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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル31巻11号

1997年11月発行

雑誌目次

特集 難病と理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.783 - P.783

 いわゆる難病とは,昭和47 年に策定された「難病対策要綱」,に基づく特定疾患を表すもので,その幾つかは理学療法の積極的な適応として認識されています.

 難病患者に対する効果的な理学療法を展開するためには,最新の分子生物学的知見の理解とともに,医療・福祉の連携のなかで一貫した継続的な理学療法が行われる必要があります.そこで本特集では編集子の小論(エデイトリアル)の後に,難病対策の変遷と現状を異なるお立場の先生方お二人にご執筆いただきました.さらに理学療法士の先生方10 名には,印象に残った症例を通して難病患者の理学療法の実践について,その思いをお寄せていただきました.

〈エディトリアル〉難病患者と理学療法

著者: 内山靖

ページ範囲:P.785 - P.786

 1.はじめに

 難病とは,昭和47年に策定された「難病対策要綱」に基づく厚生省特定疾患を示す,いわば行政用語が広く医学領域でも用いられるようになったもので,平成9年1月現在までに38の疾患が特定疾患治療研究対象として指定されている.

 「難病患者の理学療法」を概観するには,難病に対する理学療法と,難病患者と理学療法士とのかかわりに関する視点を含めることが重要である.前者では,疾病の特性や各症状に対する理学療法評価-治療が綿密な知識・技術を背景として具体的に展開されなければならない.一方後者の要素では,個々の患者さんに対する継続的な理学療法がチームアプローチのなかで円滑に行われ,かかわりを通じて生じる患者-治療者関係のすべてが含まれる.理学療法が前者に傾き過ぎればごく一部の症状に対する治療者自身の自己満足で終わる可能性が大きく,後者を前面に押し出しすぎると慢性・進行性の経過を辿るなかでそれが消極的な考え方に置き換わってしまう危険があるばかりか,理学療法士の関与が不毛に帰することになりかねない.

 また理学療法士には,日進月歩の分子生物学的アプローチに基づく遺伝子診断・治療の最新知見や新たな薬物療法にも関心を示している必要があり,一方では医療・福祉制度の幅広い理解と活用を踏まえたうえで,後遺症や固定症状ではない慢性の経過をたどるなかでもめまぐるしく変化する,あるいは変化する可能性のある症状・障害に対して理学療法固有の知識・技術を応用・実践することが求められる.

難病研究と治療のあゆみ

著者: 黒川清 ,   三丸淳洋 ,   遠藤明

ページ範囲:P.787 - P.796

1.「難病対策要綱」の策定

 昭和47年,日本の行政当局は当時は原因不明であったスモンの対策がきっかけとなって「難病対策要綱」を策定,「(1)原因不明で治療法未確立,しばしば後遺症があり(例として再生不良性貧血,全身性エリテマトーデス,べーチェット病など),(2)慢性の経過を辿り,経済的な問題,介護と精神的な負担が大きい(例えば,進行性筋ジストロフィー,小児ぜんそく,ネフローゼ,など)」いわゆる「難病」の原因や治療法の開発などを目的として,同年からスモン,べーチェット病などの8疾患の特定調査研究班と同じくスモン,べーチェット病などの4疾患の治療研究班を発足させた.調査研究班はそれ以来一部編成替えはあったものの,ほぼ1年に1疾患を対象として加え,平成7年度までに調査研究班は44班となり(表1),調査研究に年間15億円弱の研究費を投じるに至った.一方,「医療費の自己負担の解消」を伴う治療研究班では,難病のうち診断基準の確立している疾患のうちで(表2),本来は難病研究に協力していただいた患者さんに「謝金」として医療費の患者自己負担分を公費で補助する形がとられてきた(平成9年で38疾患).さらに医療施設の整備も図られてきた.これらの,主に成人の難病の対策のほかに,昭和49年には幼児,小児を対象にした「小児慢性特定疾患」に対する対策もとられてきた.これらを含めた全体を示したのが図1(790ページ)であり,厚生省のそれぞれの担当局と平成9年度の予算を示した.図2(791ページ)には調査研究班と治療研究班の予算の推移を示した.前者が伸び悩んでいるのに対して,後者が大きく増加していることが明らかであろう.

