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文献概要
入門講座 筋力と身体諸機能・3
疼痛と筋力強化―腰痛症と体幹筋力について
著者: 伊藤俊一1
所属機関: 1北海道大学医学部附属病院リハビリテーション部
ページ範囲:P.847 - P.854
文献購入ページに移動 Ⅰ.はじめに
有痛性疾患患者の理学療法においては,「痛み」に対する治療が最優先される.したがって,現在までに痛みに対する理学療法に関する論述は枚挙にいとまがない.痛みの定義や痛みの種類などについては他の多くの成書に譲るが,痛みが局所的なものにせよ,全身的なものにせよ,理学療法では運動療法や物理療法によって治療を行うことが根幹となる.しかし近年では,その根幹が治療効果という観点から科学性や理論性の点で疑問視されている.すなわち,治療法の有効性を理学療法の特異的有効性として科学的・論理的に評価した場合,実験法や証明法が極めて暖昧であるとされ,再検証が求められているのである.これは,多くの臨床研究が,肯定と否定の賛否両論のなかで,より高い治療効果と治療コストの軽減を目指したことに他ならない.本邦においても,森や中山が痛みに対する治療という観点から運動療法の特異性の再検証を提唱している1,2).この傾向は,現在では運動器疾患だけに止まらず3),中枢神経疾患やさらに呼吸器疾患にまで拡大してきている4,5).いずれにしても,過去の多くの臨床研究は実験デザインを吟味し直し,無作為比較対照試験などを加えて再検証しなければならない岐路に立っていることを認識する必要がある.
臨床では,多くの論文を読むとそれ以上に多くの「矛盾」に遭遇する.すなわち,どの報告を信じて治療を行うことが,より効果的かということである.実際には,多くの成書に当たり前として記載されていることへの反証に出くわすことも少なくない.本稿では体幹を中心として,主に腰部の痛みに対する筋力強化の関連について,文献的賛否を整理して考察を加える.
有痛性疾患患者の理学療法においては,「痛み」に対する治療が最優先される.したがって,現在までに痛みに対する理学療法に関する論述は枚挙にいとまがない.痛みの定義や痛みの種類などについては他の多くの成書に譲るが,痛みが局所的なものにせよ,全身的なものにせよ,理学療法では運動療法や物理療法によって治療を行うことが根幹となる.しかし近年では,その根幹が治療効果という観点から科学性や理論性の点で疑問視されている.すなわち,治療法の有効性を理学療法の特異的有効性として科学的・論理的に評価した場合,実験法や証明法が極めて暖昧であるとされ,再検証が求められているのである.これは,多くの臨床研究が,肯定と否定の賛否両論のなかで,より高い治療効果と治療コストの軽減を目指したことに他ならない.本邦においても,森や中山が痛みに対する治療という観点から運動療法の特異性の再検証を提唱している1,2).この傾向は,現在では運動器疾患だけに止まらず3),中枢神経疾患やさらに呼吸器疾患にまで拡大してきている4,5).いずれにしても,過去の多くの臨床研究は実験デザインを吟味し直し,無作為比較対照試験などを加えて再検証しなければならない岐路に立っていることを認識する必要がある.
臨床では,多くの論文を読むとそれ以上に多くの「矛盾」に遭遇する.すなわち,どの報告を信じて治療を行うことが,より効果的かということである.実際には,多くの成書に当たり前として記載されていることへの反証に出くわすことも少なくない.本稿では体幹を中心として,主に腰部の痛みに対する筋力強化の関連について,文献的賛否を整理して考察を加える.
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