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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル32巻1号

1998年01月発行

雑誌目次

特集 Welcome to the 13th WCPT Congress

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.3 - P.3

■エディ卜リアル

 世界理学療法違盟(World Confederation for Physical Therapy;WCPT)は1951 年に成立された理学療法の国際組織である.日本理学療法士協会は1974 年に会員国になり,その後国際的にも活動を展開してきた.

 WCPTが行う事業の目的は多岐に及ぶが,そのなかで,4年ごとに開催される国際学会の意義は大きい.そして,その意義ある第13回WCPT学会が1999年5月23~28日の6日間にわたり「横浜パシフィコ」で開催される.

第13回WCPT学会の開催に向けて

著者: 奈良勲

ページ範囲:P.5 - P.8

 1.はじめに

 1999年5月23日から28日わたり,横浜パシフィコにおいて,第13回世界理学療法連盟学会が開催される.学会テーマは“Bridging Cultures”である.これは世界理学療法連盟(World Confederation for Physical Therapy,以下WCPT)が4年ごとに開催する学会であり,日本理学療法士協会が第13回学会のホスト役を務めることになった.

 この原稿が活字になる頃は開催まで約1年半である.しかし演題締切りは1998年9月末であり,演題報告を希望する方々は,新たな研究テーマ,あるいはこれまで報告した研究課題にデータを追加し,この機会に是非演題を申し込まれることをお勧めしたい.もし,演題報告をしない方々でも学会に参加されて海外の理学療法士と交流し,国際学会の雰囲気を味わって頂ければ幸いである.

 本号の特集は,第13回WCPT学会であることから,それに関連した内容が網羅されている.

 筆者は本学会の学会長という立場で,WCPT学会誘致の経緯,学会趣意,意義などについて述べる.

第13回WCPT学会の準備状況

著者: 丸山仁司

ページ範囲:P.9 - P.14

 1.はじめに

 世界理学療法連盟学会(WCPT学会)の開催まであと1年半と迫ってきた.平成5年5月に,日本でWCPT学会の開催が決定してから,現在までの準備状況と今後の計画を述べる.ただし,他論文との重複を避けるため,プログラム,演題募集,ソーシャルイベント,学会展示,プレ・ポストセミナー,日本PT学会については除外した.

第13回WCPT学会プログラムの概要(案)

著者: 中山彰一

ページ範囲:P.15 - P.18

 第13回世界理学療法連盟学会(World Confederation for Physical Therapy;WCPT)がアジアで初めて1999年に日本で開催されることとなった.20世紀を締めくくり,来るべき21世紀に向かっての新しい理学療法を世界中に発信するために,日本理学療法士協会の総力を挙げて成功させなければならない大イベントである.

 奈良協会長の旗の下,学会のメインテーマを“Bridging Cultures(文化を越えて)”として,各国の理学療法の背後にある文化的影響を認識しながら,その学術的普遍性,科学性を広く追求し,相互理解・交流・協力の一助となることを念願し,企画運営に英知をしぼらなければならない.

第13回WCPT学会開会式・閉会式の概要

著者: 黒川幸雄 ,   清水和彦

ページ範囲:P.19 - P.20

 1.はじめに

 1999年5月23日に始まる第13回WCPT学会まで残すところ1年5か月余になりました.開会式と閉会式を主に担当する学会進行委員会の準備活動もそろそろエンジンが駆り始めてきました.そこで,この間の取り組みのなかで検討されてきました,開会式および閉会式の内容につきまして概観してみたいと思います.

第13回WCPT学会ソーシャルイベントについて

著者: 中屋久長

ページ範囲:P.21 - P.22

 国際学会で後々印象に残る1つにソーシャルイベントがあります.外国のお客様をお迎えし,学会の合間に心温まる,あるいは楽しく,最も日本国らしい歓迎を心がけなければなりません.華美になったり,開催国の自己満足に終わらないような企画はなかなか難しいことと肝に銘じております.

 本学会ソーシャルイベントのモットーは,①最も日本国らしいイベント,②華美にならないイベント,③楽しく,心温まるイベント,④思い出になるイベント,⑤参加者に経済的,時間的な負担が大きくならないイベント,⑥あくまでもメインは学会であり,全体的にバランスの取れた時間の割り振りで担当者が重荷にならないこと,⑦参加各国の出る幕を考慮した企画,等々です.

