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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル30巻7号

1996年07月発行

雑誌目次

特集 地域リハと病院リハの連携―理学療法士の役割

essences of the issue

ページ範囲:P.451 - P.451

 地域リハが最大限の効果をあげるには,病院を含めたリハ・システム全体の中に正しく位置づけられ,またリハ・システムが全体として効果的に運用されることが大前提である.そこで本特集では,地域リハのみを単独に論じるのではなく,全体の中に位置づけで考えるようにつとめた.すなわち,患者の現実の生活におけるQOL向上という意味でのリハ効果をあげるためには,リハ・システム全体の中で,地域リハをどのように位置づけるか,その役割は何かを明確にしながら,その中での理学療法士の役割とそのための具体的な理学療法の技術について,地域リハと病院リハの連携という点を中心に論じていただいた.

地域リハビリテーションにおける現在の課題

著者: 石川誠

ページ範囲:P.452 - P.458

 1.はじめに

 「地域リハビリテーションとは何か」という議論の前に,リハビリテーションとは何かという大前提が必要である.言うまでもないことではあるが,リハビリテーションとは「再び人間らしく生きること」「再びその人らしく生きること」であり,具体的には「生活の再建もしくは維持をしていく一連の過程」すなわち「障害をもつ人とそれをとりまく人々が,その人の人生の質を高める為に行う共同作業」である.したがってリハビリテーションの実践は,医療・保健・福祉をはじめとしてあらゆる分野からの参画が必要であり,社会全体の課題として取り組まれるべきものである.すなわち地域社会をぬきにして理想とするリハビリテーションの遂行は不可能とも言えるのである.

 日本リハビリテーション病院協会では,地域リハ検討委員会において澤村・大田・浜村らが地域リハビリテーションの定義と活動理念を次のように示している.

 「地域リハビリテーションとは障害をもつ人々や老人が住み慣れたところで,そこに住む人々とともに,一生安全に生き生きとした生活が送れるよう,医療や保健・福祉及び生活にかかわるあらゆる人々がおこなう活動のすべてを言う.その活動は,障害をもつ人々や老人のニーズに対し,先見的で,しかも身近で素早く,包括的で継続的そして体系的に対応しうるものでなければならない.また活動が実効あるものになるためには,活動母体を組織化する作業がなければならない.そして何より活動にかかわる人々が,障害をもつことや歳をとることを家族や自分自身の問題としてとらえることが必要である.」

 しかし,残念ながら現在のわが国においては,このような活動は十分とは言えない.中でも急性期から慢性期,入院から在宅もしくは施設に至るシステム化されたリハビリテーション医療の位置づけが明確化されているとは言い難い.その結果,病院の中で行われるリハビリテーションと地域リハビリテーションに解離が生じ,高齢者や障害をもつ人の適切なリハビリテーション医療の流れが分断され,地域リハビリテーションの効果的な展開が不十分となっているのである.

 日本において地域リハビリテーションがクローズアップされた経過をみると,当初は医療(=病院)に対するアンチテーゼのような形で登場し,「寝たきりを作っているのは病院である」「医療は生活を見ようとしていない」等の発想で,主に医療機関のシステムから外れるような形で活動が展開されてきた傾向があった.たしかにかつての医療にはこのような側面がなかったとは言えない.病院におけるリハビリテーション活動は地域におけるリハビリテーション活動を育成する努力が足りなかったのである.それ故,これまでの地域リハビリテーションの担い手の多くは医療機関に失望し,地域の保健・福祉等の分野を活動の拠点として展開してきた経過をもっている.ところが,現実の地域における高齢者・障害者の状況を見ると医療を抜きにしてその生活支援は考えられない.したがって地域リハビリテーションは医療機関を含めたトータルなリハビリテーションシステムの中に位置づけて実践するべきものではないかと思われる.そのためにもリハビリテーション全体における各病院のリハビリテーションの役割と位置づけを明確にし,それを踏まえた形で地域リハビリテーションの議論や実践を行うべきではないかと考える.

 以下ではリハビリテーション医療全体に視点をおいた上で,地域リハビリテーション活動について検討し,今後の課題について述べる.

地域・病院連携のなかでの理学療法技術

(1)「生活再建」をテーマとした地域リハのために

著者: 奥村愛泉

ページ範囲:P.459 - P.464

 1.はじめに

 病院リハと地域リハの連携に関して,ケアサービスの提供者である理学療法士の立場から言えることは,障害者に対する一貫性のあるテーマ(それは「生活の再建」と確定してもよいであろう)の下に,ケアサービスを提供することが大切であるということである.

