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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル31巻1号

1997年01月発行

文献概要

特集 整形外科系運動療法の新展開

欧米における整形外科系運動療法の動向―我が国の運動療法の新たな展開に向けて

著者: 沖田一彦1 内田成男2 宮本省三3 辻下守弘1 清水ミシェル・アイズマン1 鶴見隆正1

所属機関: 1広島県立保健福祉短期大学理学療法学科 2慶癒義塾大学月が瀬リハビリテーションセンター理学療法科 3高知医療学院理学療法学科

ページ範囲:P.4 - P.12

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 1.はじめに

 近年における我が国の整形外科系運動療法の進歩には著しいものがある.この背景には,手術手技の開発・改良を基盤とし,それに見合った術後の運動療法を科学的に構築するための努力が重ねられてきた経緯がある.特に,生体力学や運動生理学の視点から高度な分析が加えられるようになった結果,運動療法は,より「早期」に,より「安全」に,より「効果的」に行われるようになってきた.

 このことは,人工関節置換術や靱帯再建術に代表される合理的な術後プログラムの展開1)が,また等速性訓練(isokinetic exercise)やバイオフィードバック(biofeedback)の概念,さらにはCPM(continuous passive motion)の導入2-4)が,臨床現場で広く実現している状況を考えればよく理解できる.わずか数十年前までの理学療法が,物理療法を主体に,マッサージと他動運動に終始していた事実5)を考えるとき,それは飛躍的な進歩といってもよいであろう.

 しかしながら,この領域での運動療法が,概念そのものを大きく変えたわけではないのもまた事実のように思われる.なぜならば,現在では古典ともいうべき整形外科やリハビリテーション(以下,リハ)の成書6,7)を紐とくと,科学的な検討こそ加えられていないにしろ,そこには,今日我々が日常的に行っている手技の原形,それも現在の形に極めて近いものを見ることができるからである.では,「飛躍的な進歩」にもかかわらず,何が変わっていないのであろうか.

 本稿では,この問題を,欧米における整形外科系運動療法の動向について報告し,我が国のそれと比較・検討することで考える.また,そのうえで,整形外科系の運動療法が今後どう展開されていくべきかについて,いくつかの提言を行いたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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