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特集 高次脳機能障害をもつ患者の理学療法
高次神経機能障害に対する治療的接近
著者: 網本和1
所属機関: 1聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部
ページ範囲:P.606 - P.613
文献購入ページに移動 1.はじめに
高次神経機能障害は周知のように,脳血管障害例のリハビリテーションを困難にする主要な要因であることが知られている1).高次神経機能障害に対する治療的接近の報告は少なくなく4,10-12,18,26),この領域についての関心の高まりが窺われる.しかし理学療法の臨床場面では多くの症例を重ねているにもかかわらず,正面から論じたものは意外に少ない4).このことは第1に徴候の評価の難解さ,それゆえ「何に対してアプローチしているのか」がしばしば明瞭でなくなることに由来しているのかもしれない.換言すれば,`高次神経機能障害例の示すどのレベル,例えば失行症に認められる錯行為そのものに対してなのか,これを基盤とする日常生活動作に対してなのか,不明確なままアプローチを進めてしまうということである.第2に高次神経機能障害の種類は膨大で,網羅的に立ち向かうことは事実上困難であることの反映であろう.
そこで本稿では,これら高次神経機能障害のうち臨床的に理学療法士が直接関係し得る徴候として,観念失行,半側空間無視,Pusher現象について焦点を絞り,評価法および治療的接近法を検討してゆきたい.
高次神経機能障害は周知のように,脳血管障害例のリハビリテーションを困難にする主要な要因であることが知られている1).高次神経機能障害に対する治療的接近の報告は少なくなく4,10-12,18,26),この領域についての関心の高まりが窺われる.しかし理学療法の臨床場面では多くの症例を重ねているにもかかわらず,正面から論じたものは意外に少ない4).このことは第1に徴候の評価の難解さ,それゆえ「何に対してアプローチしているのか」がしばしば明瞭でなくなることに由来しているのかもしれない.換言すれば,`高次神経機能障害例の示すどのレベル,例えば失行症に認められる錯行為そのものに対してなのか,これを基盤とする日常生活動作に対してなのか,不明確なままアプローチを進めてしまうということである.第2に高次神経機能障害の種類は膨大で,網羅的に立ち向かうことは事実上困難であることの反映であろう.
そこで本稿では,これら高次神経機能障害のうち臨床的に理学療法士が直接関係し得る徴候として,観念失行,半側空間無視,Pusher現象について焦点を絞り,評価法および治療的接近法を検討してゆきたい.
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