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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル30巻4号

1996年04月発行

雑誌目次

特集 脳卒中における実用歩行訓練

essences of the issue

ページ範囲:P.223 - P.223

 今回の特集は脳卒中の「実用歩行訓練」である.「実用歩行」 は実生活の中での歩行であり,本来生活に密着した実用的なものである.リハビリテーションにおいては「訓練歩行」の目標もこの「実用歩行」能力の向上におかれているはずである.

 しかし,今回ことさらに「実用」を強調しなければならなかった理由を,リハビリテーションの原点に戻ってお考えいただきたい.歩行訓練が「理学療法室のみにおげる訓練歩行」にとどまっていることが多いことや,訓練歩行がそのまま実生活における実用歩行に直結するものではないことの反省が深まってきたことなどがその理由である.

早期ADL自立をめざした急性期からの歩行訓練

著者: 根本明宜 ,   佐鹿博信 ,   安藤徳彦 ,   畠中泰司

ページ範囲:P.224 - P.231

 Ⅰ.はじめに

 急性期の脳卒中リハビリテーション(以下リハ)の重要性がいわれてから久しい.脳卒中急性期リハについては,1991年の日本リハ医学会のパネルディスカッションでも取り上げられた1).脳卒中での急性期リハの有効性や必要性については,リハに関わるものには当然のこととなりつつある.また,医療行政においても急性期からのリハを推進する意図が見受けられる.

 しかし,実際に急性期のリハを実施できる施設はまだ少ないのが現実である.その原因としてはリハに関わる療法士やリハ医がまだ少ないこともあるが,急性期の治療を行っている内科医,脳神経外科医にまで,急性期リハの必要性と実際のリスク管理の方法が正しく理解されていないことも一因と思われる.したがって,リハ医学とリハ専門職に課される役割は急性期リハの必要性と重要性に関する理解を広めることであり,そのためにも臨床のなかで具体的な急性期リハの効果を示していく必要がある.

 脳卒中のリハでは,歩行に主眼を置き退院後の生活を考慮した目標指向型リハプログラムが必須である2,3).急性期リハにおいても,単なる廃用の予防でなく,目標を達成するための積極的なリハを早くから行うことで,早期のADL自立やより高い目標の実現が可能なことを示し,周囲の理解を広めることが望まれる.本論文では,早期ADL自立をめざした急性期のリハについて,本学附属病院での実状などもふまえて論述する.

 脳卒中における「急性期リハ」という言葉について脳卒中リハビリテーション治療マニュアル要項(案)(リハ医学会,1989)に以下の記載がある.「一般医学的には脳卒中発症後24時間以内などを急性期ということもあるが,リハ治療の場合には発症直後~2週間~1ヶ月程度を広く一括して早期と考えるほうが妥当と思われる」とある4).そこで,急性期からの歩行訓練についてであるが,狭義の急性期から脳卒中に関わる施設は限られており,後述するように,われわれの施設でも狭義の急性期から関わっている症例は少なく,今回はやや広い時期に及ぶ早期(発症直後から1か月程度)からの歩行訓練の問題について述べることとする.

 また,くも膜下出血については,適切な治療で障害を残さないことが多く,発症後に血管攣縮や手術に伴う安静などの問題があり,急性期からのリハを行うにはリスクが高く,脳外科医の判断を得る必要があり,脳出血や脳梗塞と別に扱う必要がある.今回は脳卒中のなかで,脳出血と脳梗塞について述べることとした.

実用歩行訓練における各種歩行補助具の用い方―特に歩行補助具の使い分けの重要性について

著者: 上田敏 ,   大川弥生

ページ範囲:P.232 - P.237

 Ⅰ.はじめに

 筆者の1人は先に「実用歩行訓練」について,基本的な点を詳しく論じた1).本論文はそれを前提として,脳卒中患者の実用歩行訓練における各種歩行補助具(装具,杖類)の使い方,特に生活場面に応じた使い分けの重要性について述べるので,基本的な点については,ぜひ前論文および更にその前提となっている「目標指向的アプローチ」および「積極的リハビリテーションプログラム」に関する一連の論文2-13)をご参照いただきたい.なお,わが国の脳卒中の歩行補助具に関する最近の文献としては赤星14),小池15)などがある.