難病と在宅ケア

著者: 川村佐和子

ページ範囲:P.797 - P.802

 1.はじめに

 難病療養者の医療サービスがなぜ在宅ケアと深い関係をもってきたか,というよりもなぜ在宅療養を支援する「地域ケアシステム」を開発してきたのかについてまず述べておきたい.ここで,「地域ケアシステム」という用語をもちいた理由に触れておきたい.地域ケアの「地域」とは在宅療養者を取り巻く地域社会環境を総体的に示して用いてきた.また「ケア」は「医療」では医療職員だけの支援を示すと考え,在宅療養する人々の支援は地域社会全員,つまり医療職に限らない隣人も,その子どもも含めた支援によって成り立っていることから,これらを総称して用いた.

 難病対策がスモン問題を契機に,開始されたことは知られるところである.スモンは昭和30年代初期から発生がみられ,それ以前には診断基準がなかった疾患で,昭和30年代後半の文献には「腹部症状に伴う特異的な末梢神経障害」というように呼ばれていた.原因は不明であったが,患者発生には疫学的現象として病棟集積性や地域集積性がみられ,亜急性に発生する感染症(スローウイルス)ではないかと疑われていた.ある国立大学ウイルス研究所の助教授によって撮られたスモンウイルスの電子顕微鏡写真が全国紙のA新聞第1面の紙面半分を占める大きさで報道されて,感染説が有力と社会に印象づけた.また,スモン患者は女性が多く,下痢や便秘に伴ってグローブストッキング型に知覚障害がおこり,ついで運動麻痺が生じ,重症者では視覚神経障害を起し,失明や死に至った人々もあった.一部の週刊誌はこれを「若妻の下半身を襲うしびれ」などと表現し,電車の吊り広告に大きく出したりした.人々はスモンに対し,原因不明,死に至る病(やまい),そして感染するというイメージを強くもち,療養者に接触しないように注意して,自分自身の感染や発病を防ごうとした.そのため,療養者は社会生活はもちろんのこと,職場での生活や家庭生活においても疎外を受けることとなった.スモン療養者が受診する病院で,他の疾患の療養者が受診しなくなり,病院が閉鎖に追い込まれたとか,経営困難に立ち至ったということが報道された.

 結果として,スモン療養者は自宅で座敷牢に入れられたように軟禁状態にあった人々も少なくなく,医療や福祉の恩恵を得られない実状にあった.このことから,スモン療養者の要請を受けて,診療に出向かなくてはならない状態になり,大学病院の神経内科医とともにボランティアで訪問診療することも始めた.

 スモンをきっかけに,筆者は神経疾患療養者の生活実態に接することとなり,保健相談を求めてくる人々の中に,診断も正確につかないまま苦しんでいる神経筋疾患療養者が多くいることを知った.筋ジストロフィー症児の親の組織では,この問題を解決するため,巡回型の無料検診を各地で行って,療養者に正確な診断をつけようという努力を行っていた.

 東京大学第3内科の医局では,東京都在住の筋ジストロフィー症児の親たちを中心とする組織,東京進行性筋萎縮症協会(東筋協と略)の検診活動に協力しており,筆者もその活動に参加するようになった.その頃,筋ジストロフィー症児に対しては,国立療養所に専門病棟を作り,そこに長期入除する施策が始まっていた.東京都立府中病院神経内科で療養相談を担当していた筆者は,この療養を必要する子どももその両親たちも,療養者を収容するのではなく,家族の助け合いの中で生活していきたいという希望を強く感じ取った.まさに,地域ケアの考えの原点であった.昭和40年代後半の東京都立府中病院神経内科の長であった副院長を中心に,職員がボランティアで訪問医療を開始し,行政側の理解のもとに,それは3年後の昭和49年12月から在宅診療班活動として,病院業務に発展した.難病医療における在宅ケアは療養者のQOLのために開発されたサービス提供方法であった.

