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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル31巻11号

1997年11月発行

文献概要

プログレス

最近の骨粗鬆症治療―骨量増加から骨折の予防へ

著者: 中村利孝1

所属機関: 1産業医科大学整形外科

ページ範囲:P.838 - P.839

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 骨粗鬆症は全身性の疾患であり,骨の量の減少と構造の異常により強度が減少して,骨折発症の危険性が高まった状態である.したがって,骨粗鬆症の治療の目標は骨折発症の危険性を低下させることにある.骨粗鬆症で骨の強度が低下したといっても,体重を支えきれないほどに強度が低下することは稀である.多くの例で,骨の強度がある程度低下した状態で転倒し,手,大腿部,腰,殿部などを打ち,その介達外力により骨折が生じる.したがって,骨粗鬆症における骨折発症の要因は3つに分けられる.1つは骨の内因的な問題である強度の減少,2つには,転倒などの外力増加のきっかけ,3つには増加した介達外力の骨へのかかり方に関与するものである.

 骨粗鬆症における骨折の予防法としては,これら3つの要因に対して,それぞれ対策が必要である.転倒の防止をはかることは比較的容易にみえる.しかし,転倒のきっかけには様々な偶然が作用する.偶然に起こることを想定して予防することは,容易ではない.しかも,高齢者における転倒の頻度は,せいぜい年に数回である.もちろん,転倒すると骨折する可能性が強いことを患者さんに知らせ,気をつけてもらうように指導することは必要かつ重要であるが,その効果には限界がある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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