屋外歩行と公共交通機関の利用

著者: 山嵜敏夫 ,   神沢信行 ,   屋嘉宗浩

ページ範囲:P.238 - P.244

 Ⅰ.はじめに

 福祉行政についての強い要望が叫ばれている今日,障害者自身が社会に参加する機会は徐々に増えてきている.公園の散歩や医療機関への通院,地元の会合へ参加するなど狭く身近なものから,地域作業所や授産施設に通所したり,高校や大学あるいは職業訓練校への通学,職場への通勤,スポーツ・レジャー活動や文化活動への参加といった広範囲に及ぶものまで,多種多様なひろがりを見ることができる.

 このような状況のなか,障害者が社会参加するうえで特に確保しなければならないのが移動手段である.自宅から一歩外に出れば,そこはたちまち凸凹の多い道路や急勾配の坂道があったり,人や自動車の往来の激しい道路が多く,移動手段の確保ひとつとっても困難なことが多い.したがって,社会生活を営むうえで移動手段を確保することは重要であり,また欠くことのできない要素といえる.

 そこで本稿では,移動手段のなかでも「屋外歩行と公共交通機関の利用」に焦点をあて,当センターの重度身体障害者更生援護施設(以下,重度更生施設)で行っている訓練の実際を紹介し,理学療法士の立場から社会的リハビリテーションでの取り組みについて述べることとする.

とびら

「訓練室」の場面

著者: 武田秀和

ページ範囲:P.221 - P.221

 私たちが毎日汗を流し,知恵を絞って仕事をしている場所,そこが理学療法訓練室である.わが国の大半の理学療法業務は,この訓練室で行われている.業務の内容や部屋の雰囲気などは,それぞれの機関や施設によって異なる.例えば当院では,入院・外来を問わず,あらゆる疾病の患者が,1つの空間を共有して理学療法を受けている.また,患者や家族同士が情報交換を行っている場面もみられ,「訓練室」は,訓練のみならず,ピアサポートの場としての役割も果たしている.

 以前に,訓練室における関わりについて調査したところ,患者同士や家族同士の関わりが予想外に強く,ケースによっては,訓練を左右するようなものさえあった.例を挙げてみると,ある入院患者は,同じような障害をもっている外来患者に強い関心を抱き,その人を目標に士気を奮い立たせていた.また,長期にわたり外来訓練を続けている片麻痺患者とその家族は,訓練室に来ることだけで,安心感や安堵感が生まれるという.このように,訓練室は,対象者によっていろいろな機能をもった場所に変化することが窺われる.

入門講座 苦労する科目の教育実践・4

日常生活活動実習 講義・実習を一括した単元学習/統合性を重視した教育

著者: 若山佐一 ,   橋元隆

ページ範囲:P.245 - P.254

 Ⅰ.はじめに

 日常生活活動(動作)(以下ADL)という概念は,物理療法や運動療法などに比べ理学療法のなかでも歴史が浅く,その概念,訓練技術および評価表は一定しておらず,今後に残された問題となっている1)

 理学療法教育においては,日常生活活動として講義30時間,実習45時間という指定規則に基づいて行われている.1995年の理学療法実態調査による教育機関や教員への調査では,平均時間数は77時間であり,指定規則の時間数については,適当が65%,多いが11.6%,少ないが23.5%2)であり,比較的妥当と考えていることがうかがえる.

 実施内容については,中澤らのADL実習内容の調査3)によると,基本動作,複合動作,移動補助具,中枢神経疾患,脊髄損傷で8割以上実施し,骨・関節疾患,神経疾患,小児疾患,老年期で6割以上,在宅ケアと呼吸器疾患が2~3割となっている.また,学内で学生同士という実習方法であった.

 当学科においても規定規則どおりの講義30時間,実習45時間であり,実施時期としては2年後期とし,対象学生数は20名である.2年後期というのは,運動学,運動学実習,リハビリテーション医学を除く臨床医学,理学療法評価法,運動療法の一部が終了し,臨床運動学や運動療法,義肢装具学,理学療法技術論などが同時開講となっている時期である.

 筆者は,臨床では10数年ADL指導に関わってきたが,学生への教育としてはこの科目を担当して4年目であり,初めの2年間は一部を助手と非常勤講師とで分担していた.

 ここでは,ADL実習について述べることになっているが,科目の構成上,講義と実習を一括単元学習方式を採っている.そのため,講義と実習を含むADLについて,この4年間の教育実践を報告し,理学療法教育に興味をもつ方々のご批判を仰ぎたい.

 なお,授業で使用するテキスト,参考書は248ページに示した.

新人理学療法士へのメッセージ

社会人としての自覚を持って

著者: 田中正昭

ページ範囲:P.256 - P.257

 晴れて今春,新理学療法士となられた皆さん,おめでとうございます.

