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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル31巻10号

1997年10月発行

雑誌目次

特集 ひとり職場の運営

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.699 - P.699

 今月の特集は「ひとり職場の運営」である.多分,職場の規模や就労体制からして,やむなくひとり職場で働かざるを得ない状況もあると思われるしかし,休暇を取るとか,研修会への参加,相談相手などにおいて不都合なことも多々あると思える.それでも,そのような苦境を超越して,ひとりで出来る仕事範囲を拡大し,役割を果たすことも不可能ではない1995 年のデータによれば,日本理学療法士協会の会員が勤務する総施設(4,338)の42 %はひとり職場である.よって,それらの職場に勤務する理学療法士の活動水準は我が国の理学療法の発展に多大な影響を及ぼすことにもなる.

すべては自分への帰結

著者: 佐藤卓己

ページ範囲:P.701 - P.704

 1.はじめに

 岩手県内でひとり職場に勤務しているPTは,平成9年4月現在23名であり,岩手県理学療法士会会員総数189名に占める割合は12%である.

 私もそのうちの1人であるが,これまで私は,PTのスタッフが比較的充実した職場に身を置いていた.そこでは特に組織の管理・責任者の立場にもなかったので,基本的に自分の担当業務を遂行するだけで問題はなく,空き時間を利用して自分の研究活動なども行えた.私が敢えてひとり職場に身を投じたのは,このような組織,ひいては人間関係に特に不満があったわけではない.ただ,リハビリテーションの一貫性を思うたび,機能訓練で患者をこなす毎日を過ごすにつけ,PTとしての自分に物足りなさを感じていた.

 老人保健施設は障害者の機能レベルよりも,能力・社会的レベルを重要視するという意味で,私にとってリハビリテーションの一貫性を少しでも実感,実践するのに相応しい職場であった.そして,そこでひとり職場となることを自ら希望して選択したことは,まずはPTの存在価値,有効性を患者および他の職種に知らしめるためであることと,それを通じて1人ゆえに剥き出しになっているPTとしての自分を試したかったのである.

ひとり職場の現状と工夫

著者: 田附満

ページ範囲:P.705 - P.707

 1.職場紹介

 現在勤務している札幌社会保険総合病院は,昭和22年2月1日,健康保険の被保険者やその家族の医療を確保し,制度の推進普及を図るために,財団法人北海道社会保険協会が経営を受託し,札幌市の中心街に設立された.

 その後,経営受託者が社団法人全国社会保険協会連合会に移り,増改築を繰り返しながら,病床数は276床まで増床された.しかしながら,建物の老朽化,敷地の狭隘や周囲の環境等から,その場所での増改築が困難となったため,平成2年6月,現在の厚別区に病床数276床のまま移転された.

ひとり職場24年

著者: 田中耕作

ページ範囲:P.708 - P.711

 1.ひとり職場への序章

 さしたる病気,事故にも見舞われず,1人で走り続けた24年間である.昭和45年,九州リハビリテーション大学校を卒業,先輩のいない故郷の佐賀で役に立てたらと,ひとり職場への道を歩き始めた.念願の就職はできたが,実務を継続していく経験や力量もなく,親友の紹介で大阪・大手前整肢学園山本和儀氏(現・大東市勤務)の門を叩いた.当時,山本先生もひとり職場,温かく迎えていただいたが,仕事は大忙し,悪戦苦闘の毎日であった.そのなかで,理学療法士としての専門性,職業人としての在り方について厳しく鍛えていただいた.

 そこで2年目を迎えるころ,生来の田舎人,都会の生活に馴染めずジレンマに陥っていた私に,故郷佐賀から「身体障害者のリハビリテーション施設が開設されるから戻ってこないか」との誘いがあり,思いを新たに佐賀へ戻った.故郷佐賀に戻ったのは昭和47年12月,佐賀県厚生部福祉課老人福祉係に配属された(佐賀県職員としてPTは初採用であった.現在は県立病院を含めて4名,OTは依然としてゼロである.)これまでの職場とは大違い,周りの全てが行政マン,改めて新人として恐怖の洗礼を受けた.庁外用務として身体障害者更生相談所1)のほか,施設の要望を受けて県内4か所の特別養護老人ホームの巡回リハビリ指導を開始した.この間,行政内部から福祉行政のスタンスと業務の流れを体験し,県政レベルでの視野をもつことができた.また,行政マンの友人を得たことは,現在の自分にとって大きな財産となっている.

