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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル30巻1号

1996年01月発行

雑誌目次

特集 Kinetics

essences of the issue

ページ範囲:P.3 - P.3

 本号の特集のテーマはもともと呼吸器疾患のリハビリテーションであったのを,肺理学療法の側面以外に注目し,呼吸循環トレーニングの観点からとらえようと.O2 Kineticsを俎上に餐じることとなった.O2 Kineticsは特に運動処方に関して注目すべき概念であるが,呼吸循環器疾患での理学療法との検討はこれまでほとんどなされてこなかった.そこで今回はO2 Kinetics の基礎的側面,急性期から慢性期に至る呼吸循環器疾患での理学療法のなかでの分析について先駆的な業績をもっておられる各先生方にお願いした次第である.

O2 Kineticsの基礎

著者: 吉田敬義 ,   林直享

ページ範囲:P.5 - P.11

 1.O2 Kineticsの基礎

 運動時には,そのエネルギー需要量に応じて適切な代謝系が働いてアデノシン3燐酸(ATP)を供給している.例えば運動強度が低いときには,運動のエネルギー源として主に有酸素系が働いてATPを合成する.一方,運動強度が高いときには有酸素系のエネルギー源だけでは運動のエネルギー需要量を賄うことができないので,無酸素的代謝も働いてATPを合成するようになる.このように,運動時のエネルギー供給機構は,適切に代謝系が調節されて働くことが特徴的である.

呼吸器疾患におけるO2 Kinetics

著者: 金尾顕郎 ,   小林茂 ,   大久保衛 ,   栗原直嗣 ,   大塚敏広 ,   藤井達夫

ページ範囲:P.12 - P.18

 1.はじめに

 呼吸機能障害患者は,動作時に呼吸障害が増強され体動時の呼吸困難感を訴え,社会生活や日常生活が障害される.この日常生活の制限が運動量を減少させ,ますます全身の筋の適応が低下するという悪循環を繰り返す.われわれは,この慢性閉塞性呼吸器疾患(COPD)患者の二次的障害について,薬物療法により症状が安定し,そして種々の呼吸訓練が修得された患者に,実際の日常生活の基本となる運動能力改善を目的にした運動負荷訓練を行っている.

 従来,COPD患者の運動負荷訓練の効果の評価として最大酸素摂取量(VO2max)1),最大負荷量2),歩行距離3),嫌気性閾値(AT;anaerobic threshold)4)などの指標が用いられているが,今回は訓練効果の評価として運動時の酸素輸送能や筋での酸素利用能の指標と考えられる運動負荷訓練でのVO2の立ち上がりの時定数について,①測定と再現性,②定常負荷訓練での変化を調査した.その結果をもとに,COPD患者のO2Kineticsの意義について検討したい.

心疾患とO2 Kinetics

著者: 鈴木規之 ,   高橋哲也 ,   田辺一彦

ページ範囲:P.19 - P.25

 1.はじめに

 近年,心筋梗塞,冠動脈バイバス術後,高血圧などの循環器疾患の治療の1つとして運動療法が積極的に施行されている.このうち,心筋梗塞や,バイパス術後の急性期の心臓リハビリテーションの主な目的は,循環器疾患に基づく長期臥床により生じた身体的・精神的・社会的調節障害(デコンディショニング)を運動により改善して患者のQOL(quality of life)を高めることにある.運動療法を施行するに当たり,最近では運動を安全に施行するために,運動処方時に心肺運動負荷試験を施行,その患者の嫌気性閾値(anaerobic threshold;AT)を測定し,それを基に患者個々に適した運動処方を行う方法が用いられている.

 現在,運動療法の運動装置としては,トレッドミル,自転車エルゴメーターが主に用いられているが,その運動姿勢は生体に種々の影響を与えると考えられる.そこで本稿では,初めに運動姿勢とO2 Kineticsの関係につき概説し,次に病態ごとのO2 Kineticsとトレーニング方法およびその効果について述べる.

