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特集 理学療法における基礎研究
理学療法の効果判定に関連するQOL研究と今後の課題
著者: 佐藤秀紀1 中嶋和夫1
所属機関: 1北海道医療大学看護福祉学部
ページ範囲:P.533 - P.538
文献購入ページに移動 1.はじめに
健康ケアモデルは,歴史的には,医学モデル→障害モデル→慢性疾患モデルと変遷してきた1).このモデルの変遷にともない理学療法の目的も変貌してきたし,今後も新たなモデルのもとで変貌するものと想定されるが2),とりわけ戦後のリハビリテーションにおけるわが国の理学療法は,「障害」の回復,改善,予防といったテーマに取り組んできた.また,理学療法のうちの運動療法に着目するなら,それはリハビリテーションの重要性に対する認識が深まるなか,治療対象の拡大化,障害の重度化・重複化といったこととともに,古典的な手法から神経学的なアプローチへと方向転換し,ファシリテーション・テクニックの効果については批判的論評3-5)がなされてきたところである.いずれにせよ,理学療法の治療効果を障害モデルとの関連でみるなら,それは対象である障害者あるいはアプローチ方法の多様性にもかかわらず,「障害」のうちの能力低下,とりわけ歩行能力等の移動低下の回復・改善と大きな関わりをもってきたといえよう.
しかし,最近のリハビリテーションにおける研究を概観すると,その効果判定はQOL次元で検討されなければならないことが指摘されている6).もちろんQOLは,リハビリテーション領域のみならず,医学,保健学,看護学,老年学,社会福祉学等の関連領域においても,費用分析と並んで介入効果に関する重要な判断材料となっている.例えば,保健・医療・福祉の統合的アプローチを必要とする高齢障害者に対するケアマネジメントは,その介入効果の拠りどころとして,費用分析とQOL分析を最も重視しているところである7).ただし,このときのQOLは,健康指標としての広義のQOLすなわち死亡率,基本的なADL等から主観的幸福感までを含む概念から構成されていることもあれば,主観的幸福感well-beingのみを意味することもあり,必ずしも研究者間で一定の了解が得られているわけではない.
このような背景をふまえ,本論においては,脳卒中後遺症者のリハビリテーションに関連した主観的なQOLに焦点を当て,しかも尺度開発に視点を当てながら最近の研究を概括し,さらに理学療法学における今後のQOL研究に関する展望を試みてみたい.
健康ケアモデルは,歴史的には,医学モデル→障害モデル→慢性疾患モデルと変遷してきた1).このモデルの変遷にともない理学療法の目的も変貌してきたし,今後も新たなモデルのもとで変貌するものと想定されるが2),とりわけ戦後のリハビリテーションにおけるわが国の理学療法は,「障害」の回復,改善,予防といったテーマに取り組んできた.また,理学療法のうちの運動療法に着目するなら,それはリハビリテーションの重要性に対する認識が深まるなか,治療対象の拡大化,障害の重度化・重複化といったこととともに,古典的な手法から神経学的なアプローチへと方向転換し,ファシリテーション・テクニックの効果については批判的論評3-5)がなされてきたところである.いずれにせよ,理学療法の治療効果を障害モデルとの関連でみるなら,それは対象である障害者あるいはアプローチ方法の多様性にもかかわらず,「障害」のうちの能力低下,とりわけ歩行能力等の移動低下の回復・改善と大きな関わりをもってきたといえよう.
しかし,最近のリハビリテーションにおける研究を概観すると,その効果判定はQOL次元で検討されなければならないことが指摘されている6).もちろんQOLは,リハビリテーション領域のみならず,医学,保健学,看護学,老年学,社会福祉学等の関連領域においても,費用分析と並んで介入効果に関する重要な判断材料となっている.例えば,保健・医療・福祉の統合的アプローチを必要とする高齢障害者に対するケアマネジメントは,その介入効果の拠りどころとして,費用分析とQOL分析を最も重視しているところである7).ただし,このときのQOLは,健康指標としての広義のQOLすなわち死亡率,基本的なADL等から主観的幸福感までを含む概念から構成されていることもあれば,主観的幸福感well-beingのみを意味することもあり,必ずしも研究者間で一定の了解が得られているわけではない.
このような背景をふまえ,本論においては,脳卒中後遺症者のリハビリテーションに関連した主観的なQOLに焦点を当て,しかも尺度開発に視点を当てながら最近の研究を概括し,さらに理学療法学における今後のQOL研究に関する展望を試みてみたい.
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