 もちろん,疾患・症状別や障害の時期そして心理的要因や様々な環境の違いなどから,対象者によって提供するケアサービスの内容は異なるであろう.しかしながら,対象者が障害を克服もしくは障害を抱えながら,いかにして生活の再建を果たすかということに理学療法士が貢献するためには,いかなる所属の違いがあろうとも,テーマに沿った形の一貫したケアサービスを提供しなければならない.

 ここで領域ごとに関わる理学療法士のマンパワーを1990年の理学療法白書でみてみると,医療領域勤務者84.4%に対して,保健・福祉領域常勤者は10%を僅かに越える程度である.しかしながら,老人保健法の機能訓練事業担当の経験者は24.3%,地域リハ活動の経験者は47.7%と,多くの医療領域の理学療法士が地域リハ活動に貢献していることが数字に示されている.また,昨今の各種学会や地域リハに関する発表・報告からみても,年々と地域リハに関与する援助活動の増加を伺い知ることができる.

 しかしながら提供するケアサービスの考え方や内容において,例えば医療のなかの技術や援助など現在提供している理学療法をそのまま地域に持ち込んでも,地域ではほとんど解決できえないことを体験したり見聞きしている.

 そこで病院リハと地域リハの両方を業務体験してきたなかで感じた幾つかの素朴な疑問点をまず挙げて,論述してみたい.

(2)連携のために求められる理学療法士の姿勢と課題

著者: 藤林英樹

ページ範囲:P.465 - P.470

 1.はじめに

 リハビリテーション医療が今日ほど社会的ニーズを背景に語られることはなかったであろうと思われる.25年後には4人に1人が65歳以上の超高齢社会になるといわれる現状にあって,理学療法士(以下PT)が医療分野ばかりでなく保健や福祉の領域から大いに期待をかけられている状況のなか,われわれPTにとっても責任を感じざるを得ない.その責任とは,リハビリテーション(以下リハ)が病院リハのみでなく地域リハのありかたを巡るあるべき姿の理念と,それに基づく実践論とが厳しく問われていることであろう.

 そして,「地域理学療法」といわれる分野がわれわれの領域に新鮮な発想を奮起させ,医療機関の場における理学療法のありかたや姿勢に新たな課題を投げかけている1).リハシステムそのものについて論じる力量を筆者は到底持ちえない.そこで,今までに論じられているシステムのありようを踏まえ2),病院リハと地域リハにおけるPTとしてあるべき姿勢と役割について,最も共通するテーマである「ADL」を軸に,実践的視点を述べることで地域リハと病院リハの連携を考えることにする.

(3)専門スタッフのチームアプローチを基礎として

著者: 松葉貴司 ,   伊藤利之

ページ範囲:P.471 - P.477

 1.はじめに

 わが国におけるリハビリテーション(以下,リハ)は,医療機関や専門施設において行われる医学的リハ(以下,病院リハ)を中心として発展してきた.発症後の早い時期には,傷害された臓器の治療に重点が置かれるなか,これと平行して残存する機能の開発訓練として,機能訓練やADL訓練などが集中的に実施されるなど,急性期・回復期の医学的リハが社会的に認知されるようになった.しかし,これらの病院リハが高度に専門分化される一方で,退院後の寝たきり防止などの慢性期におけるリハ的対策の不十分さが指摘され,近年では障害者・高齢者の在宅生活の場,つまり地域社会において提供される慢性期のリハ(以下,地域リハ)が各地で展開されるようになってきた.

 地域リハの定義については諸家の論じるところであるが,筆者らは「病院や施設で行われるリハに対し,生活の拠点を住み慣れた地域社会(在宅)に置いて行われるリハのことであり,そのために必要な地域システムの構築,人材の養成,社会資源の開発など,関係するすべての活動を含む」と位置づけている.地域リハにおいては,保健・医療・福祉の幅広い分野のサービスが必要であり,これらのサービスを提供するには,われわれ理学療法士・作業療法士(以下,PT・OT)をはじめ,専門スタッフによるチームアプローチと,これら専門職の機能をバックアップする中核機関の存在が重要である1)

 1995年の理学療法白書によれば,PTの80%以上が医療領域の業務に携わっているが,福祉・保健などの地域リハの一翼を担う領域で活動するPTも確実に増加している.病院リハと地域リハのいずれの場面においてもPTは重要な担い手であり,各々の活動拠点からアプローチを展開することが要求されている.