健康教育の専門家を目指して!

著者: 徳村哲

ページ範囲:P.712 - P.715

 1.はじめに

 保健所という職場に勤務して11年目を迎えようとしています.「早かったな……」と思えることは,充実した10年だったのかもしれません.理学療法士の世界から観ると,保健所(保健)は全く未知の分野でしたし,苦労が多かったことも確かです.しかし,いま考えると保健所勤務になったことが幸運だったように思えます.なぜなら,従来のPTではなかなか観ることのできない成人保健の流れを,市町村,県,国レベルで観ることができましたし,自分なりの地域リハビリテーション論も持てるようになったからです.

 今回,特集「ひとり職場の運営」ということで原稿依頼がありまして,職場紹介やひとり職場ゆえの苦労,工夫等でもよいとのことでしたので引き受けました.全国の保健分野やひとり職場でがんばっている方々に少しでも共感を頂けたら幸いです.

老健奮闘記

著者: 中野佳子

ページ範囲:P.716 - P.720

 1.はじめに

 「入浴日もリハビリあるんですか?」「入浴日には中野さんの顔見たくないなぁ(結構マジな顔)」と介護員にいわれ「何で…」と戸惑い,訓練室に向かう階段で「もうダメかなぁ」と孤独感・挫折感を幾度と味わったことか…….

 老人保健施設(老健)は急速に増加する高齢者に対する保健福祉施策の1つとして,1988年4月より制度が本格的に施行され,来年で10年を迎える.老健はリハビリテーション(リハビリ)を行い家庭復帰を支援する施設として誕生し,最近では一般の人々にも「老健=リハビリ」という認識がだいぶ広がってきている.また,老健は理学療法士(PT),作業療法士(OT)の配置を法律で義務づけた施設であり,PT,OTに対する期待が大きいといえる.現在,新ゴールドプランの達成に向け,老健が物凄い勢いで開設され,それに伴い常勤するPT,OTも増加している.これは特にPTにおいて顕著である.しかし,老健実地指導において,PT,OTの配置不備を指導されている施設や地域によってはPT,OTを確保できず,開設がスムーズにいかない施設も多い.

 理学療法白書1995にPTの進出が進まない理由として「老健での業務を行うには経験が必要である」と記されている.また様々な雑誌において,老健に勤めるPT,OTは「かなりの経験と高度な知識を要求される」とも述べられている.私は,卒業後1年間病院でのリハビリ業務に携わり,「地域に興味があった」という理由で,その後老健に就職した.老健に就職するという話をすると,みんな口を揃えて「まだ早いよ」「大変だよ」「もう一度考え直したほうがいいよ」と否定的な意見が多かった.「そんなに大変なのかなぁ」と何も知らずに私はこの世界に飛び込んだ.

 本稿では,十分な経験も高度な知識もないPTが,日々奮闘しながら行ってきた3年間の業務を振り返り,ひとり職場でのPTの取り組みについて私の考えを述べたい.

コミュニケーションで創る仕事

著者: 長森誠二

ページ範囲:P.721 - P.724

 1.はじめに

 私は,理学療法士14人の職場(3年間勤務)から,現在のいわゆる「ひとり職場」に就職して今年で5年目になる.この間,自他ともに認める要領の悪さもあり,人間関係や業務をめぐって自分なりの苦労を経験した.そこで今回,そのような失敗や反省から,自分なりに取り組んだことを誌面を借りて述べさせていただく.

“ケア”主体の老健施設の理学療法士として

著者: 西森善一

ページ範囲:P.725 - P.727

 1.はじめに―当施設の概要

 私の勤務している老人保健施設「りは・くにくさ」は,広島駅から東へ車で約1時間ほど郊外に出た阿戸町に位置している.施設周辺は四季をとおして色鮮やかな豊かな自然に囲まれ,森林浴なども楽しむことができ,老人利用者にとって恵まれた環境にある.

