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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル30巻10号

1996年10月発行

雑誌目次

特集 退院前指導とそのフォローアップ

essences of the issue

ページ範囲:P.687 - P.687

 在宅生活へ向けた退院・退所前指導の内容は,関わるチームカや理学療法士個人の力量や感性,人格などによっても左右される.単に運動機能だけにとらわれない,家庭生活の援助,あるいはQOL の維持・向上を目的とした退院・退所前指導とそのフォローアップのあり方について,知識と知恵を提供していただいた.

在宅介護支援センターからみた在宅患者の問題と退院前指導のあり方

著者: 宇佐見準子

ページ範囲:P.688 - P.694

 1.はじめに

 在宅介護支援センター(以下,支援センター)は在宅介護に関する総合的な相談に応じ,市町村,サービス実施機関,医療施設等との連絡調整その他の援助を総合的に行うことを目的とし,平成2年に発足した.これは市町村の委託を受け,特別養護老人ホーム,病院,老人保健施設等に併設され,24時間体制で活動している.適切な相談助言のため,ソーシャルワーカー(以下SW)と看護婦のチーム,または保健婦と介護福祉士チームがおかれている.

 静岡県では平成4年度より県民生部と理学療法士(以下PT)作業療法士会が協力し,在宅リハビリ推進事業が始まった.浜松市内では3施設でPTが非常勤職員として配置され,要援護老人の世帯を訪問し,相談・指導を行っている.

 この間,筆者は月2回支援センターの活動を経験し,地域に埋もれている患者および家族の生活を垣間見た.それは病院においては見えてこないものであり,改めて病院のリハビリテーションについて考えさせられた.そこで本稿では,病院と在宅ケアの活動を通して,在宅患者や家族が抱えている問題を整理し,病院や老人保健施設等で退院前指導として配慮すべき事項について私見をまじえて述べる.

高齢者の転倒防止に着目した退院前指導

著者: 高橋栄 ,   日高弘一朗

ページ範囲:P.695 - P.700

 1.はじめに

 「転ばないように気を付けてね.」われわれが日々患者と接していて,毎日の訓練終了時や退院の際の挨拶のときに,また訪問リハの帰り際に,何気なく,しかし,いつも遣っている言葉ではなかろうか.

 転倒とは,支持基底面からの重心の逸脱によって生じ,床や地面に着くという,意志に沿わない姿勢の変化である.高齢者の転倒の頻度は非常に高く,時には死因となるだけでなく,その5%に骨折を,10%に重大な軟部組織の損傷をもたらしている.身体的な損傷はもちろんであるが,転倒のもたらす重大な結果に「恐れ」がある.「恐れ」により,大抵の人々は自分の行動を制限することになる.転倒を経験した人の40%,あるいはそれ以上の人々が転倒への恐れをもっているといわれ,その40%の人々が6か月間にわたって行動を制限した経験をもつ1),とされている.

 転倒は「できるADL」「しているADL」「するADL」への展開を困難とし,その結果としてADLやQOLの低下をもたらす.また,種々の活動の機会が制限されるため廃用症候群が出現したり,介護量の増大によって介護負担が増加するなど,家族を含む生活全般に何らかの影響を与えることになる.

 リハビリテーションの目的が「生活の再構築」であるとするならば,転倒はその達成を妨げる重大なリスクである.それだけに,われわれは,ある程度の予測をもって対処できる転倒の防止に努めなければなければならない.

 本稿では,転倒の要因および対応について考え,「入院」から「在宅」へと展開するために,また在宅ケアを継続するために,当院で行っている工夫や指導を,転倒防止という観点から述べることにする.

車椅子レベルの脳卒中患者の退院前指導

著者: 澤田隆憲 ,   貴田貴子 ,   須藤真史 ,   相内俊範 ,   渡辺啓子

ページ範囲:P.701 - P.704

 1.はじめに

 超高齢化社会を迎えて,今後,車椅子レベルで退院する脳卒中患者が増加することが予想される.加えて,車椅子レベルの患者は退院後早期に機能低下を起こしやすい1,2).それゆえに,彼らのQOLの維持・向上をいかに図っていくかが今後の大きな課題である.

 筆者らは,過去に行った生活実態調査から得られた結果をもとに,退院後の機能維持,QOLの向上をどのように図ればよいか現在模索中であり,その1つとして退院前指導を行っているところである.

 そこで本稿では,筆者らが経験した1症例を紹介し,退院前指導の実際について述べてみたい.

