行された後,1966年2月20日に第1回国家試験が実施され,183名の合格者に理学療法士として厚生大臣より免許が交付されたときである.

 その後,1966年7月17日に110名の会員によって日本理学療法士協会が設立され,1972年1月16日には厚生省管轄の社団法人認可を受け,現在では1万2千名を超える組織となり,国内・国外からも認められる存在となった.このことは多くの諸先輩方の長年の努力によって達成されたことは言うまでもない.ここに理学療法草創期の証言として,岡山県の理学療法士誕生から現在に至るまでの経過を報告する.

あんてな

理学療法士養成校の新設計画の動向

著者: 高木昭輝

ページ範囲:P.268 - P.268

 理学療法士諸姉,諸兄(以下皆さん,とさせていただきます.)には,近ごろの理学療法士養成校の新設の計画に対しては多分に,皆さんの情報のアンテナを高く掲げて,関心をお持ちのことと思います.

 今回,小生が卒前教育部を担当させていただいた,ということで,当面1995年度,1996年度の新設の予定を書くように言われましたので,主として日本理学療法士協会事務局,卒前教育部などで集められた情報を基にお知らせ致します.皆さんの中でより正確で,詳しい情報をお持ちの場合には,日本理学療法士協会事務局や卒前教育部もしくはそれに相当する部局に情報をお送りくださると幸いです.宜しくお願い致します.

新人理学療法士へのメッセージ

見方を換え,相手の立場に立ってもみて……―私の経験から言えること

著者: 寒川美奈

ページ範囲:P.270 - P.271

 *初めに

 新卒理学療法士の皆さん,卒業おめでとうございます.きっと今ごろは,期待と不安でいっぱいのことでしょう.私も臨床に出てもうすぐ4年が経とうとしていますが,「頑張ろう.」と思ったり,「もうだめだ.」と思ったりの繰り返しで,何だかあっという間に過ぎていったような気がします.今では考えられないような失敗をして,他のスタッフに迷惑をかけてしまったこともありました.こんな私ですから,皆さんへのお話をまかされてもよいお話はできないとは思いましたが,少しでも皆さんを勇気づけられればと思い,今までの自分を思い出しながら反省すべき点を含めて,お話していきたいと思います.

皆さんにささげる五つのポイント

著者: 島田裕之

ページ範囲:P.272 - P.273

<初めに>

 はっきり言って私は,まじめな学生ではありませんでした.授業はさぼるし,出席しても居眠りはするしで,今考えると,貴重な時間を無駄にしていたと,深く反省しています.しかし,こんな私でも,ある「きっかけ」で自分でも驚くくらいまじめになってしまいました.(自分で言うのはおかしいけれど御容赦ください.)このような私が,新人の皆さんに立派なことは言えませんが,そのまじめになってしまった「きっかけ」について述べさせていただきます.また,理学療法士として2年間という短い期間ではありますが,その中で経験し,現在,痛感している5点,「学習とは何か」・「チームアプローチ」・「必要なのは情熱である」・「まず始めることがたいせつだ!」・「研究家としての理学療法士」について,甚だ私見ではありますが,本音をお話しします.新人の皆さんが,それぞれ私の考えについて評価していただければ幸いです.

患者から人への蘇りに,自分自身も培って―OLから転身した理学療法士のつぶやき

著者: 藤田智香子

ページ範囲:P.274 - P.275

<初めに>

 新しく理学療法士になられた皆さん,おめでとうございます.早いもので私も,理学療法士になってから10年の月日が流れました.実は私は理学療法士になる前,OLをしていました.仕事は電話番や帳票類の整理などです.待遇もまあまあで,結婚前の腰掛けとしてはいい職場だったと思います.ただ男性社員がだんだんに新しい仕事を与えられて頼りにされていくのに引き替え,私は同じことの繰り返しで,そのうち「このままでいいのかなあ.」という気持ちになりました.また大学を卒業するとき,机に向かってする仕事よりも,体を動かす仕事を探したけれども,なかなか就職先が見付からずOLになり,「何か資格をもっていたら…….」と痛感したことを思い出しました.それで何か資格を取ろうと考えたあげく,結局OLを辞めて理学療法士の養成校に入学し,現在に至ります.

パワー全開で,時代を乗り切れる理学療法士に

著者: 田中正則

ページ範囲:P.276 - P.277

 全国の新人理学療法士の皆様,おめでとうございます.新しい生活環境にも慣れましたか.4月は年度が変わる月でもあり,皆さんを迎える私たちも,昨年度やり残したことを反省し新しい事業を立案したり,人事異動に伴い職場のスタッフが替わったりと,慌ただしい中にも緊張感のみなぎる日々を過ごしております.日ごろ臨床でしか仕事をしていない私が,新しく社会に第一歩を踏み出した全国の新人の皆さんに何を伝えればよいか迷いましたが,私の経験した10年間の理学療法士としての生活を振り返り,私自身の自己反省の気持ちをまとめる中で,何か共感してもらえるものが生まれればと思いペンを執ることに致しました.

自らの力を高め,患者さんにそのすべてを

著者: 山嵜勉

ページ範囲:P.278 - P.279

 新理学療法士誕生,心からの喝采を贈ります.リハビリテーションの世界に理学療法士が誕生してから四半世紀が過ぎました.この間多くの若者が理学療法士を目指して,学窓を巣立って行きましたが,未だに理学療法士不足が続いています.

 小児中枢神経疾患から始まったリハビリテーションの対象は,成人中枢神経疾患,整形外科疾患へと拡がり,高齢化社会の到来を目前にして,老人を含む厖大な数の人々がさらに多くの理学療法士を必要としています.

印象に残った症例

訪問活動を通じて中高年脳性麻痺者の在宅生活を考える

著者: 伊藤隆夫

ページ範囲:P.281 - P.283

 Ⅰ.初めに

 当院は高知市の中心部に位置する都市型のリハビリテーション専門病院である.病床数は145床で,救急病院を母体とし,老人保健施設,訪問看護ステーションを併設,また高知市より在宅介護支援センターも委託され,設置している.急性期よりのリハビリテーションが可能で,在宅支援型(デイケア・ショートステイ重視)の老人保健施設を背景に,訪問看護ステーションを中心として訪問医療活動を積極的に推し進めている(図1).

 筆者は理学療法士として継続医療室発足と同時に訪問活動に従事し,現在,在宅介護支援センターと訪問看護ステーションとから構成される当院における在宅支援の拠点としての在宅総合ケアセンターの責任者を勤めている.

 この間さまざまな対象者に訪問活動を行なってきたが,その多くは脳卒中後遺症の高齢の重度障害者であり,このところ中高齢の脳性麻痺の対象者が増加してきている.その中の一症例との関わりで,障害者を地域で支えていくことの重要性,脳性麻痺者の加齢により引き起こされるさまざまな問題点,そしてそれに対する医療の対応など,多くのことを考えさせられたので,ここに紹介したい.

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文献抄録

ページ範囲:P.284 - P.285

編集後記

著者: 高橋正明

ページ範囲:P.288 - P.288

 いよいよ四月です.新しく理学療法士になられた方々,理学療法士の学校に入学された皆さん,おめでとうございます.これからの御活躍をおおいに期待しています.

 本誌では1巻に1号は脳卒中をテーマにして特集を組んでおります.そこで過去の片麻痺の特集を見ますと,およそ5~6年ごとにその時代を総括する企画がなされているようです.今回は,これまでの15年間のレビューに挑戦いたしました.この15年は,それ以前とは明らかに異なった歴史が作られてきたと感じられたからです.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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