 当施設は入所者数80名,デイケア20名定員となっており,施設長の福祉に対する情熱を背景に,「自立支援」「家庭復帰」「家庭的雰囲気」「地域・家族との結びつき」をキーワードに,「在宅支援」活動にも力を入れた活動を展開している.

 老健施設「りは・くにくさ」は平成8年7月に開設され,同時に外科,胃腸科,内科,リハビリテーション科などの診療科を有し,地域に密着した医療サービスの提供を目標とした地域診療所「あと・クリニック」,訪問看護ステーションも併設されている.そのほか,当施設に隣接して,同じ管理下で3年前に開設された特別養護老人ホーム「くにくさ苑」があり,そこには在宅介護支援センター,ホームへルプサービス・デイサービスセンター,配食サービスセンターが併設されている.

 当老健施設の職員配置は,医師1名,看護職員8名,相談指導員3名,栄養士1名,理学療法士1名,その他となっている.私には,当施設に就職する以前に,総合病院,米国カイザー病院での6か月間のPNF研修,温泉病院,老人病院などで計16年間の理学療法士としての経験があったが,老健施設の経験は皆無で,業務内容についてもほとんど無知であった.そのため,相談指導員や介護職員の存在に新鮮な感じをもったが,彼らの業務については把握できていなかった.

白衣を脱いだPT―行政組織で期待されるもの

著者: 早川好子

ページ範囲:P.728 - P.731

 私の職場は医療現場でも福祉施設でもなく,行政のなかにあります.行政のなかでも,保健所ではなく,福祉にあります.福祉といっても,高齢者の関係,障害者の関係,児童の関係さらには福祉事務所といった現場の第一線ではなく,福祉総務課といういわば福祉行政の中枢部に勤務しているPTなのです.

 私の経歴はというと,学校卒業後さる総合病院に勤務していましたが,3年目を迎える年に今の職場に入り,今年で4回目の春を迎えました.当初は行政内部への配属など毛頭予想することなく,市立病院か保健所への勤務だろうとタカをくくっていました.しかし蓋を開けてみれば,福祉総務課地域保健福祉推進室という長たらしい名前の,何がなんだか分からないところ…….当時の私は,保健婦さんや福祉事務所の存在すら知らず,辞令をもらった日に家に帰って家族に聞かれても,「フ・ク・シ・ソ・ウ・ム・カのチ・イ・キノホケンノフクシノナントカカントカ☆※◇▲&◎#???」という感じでした.

病院から福祉施設に移って

著者: 牧田光代

ページ範囲:P.732 - P.735

 1.はじめに

 病院から福祉施設に移って3年が経過した.それまで約25年間病院で理学療法士として働いてきた経験もあり,それほど病院業務との差異があろうとも考えずに転職した.就任してはじめて病院とは異なる問題に気づかされた.それはPTとして感じるのみならず,現在,在宅福祉の抱える問題でもあろう.ここでは,筆者の感じた仕事を共にする人々との認識のずれを中心に述べてみたい.この3年間は,この認識のずれを調整することに多くの時間を費やしたと思えるからである.

とびら

理学療法におけるプラシーボ

著者: 八児正次

ページ範囲:P.697 - P.697

 “プラシーボ”という言葉に対してどのような印象をもっていますか?現代医療において“プラシーボ”と聞くと,何となく患者さんに対して否定的な印象が強いような気がします.例えば,偽薬で反応した患者さんには,「やった」というより「やはり」という,医療スタッフの反応が待っていたり…….真?の医療効果を判定するためには,除外される要因になっている印象があります.

 “プラシーボ”の語源は「人を満足させる」という意味のラテン語です.アンドルー・ワイル博士は著書『人はなぜ治るのか』(上野圭一訳,日本教文社)のなかでプラシーボ反応という言葉の使い方をしています.偽薬を服用した人の心のなかに生じる反応であることから,“効果”ではなく“反応”であると強調し,治癒系に大きな力を発揮すると述べています.