パーキンソン病患者の退院前指導とフォローアップ

著者: 小林量作 ,   金子功一 ,   水島佳子 ,   石川厚 ,   星野京子

ページ範囲:P.705 - P.712

 1.はじめに

 入院から在宅生活に移行する際に,具体的な生活内容を予測して退院前指導を実施することは,入院中のリハビリテーション(以下,リハ)を有効に役立て,新しい在宅生活を準備するために必要な理学療法プログラムである.

 さらに,慢性進行性疾患では,疾患・障害の管理や在宅生活での廃用症候群の予防を目的に継続的なフォローアップが重要である.

 パーキンソン病は,「神経難病」のなかで薬物療法が最も期待できる疾患ではあるが,罹病期間が約10年と長く1,2),疾患の進行とともに薬の副作用や合併症が出現するため,内科的治療とリハを長期的に継続しなければならない.

 この小論では,国立療養所西小千谷病院(以下,当院)での経験を踏まえて,自宅退院するパーキンソン病患者における理学療法の特性,退院前指導,フォローアップについて述べる.

慢性関節リウマチ患者の在宅生活指導

著者: 松葉貴司 ,   渡邉慎一 ,   藤井智 ,   入江亜紀

ページ範囲:P.713 - P.720

 1.はじめに

 慢性関節リウマチ(以下,RA)は,多関節の炎症を主症状とする全身性疾患で,増悪と寛解を繰り返しながら進行性の経過を示すことが特徴である.患者数は50万人とも70万人ともいわれ,その治療法は未だ確立されていないが,関節を中心とする炎症や疼痛に対する医学的管理とリハビリテーション(以下,リハ)を必要とする疾患であるにもかかわらず,適切な治療を受けているものは5分の1にも満たないとされている1).また,発症後,約2年の間に約90%の症例に関節破壊が生じ,急激に関節破壊が進行する増悪期と比較的に疼痛が少ない寛解期を交互に繰り返して年単位で進行し,その経過により単周期型,多周期型,急速進行型に分類され(図1),70~80%は多周期型の経過を示すといわれている2)

 われわれリハスタッフの目標は,症状が増悪する時期に,できるだけ筋骨格系を無傷の状態に保ち,寛解が訪れたときに最適な機能を終生にわたって発揮できるようにすることであり,「関節の保護」や「エネルギーの節約」を念頭においた患者教育や生活指導のあり方が強調されている3).しかし,RA者の生活は,長期にわたる経過のなかで試行錯誤の末に構築されており,生活スタイルの変更は容易なものではない.こうした患者個々の生活やニーズに対する配慮不足から退院後は自己流のスタイルを踏襲することも多いようである.

 また,近年では建築工学の立場から,障害者の生活の改善を図るためにバリア・フリーの理念に基づく研究が行われている.障害者に限らず本邦における住宅事情は深刻な問題であるが,RA者にとって,ことさらに住環境は生活スタイルを決定する大きな因子となっている.このためわれわれは,単に日常生活の動作指導だけでなく,家屋改造や福祉機器の利用といった住環境全体に対するアプローチが重要と考えており,実際に家屋改造などを契機に生活スタイルの変更に至った例もしばしば経験している4).そこで本稿では,在宅における理学療法の経験をもとに,生活指導の実際について述べる.

とびら

人―歴史とともに

著者: 長谷川弘一

ページ範囲:P.685 - P.685

 私の両親は今,それぞれ癌と戦っている.2人ともすでに進行してしまった末期癌ではあるが,幸いにもまだ自分たちが癌であるとは知らない.父は手術によって病巣を取り除きはしたが,再発する可能性が高く余命は1年程といわれている.母は医師からあと数か月と診断されてしまった.

 父は8人弟妹の長男として,母は7人弟妹の長女として生まれ,それぞれ病気がちな祖父母にかわって幼い弟や妹を養うために若くして働きに出た.朝から晩まで働き通しで,それぞれ何度か体をこわしたと聞いている.頑固おやじそのものであった父と,耐えることを美徳とした母が知り合い結婚したのは,戦後の復興が始まった頃だった.貧乏のどん底だったと母が教えてくれたことがある.父は独身の頃より働く時間や場所が多くなり,ますます頑固さに研きがかかったらしい.母はその日の食べ物を探しに出かけ,何時間も町や村を歩いたこともあったという.わがままな性格の父と,忍ぶ心をもつ母,相性はぴったりだったのかもしれない.

