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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル29巻9号

1995年09月発行

雑誌目次

特集 カンファレンスの在り方

essence of the issue

ページ範囲:P.589 - P.589

 本号は理学療法士の日々の業務のなかでも身近で重要な位置を占めている「カンファレンス」に焦点をあて特集を企画した.

 理学療法士が勤務する医療機関,保健・福祉施設などでは,円滑な業務運営ができるように多種多様な会議(症例検討会,スタッフミーティング,各種委員会,主任者会議,運営会議など)が毎日のように開催されており,会議に追われている方も少なくない.

カンファレンスの在り方―その基本的意義を問う

著者: 奈良勲

ページ範囲:P.590 - P.594

 Ⅰ.はじめに

 「カンファレンスの在り方」という特集テーマは当ジャーナルで初めて企画される.

 筆者に与えられた課題は「カンファレンスの在り方―その基本的意義を問う」である.なぜ今さら,カンファレンス(conference)の在り方を問うのかと疑問に感じる読者もいると思う.ここでいうカンファレンスを理学療法部門やリハビリテーション部門で開かれる検討会,もしくは会議と規定すれば,それを体験していない読者は皆無であろう.だが,われわれはカンファレンスの基本的な意義や在り方をどれだけ理解・認識してそれに臨んでいるのだろうか.筆者をはじめ,ほとんどの読者も,それを嫌というほど体験してきたにもかかわらず……

 そのようなことで,本テーマについて初心にかえって整理し,それ自体の語源とそれに関連した事象,そしてそれが有意義で,かつ効率的であるための条件などについて言及してみたい.

私のカンファレンス考:時計台病院式ケースカンファレンス/多職種間会議―地域に関わるPTとしての責任/患者・家族も同席するカンファレンス/忙しいからこそカンファレンスを!/カンファレンスとチームアプローチ/コミュニケーションの手段として/チームアプローチとしてのカンファレンスと理学療法/良きチームアプローチの構築のために/施設に合ったやり方で創意工夫を!/情報の共有から問題の解決へ/「学科内会議」についての私見/臨床と教育の狭間で/言葉で伝えることの難しさ/カンファレンスの成果を医療サービスの改善へ/“つまらない会議”の方程式/理想のカンファレンスとは/スタッフの“やる気”が支えるカンファレンス/“専門性”という言葉の盾を取り除こう/型にはまった会議は不要/単なる“伝達の場”としてでなく……

著者: 湯元均 ,   下谷守 ,   都竹誠 ,   鈴木康夫 ,   吉野奈奈 ,   星永剛 ,   隆島研吾 ,   内田成男 ,   辻原美智雄 ,   熊田仁 ,   後藤昌弘 ,   中川法一 ,   湯浅英夫 ,   永冨史子 ,   薬師寺高明 ,   三谷管雄 ,   梶村政司 ,   越智淳子 ,   金指巌 ,   髙﨑伸一郎 ,   渡部雄一

ページ範囲:P.595 - P.612

 昭和30年代から50年代のリハビリテーションは温泉治療の収容型が中心であり,当院院長はその頃,約2年間シカゴのノースウエスタン大学でリハ医学を学び,帰国後,収容型のリハ医療を経験した.それらの経験をもとに院長は昭和57年,在宅生活を中心に据えた都市型のリハ病院を志向して札幌市の交通の便の良い中心地に当院を開設した.以下では,当院入院患者のリハ診療方針を設定するためのカンファレンスについて述べる.

<座談会>カンファレンスの在り方を考える

著者: 網本和 ,   内山靖 ,   高橋正明 ,   奈良勲 ,   吉尾雅春 ,   鶴見隆正

ページ範囲:P.613 - P.622

 奈良(司会) 「カンファレンスの在り方」というのは本誌で初めて取り上げる特集テーマですが,この特集は,基調原稿と座談会,20名の読者からお寄せいただいた報告から構成されることになります.この座談会では,そういうものを参考にしながら,カンファレンスについてお話をいただきたいと思います.

 カンファレンスというと日本語では“会議”ということになろうかと思います.理学療法部門あるいはリハビリテーション部門でも,ごく普通にカンファレンスが開かれていますが,それを理想的な形で行うのは大変むずかしい.形だけの問題でもないし,カンファレンスに臨む姿勢,その人の知識,感性,哲学といったことがカンファレンスを左右すると思うんです.そういうことで,ご出席の方々から,臨床や教育研究などの経験を踏まえ,理学療法という仕事との関連のなかでカンファレンスをどのように捉えておられるか,あるいは捉えてこられたかお話ししていただければと思います.

とびら

夜明けへ

著者: 山下顕史

ページ範囲:P.587 - P.587

 一夜にして街が消えた.多くの方々が亡くなった.夢ではなく現実に自分の目の前で起こった一瞬の出来事であった.