難病患者の理学療法―心に残る症例 1)症例報告

独居生活を長期可能にした遠位型ミオパチーの1症例/パーキンソン病患者と介護者のストレス―精神症状に注目して/強皮症の理学療法の経験/生活習慣の修正に苦悩した難病患者/きっかけ動作を用いて起き上がり動作が可能となったパーキンソン病の1例

著者: 浅賀忠義 ,   小林量作 ,   武富由雄 ,   辻下守弘 ,   鶴見隆正 ,   外山治人 ,   長屋政博

ページ範囲:P.803 - P.811

 1.はじめに

 難病患者を長期的に治療およびケアできる医療機関は限られており,たとえ退院できたとしても再入院を繰り返すことも多い.したがって,難病患者を担当するということは生涯にわたる出会いを意味するといっても過言ではなかろう.積極的なアプローチが困難な難病患者を前にして,理学療法の専門性は脇役でしかないことを痛感させられることも多いが,患者にとってまずは前向きな人生観が求められるとすれば,専門性を媒体とした親身な人間的交流の中に双方にとって意義深いものが秘められているように思える.

 ここで取り上げる症例は,自殺をほのめかすほどに前途を悲観していた当時24歳の女性患者が,身体機能の段階的な低下にもかかわらず,退院時には前向きに生きていくことを決心するまでとなり,せいぜい2,3か月程度の独居生活というリハスタッフの予想に大きく反して,退院後2年10か月で友人と同居することにはなったが,驚くべきことに今日まで5年間以上も在宅生活を継続しているケースである.疾患名は遠位型ミオパチー(進行性で遺伝的に規定された原発性の変性筋疾患で,四肢遠位部優位の筋障害分布を呈し,既知の疾患単位には属さないものの総称.水澤英洋,他:遠位型ミオパチー,神経内科20:553-557,1984)で,極めてまれではあるが,本症例の主たる障害内容は全身性の進行的な筋力低下である.したがって,理学療法のアプローチにはそれほど特筆すべき点があるわけではないが,本特集の主旨を考慮して,察することのできた心情的な動きや在宅生活への移行期に焦点をあてて回想録スタイルで報告する.

難病患者の理学療法―心に残る症例 2)エッセー

ALSとの関わりのなかで/ALS患者との歩みを振り返って/あるALS患者の理学療法を通して/ピアノを再び弾きたかったAさんとの邂逅/難病患者の理学療法について感じること

著者: 岡十代香 ,   川村博文 ,   坪田由美 ,   福元賢吾 ,   松田尚之

ページ範囲:P.812 - P.817

 神経難病患者のリハビリテーションに関わった11年の間に,数多くのALS患者さんに出会った.どの患者さんも「心に残る症例」ばかりで,同時に,理学療法士(PT)としては「悔いの残る症例」ばかりである.PTとして残る「悔い」とは,リハビリテーションの効果が得られがたいという致命的な問題を抱えているところに存在する.進行していく機能障害に対するアプローチのなかで身体機能面での改善・維持は極めて難しく,ましてや効果となると否定的にならざるを得ない.それならば,PTとしての視点を少し変えて,その疾患と付き合っていけばいいではないか,ALSに対する理学療法は狭義の目的で対処できるものではないのだから.これが,ALSとの関わりのなかで得たことである.

 私がかつて在職していた東京都立神経病院は,神経系難病疾患の専門病院としての役割を担った病院で,私も,入院と在宅診療を通して数多くのALS患者さんに出会った.その1例1例が心に残る症例ばかりで,どの患者さんのことも家族のことも,ALSの治療の第一線から離れた今でも忘れることができない.神経病院では開院当初より神経難病に対する独自の取り組みがなされたが,ALS医療に関しては,病気の告知の是非,人工呼吸器装着の有無という点で確立していない時代があり,患者さんも様々な状況下におかれていた.