(4)施設ケア,訪問ケア,通所ケアの経験から

著者: 岡持利亘

ページ範囲:P.478 - P.484

 1.はじめに

 当院は「高齢者およびその家族に対して,責任をもって対処できる範囲内で,行政および他施設と協調・連携を取りながら,医療機関として持ち合わせている機能を最大限に活用し,保健・医療・福祉サービスを提供する」という考えに基づき,高齢者の地域での生活を支援すべく,施設ケア,訪問ケア,通所ケアを提供している.

 本稿では,老人病院の立場から,本特集のテーマである地域リハと病院リハの連携のなかでの理学療法士(以下,PT)の役割について考えてみたい.

とびら

“訪問リハで想う事”

著者: 福永恵美子

ページ範囲:P.449 - P.449

 十数年の病院勤めをやめ,地域で働きたいと思い東京・江戸川区役所に勤務して,早2年余になる.地域で働き始め,毎日のように訪問に出かけるなか,“リハビリテーション”とは何か,という疑問に度々ぶつかる.そんな手探り状態のなかで地域(在宅)で生きる障害者と出会うとき,リハビリテーションには“プラトー”も“ゴール”もないのではないだろうかと感じさせられる.地域において“リハビリテーション”とは大げさかもしれないが,その人の生き方に接する(関わる)ことで,たとえ身体機能面でプラトーに達していても,またADLが全介助であったとしても,生き方や生活行動は,その人と周囲の環境によって変化し続けるものだと感じている.そのような状況で,私たちの役割は,障害者にとってその人らしい生活ができるためのちょっとしたきっかけを作ってゆくことかも知れない.

 人それぞれ生きてきた人生が違うように,人にはそれぞれの異なった生活様式がある.ベッドよりタタミに寝ることが好きな人もいれば,洋服より着物が好きな人もいる.外へ出ることが好きな人もいれば,1人で静かに過ごすことが好きな人もいる.それは障害者とか健常者ということではなく,1人の人間としての生き方であり,全ての人に与えられた権利だろう.

入門講座 動作分析・1

動作分析の進め方

著者: 高木昭輝 ,   河村光敏 ,   吉村理 ,   奈良勲 ,   梶原博毅

ページ範囲:P.485 - P.490

 Ⅰ.現状の動作分析への疑問

 動作分析は今日,理学療法を行うには不可欠の検査・評価であると,理学療法士の中では一般的に考えられているようである.日本理学療法士協会教育部が平成6年度に同理事会に提出している「動作分析―学生指導の指針」にも述べられているが,これまでの30数年にわたる日本での理学療法および理学療法士養成教育,理学療法学を標榜するようになったことを概観してみると,これまで動作分析の用語は使用されてきたが,中村隆一,斉藤宏著「基礎運動学」以外では動作分析と運動分析との明確な区別はされてきていなかったように見られるし,動作分析は運動分析と類義に論じられ,使用されてきたように思われる.

 理学療法士養成教育における機能診断学(あるいは検査・測定)の中に,動作分析を基礎的な教育課題として位置づけようとも文言化した.しかし,体系化の過程にある現状では,理学療法学の体系化のために,いろいろな試行錯誤と衆議と叡智が結集される必要がある.

講座 社会医療経済学・3

リハビリテーション医療の効率―地域リハビリテーションを中心として

著者: 二木立

ページ範囲:P.491 - P.496

はじめに

 筆者は,リハビリテーション医療の普及と質の向上のためには,1980年代以降続けられている「世界一」

 厳しい医療費抑制政策の見直しが不可欠だと考え,そのための具体的提案を行っている1).と同時に筆者は,今後の経済の「超」低成長と急速な高齢社会化という「与件」の下では,リハビリテーション医療においても,「稀少な資源の有効配分・有効利用」という意味での医療効率的視点が求められている,とも考えている.

 この視点から,本稿ではリハビリテーション医療の分野で,効率をどのように考えるべきかを,主として地域リハビリテーションを例に上げながら,論じる.あわせて欧米諸国で盛んに行われている地域リハビリテーションの実証的な経済分析=効率測定の結果を紹介する.なお,本稿は別に発表した拙論2)の「要旨」であり,詳しくはそれを参照されたい.