慢性呼吸不全におけるO2 Kineticsとその臨床応用

著者: 神津玲 ,   田平一行 ,   真鍋靖博 ,   中村美加栄 ,   柳瀬賢次 ,   千住秀明

ページ範囲:P.26 - P.33

 1.はじめに

 Wassermanらが示した,筋組織における内呼吸と肺における外呼吸のカップリングに関するガス輸送機構のシェーマ1)のごとく,運動を続けるためには,運動筋の酸素需要の増大に対応して酸素供給を絶え間なく続けなければならない.つまり,換気系,心循環系,筋代謝系の各過程が密接に,かつ効率的に噛み合うことが必要である.

 しかし運動の開始直後において,エネルギー源として有酸素的代謝過程が十分にはたらくには,心循環系や運動筋での酸素抽出能(酸素利用能)などの時間的な遅れが存在するために,運動の開始時における酸素摂取量の動態はある時間遅れを伴った反応を示す.このような運動開始時にみられる酸素摂取量の応答特性をO2 Kineticsという2)

 O2 Kineticsは運動に対する酸素摂取量の応答特性を評価し,運動処方に応用する上で注目すべき概念であるといわれている.本稿では,慢性呼吸不全患者のO2 Kineticsの特性について概説するとともに,理学療法との接点,ならびに,その臨床応用の可能性について考察する.

とびら

理学療法士である前に

著者: 桝田康彦

ページ範囲:P.1 - P.1

 昨年1月17日,わが家を震度7の地震が襲いました.その日から数日間に,自分の思いとは関係なく,多くのことを体験しました.そして,多くのことを学び,理学療法士ではない自分に気がつくことができました.

 震災直後の行動は,すべてが家族を守り,家族の安全を確保するためのものでした.その日までは,3か月になるわが子と家庭を妻まかせにし,自分自身の生活リズムに,妻と子どもが入り込んでいる位にしか考えなかった生活が一変しました.まず生死と安全の確認,子どものための水の確保,妻の母乳のための食糧の確保,妻と子供の避難先の確保,等々.

入門講座 苦労する科目の教育実践・1

理学療法概論 学習への動機づけのために/明確な教育目標のもとに

著者: 西本東彦 ,   三上久一 ,   小川克巳

ページ範囲:P.34 - P.42

 Ⅰ.はじめに

 平成元年に行われた理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則の改訂によって登場してきたのが「理学療法概論」である.このほかに「リハビリテーション概論」と「病理学概論」があるが,われわれにとっては「理学療法概論」,「リハビリテーション概論」が理学療法士養成教育上二大概論ということができる.

 さて,「概論」とはどのような意味をもつかというと,広辞苑(岩波書店)には「全体にわたって大要を述べたもの」とある.また,金田一京助らによる新明解国語辞典(三省堂)には「その学問の輪郭と研究法の大体を説いたもの」となっている.つまり,「概論」はいろいろな論(学問)に用いられ,導入と全体把握という重要な役割を果たす,あるいは果たさなければならないものなのである.

 ところで,理学療法士であるということは,理学療法を駆使してリハビリテーション医療チームの一員として力を発揮したり,理学療法を福祉の場で生かして貢献したり,また,理学療法士養成教育に関わったり,そして,理学療法学の研究活動に身を置くというように様々な分野で活躍しているが,その根底には理学療法あるいは理学療法学が存在する.

 だからこそ,理学療法専門科目の事始めに「理学療法概論」(理学療法学概論であるべきだったと思う)がもち込まれたと考える.

 そして,この教授に携わること6年.学生にいかに興味をもたせ,また正しい知識を植えつけると同時に,リハビリテーション医学やその他の医学との関連を柔軟にとらえられる態度の育成を図らなければならない.課題をまっとうさせることは至難であり,そのうえ歴史的にも新しく経験は十分とはいえないが,諸賢からのご指導を期待して報告する.

 なお,指導要領による「総論」の部分についてのみ述べることを断っておく.

講座 運動療法とリスク管理・1

心疾患患者の運動療法とリスク管理

著者: 渡辺敏

ページ範囲:P.43 - P.48

はじめに

 心疾患患者に運動療法を実施する場合,だれしも当然のことのように心電図(electrocardiogram;ECG)や血圧(blood pressure;BP)などを監視して,リスク管理を実践していることと思う.これは本疾患の特徴から,ECGやBPなどからの情報が,訓練中止基準や病態管理の重要な指標となることに加え,これらの管理を怠ることは,病態を悪化させることにつながるからである.また,運動の制限因子(limiting factor)1)が,筋・骨格・神経などの運動器以外にある心疾患(例えば,走ろうと思えば走ることのできる下肢機能は残存している)にとって,制限因子を管理することは,患者教育を含めまさにリスク管理そのものである.

