icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル32巻9号

1998年09月発行

雑誌目次

特集 救急医療と理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.637 - P.638

 “救急医療に対する理学療法の関わり”“理学療法における救急医療の重要性”を相互に考え「救急医療と理学療法」の特集を企画しました.内容をご覧いただければおわかりのように,単純に急性期の理学療法の考え方や集中治療室での限られた理学療法手技を求めたものではありません.

 救急医療とリハビリテーションとの関係,救命救急センターにおける理学療法士の幅広い役割を概観した後に,ICU・頭部外傷,救急センター・頸髄損傷,慢性疾患・急性増悪,高齢者・脳病変,NICU・療育,災害・理学療法業務をそれぞれのキーワードとした内容をご執筆いただきました.多くの対象・領域が網羅されており,ほとんどの理学療法士が特集タイトルと無関係ではないことがおわかりいただければ幸いです.

リハビリテーションと救急医療

著者: 日原信彦 ,   石田暉

ページ範囲:P.639 - P.644

 1.救急医療の歴史的背景とリハビリテーション医療の関わり

 我が国では,昭和30年代末の自動車数増加に伴う交通外傷の急増に対して,救急医療システムの対応が求められるようになった.しかし,当時はまだ重症患者への集中治療の体制は整っておらず,大阪大学医学部の救急部が先駆け的役割を担った.昭和48年日本救急医学会が設立され,昭和51年,厚生省救急対策事業実施要綱の制定により人口100万人について1か所の救命センター設置が目標として掲げられ,救急医療体制の基本が整えられるに至った.昭和61年には,消防法の改正により搬送患者の対象を事故によるものから内科系の救急患者も含むものと改められ,中毒情報センターも開設となった.現在,救命センターは全国で150か所を越え,医療機器の目覚ましい進歩とともに,急変する病態に即した迅速な診断・治療が可能になってきた1).一方,日本リハビリテーション医学会は昭和38年に誕生し,昭和41年には第1回理学療法士・作業療法士国家試験が施行された.昭和55年,リハビリテーション専門医制度が成立,平成9年には理学診療科に代わってリハビリテーション科が標榜科として新たに制定され,臨床においても様々な障害に対するトータルマネージメントの必要性が認識されてきた.現在,救急患者の約半数を疾病が占め,交通事故を含む外傷は約1/6である1).疾病のなかでも脳血管障害や心疾患などの循環器系疾患が多く,高齢化時代を反映して多臓器障害も増加している.

救命救急センターにおける理学療法士の役割

著者: 石川朗 ,   森川亘 ,   亘理克治 ,   荒木外百栄 ,   瀧野勝昭 ,   三上真弘 ,   多治見公高

ページ範囲:P.645 - P.650

 1.はじめに

 1997年11月26日より3日間,第25回日本救急医学会総会が東京にて開催された.全国より医師,看護婦,救急救命士等約4,000人が参加し,教育講演,フォーラムセッション,シンポジウム,一般演題等で活発な意見交換がみられた.特に今回,看護部門において「救急医療における肺理学療法」「救急医療における早期リハビリテーション」という2つのシンポジウムが企画された.しかし残念なことに,それらのシンポジウムには看護婦や医師の出席は多くみられたが,理学療法と密接な関係がある分野ながら理学療法士の出席は10名にも足りない数であった.

 こうした状況が例示するように,救急医療においては多くのニーズがあるにもかかわらず,理学療法士が積極的に関与していることは少なく,特に集中治療棟(intensive care unit:ICU)の呼吸管理で重要な治療手段である呼吸理学療法に関し,理学療法士が中心となって実施している施設は僅かである.

 本稿では,筆者らが行ってきた救命救急センターにおける理学療法の状況を報告し,そのなかから救急医療における理学療法士の役割を検討して,現状の問題点や今後の展望について述べる.