 1995年1月17日午前5時46分,兵庫県南部を中心に都市直下型大地震(阪神・淡路大震災)が起こった.ライフラインが寸断され,食事,トイレ,入浴などの日常生活の基盤が失われた.数日間,私は何をすれば良いのか,何から手を着ければ良いのか分からなかった.

入門講座 在宅障害者を支援する社会資源の活用・3

ホームヘルパー派遣制度の活用

著者: 山本和儀

ページ範囲:P.623 - P.628

 Ⅰ.ホームヘルパー派遣制度とは

 ホームヘルパー派遣制度は在宅福祉サービスの3本柱の1つで,新ゴールドプランで17万人という数字が目標値として掲げられている,在宅介護を支援していく上での重要なサービスの1つである(表1).制度設定の目的は,ホームヘルパーの業務を通して,在宅介護者の負担を緩和し,対象者(児)の自立を援助することにある.

講座 車いす・義肢・装具の臨床知識・3

大腿・下腿義足ソケット

著者: 野本彰

ページ範囲:P.629 - P.634

 Ⅰ.はじめに

 現代義肢学は,材料工学,機械工学の発展とともに,生体力学の理論を背景に義肢の解剖学的適合,軸位の決定がなされ,様々な理論や新しい義肢の部品が開発されている.例えば,歩行時に足部にかかる力を歩行の推進力に変換しようとするエネルギー蓄積型足部や,マイクロコンピュータで空圧シリンダーの弁をコントロールして自然な歩行あるいは走行を可能にした膝継手(インテリジェント膝®,図1),チタンによる軽量化などがあり,これらの新しい義肢パーツは,切断者にとって,ADLの円滑化のみならず,スポーツへの参加などQOLの向上にも役立っている.

 一方,言うまでもないことだが,こうした新しい義肢パーツも,断端と義肢のインターフェースであるソケットの適合状態が良好でなければ,その機能は十分に発揮されない.また,周知のとおり,ソケット自体もここ十数年で大きく変わり,ISNYソケットをはじめ,適合理論の変化に合わせた形状の変化など様々な開発が行われている.

 そこで本稿では,大腿義足,下腿義足の義足ソケットを中心に,ここ十数年の流れについて述べるとともに,若干の私見を述べさせていただくことにする.

プログレス

MRSA感染対策の最近の傾向(1)

著者: 鈴木達夫 ,   奥田舜治

ページ範囲:P.635 - P.635

 病院内でのMRSA感染防止対策については,多くのマニュアルや手引き書が発行されているが,最近になって特に画期的な対策方法が開発されたという情報はない.

 今のところ,基本的には,手洗い励行の推進とインフェクション・コントロール・プロフェッショナル(以下ICP)の必要性がいわれているが,ICPの養成には時間がかかることもあり,差し迫っての対策は手洗いに終始する感が強い.しかし,その手洗いの励行によってMRSAに関する病院内感染が減少したとの直接的相関関係についての報告は少なく,また判断基準がないことから,過度な手洗いのために蜂巣織炎を起こすなどの弊害も生じている.

理学療法草創期の証言

理学療法士の誕生へ

著者: 浅野達雄

ページ範囲:P.636 - P.636

 1949年,大阪が戦災からの復興を始めた頃,大阪大学医学部附属病院整形外科物療室に,はり師,灸師の免許で研修生として入職し,1952年に雇員(公務員)となった.焼け残った大阪大学整形外科には患者が溢れ,今では医学の進歩と疾病構造の変遷で目にしなくなった疾患をもった患者が多かった.整形外科的疾患の後療法といっても,理学療法の知識や技術を学ぶ専門書は少なく,医師や先輩の指導によって,ほそぼそと筋力増強訓練や可動域訓練を行っていた.

 1959年,七川歓次教授(大阪大学→滋賀大学)からフランス留学の土産に筋力テストの本(Daniel)をいただき,「勉強しなさい」といわれた.そこで武富由雄君(現・神戸大学教授)を講師に理論と実技の学習を行ったり,筋力テストの8ミリ映画を作って病院勤務者を対象に勉強会を開いたりした.

泥臭みのする理学療法士を目指して

著者: 松瀬多計久

ページ範囲:P.637 - P.637

 私事になるが,病院や医院の門を訪れては,自分の病気に重ねて,医師や看護婦さんの頭の高さに幾度となく嫌な気分を味あわされたことがあった.そんなことがあったためか,同じ医療人になるとしたら,もっと病への気配りができ,人の気持ちを配慮できる医療職はないものかと考えていた.実は叔父が医師をしていて,その道に進むことを考えたこともあったが,それには私の脳味噌のほうが至らず,結局,第2期生として清瀬のリハビリテーション学院を目指したのである.新しい医療職として誕生したばかりで,人に尋ねられてはリハビリテーション医学の説明をするもののかなかな理解されなかったことが思い出される.

