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特集 退院前指導とそのフォローアップ
慢性関節リウマチ患者の在宅生活指導
著者: 松葉貴司1 渡邉慎一1 藤井智1 入江亜紀1
所属機関: 1横浜市総合リハビリテーションセンター地域サービス室
ページ範囲:P.713 - P.720
文献購入ページに移動慢性関節リウマチ(以下,RA)は,多関節の炎症を主症状とする全身性疾患で,増悪と寛解を繰り返しながら進行性の経過を示すことが特徴である.患者数は50万人とも70万人ともいわれ,その治療法は未だ確立されていないが,関節を中心とする炎症や疼痛に対する医学的管理とリハビリテーション(以下,リハ)を必要とする疾患であるにもかかわらず,適切な治療を受けているものは5分の1にも満たないとされている1).また,発症後,約2年の間に約90%の症例に関節破壊が生じ,急激に関節破壊が進行する増悪期と比較的に疼痛が少ない寛解期を交互に繰り返して年単位で進行し,その経過により単周期型,多周期型,急速進行型に分類され(図1),70~80%は多周期型の経過を示すといわれている2).
われわれリハスタッフの目標は,症状が増悪する時期に,できるだけ筋骨格系を無傷の状態に保ち,寛解が訪れたときに最適な機能を終生にわたって発揮できるようにすることであり,「関節の保護」や「エネルギーの節約」を念頭においた患者教育や生活指導のあり方が強調されている3).しかし,RA者の生活は,長期にわたる経過のなかで試行錯誤の末に構築されており,生活スタイルの変更は容易なものではない.こうした患者個々の生活やニーズに対する配慮不足から退院後は自己流のスタイルを踏襲することも多いようである.
また,近年では建築工学の立場から,障害者の生活の改善を図るためにバリア・フリーの理念に基づく研究が行われている.障害者に限らず本邦における住宅事情は深刻な問題であるが,RA者にとって,ことさらに住環境は生活スタイルを決定する大きな因子となっている.このためわれわれは,単に日常生活の動作指導だけでなく,家屋改造や福祉機器の利用といった住環境全体に対するアプローチが重要と考えており,実際に家屋改造などを契機に生活スタイルの変更に至った例もしばしば経験している4).そこで本稿では,在宅における理学療法の経験をもとに,生活指導の実際について述べる.
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