ICUにおける頭部外傷の理学療法

著者: 星孝

ページ範囲:P.651 - P.656

 1.はじめに

 頭部外傷の理学療法を行う対象は,脳実質に何らかの損傷がみられる閉鎖性頭部外傷例である.それらの病態は脳挫傷,硬膜外血腫,硬膜下血腫,脳内出血などであり,受傷直後はただちに意識レベルや全身状態の観察,神経学的検査や画像診断を行い,手術適応か保存的治療かの判断が下される.脳神経外科領域における早期からの理学療法では,病態の把握はもとよりモニタリングや全身管理の知識が必要とされる.ICUでの理学療法士の主たる役割は,二次的合併症をいかに予防し,離床につなげるかに尽き,チーム医療のなかで大きな役割を担うことになる.

 本稿では,Intensive Care Unit(ICU)における,急性期頭部外傷の理学療法に必要と思われる視点を,我々の経験した症例を踏まえて述べてみたい.

救命救急センターにおける頸髄損傷患者の理学療法

著者: 東城真由美 ,   青木伸孝 ,   藤谷尚子 ,   水落和也

ページ範囲:P.657 - P.662

 1.はじめに

 当院では1991年1月に第三次救急応需の救命救急センター(以下,救命センター)が開設され,我々はチーム医療の一員として,頸髄損傷患者に対する早期リハビリテーション(以下リハ)に関わっている.今回の特集にあたり,これまでの7年間の経験を紹介するとともに,特徴的な4症例のリハ経過を紹介することで,救命医療現場での頸髄損傷リハの現状,課題などを考察する.

慢性進行性疾患における救急医療と理学療法

著者: 平賀よしみ ,   佐々木麗 ,   山北秀香 ,   内山靖

ページ範囲:P.663 - P.671

 1.はじめに

 慢性進行性疾患のうちパーキンソン病(PD),脊髄小脳変性症(SCD),筋萎縮性側索硬化症(ALS)などのいわる神経難病は,徐々に進行し,原因不明で治療方法が確立されていない疾患である.したがって神経難病が,重症例に対し発症の初期から高度で集中的な全身的管理を行う救急医療の対象になるのかとの疑問をもつかもしれない.しかし,医療技術の進歩やケア技術の向上により,従来では救命困難であった患者が種々の医療処置(膀胱カテーテル留置,自己導尿,経管栄養,吸引,気管切開,ネブライザー,人工呼吸器など)により,病院内から在宅療養に切り替えられる在宅ケアが急速に進展している.そのため,在宅での治療と管理,栄養や排泄などの日常の全身管理および適切な理学療法など,状態に合わせた種々の医療の提供が必要となってくる1)

 更に神経難病は神経症状の特異性や様々な合併症から,一時的な体調不良や転倒など何らかのアクシデントが起こると容易に臥床生活に陥りやすく,障害が数段階進行することも珍しくない.したがって,救急医療およびリハビリテーションの充実を始めとし,再び速やかに在宅へ移行できるような医療機関内での診療体制の確立が急務である.そこで従来からいわれている慢性進行性疾患における理学療法の目的「可能なかぎり機能維持を図り,能力障害の進行を最小限に食い止めること」に加え,在宅療養を継続させるための「何らかの急変や状態変化を予測し,迅速な対応を可能とする」視点が必要である.

 本稿では慢性進行性疾患のうち,神経難病の急性増悪と救急医療に焦点を当てながら,在宅療養継続における問題を整理し,理学療法の方向性について検討することを目的とした.対象疾患としては,神経難病の代表的疾患であるPD,SCD,また経過の特殊性から特別な援助が必要となるALSを中心に述べたい.

高齢脳損傷患者の救急医療と理学療法の役割

著者: 新屋順子 ,   廣田礼司

ページ範囲:P.672 - P.674

 1.はじめに

 筆者らが勤務する県西部浜松医療センターは,市医師会中央病院を母体として昭和48年に浜松市が開設した総合病院である.平成9年に増改築工事を終え,現在,一般病床600床,伝染病床25床の静岡県西部地域の基幹病院である.また,当院の平均在院日数は年々短縮しており,平成9年度は21日であった.

