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特集 整形外科系運動療法の新展開
変形性股関節症と外転筋の筋力特性
著者: 佐々木伸一1 嶋田誠一郎1 竹村啓住1 大森弘則2 井村愼一2
所属機関: 1福井医科大学附属病院理学療法部 2福井医科大学附属病院整形外科
ページ範囲:P.29 - P.36
文献購入ページに移動直立位での股関節は,大腿骨頭の関節面が臼蓋に完全に覆われておらず,大腿骨頭前面が臼蓋から前方にはみ出している.しかし,股関節90度屈曲,軽度外転位における臼蓋の骨頭被覆は,関節唇の存在も含めるとほぼ100%の被覆状態にあり,いまだ四つ這い歩行で安定する形状にある.ヒトの股関節は,系統発生・個体発生の過程での屈曲位における安定した状態から二足歩行へ移行したことから,股関節の関節面の不適合が生じたといえる.これに対し,成長とともに起こる大腿骨頸部の前捻角・頸体角の減少は,二足歩行に伴う加重環境,筋バランスの変化に対する適応と考えられるが,特に前捻の減少は股関節伸展位における被覆度の不足を補う方向に働いている1).
大腿骨頭の骨性被覆の減少を補うため,関節包および靱帯の発達が著しい.関節包を補強する靭帯のうち,前方の腸骨大腿靱帯は最も強靱で,骨性被覆の不十分な股関節前面を補強している.これら靱帯は,股関節屈曲位で弛緩し,伸展位で大腿骨骨頭を臼蓋に引きつけ股関節の安定性に寄与している2).
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