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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル29巻7号

1995年07月発行

文献概要

特集 関連領域―頭頸部の障害とリハビリテーション

平衡機能障害

著者: 徳増厚二1

所属機関: 1北里大学医学部耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.439 - P.445

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 Ⅰ.はじめに

 ―日常生活動作における平衡機能の役割

 ヒトの2足の直立と歩行は,重心位置の高い体重を狭い足底で支持する不安定な姿勢である.直立では,抗重筋の適度な緊張に加えて,体の傾きが立ち直り反射で正され,歩行では,一定のプログラムに従った神経,筋の活動とともに,視覚,脊髄反射,前庭反射,小脳を含む錐体外路系が姿勢を安定させる.また,視刺激による眼反射,前庭眼反射,さらに頸眼反射などが,頭部運動による網膜上の像のブレを防ぎ視力を良くするための眼球運動を受け持つ.体平衡は,視覚系,前庭系,深部知覚系の入力,それらの中枢,そして,四肢躯幹の運動系,眼球運動系を出力とした系であり,日常生活動作において,立位姿勢,運動姿勢を維持し,安定姿勢を保つために協調して働いている.

 立位の静止,運動では,行動の目的のみを意識するだけで平衡反射が円滑に機能するが,求心性入力部やその中枢に異常があるとめまいを感じ,平衡障害が現れる.

 平衡障害における起居動作の不自由は,ポリオ,脊損,片麻痺など重度運動麻痺と比較すると,患者の自立に支障をきたすことは少ない.しかし,その対応を誤ると,患者の日常の行動は極めて制限される.生活の質の向上をめざし,平衡機能を考慮した患者の生活指導と,平衡障害の治療への関心が望まれる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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