 我々は,急性期リハビリテーション(以下,リハ)におけるリスクや合併症,入院期間などを視野に入れつつ,理学療法を行わなければならない.本稿では2例の具体例を挙げ,当院での高齢脳損傷患者の理学療法と救急医療との関連および日常の留意点について考察する.

新生児集中治療室から家族中心・家庭生活基盤療育をめざした理学療法

著者: 大西彩子 ,   羽川希 ,   亀山麻子 ,   佐伯麻衣 ,   三宅康子 ,   西出康晴

ページ範囲:P.675 - P.677

 1.はじめに

 新生児集中管理室(以下NICU)における理学療法は,NICU入院期間中を中心に考えがちであるが,実際は児が家庭に帰ることを前提に,児の将来的発達や児と家族,特に母親との生活に焦点をあてて行う必要がある.

 児の“生命”を救うことを集中的に行っている救命救急医療の現場から,自宅退院するまでの早期産児やハイリスク児に対する理学療法士の関わりについて,これまでの経験に基づき早期理学療法について述べることにする.

災害発生時に理学療法士が果たす役割―阪神・淡路大震災激震地区の病院で理学療法士が行った業務

著者: 坂本親宣

ページ範囲:P.678 - P.681

 1.はじめに

 近年,阪神・淡路大震災(以下,震災),地下鉄サリン事件,O-157食中毒事件などのように瞬時に多数の被害者を出した災害や事件が続発し,救急医療体制の必要性や重要性の再認識についての報告が諸家1-4)によりなされている.そしてこれまで,救急医療体制についてどちらかといえば関わりが薄かった理学療法士に対しても,最近では救急医療体制の一端を担うことの必要性が求められている5)

 しかし現実的な話として,震災の激震地区に位置する病院に勤務していたために次々に搬送されてくる死傷者に,職種の枠を越えて対応しなければならない状況が続き,ましてや自らが被災し,通常の心理状態から逸脱しているなかで,災害発生時に理学療法士の果たす役割を冷静沈着に考える余裕はなかったように著者は記憶している.

 そこで,震災後約3年半を経過した今日において,当時を振り返り,震災直後の被災地で理学療法士が行った業務,更には今後このような災害が発生した際に理学療法士が果たしていかなければならない役割について述べたいと思う.

とびら

団塊の世代のなかで

著者: 倉石健二

ページ範囲:P.635 - P.635

 ある先輩が本誌の「とびら」欄に執筆を依頼されることは一人前のPTになったことの証であるといっているのを聞いたときは,本当かな,ただ年を重ね苔むしたPTに最後の餞(はなむけ)を贈るための欄では,と考えたものです.私たちがPTとして医療の世界に入ったのは70年代前半であり,日本経済は右肩上がりの成長を続けていて給与は毎年30%前後上がりました.80年代のバブル経済に向かって,ひたすら走り続けていた時代です.

 その後89年にバブルが弾けて経済成長が鈍化するようになると,一般社会は,私たちを団塊の世代としてひとまとめにし,社会における特異な集団として扱うようになりました.80年代の情報通信の飛躍的な進歩により,パソコンを始めとする種々の電子機器が開発されると,私たちは,コピーの拡大縮小もできない,ワープロできない,パソコンできない世代として,社会に認識されることになりました.迫り来る少子高齢化社会に対しては,年金制度を根底から覆す集団として恐れられています.