講座 疲労・2

心理的疲労

著者: 野村総一郎 ,   大澤あかね

ページ範囲:P.721 - P.727

 心理的疲労とは何か

 この講座でもそうだが,疲労を「身体的」「心理的」に分けて考えるのが一般的になっている.しかしいざ学問的に論じようとすると,このように疲労を2分することには困難な面がある.両者の典型例をあげれば,マラソンをした後にくるのは「身体疲労」で,いやな客と長く付き合わざるをえなかった後で覚える感覚は「心理的疲労」である.このように述べれば明快なように思えるが,臨床場面や労働環境で問題となるのは,ほとんどがこれらの例のようには明確化しにくいケースであろう.たとえば「徹夜で受験勉強した」「長くコンピューター画面を見つめて作業した」「トラックを運転して長距離輸送をした」などの後にくるのは心身どちらの疲労であろうか.目を使ったり,同じ姿勢を長くとったりするのは身体的要因といえそうであるが,「単純作業の不快さ,退屈さ」や「成果を早く出そうとしてもできない焦り」などは心理的なものであり,ここにあげた作業による疲労は両者の要素が混ざっている場合が多い.つまり多くの場合,身体的な疲労と心理的な疲労の多くは複合的に発生するものといえるのである.

 しかし切り口としては「身体的」「心理的」の2分法は分かりやすい.では心理的疲労を定義するば,どうなるであろうか.疲労の定義はこのシリーズの初めでも取り上げられているように「活動の結果として起こる一次的な作業能力の低下,達成効率の減少で,普通は疲労感や眠い,あるいはいらいらした感じを伴い,体調の変化が起こる」とされている.ここでは疲労は「活動のしすぎで生じる」「能率が低下」「症状をともなう」という3点で構成されており,もちろん心理的疲労もこれによく当てはまる.ここにおいて,疲労の「原因となった活動」が「身体的」なものでなく,「精神的」なものであった場合を「心理的疲労」と呼ぶのが最も歯切れがよい定義であろう.つまり原因による分類法である.

報告

重度脳性麻痺児の移動器具の一工夫

著者: 上杉雅之 ,   原章 ,   富永通裕 ,   奥田康友

ページ範囲:P.730 - P.731

はじめに

 サドル付き歩行車1,2)は,前傾型サドル付き歩行器3)等の器具の開発により,重度の脳性麻痺児(以下,重度児)等にも立位に近い姿勢で移動することが可能になった.しかし,今回われわれが担当した症例にはサドル付ぎ歩行車の適用は困難であった.そこで,独自のクリーピング・カー(creeping car)を製作・適用し,良好な結果を得たので報告する.

Topics

多胎に伴う低出生体重児と理学療法

著者: 宮腰実紀

ページ範囲:P.732 - P.732

 排卵誘発剤の使用や人工授精など不妊症治療の進歩は多胎児の増加と異常児の増加をもたらし,当院でもその傾向がみられる.

 今回,1990年から1995年までに出生し,当院のNICUに入院した低出生体重児の多胎児27件58名を対象とし,年代別の件数とその予後について調査し,理学療法のかかわり方を検討した.

Treasure Hunting

“目標は高く,国体出場”―鳥居昭久氏(愛知医療学院理学療法学科)

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.733 - P.733

 1万5,000人を数える理学療法士の世界だから,当然といえばそれまでだが,何とも多彩な人物がおられるものだ.今月ご登場いただいた鳥居昭久氏のモットーは「一生懸命,元気です.」お送りいただいた資料からは,そんな「元気ぶり」がほとばしってくるようだ.鳥居氏は信州は諏訪湖畔のお生まれ.愛知県の大学を卒業したあと就職,考えるところあって25歳で理学療法士の養成校に入学した.

 それだけに,入学後の授業やテストも大変だったし,学費の問題も,日々の生活そのものも大変だったと述懐されるが,高下駄をカラカラ鳴らして通学,変わり者扱いされながらも愉快な学生生活を送ったようだ.卒後は三重県の病院に理学療法士として勤務し,今年の10月から現職.体力と元気を武器に若者を導いてゆきたい,という鳥居氏の抱負に喝采を送りたい.

あんてな

理学療法の医学的基礎研究会の発足と今後

著者: 河上敬介

ページ範囲:P.734 - P.735

 理学療法の医学的基礎研究会は1996年5月16日に発足し,18日に第1回の学術集会を名古屋市で開催しました.ここで,本研究会の目的,今後の事業方針および第1回学術集会について報告します.

プログレス

慢性関節リウマチの治療―最近の考え方

著者: 西岡淳一

ページ範囲:P.736 - P.736

 1.発病のメカニズムの解析

 慢性関節リウマチ(RA)の研究は急速な進歩を遂げており,治療法もそれに従って飛躍的に発展している.最近はRAの疾患の起源についての研究が進み,トリガー(引き金)を引く因子は未だに不明であるが,発病のもう1つの因子である素因について,特に遺伝子の配列による発病のメカニズムが解明されつつあり,この遺伝子操作による治療法が試みられている.RA治療は免疫機構の調節の面での臨床データは積み重ねられ一般にもよく知られるようになってきているが,全く新しい発病するための因子(遺伝性素因)の面では全く未知数であった.しかし疾患の予防すなわち発病前に罹患を避けることができれば治療以上の効果が得られることになる.

