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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル30巻10号

1996年10月発行

文献概要

特集 退院前指導とそのフォローアップ

高齢者の転倒防止に着目した退院前指導

著者: 高橋栄1 日高弘一朗1

所属機関: 1天本病院理学診療科

ページ範囲:P.695 - P.700

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 1.はじめに

 「転ばないように気を付けてね.」われわれが日々患者と接していて,毎日の訓練終了時や退院の際の挨拶のときに,また訪問リハの帰り際に,何気なく,しかし,いつも遣っている言葉ではなかろうか.

 転倒とは,支持基底面からの重心の逸脱によって生じ,床や地面に着くという,意志に沿わない姿勢の変化である.高齢者の転倒の頻度は非常に高く,時には死因となるだけでなく,その5%に骨折を,10%に重大な軟部組織の損傷をもたらしている.身体的な損傷はもちろんであるが,転倒のもたらす重大な結果に「恐れ」がある.「恐れ」により,大抵の人々は自分の行動を制限することになる.転倒を経験した人の40%,あるいはそれ以上の人々が転倒への恐れをもっているといわれ,その40%の人々が6か月間にわたって行動を制限した経験をもつ1),とされている.

 転倒は「できるADL」「しているADL」「するADL」への展開を困難とし,その結果としてADLやQOLの低下をもたらす.また,種々の活動の機会が制限されるため廃用症候群が出現したり,介護量の増大によって介護負担が増加するなど,家族を含む生活全般に何らかの影響を与えることになる.

 リハビリテーションの目的が「生活の再構築」であるとするならば,転倒はその達成を妨げる重大なリスクである.それだけに,われわれは,ある程度の予測をもって対処できる転倒の防止に努めなければなければならない.

 本稿では,転倒の要因および対応について考え,「入院」から「在宅」へと展開するために,また在宅ケアを継続するために,当院で行っている工夫や指導を,転倒防止という観点から述べることにする.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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