 就職先から貰った糊付けされた新しい白衣に慣れずにまだぎこちなさを感じ,また訓練室にいても臨床実習をしていた頃の緊張感が抜けずにいるのではないですか.

人との出会いを大切に

著者: 松本美佐

ページ範囲:P.258 - P.259

 晴れて社会人となられ,“理学療法士”として働かれる皆様おめでとうございます.

 思い起こせば6年前,私も皆様と同じく社会人1年生になったばかりの頃,病院から渡された真新しい名札に刻まれた“理学療法士”という文字にプレッシャーを感じ,緊張した日々を送っていたことを思い出します.皆様も様々な思いで毎日を過ごされていることでしょう.

治療効果を誇れる理学療法士に

著者: 平岡浩一

ページ範囲:P.260 - P.261

 新卒の理学療法士の皆さん,おめでとうございます.大変な理学療法養成校での勉強を終え,理学療法士となった皆さんに心からお祝いを申し上げます.私は今年で10年目の理学療法士ですが,小児領域の理学療法の経験が私の臨床経験の大部分を占めていて.しかも現在養成校の教官しているので,ある意味で私の経験や感じていることは理学療法全体からみれば特殊な事柄なので,これから書くことは大多数の方には当てはまらないかもしれませんがご了承下さい.

今出来ること,今しか出来ないこと

著者: 後藤由美

ページ範囲:P.262 - P.263

 新しく理学療法士になられた皆様,おめでとうございます.臨床実習を終え,国家試験,卒業式,そして就職と,期待と不安の入りまじった4月をお迎えのことと思います.そういう私もまだ職場では「新人さ~ん」と呼ばれており,皆様より1年早いだけの理学療法士の先輩ですが,このメッセージをとおして皆様に何かお伝えできれば幸いです.

あんてな

金沢大学医学部保健学科理学療法学専攻の教育課程

著者: 灰田信英

ページ範囲:P.264 - P.265

 I.経過

 高等教育機関として本邦で最初の理学療法学科が,1979年に本学医療技術短期大学部に設置され,これを機に短期大学,大学における理学療法学科が次々と設置され,本学はこれら後発校の規範となってきた.近年,医療関係従事者の充実と質的向上が叫ばれるようになってきた.このような社会的要請のもとに,昨年10月金沢大学医学部に保健学科理学療法学専攻の課程(定員20名)が,国立大学としては広島大学,神戸大学に続き新設された.なお過日,入学試験が行われ,4月には4年制大学としての第一期生が入学してくる予定である.

クリニカル・ヒント

骨粗鬆症に対する予防的・積極的運動療法の試み

著者: 田中聡

ページ範囲:P.266 - P.268

 1.はじめに

 わが国は急速度で高齢化社会へと向かっており,骨粗鬆症に対する関心はますます高くなっている.骨粗鬆症が,骨折による寝たきりや高齢者の腰背部痛の誘因となることはいうまでもなく,理学療法士が運動療法や物理療法を中心に本疾患やその合併症の治療に当たる機会は多い.

 骨粗鬆症とは,骨量が減少して骨の力学的強度が低下し,運動支持機構としての働きが破綻した状態と定義されており,その病因は単一ではなく,多岐にわたると考えられている.

 骨の代謝に影響を与える因子には,日常生活で不変な内的因子(ホルモン,加齢,遺伝)と,日常生活で調節可能な外的因子(栄養,運動,生活習慣)がある1).骨粗鬆症の治療では外的因子の調節が重要となり,近年,運動と骨動態の関係が注目されている.本稿では骨粗鬆症に対する運動療法について述べる.

Treasure Hunting

明るく「傍を楽にする」―安井平吉氏

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.269 - P.269

 安井平吉氏のことは,今さら本欄で紹介するのも憚られるほど理学療法の世界では著名な方であるが,昭和40年の第1回理学療法士・作業療法士国家試験に合格して現在の星丘厚生年金病院(大阪府枚方市)というから,文字通り,この世界の先達といってよい.昭和35年に滋賀県立盲学校を卒業してマッサージ師,鍼灸師の資格を取得して病院に勤務して以来36年間,氏の理学療法に対する情熱は衰えることを知らないようである.今月は安井氏の歩みを紹介しながら,そのお人柄の一端に触れてみることにしよう.