 このように,RA治療に関する最近の話題は免疫遺伝子を操作する療法に集まっており,その結果如何によっては疾患そのものが克服されるようになるので,その研究成果が期待されている.しかし,一方では遺伝子操作は別の病態を新たに作ることが懸念され,臨床的にこれらを利用するまでに至るにはまだかなりの時間を要すると推測される.

1ページ講座 関連職種の法制度・9

臨床工学技士

著者: 沢桓

ページ範囲:P.737 - P.737

 1.臨床工学技士法制定までの経緯

 20数年ほど前から医療の進歩に伴って,国家資格は持たないが,人工心肺,手術室,ICU,高気圧酸素治療,透析などの業務に従事する技士が,それぞれの診療科に所属する形で働くようになり,その数は次第に増加して行った.中でも透析技術の急速な進歩と健康保険適用により,1970年代後半頃から多数の慢性腎不全患者が週3回の通院による維持透析を受けられるようになり,透析患者の数は急激に増え,それに伴って透析技士の数も急増した.

 そのような状況にかんがみ,それら各種の技士達をまとめる形で1988年に制定され発足した新しい国家資格が臨床工学技士である.その数は1996年の第9回国家試験終了時点で11,428名であり,今後毎年600名強の増加が見込まれる.しかし臨床工学技士は誕生して間がないのでその知名度は低く,病院関係者でもその存在を知らない者が未だにおり,ましては一般市民でその存在を知っている人は極めて稀である.

入門講座 動作分析・4

慢性関節リウマチ患者の動作分析

著者: 阿部敏彦 ,   宮内博雄 ,   薦田昭宏

ページ範囲:P.738 - P.743

 Ⅰ.はじめに

 理学療法士にとって,動作分析は,評価ならびに治療のいずれの過程においても重要な思考手段であることは,疾患を問わず周知のことである.

 慢性関節リウマチ(RA)患者は,発症からの期間および疾病経過の結果として,種々の障害の広がりを呈する.特に能力障害(disability)においては,鑑別診断と極めて似通った機能障害(impairment)と比べて,疾患の特異性,個人の健康感,治療者側の障害把握,さらには患者を取り巻く医療体系にさえ影響を及ぼされ,その展開の過程では多くの問題が浮かび上がってくる.つまり,能力障害評価において,日常生活動作(ADL)テストの枠組みのなかでの動作分析では,RAの活動性,医学的管理,患者の環境改善などの問題に対して十分な対応策となり得ない.

 今回は,機器によらない動作分析の実際というテーマのため,誌面の都合上,特に発症からの期間に着目して,ADLの障害度,体幹-上肢の関節可動域(ROM),下肢機能の推移を取り上げ,具体的にリーチ動作,起き上がり動作,椅子からの立ち上がり動作,床上の物を拾う動作に関して分析することにする.

クリニカル・ヒント

体幹筋の等尺性収縮を中心とした腰痛体操

著者: 辛島修二 ,   宮本隆志 ,   浦田隆史 ,   中島恵

ページ範囲:P.744 - P.745

 従来,本邦で腰痛体操といえばWilliams体操が最も一般的で,広く普及している.しかし,Nachemsonの椎間板内圧の研究で,起き上がり訓練と脊椎過伸展運動が腰椎椎間板内圧の急上昇をもたらすことが明らかになって以来,欧米では体幹筋の等尺性収縮を中心とした腰痛体操が主流となっている1,2).筆者は1988年,back schoolの講習会を受講するために訪米した際,複数の病院でback schoolを見学したが,Williams体操を行っている理学療法部門はなかった.そこで帰国して,腰痛患者に対する教育的アプローチを試行錯誤していく過程で,なぜ欧米でこのような腰痛体操の傾向になったのかが理解できた.今回は,その理論と実際について述べてみたい.

 Williams体操の目的は腰椎前彎の矯正にあり,この腰椎前彎が腰痛の原因であると伝統的に信じられてきたが,その科学的根拠は必ずしも明らかではない.最近では逆に,腰椎の伸展つまり腰椎前轡の増強が治療に結びつくとする治療法が世界中の理学療法士に知られるところとなった.この議論は,腰椎の屈曲と伸展が髄核の移動にどのように影響するかが重要な点である.本稿の目的はその点にはないので言及は避けるが,画一的な腰椎前彎の矯正が腰痛治療の目的でないことだけは明らかである.

