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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル31巻12号

1997年12月発行

文献概要

講座 鎮痛・4

鎮痛と東洋医学

著者: 鍋田理恵1 谷万喜子1 鈴木俊明1

所属機関: 1関西鍼灸短期大学神経病研究センター

ページ範囲:P.893 - P.900

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はじめに

 東洋医学は古代中国に起源し,経験医術として体系化されてきた医学である.その治療方法は,鍼・灸といった道具を用いた物理的治療法としての鍼灸治療と,薬物的治療法としての漢方薬治療に大別される.東洋医学の特徴は,疾病に罹った患部を直接的に治療する西洋医学に対して,疾病を生体を取り囲むあらゆる自然現象の乱れとして理論化し,東洋医学的診断,いわゆる『証』を定めて全身療法を行う部分にある.『証』は,望診(視診に相当する),聞診(西洋医学での聴診だけでなく,患者の声の高低や口臭などの臭いも含めた広いもの),問診,切診(脈診,舌診など)といった東洋医学的診断法によって決定される.診断は季節や天候,生活環境などの環境因子に影響され,西洋医学的に同じ疾患でも,東洋医学的には個体によって『証』が違ったり,また同じ個体でも時期によって『証』は変わることがある.したがって,東洋医学を用いての治療方法は,治療の度に変わることがある.このような東洋医学的な『証』を中心とした適切な診断や治療には熟練を要する.

 物理的治療法である鍼灸治療は,1970年代における中国での鍼麻酔の研究によって,その鎮痛機序が徐々に明らかにされ,疼痛生理学の発展に一石を投じてきた.こうした研究活動により,鍼灸治療は単に鎮痛に有効であることのみならず,その後多くの研究から自律神経系や免疫系に対しても効果を有していることが明らかにされている.

 本稿では,現在までに明らかにされている鍼灸治療の鎮痛メカニズムの一端と,その身体に与える影響を紹介するとともに,鍼灸治療の方法および臨床における治療の現状と効果について紹介する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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