TREASURE HUNTING

綱引きと出会ってストレス解消―木戸宏治(木村病院リハビリテーション科)

著者: 編集室

ページ範囲:P.683 - P.683

 最初に右の綱引きの写真をご覧いただこう.ご本人いわく,中学時代はプロレスラーを目指してまじめにレスラートレーニングに励み,高校時代は柔道部に入って関節技とウエイトトレーニングばかり練習していたというだけあって,相当な体格の持ち主であることは間違いなさそうだ.将来は柔道整復師,整骨院,鍼灸などの仕事ができればと鍼灸大学を受験したものの見事に失敗.浪人をする気もなく,自分の進路を決めかねていたところ,「こんな学校が福井にあるぞ」と父親がパンフレットを見せてくれたのが,福井医療技術専門学校だった.そこで初めて理学療法士という職業を知り,勉強すればするほど理学療法が好きになっていった.とりわけ臨床実習で,人体解剖を目の当たりにして感激した経験が学生時代の思い出だそうだ.

学会印象記 第33回日本理学療法士学会

京都学会の企画・運営について

著者: 吉元洋一

ページ範囲:P.684 - P.685

はじめに

 古くて新しい町京都.この地で社団法人日本理学療法士協会主催の第33回日本理学療法士学会が京都理学療法士会の担当で1998年6月11~12日の両日,緑に囲まれた国立京都国際会館で開催された.

 今回は,2000年5月19,20日開催予定の第35回日本理学療法士学会(鹿児島県理学療法士会担当)の準備委員長を拝命しているため,京都学会の運営を視察することが第一の目的であった.これ以外にも各種会議への出席や座長としての責務もあったため,講演や演題を十分に拝聴する時間がなかったため,主に企画・運営面について筆者なりの印象を述べる.

1ページ講座 義肢装具パーツの最新情報・9

下肢装具の膝継手―構造,特徴,適応

著者: 森恭一

ページ範囲:P.686 - P.686

 現在,厚生省により認可されている装具用膝継手は10種類50品目以上となる.今回,その全てについて説明するには莫大な誌面が必要となるので,一部代表的な膝継手について臨床的な面から説明していく.

入門講座 筋力と身体諸機能・1

呼吸循環器疾患に対する骨格筋筋力トレーニング

著者: 山﨑裕司

ページ範囲:P.687 - P.692

 Ⅰ.はじめに

 呼吸循環器疾患患者の主な運動制度因子は酸素搬送系の障害にある.しかし,同時に息切れ,易疲労,呼吸苦などの症状は身体活動量を制限し,必然的に廃用性の骨格筋筋力低下を生じさせる.一方,これまで筋力トレーニングは循環器系に対するリスクの高さから,呼吸循環器疾患の運動療法に処方される機会は少なかった.したがって,この分野における筋力トレーニングの方法論や安全性,効果については,未だ十分に知られていない.

 本稿では,まず呼吸循環器疾患患者に対する筋力トレーニングの必要性について述べ,次に筋力トレーニングの安全性と利点および効果について,筆者らの成績をもとに概説する.

講座 理学療法における標準(値)・3

上肢・体幹関節可動域

著者: 神沢信行 ,   岡野生也 ,   篠山潤一 ,   山本直樹 ,   坂本紀子 ,   河合秀彦 ,   富永孝紀 ,   安田孝司 ,   赤澤康史

ページ範囲:P.693 - P.698

はじめに

 関節可動域が確保されていることは,人が行う種々の動作を遂行するうえで重要な要素である.この関節可動域は「正常関節可動域」と定められ,理学療法士が日常において評価の1手段として用いている.しかし,臨床的に動作を観察すると「正常関節可動域」として定められている角度よりも少なく測定される関節運動もあり,逆に多く測定される関節運動もある.この要素としては,年齢,性別,日常生活における動作様式や動作頻度などが考えられる.この関節可動域の障害は,リハビリテーション医学において機能・形態障害の1つとしてとらえられ,骨・関節疾患に起因する直接的な原因のみならず廃用性の原因によっても生じる障害である.これらは,日常生活を妨げる因子として能力障害の原因となり,長じて社会的不利をもたらす結果ともなりうる.したがって,臨床においてはこれらの原因を明確にして,それを取り除くために何を行うべきか,また関節可動域障害が予想される場合には日常生活における障害に対してどのような対策をもって臨むかが重要になる.

