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特集 理学療法の展望
理学療法研究の展望
著者: 大峯三郎1 緒方甫2
所属機関: 1産業医科大学病院リハビリテーション部 2産業医科大学リハビリテーション医学教室
ページ範囲:P.861 - P.868
文献購入ページに移動日頃の臨床や教育を通して多くの理学療法士が様々な研究に取り組み,これらの知見を日本理学療法士学会や,あるいは関連する学会等で発表していることは既に珍しいことではない.さらに発表の場も国内に留まらず諸外国にまで及んでおり,その発展性がますます期待されるところである1,2).第18回,19回の日本理学療法士学会(1983,1984年)が理学療法の科学としての「理学療法学の確立」をテーマに開催されたことは記憶に久しい.
従来の理学療法技術理論の多くが経験によって培われたものであり,これらの理論をより科学的な基盤に根拠をおいた理学療法技術として展開させていく必要性を模索したものとして注目される.経験や実践などに裏づけされたものから脱皮し,より科学的な検証への道を辿ろうとするものであり,これを契機として理学療法研究が今まで以上に科学性を伴わなければならないことを再認識させる1つのターニングポイントとなったことは否めない3-7).その後10余年の歳月が過ぎ,果たして学問としての理学療法学が確立されたといえるであろうか.
基礎,臨床,教育などあらゆる理学療法領域で理学療法技術を科学的に検証する1手段として理学療法研究が存在することに異論はない.われわれ理学療法士が行う研究の主な目的は,臨床から得られた知見を科学的に裏づけるため研究を通して理学療法に関する知識や技術の向上を目指すことにある8).したがって,専門職としての理学療法技術に科学性を与えることが重要となってくる.日本理学療法士協会も,生涯学習を通して,より専門的な技術と知識を得るため理学療法専門領域研究会をつくり,より高度の専門家集団としての理学療法士の育成に努めようとしている9).
このような背景の下に,21世紀に向け理学療法研究の動向や問題点,課題などを振り返りつつ,また米国の研究動向の一端にも触れながらこれからの理学療法研究について展望してみたい.
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