とびら

「力愛不二」そして人との出合い

著者: 弓岡光徳

ページ範囲:P.781 - P.781

 学生時代,北九州で少林寺拳法を少し学んだことがあります.その時に教えを受けた言葉が「力愛不二」です.その意味は,力がなければ愛だけではなにもなすことができない,ということだと思います.なにごとも三日坊主なので拳法の練習は長続きしませんでしたが,その教えは深く私をとらえました.その後,もう18年前になりますが,理学療法士として,中枢神経系に障害をもつ患者さんの治療に携わるようになり,自分の治療技術の未熟さを痛感するようになりました.そのころ一般的に使われていた治療技術では目の前の患者さんを,ていねいに効果的に治療することができなかったのです.

 そのようなある日,たまたま出掛けていった長崎での成人片麻痺患者の講習会でボバース記念病院の古澤正道先生に出合い,そのすばらしい治療技術に感激しました.痙性と痛みで動かすことのできなかった脳卒中患者さんの肩が,治療後,患者さん自身で痛みなしで,前方に挙上できたのです.

入門講座 英文発表の実際・3

英文ポスター発表

著者: 平岡浩一

ページ範囲:P.818 - P.822

 Ⅰ.ポスター発表とは

 最近は学会においてポスター発表の機会が圧倒的に多くなりつつある.この理由としては,研究者の量的拡大が研究発表の爆発的増大をもたらし,従来の代表的な発表方法であったスライドによる口頭発表が情報の受け手にとって効率的な情報入手方法でなくなりつつあることが挙げられる.逆にポスター発表は,聴衆が計画的に有用な演題を選んで自分のペースで情報収集できるので,聴衆の効率的な情報の取捨選択と効率的な収集の観点から有用である.

 ポスター発表とは開催者より与えられた一定面積の壁面のスペースにポスターをレイアウトして発表するものである.ポスター発表は一般に展示と説明と討論から構成される.通常,一定時間ポスターの前に発表者が張り付くことが義務づけられ,ポスター展示を見て回る聴衆に適宜説明して質疑応答を行う.ちなみに昨年の日本理学療法士学会では学会中ポスターを展示し,口頭発表に準ずる形で司会者と聴衆を交えて発表・質疑応答をする形式となっていた.また筆者が3年前に参加した米国理学療法士学会では5日間のうち3日間ポスターを展示し,そのうち数時間,演者がポスターの前に待機して聴衆とディスカッションできるようにしてあり,他の時間で発表も行われていた.

講座 鎮痛・3

鎮痛とペインクリニック

著者: 関山裕詩 ,   花岡一雄

ページ範囲:P.823 - P.828

 ペインクリニック科の紹介

 疼痛を訴える患者全てがペインクリニック科の治療対象患者である.当院痛みセンターでは,毎日30名以上の外来患者と10~20名の麻酔科および他科入院患者の疼痛管理を行っている.治療手段は神経ブロック療法が主であるが,薬物療法やレーザー療法等も併用し効果を上げている.痛みの成因は複雑で多岐にわたり,患者自身の情動的因子に大きく修飾される.また,痛みの原因は臨床医学の各分野にわたり,その診断治療はペインクリニック科だけにとどまらず,整形外科,脳外科,耳鼻科,皮膚科,精神科,神経内科,内科外科各科,そしてリハビリテーション科等との連携が重要である.

TREASURE HUNTING

地域リハの最先端に生きる小金丸敬仁氏(国立療養所壱岐病院理学診療科)

著者: 編集室

ページ範囲:P.829 - P.829

 意外に知られていないようだが,長崎県には壱岐,対馬,平戸,五島列島など596の離島があり,そのうち75の島々で人々が生活を営んでいる.ご他聞に洩れず過疎化とともに高齢化が進み,離島医療は県の大きな政策課題になっている.その一翼を担っているのが,地域リハビリテーションに情熱を注いでいる県理学療法士会の面々である.長崎県の地域リハ活動については,すでに種々の形で紹介されて,つとに有名であるが,今月は“ひとり職場”の国立療養所壱岐病院を拠点に地域リハの最先端を走っている小金丸敬仁氏を紹介しよう.