Treasure Hunting

基礎と臨床をつなぐ夢に賭けて―井上真寿美さん(安藤病院理学療法科)

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.497 - P.497

 本欄に初めてご登場いただく女性理学療法士・井上真寿美さんは三重県四日市市のお生まれ.高校卒業までこの地で過ごされたあと,名古屋大学医療技術短期大学部に入学,理学療法士の道を歩み始めた.資格取得後,三重県の榊原温泉病院に就職したが,理学療法の基礎研究者を目指して名古屋大学医学部の研究生になると同時に名古屋の病院に転職,今日まで老人リハの臨床家と研究者の2つの顔を使い分けて,精力的な活動を続けてこられたようだ.

クリニカル・ヒント

多発性脳梗塞の理学療法一私たちの方法

著者: 廣田礼司 ,   新屋順子 ,   佐藤成登志

ページ範囲:P.498 - P.498

 1.はじめに

 多発性脳梗塞とは,両側性かつ多発性の虚血性脳血管障害をいい,病巣からもたらされる障害に加え,それ以外の症状も呈するものである.経過は段階的に進行し,小発作のみで明らかな麻痺を伴わない場合と片麻痺を伴う場合とがある.

 近年,画像診断の精度の向上により,責任病巣を正確に示すことができるようになったが,多発するラクナは小血管病変として別に分類されるべきという意見もあり,用語は統一されていない.

 いずれにしても,数年前に比べて症例は増加しつつあり,理学療法の対象疾患として重要な位置を占めつつある.

プログレス

ヘリコバクター・ピロリと胃癌

著者: 菊地正悟

ページ範囲:P.499 - P.499

 1.ヘリコバクター・ピロリのプロフィール

 ヒトの胃の粘膜表面の粘液内に生息する細菌,ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori:胃の幽門(pylorus)に生息するらせん型(helico)の細菌(bacter)の意.以下H.Pylori)が,種々の胃疾患の原因として注目されている.この細菌は,基本的には経口感染をし,ヒトからヒトへ,あるいは猫などのペットを介しての感染が推定されているが,感染経路については明らかでない部分が多い.一度感染すると,そのヒトが死亡するまで胃の粘液内に生息し続けると考えられているが,抗生剤と抗潰瘍薬の一種であるプロトン・ポンプ阻害剤(オメプラゾールなど)の併用で除菌が可能であり,胃の粘膜の萎縮が強度になった場合も自然消失することが報告されている.

 胃疾患との関係では,感染実験によって胃炎を引き起こすことが確認されており,慢性の萎縮性胃炎の原因のひとつと考えられている.消化性潰瘍の発生,特に再発に関与することが確認されており,難治性・再発性の消化性潰瘍に除菌が試みられて,再発率の低下が観察されている.

1ページ講座 関連領域の法制度・7

視能訓練士

著者: 川村緑

ページ範囲:P.500 - P.500

 1.視能訓練士法成立まで

 戦後の社会環境,医療技術体系の変遷に伴い,眼科でも昭和32年以来,視能訓練士(orthoptist)について専門職としての育成が始まった.視機能は6歳前後までに急速に発達する.視力の発達が不十分であったり,両眼の視線が目標に合わない斜視のまま成長すると,両眼画像を脳で捉えて融像し,立体感,遠近感など高次元の両眼視機能は育たない.ある程度以上の遠視など焦点の合わない眼も発達しにくい.それらの視機能を取り戻す視能矯正訓練,視力増強訓練などは,診療の片手間では行えず,専門職の養成が緊急の課題とされたからであった.こうして昭和34年,新しい医療を考える「医療制度調査会」が発足し,視能訓練士の必要性について答申がなされた.昭和40年からは,厚生省主催の身分制度研究会で,専門技術者の養成を含めて検討が行われ,視能訓練士法の制定に至った.

資料

第31回理学療法士・作業療法士国家試験問題(1996年3月8日実施) 模範解答と解説・Ⅰ―理学療法(1)

著者: 渕上信夫 ,   松尾智 ,   植田昌治 ,   上野隆司 ,   後藤昌弘 ,   河野通信 ,   田中敦子

ページ範囲:P.501 - P.508

特別寄稿

リハビリテーション医療と平成8年度診療報酬改定

著者: 西山正徳

ページ範囲:P.509 - P.512

 Ⅰ.はじめに

 わが国の医療を取り巻く状況は,従来にも増して大きな曲がり角に来ている.医療保険制度を始め多くの既存の制度の見直しが求められてきている基本的な原因は言うまでもなく高齢社会の到来である.また,一方で高度経済成長後の課題として位置づけられる問題として,医療の質の向上,あるいはアメニティの向上に対する国民の要求が高まってきており,このことに対してもどう対処すべきかといったことも大きな要因ではないかと筆者は推測している.