 そこで今回,私に与えられたテーマの“リスク管理”では,前述のように病態に直接関与するリスクや,心筋梗塞(myocardial infarction;MI)の心筋治癒過程に伴うリスクの考え方,睡眠不足や過労または環境因子などの身体運動に関与するリスクなど,心疾患を取り巻くさまざまなリスクについて解説する.

学会印象記 第2回QOL・ADL研究会

「専門性」と「協業性」をともに高めるために

著者: 森島健

ページ範囲:P.48 - P.48

 昨年11月16日と17日の2日間にわたり第2回QOL・ADL研究会が東京日本橋の武田薬品にて開催された.実は,第2回ということから比較的新しい研究会なのだろうと,何をやっているのか興味本位が先に立っての参加であった.ただただ好奇心だけで2日間参加させて頂いた.同僚と2人で参加したのであるが,会場に入るといつもと何か雰囲気が違うような気がしたのは何故であろうか.顔見知りのPTにはほとんど会わなかったのである.PTの参加者が少ないのか,私に友人が少ないのか定かではないが・・.今回のテーマは「QOL向上に向けた直結するADLプログラム」であり,2日間のプログラムは特別講演あり,シンポジウムあり,一般演題発表ありとかなり充実したものであった.

プログレス

培養皮膚の臨床応用

著者: 熊谷憲夫

ページ範囲:P.49 - P.49

 厚さ0.2mmにすぎない表皮により生体内部は守られ生命が維持されている.体の広範囲に熱傷を受傷するとこの機能が損われ,死に瀕する.熱傷創がすみやかに表皮でカバーされれば生命の危機を脱するが,創面を閉鎖できるだけの皮膚,すなわち表皮が残っていないと治療は難しく死亡率も高い.ところが,Greenら(1975年)の研究により表皮細胞を培養すると,切手大の皮膚から1か月で全身を覆えるだけの培養皮膚(表皮)を移植できるようになった.数層から10層程度の表皮細胞から構成された表皮シートを自家移植すると創面は上皮化・治癒する.1981年以降,主として重症の熱傷患者の治療に使用され,体表面の90%以上を受傷した患者の救命例も多数報告されている.同種培養表皮移植についても臨床応用が進んでいる.Viabilityのある表皮細胞から産生される種々のサイトカインにより,従来の創傷被覆材にはみない創傷治癒促進効果が認められ,将来性のある素材として注目されている.著者の施設では,1985年に本邦で初めて培養表皮移植に成功し,その後,広範囲熱傷,熱傷瘢痕,アザ,刺青,皮膚科疾患,潰瘍など計260症例以上に自家ないしは同種培養表皮移植術を行ってきた.

あんてな

重度の障害者だからできたこと―People Firstふれあい講演会&ミニ福祉機器展

著者: 上村数洋

ページ範囲:P.50 - P.51

 「頸髄損傷者連絡会・岐阜」では昨年10月8日(日),可児市(岐阜)の福祉センターにおいて,「全国頸髄損傷者連絡会・中部地区大会」の開催に併せて「People firstふれあい講演会」と「ミニ福祉機器展」を開催しました.当日は,あいにくの雨模様にも関わらず,開会と同時に,県内外から行政,福祉,リハビリテーションの関係者をはじめ,障害者やその家族など約520人をこす参加者があり,ミニ福祉機器展の会場や午後の1時より始まったふれあい講演会も立ち席が出るほどの盛況ぶりでした.

Treasure Hunting

在宅ケアの推進に全力投球―備酒 伸彦

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.52 - P.52

 “Treasure Hunting(宝探し)”に最初にご登場いただく理学療法士・備酒伸彦氏は1961年2月生まれの34歳.理学療法の何たるかを知らないまま予備校で高知医療学院の存在を知り受験.卒業後は活動の場を郷里の兵庫県に求め,広野高原病院を経て91年に兵庫県立加古川病院に入職,現在,「但馬長寿の郷推進室」で地域リハビリテーションの第一線に立っている.