プログレス

視床下部下垂体の機能調節と病態生理

著者: 戎井理 ,   島津章 ,   中尾一和

ページ範囲:P.270 - P.271

 下垂体はペプチドホルモンを分泌し,生体のホメオスタシスを維持する重要な役割を担っている.さらに下垂体ホルモンの分泌は,間脳(視床下部)から放出される視床下部ホルモンによって調節されている.近年,これらの視床下部ホルモンおよび下垂体ホルモンに対する受容体(レセプター)の構造やその情報伝達機構が明らかとなり,視床下部下垂体疾患の新たな展開がなされようとしている.本稿では間脳下垂体疾患の病態生理と最近の知見を述べる.

1ページ講座 関連職種の法制度・4

診療放射線技師

著者: 及川昭弘

ページ範囲:P.272 - P.272

 本職種,診療放射線技師は,その前身の名称診療エックス線技師として,昭和26年診療エックス線技師法と共に誕生した.

 その業務は,エックス線撮影と放射線治療の2つに大別され,これらの業務はすべて医師の具体的な指示のもとでのみ許される医行為であった.

講座 運動療法とリスク管理・4

悪性腫瘍患者の運動療法とリスク管理

著者: 木村伸也

ページ範囲:P.273 - P.277

はじめに

 リハビリテーションの対象となる悪性腫瘍患者は以前は,乳癌の術後の肩関節可動域制限のある患者や悪性脳腫瘍による運動麻痺を呈する患者が主であった.しかしながら,最近は本誌においても1990年に特集がくまれた「ハイリスク・体力消耗状態」1-4)にある悪性腫瘍患者までを対象とすることとなった.

 「ハイリスク・体力消耗状態」1)とは,その定義が直接的に生命に危険のある状態という疾患レベルの特徴,そして原因疾患自体が運動障害をもつものではなく,体力が低下しADLの障害(disability)が生じたような状態という障害レベルの特徴をもつということからわかるように,疾患レベルのリスク管理と同時にdisabilityレベルへのアプローチの両者の技術の向上によってはじめて対象とすることができたものである.

 この「ハイリスク・体力消耗状態」にいたるほど重症・重度ではない悪性腫瘍患者のリハにおいても,「ハイリスク・体力消耗状態」のリハ・アプローチの原則,すなわち①疾患レベルの状態把握,①Disabilityレベルへの直接的アプローチ,③自己訓練の徹底を含む少量頻回訓練,④病棟「活動度」の指導,⑤直接リハ医が治療・訓練を行う必要,⑥インフォームドコオパレーションによるリハの基本方針の徹底5-6)は基本となる内容であるので,ぜひご一読いただきたい.

 さてここでのリスク管理とは危険であるからリハを中止するためのものではなく,逆にスパルタ的に訓練を行うためのものでもない.リスク管理とは,リスクが生じない安全な範囲で最大限のリハ効果をあげるために,どの程度の運動負荷をすればよいのかを決定していくことであり,「しているADL」をきめ細かく設定していくことである7).リハを施行するうえでのリスクは,運動負荷が増加することによって,初めて顕在化する問題も少なくない.例えば,新たな負荷によって骨転移のある例が病的骨折をおこしたり,安静時には明らかでなかった呼吸障害や心筋障害が明らかになるなどである.さらに悪性腫瘍患者の合併症は突然出現することが多いので,毎朝患者を診察し検査データを確認するなどのチェックをして疾患レベルでの変化の方向を細かく把握していくことが必要である.このようにリスクを運動やADLとの関係で的確に予測し顕在化しないようにすることがリハにおけるリスク管理である.

 悪性腫瘍患者に対するリスク管理の具体的方法は,原疾患の状態,原疾患の治療内容,そしてリハ・プログラムの具体的内容によって異なるものである.そこで本稿では,悪性腫瘍患者のリハ施行におけるリスク管理上問題となる主要な点について述べることにする.

原著

実践的歩行訓練による慢性期片麻痺者の訓練効果

著者: 宮崎貴朗 ,   龍口順子 ,   秋田裕 ,   山崎哲司 ,   野島由紀 ,   稲坂恵

ページ範囲:P.279 - P.284

 [要旨]発症後6か月以上経過した脳血管障害後慢性期片麻痺者の歩行能力を実用性の面から検討した.対象は身体障害者更生施設で理学療法を受けた45名である.入所時に比べ退所時には10m歩行速度と最大歩行距離は有意に改善していたが,下肢Brunnstromステージの変化はなかった.実用的歩行能力では,入所時,大半が屋内または自宅周辺に限られていた.公共交通機関を利用しての屋外歩行が可能な者は入所時8.9%であったが,退所時は88.9%が可能となっていた.

 結果から,歩行の実用性は発症後6か月以上を経過しても改善することが示唆され,屋外での訓練や生活場面に合った実践的アプローチが有用と考えられた.