 さて,平成8年度診療報酬改定が先般行われた.経過を簡単に説明すると,中医協基本問題小委員会の意見書が平成7年11月に,また,中医協としての建議が同年12月に提出された.基本問題小委員会はこの間1年以上にわたり医薬品問題について協議・検討してきている.これは,わが国の医療費の30%を医薬品が占めているという実態をどう分析し,どうしたら改善できるかに焦点を当てて検討してきたので,したがって中医協建議も医薬品費の問題が中心となった.詳細は省くが,この建議に基づき薬価の改定幅が決定され,また併せて診療報酬の合理化等により診療報酬の改定幅が昨年の暮れ,大蔵大臣との事前折衝において決定された.

 その後,平成8年2月14日に今回改定案が中医協に諮問され,同月16日に諮問案どおりに答申を受けたところである.

 ところで,診療報酬改定はいくつかの視点によってその基本的考え方を整理できると考えている.まず1つは,医療費を不合理に押し上げる要因を除去ないし軽減する視点である.具体的には,前述した医薬品費の価格設定以外に多剤投与を含む不適切な使用の是正や特定保険医療費材料の価格設定等診療報酬の合理化がそうである.2つ目は,国としての政策課題への対応である.これには,介護保険法創設に伴う療養型病床群や痴呆疾患療養病棟,周産期医療システムへの支援措置などがそうである.第3点は,新しい技術に対する評価である.これには,高度先進医療の保険導入や運動療法の導入,リハビリテーションであれば早期リハなどがある.

学会印象記 第31回日本理学療法士学会に参加して

盛り沢山の内容で充実した学会

著者: 松崎洋人

ページ範囲:P.514 - P.515

 新緑が眩しい5月16,17日の両日,愛知県理学療法士協会の担当により,第31回日本理学療法士学会が開催された.今回の学会は名古屋市立大学病院技師長の野々垣嘉男先生を学会長として,「理学療法の基礎」をテーマに名古屋市のほほ中央にある名古屋国際会議場にて開催された.この広大な敷地のなかにそびえ建つ近代的な建物のなかで,全国各地の施設から出席したPTによる総演題数523題の演題発表が行われた.

 名古屋市は私にとって初めての訪問先であったが,自動車や陶磁器など世界的産業を誇る都市だけあって,今回の会場のような近代的国際会議場のほか港も近く,国際都市のイメージを強く感じる所であった.また,大都会にしては近隣の豊かな自然が縮景された名所も多く,5月のさわやなか風に吹かれながら気持ちの良い2日間を過ごすことができた.

書評

―寺山和雄・広畑和志(監修)―標準整形外科学/第6版

著者: 真角昭吾

ページ範囲:P.470 - P.470

 18年前になるが初版発行のとき本書を入手して,当時,近頃にない特徴をもった教科書が出版されたものだと感じていた.それから3~4年毎に改訂がなされ,今回で5回の改訂である.いま私の手もとには1版より6版までの6冊の本書がある.

 私も本や雑誌の編集に携わったことがあり特色を出すのにいろいろと苦労するが,この本の場合,編集の方針やアイディアが非常に卓越しており,編集者や筆者が利用する者の身になって企画,執筆されてきたものと受けとれる.この間,編集者にも執筆者にも世代交代が行われて,常に医学の進歩に応じた新知識を取り込み,ずっと良書の評を得てきたと思う.

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文献抄録

ページ範囲:P.518 - P.519

編集後記

著者: 大川弥生

ページ範囲:P.522 - P.522

 涼しい日の多い梅雨時でしたがもう7月,本号がお手元に届くころにはカッと暑い日射しになっているのではないでしょうか.

 さて本号の特集は「地域リハと病院リハの連携―理学療法士の役割」です.地域リハへの関心は近年非常に高まっています.その背景としては,石川氏が指摘されたように,「医療は生活をみていない」「寝たきりをつくっているのは病院だ」等の発想で病院(=医療)に対するアンチテーゼとして地域リハが打ち出され,注目を浴びたという面があることを明確に認識し,医療の陥りやすい欠陥を常に自覚していることが重要でしょう.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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