原著

荷重日内頻度がラットヒラメ筋の廃用性萎縮予防に及ぼす影響

著者: 山崎俊明 ,   灰田信英 ,   立野勝彦

ページ範囲:P.53 - P.57

 [要旨]本研究の目的は,総荷重時間を一定にした場合に,1日の荷重頻度の違いが廃用性筋萎縮に及ぼす影響を検索することである.2週間の後肢懸垂法にてラットヒラメ筋の廃用性萎縮を惹起し,荷重は5日/週行った.ウィスター系雄ラット(219±8g,n=18)を,①懸垂群,②懸垂中1日1回1時間荷重を実施する1回荷重群,③懸垂中,30分荷重を1日2回実施する2回荷重群,および④対照群の4群に分け比較検討した.

 ATPase組織化学的染色・分析の結果,タイプⅠの筋線維断面積は対照群と比較し,1回荷重群が65%,2回荷重群が54%に減少し,各群間に有意差を認めた.タイプⅡ線維では懸垂群(70%)と2回荷重群(71%)間に差がなかった.また,2回荷重群で著明なマクロファージの増加が観察された.筋線維タイプ構成比率は,実験群間に差がなかった.以上より,総荷重時間を一定にした場合,ラットヒラメ筋の廃用性萎縮の進行抑止に関しては,2回荷重より1回荷重が効果的なことが示唆された.

報告

老人保健施設における動作能力・訓練目的別グループ訓練の効果

著者: 金澤寿久 ,   植松光俊 ,   宮本千恵美 ,   西田宗幹 ,   久保田桂代

ページ範囲:P.58 - P.62

はじめに

 わが国では老人保健施設(以下,老健施設)の入所者およびデイケア利用者100名に対して理学療法士または作業療法士(以下PT,OT)1名の常勤者をおくことが義務づけられている1,2)

 しかし,現実的には利用者100名に対して1名のセラピストでは,運動療法を施行する場合,病院対応と同様の個別訓練形式では到底時間的に実施不可能である3).またこの個別訓練形式は,その対象者を受動的な姿勢にする要素を含んでおり,病院と社会との中間施設である老健施設の立場からも,自立姿勢を養っていく上で問題を有している.このことからも,老健施設は治療場面である病院での運動療法とは異なった独自性をもった運動療法実施の必要性があると考えられる.

 以上の問題点に対して,われわれは何らかの問題解決の糸口になるのではないかと意図して,秋津鴻池病院併設の老健施設「鴻池荘」において実施してきた運動療法システムを老健施設の運動療法の在り方の1モデルとして,機会あるごとに紹介してきた4,5).しかし,その効果を明確にし,このシステムの改善を図ることはさらに重要である.今回,この運動療法システム-動作能力・訓練目的別グループ訓練の概要を簡単に紹介するとともに,その効果について調べ,若干の知見が得られたので報告する.

クリニカル・ヒント

整形疾患に対する筋力の評価ならびに強化法の再考―変形性股関節症を中心に

著者: 佐藤房郎

ページ範囲:P.63 - P.65

 1.はじめに

 整形疾患に対する理学療法の多くは,ROM回復訓練や筋力増強訓練に時間が費やされるといっても過言ではない.中でも筋力増強については,中枢疾患と異なり患者の理解力に問題がないため,自己管理の下に自動運動や錘りなどによる抵抗自動運動が指導されていることが多く見受けられる.しかし,ROM制限や疼痛の問題を合併している場合,目的とする筋の強化は決して容易ではない.

 多くの患者は,患肢を何とかして動かそうとするため代償動作だけが出現しやすく,放置されれば代償動作が強化されてしまう.患者自身の「できるだけ大きく強く動けばよい」といった認識も考えられるが,理学療法士の指導法にも問題があるのではないだろうか.そこで整形疾患に対する筋力評価や筋力増強について,変形性股関節症を例に再考してみる.