入門講座 英文発表の実際・2

質疑応答

著者: 森永敏博

ページ範囲:P.737 - P.740

 Ⅰ.はじめに

 国際学会に参加する機会が増えただけでなく,国内においてすら国際学会が開催されることが多くなった昨今である.国際会議といえば英語が公用語として用いられるのが一般的である.理学療法の分野では,1987年にオーストラリアで開催された世界理学療法連盟総会・学会までのofficial languageは英語,フランス語,スペイン語とされていたが,経費その他の問題で現在では英語に統一されている.英語は日本人にとって最も身近な外国語であり,受験戦争を乗り切ってきた世代にとっては“ほぼ完壁に近い”ともいえる英文法の心得があるはずである.

 しかし,英語をnativeに話す外国人を前にするとなかなか会話ができないことを体験したことのある人が多いはずである.それは日本の英語教育が会話を無視してきたことと,受験英語が完壁な文法を要求するがゆえの弊害であろう.そのため我々は会話に参加しようとした場合,まず“完壁な”英語を頭の中で作文し,次に正確な発音でしゃべろうとする段階を踏まなければならないのである.会話の相手はこのようなプロセスに要する時間を待ってくれない.頭の中で作文ができ,いざしゃべろうと思ったとき,すでに次のトピックに話題が移っているといった具合である.

 しかも,本当の会話をするためには自分のいいたいことをしゃべるだけでは十分とは言えない.相手の言っていることを十分理解できなければならないのである.この両方ができて初めて本来の会話と言えるのである.

 本講座の執筆にあたり,筆者自身は英語を専門的に勉強した者ではないし,むしろ英語では人並み以上に苦労してきた経験があり,そしていまだ悪戦苦闘している現状であることをお断りしておきたい.

 ここではいくつかの国際学会での場面を想定し,役に立つであろうと思われる会話の表現について述べていきたいと思う.その表現方法は状況に応じて微妙に変わってくるのでその代表的なものの一部を紹介する程度に止まることをお許しいただきたい.表現方法は異なっても基本的要領は全く日本での学会発表と同じであると理解してよい.

報告

乳房切除術後に発生した上腕浮腫に対する理学療法の経験

著者: 佐野正和 ,   前田真一 ,   影近謙治 ,   染矢富士子 ,   立野勝彦

ページ範囲:P.741 - P.744

はじめに

 乳房切除術後に発生する問題点として,術側上肢の可動域制限,筋力低下,浮腫などが挙げられるが,近年までに多くの理学療法士を含む医療従事者がこれらの諸問題に取り組み,好成績を残している.しかしながら,可動域制限や筋力低下の問題は術後プログラム上,良好な改善経過をたどるのに対して,浮腫の問題はその発生の予測が困難で,また発生後必ずしも良好な改善を示すわけではない.

 今回,我々は乳房切除術後に発生した術側上肢の浮腫に対する理学療法を通じて,浮腫の発生時期と治療効果について若干の知見を得たのでここに報告する.

TREASURE HUNTING

障害児者のニーズに応えうる技術体系の確立を!―岸本 眞(岸本姿勢訓練センター)

著者: 編集室

ページ範囲:P.745 - P.745

 岸本眞氏が大阪で「岸本姿勢訓練センター」を開設して9年になる.理学療法士として11年間の施設勤務を経てからの転身である.今でこそ,地域にすっかり溶け込んで幅広い分野で活躍されている様子がうかがわれるが,新しい分野に進出するには相当の情熱が求められようし,その分野で実り豊かな成果を挙げるには周到な計画性が要求されたはずである.高齢社会の到来という社会背景の有利さは否定できないまでも,理学療法士が地域社会のなかで独自の機能を発揮するまでには,相当なご苦労があったに違いあるまい.今月はそんな岸本氏に地域理学療法への思いを語っていただく.

プログレス

ストレッチングの新しい考え方

著者: 小柳磨毅

ページ範囲:P.746 - P.748

 1.はじめに

 我々理学療法士にとってストレッチング(stretching)は,運動療法の伸張訓練(stretching exercise)として馴染み深い治療手技である.しかし近年,ストレッチング(あるいはストレッチ)は,スポーツ傷害の予防を目的とした準備,整理体操の一部としても普及し(図1),すでに一般用語として認知されている.