第13回WCPT学会演題募集について

著者: 河村光俊

ページ範囲:P.23 - P.24

 1.はじめに

 本委員会は,口演発表演題とポスター発表演題,コンピュータプログラム演題,視聴覚発表演題,臨床での器具考案などの募集と演題採択を担当している.ここでは演題募集の概要と今後の予定について述べる.

第13回WCPT学会展示について

著者: 滝野勝昭

ページ範囲:P.25 - P.26

 1.はじめに

 1999年5月23日(日)から5月28日(金)までの6日間,第13回世界理学療法連盟(WCPT)学会が,21世紀の未来都市として注目を集めているウォーターフロントの「パシフィコ横浜」で開催される.この期間,付設展示会も開催され,国外,国内のリハビリテーション機器や生活関連機器および用品などの出展を予定している.展示会場は一般公開とする予定で,この機会に専門家はもとより多くの人達に現在の医療から福祉・保健までの関連機器を紹介したい.

第13回WCPT学会プレ/ポストセミナーについて

著者: 吉田純

ページ範囲:P.27 - P.28

 理学療法士に関わりがある国際会議・学会は,毎年世界のいろいろな都市で開催されています.開催日数は2,3日から数日間のものまで色々ですが,規模の大きいものでは学会前後にプレ・ポスト(コングレス)セミナーと呼ばれるものが開かれるのが普通です.

 学会では特別講演,パネルディスカション,一般演題,ポスター発表,さらに症例紹介,機器展示など盛り沢山のメニューが折り込まれており,参加者はそれぞれの興味・関心のある分野へ出向き,刺激を受け,また理解を深めるわけです.

文化が響き合う街ヨコハマヘ

著者: 秋田裕

ページ範囲:P.29 - P.32

 幕末の頃,武蔵国久良岐郡横浜村と呼ばれていたこの地は,わずか100戸ばかりの半農半漁の寒村であった.しかし1859(安政6)年重い鎖国の扉が開かれ,横浜に港が置かれて以来多くの外国人がここに居留し,まさに「文化を越えて」人々が交流する街として文明開化の時代をリードしてきた.横浜は行けば何か新しいものが手に入る所,何か面白いことに出会える所.アイスクリーム,ガス灯,牛乳,氷,西洋式公園,鉄橋,テニス,灯台,パン,ビールなどたくさんの「日本初めてグッズ」は,横浜から日本全国に広まっていった.

 その後も港町横浜は外国文化との接点を持ち続け,さまざまな文化が響き合う国際都市として発展してきた.1999年5月,この街ヨコハマであなたは何を見つけるだろう.今回の横浜案内では,横浜の歴史にふれながら学会場周辺の観光スポットをご紹介する.

国際学会発表の経験から

IPC参加を終えて/国際学会発表の経験/理学療法国際化の時代にあって/国際学会での発表経験からの提言/刺激をくれたWCPT学会/WCPT学会記

著者: 石原みさ子 ,   伊藤俊一 ,   神戸晃男 ,   川村博文 ,   田中正昭 ,   永冨史子

ページ範囲:P.33 - P.44

 1.きっかけはささいな一言から

 一大決心する時に“清水の舞台から飛び降りる”と表現したりする.自分では思い切れない時にほんの少し背中を押してもらうと,案外容易に飛べたりする.1996年9月にマレーシアで開催された国際理学療法士学会(IPC:International Physiotherapy Conference)への参加は“マレーシアへ行こう!”といった島先輩の一言に背中を押されて決心した.母校のOB会の集まりで降って湧いたように出てきたこの一言が,“ようし,がんばるぞ”と闘志を湧かせてくれた.

 当時の私は現在の病院に移って間もない頃で,新参もののPTという職種を院内に浸透させることに躍起になっていた.楽しい充実した毎日だったが,変化が欲しくて何かしたかった.うわさに聞いたリゾート地の風景や波の音を思い浮かべたり,急スピードで開発が進んでいるクアラルンプールの街並みを背景に流暢に英語をあやつっている姿を脳裏に浮かべて,簡単に決心していた.

