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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル30巻10号

1996年10月発行

文献概要

講座 疲労・2

心理的疲労

著者: 野村総一郎1 大澤あかね1

所属機関: 1国家公務員等共済組合連合会立川病院神経科

ページ範囲:P.721 - P.727

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 心理的疲労とは何か

 この講座でもそうだが,疲労を「身体的」「心理的」に分けて考えるのが一般的になっている.しかしいざ学問的に論じようとすると,このように疲労を2分することには困難な面がある.両者の典型例をあげれば,マラソンをした後にくるのは「身体疲労」で,いやな客と長く付き合わざるをえなかった後で覚える感覚は「心理的疲労」である.このように述べれば明快なように思えるが,臨床場面や労働環境で問題となるのは,ほとんどがこれらの例のようには明確化しにくいケースであろう.たとえば「徹夜で受験勉強した」「長くコンピューター画面を見つめて作業した」「トラックを運転して長距離輸送をした」などの後にくるのは心身どちらの疲労であろうか.目を使ったり,同じ姿勢を長くとったりするのは身体的要因といえそうであるが,「単純作業の不快さ,退屈さ」や「成果を早く出そうとしてもできない焦り」などは心理的なものであり,ここにあげた作業による疲労は両者の要素が混ざっている場合が多い.つまり多くの場合,身体的な疲労と心理的な疲労の多くは複合的に発生するものといえるのである.

 しかし切り口としては「身体的」「心理的」の2分法は分かりやすい.では心理的疲労を定義するば,どうなるであろうか.疲労の定義はこのシリーズの初めでも取り上げられているように「活動の結果として起こる一次的な作業能力の低下,達成効率の減少で,普通は疲労感や眠い,あるいはいらいらした感じを伴い,体調の変化が起こる」とされている.ここでは疲労は「活動のしすぎで生じる」「能率が低下」「症状をともなう」という3点で構成されており,もちろん心理的疲労もこれによく当てはまる.ここにおいて,疲労の「原因となった活動」が「身体的」なものでなく,「精神的」なものであった場合を「心理的疲労」と呼ぶのが最も歯切れがよい定義であろう.つまり原因による分類法である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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