プラクティカル・メモ

計測用松葉杖の試作

著者: 入江清五 ,   神先秀人 ,   河野一郎 ,   浅川康吉 ,   入江雄二 ,   中井裕之

ページ範囲:P.66 - P.67

 1.はじめに

 松葉杖の長さ決定では,握りの位置や支柱の長さなどを巻き尺で計測する教科書的方法と訓練用松葉杖などを用いて決定する実践的な方法の2つがある.後者の方法は臨床場面では一般的であると思われるが,問題点が3点ある.すなわち,蝶ネジによる調節が煩わしく,煩雑な作業であること,ネジ穴の関係から調節の間隔が大雑把になること,および実際の使用時に再度微調整をすることが多いことである.そこでわれわれは,これらの問題を解決すべく,調節が簡便で再調節の必要性の少ない計測用松葉杖を試作した.

1ページ講座 関連職種の法制度・1

医師

著者: 今田拓

ページ範囲:P.69 - P.69

 明治維新(1868),わが国は西洋医学を取り入れることになり,これに沿って文部省が東京等3府に医学教育の課程,臨床経験,開業免許など医師の身分と業務に関する「医制」(今の医療法と医師法を併せたもの)を制定(1874),これが後に全国的に統一された.1906年,独立した身分法として医師法が誕生,医師の免許取得資格を規定,開業免許を廃止,医科大学又は医学専門学校の卒業者のみが医師免許を取得できるなどが規定された.

 戦時体制下,国民医療法が制定され医師法もこれに包括されるが,戦後,社会保障制度の整備とともに,現在の医師法が制定され(1948),インターン制度を含めた医師国家試験も開始されたが,その後インターン制度は廃止され,代わって臨床研修医制度が創設された(1968).医師届出数は219,704(1992)である.

ひろば

第50回日本体力医学会大会に参加して

著者: 三浦雅史

ページ範囲:P.25 - P.25

 日本体力医学会大会は国民体育大会が開催される地域で毎年開かれる.今回の第50回記念大会は平成7年9月15~17日の3日間,福島市で開かれた.当日は台風12号の接近で最終日のプログラムまで聴けなかったのは残念であった.

 本大会には多くのスポーツ医学・科学の関係者が集うが,550の一般演題のうち,30題は理学療法士が筆頭演者で,共同演者を含めると50名にも及んでいた.年々この大会で理学療法士の演題報告および参加者が増えていることは素晴らしいことだと思う.

書評

―三好邦達(監修)―「早期リハビリテーションマニュアル」

著者: 黒川幸雄

ページ範囲:P.71 - P.71

 本書は,大学病院における20年間のリハビリテーションの総決算ともいえる著作であるが,従来のリハビリテーション関係の成書としては数少ない領域を視野に入れた大変利用価値の高い労作である.

 リハビリテーション医学医療は,ともすれば後遺症に対しての回復期・慢性期の医療にみられやすい弱点を有ているが,そもそも回復期・慢性期の経過の良し悪しは急性期の対処如何にかかっているわけで,急性期医療をリハビリテーション医学医療の視点できちんと把握して実践している施設は,大変数少ないことが予想される.この点からも本書の生まれる背景にある聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部における20年間のリハビリテーション医学医療の実践は大変貴重なものであり,本書の意義についても大いに語れ,読まれる部分があることを強調しておきたい.

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文献抄録

ページ範囲:P.72 - P.73

編集後記

著者: 網本和

ページ範囲:P.76 - P.76

 激動の95年が過ぎて新しい96年がやってきました.新たなはじまりには新しい酒,というべきでしょうか,今号には新企画がめじろ押しです.まず特集はO2Kineticsです.知っている人は知っているけれども知らない人は全く知らないという,テーマではないでしょうか.今号の4つの論文は平易でありながら高度な内容が示されており,O2Kinetics入門者には道程を示し,研究者にはその臨床応用への可能性を示すものとなっています.

 入門講座では『苦労する科目の教育実践』にかんする興味深い話題が提供されています.『理学療法概論』をどう教えるか.西本論文では動機づけを論点とし,小川論文では教育目標について検討されました.当世学生気質は優しさ,無批判,受動的であるとの小川氏の指摘は,逆に『理学療法概論』がいかに教えられるかにその学生の将来がかかっているわけで,その意味で概論担当者必読といえるでしょう.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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