とびら

理学療法士として働いて

著者: 小林暁美

ページ範囲:P.1 - P.1

 養成校を卒業して,早いもので25年が経つ.理学療法士として働いていない6年間を差し引くと,20年近くこの仕事で働いていることになる.理学療法士としての成人式を迎える時期と思うと,何と未熟な成人であろうと自分に対して思う.25年前のリハビリテーションという言葉は,今ほどには社会的に通用することもなく,リハビリテーションの学校にいくと母に伝えた時,キリスト教の学校なのかと尋ねられたことを覚えている.学校卒業後もしばらくは,自分の職業を説明しなければならなかった.それが現在では,テレビ番組に作業療法士,理学療法士が登場するようになり,十分とはいえないが,確実に社会の受けとめ方は変化してきている.

 さて,私の25年はどうであろうか.生業(なりわい)として,この仕事を選んだのであるが,毎日の積み重ねのなかで自分自身,仕事から強い影響を受けてきた.その影響の強さゆえに,また働いている世界の狭さゆえに,暫くこの仕事から遠ざかっていた時期があるが,すべては自分自身の問題であると気づき,再び仕事に戻った.この間の休憩が私に気持ちの余裕を与えてくれている.

1ページ講座 義肢装具パーツの最新情報・1

下腿義足ソケット

著者: 小嶋功

ページ範囲:P.46 - P.48

 最近,独特の設計概念に基づいた義肢パーツが多く開発されている.これらの義肢パーツを切断者にうまく適応するにあたっては,まず機能の特性,製作・調整・使用方法等に関する十分な理解が求められる.本稿では,下腿義足ソケットの懸垂性の改善を目的としたシリコン吸着義足および全面荷重式吸着義足について,従来の下腿義足との比較を通して概説する.

TREASURE HUNTING

「合気」の思想を理学療法の臨床に―野津原 豊氏(江南病院リハビリテーション科)

著者: 編集室

ページ範囲:P.49 - P.49

 まあ人生,いろんな寄り道をしたほうが結構おもしろいのかもしれない.それぞれの道筋で様々な人との出会いがあるだろうし,そこから得られるものも多いはずだからである.

 今月ご登場いただいた野津原豊氏も,どうやら随分とおもしろい寄り道をしてこられたようだ.理学療法士を志して熊本リハビリテーション学院に入学したのが25歳,父親が心筋梗塞でたおれバイパス手術を受けたのがきっかけだった.その間は今でいうフリーター,“あまりにダラケタ生活ぶりに自分でも情けなくなって”武道修業の道を選んだそうだから,人生なにが行き先を決めるのか分かるものではない.

あんてな

インドネシアのCommunity Based Rehabilitation―ソロ市のCBR開発訓練センターの活動を中心に

著者: 工藤俊輔

ページ範囲:P.50 - P.51

 Ⅰ.はじめに

 Community Based Rehabilitation(以下CBR)とは,世界保健機関(WHO)が生み出した用語であり,従来の医学モデルによる障害へのアプローチよりも,社会環境の改善に焦点を当てたアプローチを重要視している.このCBRは1970年代より,従来の施設中心のリハビリテーションではサービスを受けられなかった障害者に対する効果的なアプローチとして発展途上国を中心に注目を集め,種々の実践がなされている.

 今回,日本理学療法士協会の協力を得て,1992年より5か年計画で,NGOのひとつである国際医療技術交流財団より,インドネシア共和国ソロ市のCBR開発訓練センター(以下CBRDTC)に,これまで5人の理学療法士(以下PT)が派遣され,その協力支援活動を行ってきた.筆者は1995年,第3回目の派遣専門家として3か月間インドネシアに在留し,さらに1996年には10か月間,文部省の在外研究員としてその調査研究に携わる機会を得ることができた.

 そこで,これまでのインドネシアでのCBRの協力支援活動の一端と筆者がCBR活動のなかで学んだことについて紹介する.