あんてな

第30回全国研修会の企画

著者: 渡辺洋介

ページ範囲:P.638 - P.638

 今年10月26,27の両日,「高齢化に対応する理学療法」をテーマとして,私たちの地元で全国研修会が開催される.ぜひご参加いただきたい.

雑誌レビュー

“Physiotherapy”1994年版まとめ

著者: 大渕恵理

ページ範囲:P.639 - P.643

はじめに

 1994年は英国理学療法士協会設立100周年に当たり,協会発行の学術誌“Physiotherapy”にとっても発刊80巻という節目の年となっている.1世紀の歴史の上に立つ理学療法士が,新たなる1世紀に向かって何を見据えているのか,私たち後輩の国の理学療法士にとっては興味深いところである.

 今回のレビューでは,テーマの独自性,論旨の論理性,研究方法の妥当性・信頼性から判断して,一定の水準にあると思われる論文を中心に紹介してゆきたい.数を多く紹介することに力を入れていないことを予めお断りしておく.

クリニカル・ヒント

脳卒中に対する短下肢装具―特に金属支柱付き短下肢装具について

著者: 浅山修

ページ範囲:P.644 - P.646

 1.はじめに

 義肢装具士の誕生は,医学的リハビリテーションの質の向上に大きく貢献する喜ばしい事実である.しかし反面,「義肢装具に関することは義肢装具士に任せれば良い」といった安易な考えが生まれ,理学療法士の義肢装具に関する理解が低下していないだろうか.

 近年,早期リハビリテーションの普及により,脳卒中に対する初回装具処方をリハビリテーション専門病院で行うことはほとんどなくなった.しかし,所持してきた装具に疑問を抱かざるを得ないケースも増加しているのが現状である.

 脳卒中に処方される装具のほとんどが短下肢装具(AFO;ankle-foot orthosis)であり,さらにその大半がプラスティック製である.プラスティックAFOは各種デザインの氾濫により,選択に混乱をきたしているのが現状であるが,高度の内反尖足に対しては,依然として両側金属支柱付きのAFO(以下SLB)が真価を発揮する領域である.

 今回は,脳卒中に対するAFOのなかでも,現在主流となっているプラスティックAFOの原点ともいうべきSLBについて,筆者が臨床を通じて得たものを記し,SLBについて再考してみたい.

1ページ講座

リハビリテーション関連領域の重要略語集・9

著者: 太田喜久夫 ,   大川弥生

ページ範囲:P.648 - P.649

P ①pulse 脈拍.②puncture 穿刺.③protein 蛋白質.④plan 計画.

PA ①psychoanalysis 精神分析〔学〕.②pulmonary artery 肺動脈.③pulmonary atresia 肺動脈弁閉鎖〔症〕.④postero-anterior 後方から前方へ,背腹方向→P-A⇒AP.

学会印象記 第12回世界理学療法連盟・学会に参加して

カンファレンスの真髄をみた

著者: 内山靖

ページ範囲:P.655 - P.659

 アメリカ理学療法士協会(APTA)会長Marilyn Moffat女史の澄みわたる美声で幕を開けた第12回世界理学療法連盟(WCPT)・学会は6月25日(日)~30日(金)の6日間にわたって開かれ,熱のこもっこ議論が交わされました.

書評

江畑敬介・浅井邦彦(編)―「分裂病の病院リハビリテーション」

著者: 河崎茂

ページ範囲:P.612 - P.612

 近年の精神医症を取り巻く情勢は,かつてないほどの大きな変化を示してきている.特に1995年7月1日から施行された「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」いわゆる精神保健福祉法では,これまでの保健・医療施策に加えて,精神障害者に対する福祉施策が重点的に盛り込まれた.

 今後は,社会復帰の推進のみならず精神障害者の自立生活の援助や社会参加の促進のための援助が,精神医療の重要課題となるであろう.

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文献抄録

ページ範囲:P.662 - P.663

編集後記

著者: 鶴見隆正

ページ範囲:P.666 - P.666

 戦後50年という節目の日となった8月15日,全国各地でこの半世紀を振り返りながら戦争と平和の意味をあらためて問い直す集会が開かれ,今日の平和と反映は尊い犠性の上に築かれていることを忘れてはならないと再認識しました.

 しかし,未だボスニア,チェチェンなど世界各地で民族・宗教紛争が続いており,さらに中国,フランスが核実験を繰り返そうとしています.世界の恒久平和の道はまだまだほど遠く感じます.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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