 こうしたストレッチングの啓蒙には,1970年代に独自のプログラムを提唱し,普及活動を展開した米国のボブ・アンダーソン氏が果たした役割が大きい1).しかし,その後も今日に至るまで,ストレッチングの方法や効果については,様々な議論が展開されている2,3)

 そこで以下に,ストレッチングをいくつかの側面から検証した知見を振り返り,筆者がスポーツ傷害の予防や治療に活用している方法を併せて紹介する.

講座 鎮痛・2

痛みと薬物療法

著者: 石埼恵二

ページ範囲:P.749 - P.753

はじめに

 痛みには痛覚という感覚の面と,情動のの側面がある.情動の側面には痛みに伴う不快感,不安,苦しみ,恐怖などが含まれる.痛みをおこす原因が外傷浮腫など外的に現れている場合には,他人でも痛みを推定できる.しかしながら内的な痛みで情動的変化を伴っている場合には,第三者には理解しがたく,痛みの体験を分かち合うことはできない.リハビリテーションで大切なのは,痛みを理解しようとする姿勢である.

 痛みは大きく次のように分けられる.①外部から刺激が加わって生じる体表面の体性痛(打撲などによる筋肉痛),②組織に病変があり生ずる内臓痛(尿管結石による痛みなど),③神経系の異常による痛み(視床痛,帯状疱疹後神経痛など),④精神的な原因によって身体に異常をきたす,精神的ストレスによる胃痛など,⑤身体的な異常がない心因性痛み.

 リハビリテーションの現場では,神経系の異常による痛みに遭遇する機会が多いと思われる.この疾患には麻薬などのオピオイド性鎮痛薬は無効である.視床痛や反射性交感神経性萎縮症の薬物療法は,現在の医学では完全には解明されていない.リハビリテーションは痛みをともないながら行われることとなる.理学療法士は痛みを理解すると同時に,患者にたいする精神的ケアが必要となる.今回は精神的なもの以外の痛みの薬物療法について解説する.また使われる薬の作用機序についても解説する.

1ページ講座 日本の社会保障システム・10

日常生活用具・福祉機器

著者: 生方克之

ページ範囲:P.754 - P.755

 福祉・保健関連機器の法的な名称は,福祉用具,日常生活用具,補装具などであるが,総括的には福祉機器,保健福祉機器(以下福祉機器)など様々な使われ方がなされている.

 今回は前回紹介した身体障害者福祉法等の補装具と各種健康保険の治療材料を除いた福祉機器の助成制度を中心に紹介する.なお,それぞれ制度によって給付品目などが異なるので,どの制度を利用するかは検討が必要である.

初めての学会発表

臨床研究の意味を考えた学会発表

著者: 弘瀬大士

ページ範囲:P.756 - P.758

はじめに

 新緑の香る5月16日,17日,埼玉県大宮市の中心部にある大宮ソニックシティにて第32回日本理学療法士学会が開催されました.今回のテーマは「保健・福祉への理学療法士の展開」であり,一般演題は口述386題ポスター168題ビデオ8題の多数の演題発表がなされ,会場は大勢の理学療法士の参加によって埋め尽くされました.

 全国学会への出席は昨年の名古屋で行われた第31回学会以来2回目でしたが,今回,初めての演題発表(ポスター発表)を行いましたので,発表までの経緯と印象を述べてみたいと思います.

雑誌レビュー

“Physiotherapy Canada”1996年版まとめ

著者: 大西秀明 ,   赤坂清和 ,   小野武也 ,   小林広枝 ,   真寿田三葉 ,   南宏美 ,   横塚美恵子

ページ範囲:P.759 - P.764

はじめに

 Physiotherapy Canada(CPA)は,カナダ理学療法士協会の機関誌であり,1996年で48巻となる.48巻は4号からなり,表に示すようにEditorial,Dialogue,Congress Report,Articles,Author's Instructions,President's Reportから構成されている.各号に5編のArticleが掲載されており,本稿ではArticles 20編に注目し,物理療法,測定・評価,教育・管理,整形外科関係,運動療法の分野に分けて紹介する.いくつかの分野を重複するものもあったが,分類に際しては,各論文を主たる1つの分野に割り当てた.なお,本文中の論文著者に続く【( )】内の数字のうち( )内は雑誌の号数,それにつづく数字がページ数を示す.