学会印象記 国際リハビリテーション医学会第8回世界大会(IRMAⅧ)

多彩なプログラムにふれて

著者: 日髙正巳

ページ範囲:P.830 - P.832

 国際リハビリテーション医学会(International Rehabilitation Medicine Association:IRMA)は,リハビリテーション医学の臨床・研究・教育について,世界各国の研究者・臨床医が国際的レベルでの研究成果を発表・討論し,人的交流を行う学会であり,4年ごとに開催され,今年で8回目を迎える.その世界大会が,8月31日から9月4日までの5日間,歴史の都京都を舞台にして開催された.

1ページ講座 日本の社会保障システム・11

住宅等に関する制度

著者: 生方克之

ページ範囲:P.834 - P.835

 加齢による身体機能の低下や外傷・疾病による身体機能障害により生活活動の制限がもたらされた場台,生活の基本となる衣食住のうち,近年では「住」の問題がクローズアップされることが多い.社会的にも障害者および高齢者にとっての住環境上のバリアフリーに関する必要認識も高まってきている.今回はこうした住宅に関する制度について紹介する.

 住宅に関する制度は,住宅改造費用の助成制度,低利の貸付金制度,割り増し融資制度,公的住宅優先入居等の制度に大別することができる.

あんてな

私のバリアフリー活動

著者: 森重康彦

ページ範囲:P.836 - P.837

 バリアフリーデザイン研究会が設立された平成4年4月から活動に関わっている.この間,総理府は「平成7年度版障害者白書」を刊行し,障害者を取り巻く4つの障壁を特集している.4つの障壁とは,①物理的な障壁,②制度的な障壁,③文化・情報面の障壁,④意識上の障壁である.バリアフリーデザイン研究会は,まさにこの4つの障壁に対して実践的な取り組みを行う任意団体である.その取り組みとは,各種シンポジウム(公営住宅改造問題,やさしいまちづくり条例への提言など)やセミナーの開催,バリアフリー小学校建設の支援,民間住宅改善相談および調査・施工,公共交通機関への低床電車・バスの導入推進,行政への要望書提出といったことである.

 本稿ではそのうち,バリアフリーデザイン賞,障害者住宅の新築,低床電車・バスの導入に関する取り組みの概要を報告する.

プログレス

最近の骨粗鬆症治療―骨量増加から骨折の予防へ

著者: 中村利孝

ページ範囲:P.838 - P.839

 骨粗鬆症は全身性の疾患であり,骨の量の減少と構造の異常により強度が減少して,骨折発症の危険性が高まった状態である.したがって,骨粗鬆症の治療の目標は骨折発症の危険性を低下させることにある.骨粗鬆症で骨の強度が低下したといっても,体重を支えきれないほどに強度が低下することは稀である.多くの例で,骨の強度がある程度低下した状態で転倒し,手,大腿部,腰,殿部などを打ち,その介達外力により骨折が生じる.したがって,骨粗鬆症における骨折発症の要因は3つに分けられる.1つは骨の内因的な問題である強度の減少,2つには,転倒などの外力増加のきっかけ,3つには増加した介達外力の骨へのかかり方に関与するものである.

 骨粗鬆症における骨折の予防法としては,これら3つの要因に対して,それぞれ対策が必要である.転倒の防止をはかることは比較的容易にみえる.しかし,転倒のきっかけには様々な偶然が作用する.偶然に起こることを想定して予防することは,容易ではない.しかも,高齢者における転倒の頻度は,せいぜい年に数回である.もちろん,転倒すると骨折する可能性が強いことを患者さんに知らせ,気をつけてもらうように指導することは必要かつ重要であるが,その効果には限界がある.

クリニカル・ヒント

片麻痺患者の環境適応と筋緊張

著者: 冨田昌夫

ページ範囲:P.840 - P.842

 1.はじめに

 何らかの原因で運動機能が障害された時,必ず姿勢や動作の仕方に歪みが生じ,筋の緊張が変化する.これを理解するためには力学的・運動学的な分析だけでなく,その土台ともいえる環境との適応について検討することも重要である.現実の世界をどのように知覚するのか整理して,片麻痺にみられる問題を,これと関連させながら見直してみたい.