Q & A

予測最大心拍数の求め方

著者: 高橋正明

ページ範囲:P.52 - P.52

 Q 私たちは,年齢による予測最大心拍数を求めるときに,(220―年齢)という式を用います.この220という数字および(220―年齢)という式は誰が,いつ,どのような実験で導き出したのでしょうか?文献名も併せて教えて下さい.(Y生/茨城県)

 A Fox Ⅲ SMとHaskell WLは最大心拍数と年齢の関係についてのそれまでの米国とヨーロッパの報告をレビューして1970年に発表した(The exercise stress test:needs for standardization.In:Cardiology Current Topics and Progress,Academic Press,New York,1970).残念ながら筆者は読んだことがないので,(220―年齢)の計算式がそこに記載されていたかどうかは分からないが,そこから出発していることは間違いないと思う.

入門講座 知っておくと便利な応急処置・1

在宅リハビリ・医療外施設(内科編)

著者: 北野浩二

ページ範囲:P.53 - P.58

はじめに

 高齢社会の進行とともに,病院以外の施設や在宅でのリハビリテーションに対する要求が高まっている.こうしたなかで,病院の外に出て仕事をする理学療法士も増えているが,万一,理学療法中に患者が急変した場合には,その場にいる医療従事者は当の理学療法士唯ひとりであり,家族の目の前で必要な応急処置を行わなければならない.救急車を依頼しても5分以内に来てもらえることはまず困難で,その間なにをするかが予後に重大な影響を及ぼす可能性もある.

 当院は250名程の在宅患者に対し,往診と訪問看護(簡単なリハビリテーションも含む)および必要と考える場合には理学療法士や作業療法士による訪問リハビリテーションを行っているが,これまで経験した事例を踏まえながら,医師あるいは救急車が到着するまでに行うべき応急処置について述べたい.

講座 難病・1

神経難病における分子生物学のup-date

著者: 上野聡

ページ範囲:P.59 - P.65

はじめに

 近年,分子生物学の発展は目覚ましく,数多くの神経筋疾患の原因が明らかになっている.この華々しい成功は,現時点では,いわゆる純粋な分子遺伝学の専門領域にかなり限定されているといっても過言ではないであろう.すなわち,それらの成果が,必ずしも治療に結びつくまでには至っていない.しかし一部では,遺伝子診断に応用され確定診断にいたり,病気の経過を前もって正確に予知できる結果,時間的余裕をもって対処する方法を模索できるようになったことは,やはり臨床の現場では極めて意義深いものである.その対処の1つとして,理学療法は大きな存在を占めるものと思われる.そこで本稿では,運動障害が前面に出る遺伝病について,代表的な疾患について概説する.

プログレス

PNFテクニックのスポーツ障害への応用―最近の考え方

著者: 市川繁之

ページ範囲:P.66 - P.67

 「スポーツのPNF」というと,PNFテクニックのなかにもまた別のアプローチがあるように思われがちだが,筆者はリハビリテーションの患者も整形外科,スポーツ障害の患者もアプローチの基本的考え方は同じであると思っている.当然,目標とするゴール,治療の量,質などは患者によって異なるわけだが,基本的なPNFの考え方,アプローチの仕方などは同じである.しかしセラピストは,患者によって様々な能力を要求される.患者によって治療やプログラムが異なるわけで,その質を見極め,それに見合った量を引き出し,そして促進させなければならないのである.特に,スポーツ選手でもレベルが高くなればなるほどそれ相応の動きを要求される.当然,能力も高く,セラピストがその反応に対応できなければ運動パターンは強化されない.ハイレベルのスポーツ選手に対する場合,セラピストもボディメカニックとセンスを必要とされるわけである.

Case Presentations

転倒を契機に四肢麻痺を呈した頸椎症性脊髄症を合併する成人脳性麻痺者の理学療法

著者: 今吉晃

ページ範囲:P.69 - P.74

 Ⅰはじめに

 成人脳性麻痺者の身体機能は,健常人よりも早くから,加齢に伴う種々の問題を生じることが報告されている.特に頸椎症性脊髄症の合併は,運動機能低下が日常生活動作(以下ADL)障害に直接つながる問題であるため,早期発見・早期治療,それに伴うリハビリテーション(以下リハ)の重要性が指摘されている.しかし,一般病院でこのような問題を抱える症例を診ることは少なく,臨床場面で様々な配慮が必要とされることが推測される.

 筆者は,頸椎症性脊髄症に対する頸椎固定術後,再三の転倒を契機に四肢麻痺となり,歩行不能となった症例に対し,「トイレまでの介助歩行」獲得を目標に理学療法を実施する機会があった.今回,この経験から,本症例のリハ目標と理学療法の内容,心理的対応について若干の考察を加えて報告する.