クリニカル・ヒント

マイオセラピー

著者: 辻井洋一郎

ページ範囲:P.766 - P.768

 マイオセラピーは筋疾患の治療法である.その筋疾患とは良性の筋病変であって,捻挫や外傷などに伴う筋の急性傷害や筋痛を主訴とする慢性の筋痛症候群のことである1,2).マイオセラピーは,それらの筋病変を生体に備わっている防御系や調節系による反応を利用して,治癒させることを治療原理とする3)

 筋病変のうち,急性の筋傷害は視診,問診および触診による検査を行い,触診による筋傷害部の発見と同時に治療が開始される4).筋痛の原因筋を自・他動的に収縮(短縮)させると,“こむら返り”(筋痙攣)を伴って痛みが発現したり,増強されたりする(運動痛:収縮痛および短縮痛)2).その痛みを軽減させたり,起こさないようにするために,患者は筋痛を起こす原因筋をストレッチする.

資料

第32回理学療法士・作業療法士国家試験問題(1997年3月7日実施) 模範解答と解説・Ⅳ―理学療法・作業療法共通問題(1)

著者: 宮本顕二 ,   飯坂英雄 ,   福島順子 ,   星文彦 ,   上野武治 ,   末永義圓 ,   大宮司信 ,   村田和香 ,   中村仁志夫

ページ範囲:P.769 - P.772

ひろば

外国人の母親への療育指導

著者: 縄井清志

ページ範囲:P.727 - P.727

 障害児を取り巻く家庭環境は1人ひとり違っているが,国際結婚した両親の間に生まれた場合の療育不利は大きい.一般的に障害児の療育は母親を中心に行われるが,母親が外国人であると様々な困難が生じる.筆者は,外国人の母親を持つ脳障害児の早期理学療法を2例経験し,母親の心理,社会的不利や家族機能への介入の重要性を認識した.

書評

―Blaubert CT,et al(著)滝川一興(訳)―整形外科用語マニュアル(第2版)

著者: 濱弘道

ページ範囲:P.758 - P.758

 このようなマニュアルが座右にあれば,論文を書くときや読むときに随分と重宝するであろうと思わせる訳書である.原書は米国で版を重ねること20年,整形外科とその関連領域の急速かつ広範な学術的進歩を改訂ごとに適宜取り入れてきた最新版が第5版になる.この第5版の訳書は領域に特有な用語の簡潔な説明に,明快かつ的確な訳を施してあるので,我々はいながらにして即座に専門用語を正確に理解できるのは何よりも有り難い.ことに冠名用語が数多く採録されていることは我が国の類書には全くみられない貴重な点である.

―編集 亀山正邦・亀田治男・高久史麿・阿部令彦―今日の診断指針(第4版)

著者: 多須賀幸男

ページ範囲:P.768 - P.768

 編集責任者をすべて入れ替え,若い医師を執筆者に選び,項目も再検討して5年ぶりに全面改訂された「今日の診断指針」(第4版)の書評を依頼された.広辞苑にほぼ匹敵するボリュウムを持つこの大著を手にとって,その姉妹編である「今日の治療指針」の編集に携わる1人として,充実した内容に大げさではなく驚嘆した.膨大な内容を紹介するのは容易ではないが,診療しながらいろいろの頁を開いて得た印象を率直に書いてみる.

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PTクロスワードパズル

著者: 埴亜紀夫

ページ範囲:P.772 - P.772

 黒太枠内の文字を組合せる1つの文字になります.

文献抄録

ページ範囲:P.776 - P.777

編集後記

著者: 奈良勲

ページ範囲:P.780 - P.780

 今月の特集は「ひとり職場の運営」である.我が国に理学療法士が誕生した30数年前には,大多数の理学療法士は,その数が極端に少ないことから必然的にひとり職場に勤務し,それぞれの立場で奮闘してきた.私自身は,ロスアンジェルスで在宅訪問理学療法士として勤務したことがある.このとき,チームメンバーに看護婦はいたが,理学療法士としては私がひとりであり,正しく「ひとり職場の運営」を体験している.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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