 今回は,上肢と体幹の関節可動域について報告するが,頸髄損傷者(以下,頸損者)の起き上がり動作に着目して,この動作に必要な肩と体幹の可動域について文献的考察を含めて報告する.

短報

在宅高齢者と施設居住高齢者のピンチ力に関する比較研究

著者: 武富由雄 ,   村木敏明 ,   淵上登子 ,   仲島美智代

ページ範囲:P.699 - P.701

はじめに

 手の把持動作の基本となるのは「にぎり」(grip)と「つまみ」(pinch)である.Kamakuraら1)は健常者を対象に種々の物品をテーブルから取り上げる手指動作を撮影し,「つまみ」には,pulp pinch,lateral pinch,fivefinger pinch,tripod pinchなどと呼ばれるピンチ・パターンがあり,そのうちのlateral pinchは日常生活を送るうえに必要な洗濯や食器洗い,整理,掃除で頻繁に用いられる.今までピンチカに関して整容動作,更衣動作などの関係や性別と加齢の観点から結果を示した研究や年代別の標準値に関する研究などはあるが,生活環境の観点から高齢者のlateral pinch力の比較についての研究は見あたらない.

 そこで今回,日常生活が自立している在宅高齢者(以下在宅群)と特別養護老人ホームに居住する高齢者(以下施設群)の2群を対象に,両群の利き手指のlateral pinch力を比較検討し,知見を得たので報告する.

初めての学会発表

心地よい緊張感のなかで

著者: 山本美和

ページ範囲:P.702 - P.703

はじめに

 1998年6月11,12日の2日間にわたり,第33回日本理学療法士学会が,「健康科学としての理学療法」をテーマに京都で開催されました.

 全国の理学療法士が学会会場である国立京都会館に集い,一般演題642題,うち口述400演題,ポスター238題,ビデオ4演題の発表について活発な質疑応答がなされました.

あんてな

第33回全国研修会の企画

著者: 水上慎一

ページ範囲:P.704 - P.705

 全国研修会を鳥取県士会が担当させていただくことになり,鳥取県米子市で開催されますことを光栄に思っているところです.なにせ,全国一の少数士会である当県士会で十分なことができるかと不安な気持ちでありますが,皆様に「来て良かった」と思っていただける研修会にできるよう士会員一丸となって頑張っているところです.

 さて,ここで研修会の企画と会場および周辺の観光について,少しお知らせさせていただきます.

地域リハ研究会の活動

著者: 浜崎満治

ページ範囲:P.706 - P.707

 Ⅰ.「継続は力なり」

 前の職場で在宅療養者のお宅へ年に何度か身障計測にうかがう機会があった.当時(10年ほど前),新米理学療法士であった自分の想像とはかけ離れた在宅療養の現状を目にし,やり場のない憤りと何もできない自分に対する自責の念で,車での帰路ひとり目を赤くしていたものだった.この経験が筆者を地域に目を向けさせた動機である.

 平成3年,転勤をきっかけに,人口6万7千余の大分県中津市を中心に,近隣地域も活動舞台として「地域リハビリネットワークの会」という集まりを持ちはじめた.「リハビリテーションの考え方を広く地域に……」という思いが実現したわけである.まずは理学療法士,作業療法士を集め,そこから地域の方々を巻き込んでいきたいと考えたが,数えるほどの同職者をまとめることさえ難しいことを思い知らされる結果となった.当時は切ない思いで一杯であったが,今にして思えば,これが当然の結果なのだろう.本業の病院でも,施設基準Ⅱの取得に向けて動いているなか,一専門職として地域で何ができるのか,先の見えない挑戦であった.