雑誌レビュー

“Australian Journal of Physiotherapy”1996年版まとめ

著者: 斎藤昭彦

ページ範囲:P.843 - P.848

はじめに

 “Australian Journal of Physiotherapy”はオーストラリア理学療法士協会(The Australian Physiotherapy Association)が3月,6月,9月,12月の年4回発行する雑誌で,1954年に初版が発行されている(写真).1996年版のページ数は第1号が92ページ,第2号100ページ,第3号76ページ,第4号92ページの計360ページで構成されている.各号に共通してみられる項目は,「原著論文Original Articles」,「専門的問題Professional Issues」,「書評Book Reviews」,「学会予定Coming Events」の4項目であり,1号には,「トップ記事Leading Article」,「質の展望Perspectives on Quality」があり,4号には,「1997年度卒後研修予定表1997 Continuing Education Calendar」,「執筆規定Guidelines for Authors」,「1996年度版索引Index to Volume 42,1996」がある.そのほか,「エディトリアルEditorial」,「クリニカルノートClinical Notes」,「ニュース News」,「話題の治療Topical Therapy」,「編集部への手紙Letter to the Editor],「ハウツーHow to…」,「プロダクトノートProduct Note」,「最近修了した大学院レベルの研究Recently completed post graduate & honours research」がある.各号の構成を表に示す.ここでは,1996年の論文を中心に“Australian Journal of Physiotherapy”の1996年版を概観する.

資料

第32回理学療法士・作業療法士国家試験問題(1997年3月7日実施) 模範解答と解説・Ⅴ―理学療法・作業療法共通問題(2)

著者: 宮本顕二 ,   飯坂英雄 ,   福島順子 ,   星文彦 ,   上野武治 ,   末永義圓 ,   大宮司信 ,   村田和香 ,   中村仁志夫

ページ範囲:P.850 - P.854

書評

―エレインN. マリーブ(著) 林正健二,他(訳)―人体の構造と機能

著者: 坂井建雄

ページ範囲:P.796 - P.796

 コメディカルの解剖学生理学の教育のための,すばらしい教科書が現れた.いや,そんな生温い誉め言葉では足りない.内容が洗練されて豊富なとか,最先端の知識まで分かりやすく書かれているとか,そんな生やさしいものではない.陳腐な言葉かも知れないが,これは革命的な教科書だ,とでも言うしかない.

 これまでのコメディカルの解剖学,生理学の教科書は,概して,医学の解剖学と生理学の教科書から,総論的な内容を削り落とし,各論的な項目だけを抜粋したダイジェスト版に傾きがちだった.解剖学と生理学の専門家が,それぞれの科目の用容をより簡単に分かりやすくしようとしたときに,思わず採ってしまったアプローチである.これではコメディカルの学生が可哀想だと思いながら,彼らにふさわしい教科書のイメージを描ききれないもどかしさを,わたし自身が感じていた.

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PTクロスワードパズル

著者: 埴亜紀夫

ページ範囲:P.822 - P.822

 黒太枠内の文字を組合せる1つの文字になります.

文献抄録

ページ範囲:P.856 - P.857

編集後記

著者: 内山靖

ページ範囲:P.860 - P.860

 本誌をご覧になる頃には新潟での全国研修会を終えて,京都で行われる第33回日本理学療法士学会の抄録作成にとりかかる諸兄が多いことと思われます.

 今月は「難病と理学療法」を特集として取り上げました.保健・医療・福祉の連携が叫ばれるなかで,現代医療の課題を凝縮するともいえる厚生省特定疾患・患者に対する取り組みは,同時に理学療法の指向を考える上でも本質的な問題を投げかけているものと思われます.日進月歩の医学生物学的知見の理解とともに医療・介護制度の幅広い活用を踏まえた,各患者の疾病・障害特性を十分に考慮した継続的な理学療法の展開などバランスのとれた実践力が要求され,本特集が広く理学療法への一石となれば幸いです.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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