症例報告

慢性疼痛患者に対する認知行動療法的チームアプローチ

著者: 島田進 ,   大橋恭彦 ,   山下隆司 ,   本田哲三 ,   丹羽正利 ,   小川亜紀子 ,   室津恵三

ページ範囲:P.285 - P.287

はじめに

 慢性疼痛は,臨床家にとって対応に苦慮する障害の1つである.そしてその治療には,心理社会的因子を踏まえた全人的アプローチが重要であり,理学療法への行動科学的対応の導入の必要性も謳われている1)

 当院ではすでに1988年より,骨-運動器の慢性疼痛患者に対して認知行動療法に基づくチームアプローチ(慢性疼痛管理プログラムpain management program;PMP)を施行してきた2).本稿では理学療法の立場からPMPの自験例を報告する.

ひろば

新人発表を終えて

著者: 山口宗明

ページ範囲:P.231 - P.231

 震災から早くも1年がたったというか,やっと1年が過ぎたという感じがする.神戸の町は今,新しく生まれ変わろうとしている.多くの家,ビル,道路が新たに生まれ,町は徐々にではあるが大きくなって行こうとしている.そんな神戸の町に就職して数か月の間は,何が何だか判らず過ごしてきたような気がする.今,理学療法士になって1年であるが,やっと仕事に慣れてきたように思う.

 つい先日,東神戸ブロック新人発表会(兵庫県士会は会の活動と共に,8つのブロックに分けられ,それぞれ研修会などを開いている)が開催された.この発表会は,東神戸ブロック新人21名による症例報告を中心とする会であった.

国境を越えた相互理解―青年海外協力隊員レポート

著者: 高井浩三

ページ範囲:P.268 - P.268

 南の楽園フィジー.南太平洋中部に位置した844の珊瑚礁の島から成る国である.主要産業は製糖,軽工業,観光などで,この国では私を含めて4人の協力隊理学療法士が活動していた.

 これまで政府が医療対策に大変熱心だったことから熱帯病はほぼ全滅したのだが,最近の大きな変化として,成人病が死亡原因の上位を占めるようになったことがある.私が配属されたラウトカ病院はベッド数348床で西部地区最大の総合病院だった.器具等は,ホットパック,パラフィン,短波,超短波,屋外プールのほかに,私が日本にいた頃は扱ったことのなかった干渉低周波までもが揃っていた.しかし,牽引機,チルトテーブルがなく,これらが揃えば器具類に関しては完璧であろう.

書評

―上田礼子(著)―「生涯人間発達学」

著者: 今川忠男

ページ範囲:P.254 - P.254

 本書は,従来の発達学が乳幼児から成人に至るまでの過程をとらえていたのに対し,生命誕生から死に至るまでの変化を発達として見ていく必要性を説いた本邦初の生涯発達学の教科書である.すでに欧米では,“Across the Life Span”というシリーズで様々な機能の発達を人間の生涯にわたる経過で解説した書籍が出版され,理学療法上の教育,臨床,研究に引用されている.本書をきっかけとして,わが国でも理学療法関連機能の生涯発達学の確立と発展を期待したい.

 総論と各論7章からの構成で保健医療専門職,学生を対象とした教科書を目的として執筆されている.これを現在の理学療法学科学生の「人間発達学」教科書として検討してみると,総論の第2節,第4節は人間に対する全体的かつ包括的視野の獲得という教科目的に適した内容であると感じる.特に第4節の「発達と発育」に紹介されているPortmanやHomeの説明,また家庭―社会―文化―歴史的環境における個体発達過程の把握で有名なBronfenbrennerの主張などは,書評者も「障害児・者のための人間発達学」の中で講義してきた経緯があり,意を強くしている.

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文献抄録

ページ範囲:P.288 - P.289

編集後記

著者: 大川弥生

ページ範囲:P.292 - P.292

 本誌が読者の手元に届くころには桜前線はどのへんに位置しているのでしょうか?4月号に桜の譬えで本欄をはじめるのは少々陳腐かなと思いますが,4月恒例であります,花の“新人理学療法士へのメッセージ”(後藤氏,平岡氏,松本氏,田中氏)を今年も掲載いたしております.年度もかわり職場にも新人をむかえ,フレッシュな人達ばかりでなく,必ずしもそうでない人達も新たな気持ちでがんばろうと考えておられることと思います.これも例年のことでしょうが,やはり気持ちを新たにする機会が多いことはいつまでも新鮮さを保つためにもよいことでしょう.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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