資料

第31回理学療法士・作業療法士国家試験問題(1996年3月8日実施) 模範解答と解説・Ⅳ―理学療法・作業療法共通問題(1)

著者: 渕上信夫 ,   松尾智 ,   植田昌治 ,   上野隆司 ,   後藤昌弘 ,   河野通信 ,   田中敦子

ページ範囲:P.747 - P.750

雑誌レビュー

“Physiotherapy Canada” 1995年版まとめ

著者: 松永篤彦

ページ範囲:P.752 - P.756

はじめに

 “Physiotherapy Canada”は,カナダ理学療法士協会(CPA)の機関誌であり,1995年で47巻となる.また,CPAは1995年で協会設立75周年を迎え,47巻の巻末(report)には,設立75周年を祝うとともに,協会組織の再構成,他の専門組織との協力体制の確立など今後の目標が端的に述べられている.後輩国の理学療法士にとって,本機関誌を通して学ぶべきものは多いに違いない.

 第47巻は4冊(号)からなり,全体で38論文が掲載されている(表参照).

 本稿では,特にArticlesで取り上げられている研究論文20編に注目し,運動療法,呼吸理学療法,物理療法,運動学,測定・評価,教育・管理の分野に分けて紹介する.なお,本文中の論文著者に続く( )の太字数字は雑誌の号数,それに続く細文字数字はページ数を示す.

書評

―伊藤達雄・服部孝道・山浦晶(編集)―臨床脊椎脊髄医学

著者: 橋元隆

ページ範囲:P.750 - P.750

 わが国唯一の脊椎脊髄の専門誌,脊椎脊髄ジャーナルを刊行している三輪書店から「臨床脊椎脊髄医学」(伊藤達雄+服部孝道+山浦晶編集)が5月に出版された.「臨床」という名前のごとく脊椎脊髄疾患に関わる専門分野の枠を越えた50人による分担執筆で,全くのオリジナルである.

 本書は603頁にわたり,総論,各論,今後の脊椎脊髄医学の展望の3部で構成されている.総論では発生学と解剖に始まり,生体力学,構造と機能,さらには脊髄の薬理,診断と検査,そして治療を横軸としてまとめ,各論では臨床で接することの多い疾患を病態,診断,治療,予後など基礎的知識から最新の知識までを縦軸として網羅している.展望では脊椎外科の将来について,今後は安定性,可動性,脊髄保護という脊柱本体の機能を満足しつつ,かつ無痛性が達成される術式,生体材料の開発が期待されると述べ,また各種脊柱疾患に対する整体,カイロプラクティック,鍼・灸などの各種民間治療法に対する科学的な解析と評価を行うことも必要であると言及している.

ひろば

「思えば成る」心の財産/PTクロスワードパズル

著者: 西本哲也 ,   武村啓住

ページ範囲:P.757 - P.757

 私は大阪のYリハビリテーション専門学校出身のPTである.平成6年卒の22期生,現在3年目で少し調子に乗っている頃である.

 専門学校1年生の時,同級生らと劇団を作り学園祭で上演した.わりに好評でありその勢いで2年生,3年生になっても続けていくうちに,23期生,24期生の後輩連中も仲間に入った.この春,24期生が卒業した.それまでの5年間で,学園祭を中心に8回上演し,また幾つかの病院の入院患者さんを対象に慰問公演もした.出演者総数は教員を含め70人,3学年総数で約110人ということを考えると,いわゆるクラスの6割以上が参加して5年間続けた大イベントだった.

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文献抄録

ページ範囲:P.758 - P.759

編集後記

著者: 吉尾雅春

ページ範囲:P.762 - P.762

 10月といえば運動会.しかし,北海道では大半が6月頃に運動会を済ませますから,この10月に運動会の賑やかさをイメージすることはできません.サケの遡上もピークで,キノコ狩りをしていても心のどこかで佗しさや切なさを感じる季節です.しつこく残った畑のトマトは色づくことさえ忘れ,冬が間近であることを私たちに教えてくれます.狭い日本ではありますが,沖縄県から北海道まで自然環境の違いには驚かされますし,社会環境もかなりの違いがあります.その中でまたそれぞれの地域で持つ文化は細かく異なり,それぞれの価値観で家庭生活を営んでいます.

 異なった障害というだけでなく,それぞれの価値観を持った人々に対して,生活指導をしていくおこがましさを理学療法士として感じたりすることもあります.しかし,それを業としているのならば,そのための知識と知恵をもって生活指導技術として体系化していく努力をしていかなければなりません.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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