プラクティカル・メモ

新聞紙5枚でつくる「パーキンソンはしご」

著者: 北薗真治

ページ範囲:P.75 - P.75

 パーキンソン病による「すくみ足」には,障害物を置いたり線を引くことにより,歩きやすくなることは良く知られている.

 障害物として杖や棒を使うこともあるが,踏んだりすることでズレたり,乗り上げることでバランスを崩しやすい.

 線を引いたり,テープを使う場合は常に同じ位置で使用しなければならない.

書評

―加倉井周一・清水夏繪(編)―神経・筋疾患のマネージメント―難病患者のリハビリテーション

著者: 平井俊策

ページ範囲:P.32 - P.32

 現在数多くの疾患が難病の指定を受け,医療費が国庫負担されるとともに,その成因や治療に関する研究も進歩しつつある.しかし,特に神経・筋疾患では,難病でありながら指定されていない疾患も多い.これらの疾患は有効な治療法がないだけに,リハビリテーション,ケアを含むマネージメントの重要性が非常に大きい.従来,このような神経・筋難病のマネージメントに焦点を当てた書物はなく,その出現が望まれていたが,このたび加倉井周一教授(東大リハ科)と清水夏繪教授(帝京大市原病院神経内科)の編集により発刊された「神経・筋疾患のマネージメント―難病患者のリハビリテーション」は,このような要望に応えるものといえよう.

 本書は,まず総論でリハビリテーションの立場からみた神経・筋疾患,神経・筋難病に対する厚生省研究班の業績,地域での取り組み,心理面への配慮,支援機器などを解説した後,各論として厚生省指定の難病を含む32の神経・筋疾患について簡潔にそのポイントを述べるとともに,特にマネージメントに重点をおいて記述してある.

―千野直一(編) 千野直一・木村彰男・正門由久・岡島康友(編)―臨床筋電図・電気診断学入門(第3版)

著者: 梶龍兒

ページ範囲:P.58 - P.58

 本書はさきに同じ著者らによって1981年に刊行された第2版の改訂版である.第2版は当時,本邦において臨床応用が始まったばかりの筋電図,電気診断学の入門書として好評を得ていただけに,その後の筋電図を取り巻く環境のめざましい進歩に対応した改訂版の登場が長年にわたって待たれていた.この本はその期待に見事に応えている.

 本書は大きく基礎編と症例編に分かれるが,主な神経筋疾患における電気診断上の特徴についても簡潔に触れられている.基礎編では,もはや筋電図という範疇でとらえることが難しいくらいに発展した電気診断学を学ぶ上で必要な知識が網羅されており,F波,H波,体性感覚誘発電位などの,その後の新しい知見についても補完されている.電気生理学的診断の方法についても写真や図を多用して分かりやすく記載されていて,初心者が効率よく電気診断学を学ぶのに適した内容となっている.一方,症例編では,実際に臨床の場で電気生理学的検査を行い診断をつける過程を学べるようになっている.

学生から

「先生」と呼ばれて考えること

著者: 佐藤雅美

ページ範囲:P.67 - P.67

 一期臨床実習において,いくつか考えさせられたことがある.なかでも,患者さんや看護婦さんから「先生」と呼ばれることである.もちろん私は学生なので「私は実習生です」と答えていた.

 ある病院に見学に行ったときのこと,1人のPTが高齢の患者さんに「先生」と呼ばれたとき,「私は先生ではないですよ,先生とは先に生まれると書くじゃないですか,だから○○さんの方が先生ですよ」という会話を聞いた.また,ある専門誌でもPTが「先生」と呼ばれることについて,「何だか歯がゆい」と書いていた.私はまだ学生なので,「先生」と呼ばれることについて考えることがなかった.

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文献抄録

ページ範囲:P.76 - P.77

編集後記

著者: 奈良勲

ページ範囲:P.80 - P.80

 読者の皆様,新年あけましておめでとうございます.とはいえ,最近は何かと不安定な様相を呈する社会情勢です.護身的でない行政改革が本当に求められる時代といえます.

 本号(32巻1号)の特集テーマは“Welcome to the 13th WCPT Congress”です.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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