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特集 理学療法の展望
理学療法の30年の変遷と展望
著者: 中屋久長1 奈良勲2
所属機関: 1高知リハビリテーション学院理学療法学科 2広島大学医学部保健学科理学療法学専攻
ページ範囲:P.840 - P.846
文献購入ページに移動理学療法士が法制下に誕生して30年が経過した.1966年第1回国家試験合格者183名から本年3月に実施された第31回までの合格者累計は17,495名と当初予想もしない数となっている.5,000名を超えるまでに20年かかり,その後17,500名に達するまで10年,その年の合格者が1,000名を超し始めたのが平成元年の第25回からで,本年の合格者数は1,688名である.
この急速な有資格者増の背景にはリハビリテーション医療の発展,高齢社会の急速な伸展に伴う国の施策,あるいは,医療・保健・福祉にわたる社会的ニーズの高まりが養成校の急増につながってきたものと考える.同時に数の増加と並行あるいは連動して,理学療法技術の発展,業務の拡大,職能団体である日本理学療法士協会の活動の活発化および活動内容の変化,学会・研修会の充実と学術集団としての位置づけ,学問体系確立への4年制大学,大学院教育の開始を始めとする教育・研究体制の充実,世界理学療法連盟学会やアジア理学療法連盟学会等への貢献や研究発表,理事の派遣,インドネシアCBRへの援助派遣など,近年,日本の理学療法(士)は国際的な広がりをも見せてきている.わずか30年の短い間にこのような発展ができたのは,理学療法士自身の努力もさることながら,リハビリテーション専門職種として位置づけた国の英断,そのことを推進された先人方,ご指導いただいた方々ならびに学術活動や業務推進を支援いただいた周辺の方々の賜物と考えている.
それらの中でも学術雑誌の存在は欠かせない事項であり,特に法制化間もない時期には雑誌,図書が数少なく情報量が極端に不足していたことが記憶に新しい.本誌は1967年1月20日に創刊されたが,第1巻1号のとびらには最も相応しい砂原茂一先生の「新しい理学療法士と作業療法士の世界」,創刊を祝すと題して小池文英先生の「待望久しき」,若松栄一先生の「最良の拠点として」他の方々の専門職への期待が寄せられている.特集は上田敏先生を中心とした「脳卒中のリハビリテーション」であり,新しく出発船出する理学療法士には福音書となったことであろう.その意味で本誌と日本の理学療法(士)は30年間共に歩んできたともいえる.これを機に30年の理学療法の変遷と数年後にひかえた21世紀への展望を述べたい.
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