雑誌レビュー

“Physiotherapy”1997年版まとめ

著者: 篠原英記

ページ範囲:P.708 - P.713

はじめに

 雑誌“Physiotherapy”は英国理学療法協会の機関誌として83年目を迎え,学術誌としての形態が次第に整いつつある.発行数は年間12回であり,1冊に盛り込まれている内容は,巻頭言(Leading Article)1編,専門的論文(Professional Articles)数編,その他の記事[Regular Feature:ビデオ・書評(Video/ Periodical/ Book Review),書簡(letters)など]である.

 この雑誌の理学療法の専門性に関して検討するために,1997年に本雑誌に掲載された専門的論文を中心にながめてみると,その内訳は,学会長基調講演論文(Founder's Lecture)1編,教育論文(Scholarly Paper)10編,研究報告(Research Report)32編,症例報告・研究(Case Study/ Report)2編,フォーカス(Focus)11編,レビュー(Review Paper)4編,討論(Discussion Paper)1編,インフォーメーション(Information Sheet)3編,フォーラム(Forum)3編の全67編である.そのなかで,研究報告と症例報告以外は研究としての体裁をとったものではないため簡単にとどめ,主に研究報告・症例報告を概観し,英国理学療法士およびこの雑誌に掲載しようと努力している理学療法士の研究の動向や問題意識にふれてみたい.

 なお,文中および文末の[( )]の記載方法は,[著者名(号)ページ]の順である(著者名を文中に使用している場合には,著者名を省略して記す).

資料

第33回理学療法士・作業療法士国家試験問題(1998年3月6日実施) 模範解答と解説・Ⅲ―理学療法(3)

著者: 武田功 ,   中徹 ,   平上二九三 ,   辛島修二 ,   泉唯史 ,   藤野英己 ,   中嶋正明

ページ範囲:P.714 - P.717

書評

―吉尾雅春(責任編集)―理学療法MOOK脳損傷の理学療法 ①超早期から急性期のリハビリテーション ②回復期から維持期のリハビリテーション

著者: 山下隆昭

ページ範囲:P.701 - P.701

 教科書や書籍の良さは,まとまった知識と安定した情報を一定の期間を費やして提供できる点であるが,出版される頃にはやや鮮度に問題があることが危惧される.一方,月刊専門誌等のジャーナルでは,鮮度は良いが情報の統一性や拡がりが不足することは否めない.このBookとMagazineの両方の利点を生かして編集されたものがMOOKである.すでに他の臨床医学分野では着実な実績をあげ多数の読者の支持を得ており,我々も愛読することが多い.

 この度,三輪書店より理学療法分野における最新情報をテーマ別に提供することを目的に「理学療法MOOK」シリーズが年4回刊の予定で始まった.

--------------------

文献抄録

ページ範囲:P.718 - P.719

編集後記

著者: 内山靖

ページ範囲:P.722 - P.722

 理学療法は,当然のことながら時代の社会情勢や国民のニーズと密接に関連し,主体となる対象や治療の方法も変化しています.今月号の特集のキーワードである“救急医療”は,昭和48年から51年頃に国の施策の一環として誕生・発展してきた分野の1つです.昭和48年は難病対策要綱が策定された年でもあり,一方では交通外傷等による救命救急医療の充実が,他方では慢性進行性疾患に対する長期療養生活の充実が望まれていたようです.現在ではいろいろな分野で,両極化(2極化)と再統合(再構築)が叫ばれていますが,このこと自体は両極がともに発展した証ともいえるのでしょう.両極には共通した本質が存在している場合が多く,各自が歴史的な変遷を眺めて自身の知識・技術を再統合することこそ大切なことではないでしょうか.

 入門講座は,「筋力と身体諸機能」が始まりました.理学療法士にとって筋力は最も身近で重要な要素の1つです.関連した特集も数多く組まれていますが,今回は特に身体諸機能との関連から筋力を考えていこうとしています.臨床医学が臓器別に展開されてきた現状から,理学療法も疾患別に括られている面をもっています.理学療法では,さらに障害に対する接近が積極的に模索され,これまで疾患・障害の組み合わせでそれぞれの分野が発展してきているようです.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?